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ペルフェクションデキャンタ〜前世ホスト狂いが勘違いされる話〜 作者:ヨグ
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第十四話

「どういう事なんですか? 詳細を教えて下さい。普通の辞め方じゃないと思うんです!」

「朝霧様、落ち着いて下さい」

落ち着いてなんていられなかった。仕事の一環だったイベントを終え、家に帰ってもシュウのことが頭をついて離れない。絶対に何かがあったに違いないんだ。明らかに不自然な辞め方。これは何か理由があるに決まっている。

あれ、こんなに私って行動的だったっけ? イベント後のアルコールが効いているのかもしれない。けど、どうしても衝動を止めることが出来なかった。

居てもたってもいられなくなった私はホストクラブ『FAKE』の開店と同時に内勤の洋さんに詰め寄っていた。事情に詳しそうな洋さんなら何か知っていると思ったからだ。

「お願いします! シュウの事を教えて下さい」
「申し訳ございません。それはプライバシーに関わることですのでお答えすることは出来ません」

今日ばかりは隙のない佇まいの洋さんが憎らしく感じる。幾らお願いしても返答は変わらなかった。これなら幾ら喚いても同様の反応しか得られないだろう。

シュウは確かにホストとしては一流とはいえなかった。ちょっと残念な所が目立つし、ダメな所だってある。けど、私とFAKEを繋いでくれた大事な存在だし、前世ホストクラブに通いまくったダメな自分と対に位置している感じがしてならないんだ。

あーもう。どうしよう。力のない自分が、シュウを何一つ助けられない救えない自分が、悔しくて情けなくて、目の前がボヤけてくるのが分かった。あ、どうしよう。泣きそう。

途端、目の前の洋さんの顔色が変わった。今まで平然と淡々と対応していたのに、何をそんなに急に慌てた表情になっているんだろう。

「あ、あああ、都様。都様。お願いです。泣かないで下さい」
「べ、別に泣いてなんかないし……」
「では、目を擦らないで。私に任せて下さい」

洋さんの細い指が私の目尻をなぞる。人に触られるってくすぐったい。少し顔を動かせば、動かないでと静止の声。それは難しいと思っていると、今度は離れた指が戻ってきて顎を固定された。そして、真っ白なハンカチでゆっくりと目元を拭われた。

「息を吸って、ゆっくり吐いて。お願いですから落ち着いて下さい。都様に泣かれてしまっては、どうして良いのかわからなくなります」
「よ、洋さん……」

少し衝動が収まってそのまま洋さんと見つめ合う。心なしか、洋さんの顔が近づいて来ている様な気がする? そう思った時だった。突然の大声が割り込んできたのだ。

「あ――――! なんか騒がしいと思ったら洋君が都っちを襲ってる!」

セイに見つかったらしく大声で叫ばれた。我に返ると確かに距離が近い。さっきまで、私がくってかかっていたから仕方ないとはいえ、これはちょっと。慌てて距離を取る。気のせいだろうか? 洋さんは少し残念そうだ。

「え、マジ? あの洋が?」
「都が来て何かあったのか?」

セイが駆け寄ってくる頃には、騒動を聞きつけたミオとリョウもやってきた。それに普段食事を一緒に食べてたホストとかナンバー入りしてないホスト達まで鈴なりになって影からこちらを注目していたみたいだ。珍しくオープンしてから直ぐなのにお客が来てないからだろうけど。うっわーうっわー恥ずかしい。

「で? 何があったんだ?」

ミオが優しく私に尋ねた。

「それは……ええと、シュウが! シュウが辞めた理由が知りたくて。あんなにボロボロになって倒れてたんだもの、何かあったに決まってる! 私はシュウの助けになりたいの!!」

「シュウ……」

あんなに優しく問いかけてくれたのに、シュウという名前を聞くや否や、ミオは険しい顔をした黙り込んでしまった。もしかしてと思って、セイとリョウを見ても同様の反応だった。何で? どうして?

収まっていた筈の衝動が再びこみ上げてくる。

「ねぇ! どうして何も答えてくれないの! 何で。どうして!!」
「み、都っち、落ち着いて」
「落ち着けないわよ。シュウのあんな姿を見て落ち着くなんて無理……」

セイの声が聞こえてくるも、もう気にしてなんかいられなかった。目から涙が次から次へとこぼれ落ちていたのだ。私はそのまま拭うことも出来ず、ただ泣いていた。

「分かりました。お話しましょう」
「洋!!」
「シュウ本人と接触しているのです。ならば、直ぐに分かることですよ」
「…………」

リョウが止めようとしていたみたいだけれど、洋さんはこんな私に根負けしたのか話してくれるらしい。ただ、入口でいると他のお客が入ってきたら困るので、中へと促される。

いつも見ている薄暗い店内を歩く。唯一、中央に置かれた物凄く値段のするコニャック――ペルフェクションデキャンタがライトアップされているのをボーっと眺めつつ、いつもの席に通された。

「さて、どこから話しましょうか……。端的に申しますと、シュウはお客様に飛ばれ、そしてリョウのお客様に爆弾をしたのですよ」
「と、飛ばれ……ば、爆弾……」

そして近くへと立って洋さんが内部事情を語ってくれた。あの馬鹿。調子に乗るからこんなことになるんだああああああ。今度は怒りから震えてしまう。

「あぁ。都様は、馴染みの無い言葉でしたね。特に爆弾は言葉だけ聞くと物騒ですが、我々の業界でもやってはいけない行為というのが存在するのですよ」

そこからゆっくりと洋さんは順に説明をしてくれた。けど、私には一つ気になったことがある。
 
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