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ペルフェクションデキャンタ〜前世ホスト狂いが勘違いされる話〜 作者:ヨグ
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第十五話

そこからゆっくりと洋さんは順に説明をしてくれた。けど、私には一つ気になったことがある。

「ねぇ、いくら?」
「はい?」
「いくらシュウには借金があるの?」
「落ち着いて。都ちゃんに払える額じゃないし。何より悪いのはシュウの奴なんだ。だろ?」
「けど、シュウにはお店を辞めさせられて行き場もなくて、ボロボロで……支払えない」
「だからって、都っちが払う事にはならないでしょ。都っち、お願いだから冷静になろう」

ミオとセイが落ち着く様になだめてくれるんだけど、話を聞いて余計に私がなんとかしなくっちゃという意識が芽生えてしまった。そんな中だった。今まで黙っていたリョウが口を開いたのだ。

「シュウを復帰させてやったらどうだ」
「なっ」
「そんなことって……何で急にそんな事を言うんだ? 何を企んでいる?」

驚いているセイを尻目にミオがリョウに詰め寄る。しかし、リョウはそれを鼻で笑った。

「さぁ。俺は何も企んではいないがな。そんなことよりも、急に人を疑って来る方が怪しいだろ。何を企んでいるだと? それは果たしてどっちなんだろうな」
「馬鹿なこと言うな」
「だったら大人しく話を聞いていたらどうだ」
「感情論であっさりと意見をひるがえしたことに対して質問して悪いということはない」

二人にリョウは一瞥いちべつすると、近くの席にドカっと勢いよく腰を下ろした。

「被害者の俺が良いって言っているんだ。別にいいだろうが」
「そういう訳には……」
「ハッ。爆弾の前例なんてあるかよ。コレが初なんだしな。だが、シュウには一番最初からやり直しさせる。指名も0からやり直し。それで済む話だ。それとも何か? お前たちは反対するつもりなのか?」

そうリョウが言った途端、ミオとセイがこちらを勢いよく振り向いた。予想外だったので、とっさにその場で硬直してしまう。しかし、そんな風に固まっている私を他所に展開は進む。

「いや、思う所があるのは確かだが別に反対したりはしない」
「僕も同じくー」

そこまで言葉を聞いて、もしかしたらシュウが復帰出来るかもしれない! ささやかな希望にすがって顔を上げると、どこか切なそうに私をみるリョウと目が合って胸が騒いだ。

「シュウの奴は幸せだろうな。都みてぇな真剣にホストの事を考えてくれる奴が居るんだ」

そんな風に想ってくれただなんて。私の顔が急激に熱を持つ。店のオープンと同時にやってきたと思いきや、喚き出し挙句あげく、泣き出すというまさに痛客(迷惑をかけるお客)になっていたっていうのに。

「……分かりました。今回だけ特例でオーナーに掛け合いましょう」
「ありがとうございます!!!」
「都ちゃん、良かったね」
「都っち、あんなに必死になっているから僕、ホントびっくりしちゃったよー」

シュウが復帰できるかもしれない事に、喜びがわき上がってくる。早速、京介に連絡しなくっちゃ。そして、そこまで考えてスマホを取り出した所で、少し落ち着いた。落ち着いてしまった。

(え……嘘……)

転生しても自分の中には『ホスト狂い』の一面があった事に気付いてしまったのだ。シュウは本気で、本命だったって訳では決してない。なのに、私は一体何をしているんだろう。

というか、そもそも何でここまで私はしたのだろうか? さっきも思ったけど、痛客と思われただろうし、あんなに大騒ぎをして出禁(出入り禁止)になっても文句は言えないのに……。そこまで考えて血の気が引いていく。

(こんな筈じゃなかった!!)

再びパニックに陥った私は立ち上がって、皆に迷惑を掛けてしまった謝罪を述べると転がる様にして店から出て行ったのだった。


◇◆◆◇

オマケ

「都ちゃんってさ、純粋でイイ子だよな……」
「あぁ」

ミオの声にリョウが賛同する。都が立ち去ったあと、二人以外からも周囲のホストから口々に褒め言葉が飛び出してきた。大和撫子を体現したかの様な都だ。そして普段からも見た目同様に控えめかつ大人しい性格をしている。

落ち着いているのがデフォルトの洋に似ていると言っても良いかもしれない。それが、だ。あそこまで感情的になる姿は初めてみた。シュウに借金があると発覚した時には、まるで自分が支払うと言わんばかりの様子だ。

余りにも我武者羅で自分を失っている様にしか見えず、冷静になる様に促しても無駄に終わってしまった。その姿は今まで強い感情を出さなかったが故に逆に鮮明にホスト達の脳裏に焼き付いたのだ。

『人のため――それもカスト(ダメなホスト)であるシュウ――にここまで真剣になれるなんて、一体どこまで純粋なんだ』と。

そして、特にナンバー陣は都のある種冷めた視点に気づいていたというのもある。ホストに対して決して本気ではないという距離を感じていたのだ。

ただし、今回の件でそれが違うと確信を得た。表立って感情を出していないだけで、どこまでもホストの事を想ってくれていたのだ。今回は、都の事を底知れぬ特別な人だと再認識出来た一幕となった。

そして意識を改める。都をシュウにくれてやるつもりはないのだと。

ちなみに余談だが、洋は都が酒にかなり酔っているという事を近づいた時に香りで理解していた。あれだけ酔っていての本音が一連の出来事。思い入れが深まった出来事だった。
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