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ペルフェクションデキャンタ〜前世ホスト狂いが勘違いされる話〜 作者:ヨグ
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第十二話

※一気飲みはやめましょう。この話はフィクションです。

「やぁやぁ、待たせたね!」
「全くだ。ここの営業の連中はなんなんだ。全くもってなってないじゃないか」

ひゃー。連れてこられたのは、取引先の社長の所だった。こっちの社長も見事なお腹をお持ちだ。しかし、見るからに不機嫌そうだ。明らかに声は苛立ちを含んでいる。やめろおおおおお。こっちを見ないで。

「で? こっちのお嬢さんはどうしたんだ。お酌でもしてくれるのか?」

違います。それなら美人揃いの秘書課に頼んだ方が絶対良いですって! そう思っていたのが顔に出ていたらしい。咳払いをすると普通の顔に戻してくれた。

「すまん。少し酒の弱い奴ばかりでイラついてな。お嬢さんに当たるつもりはないんだ」
「いえ、気にしていませんから……」

なんだ、良い人じゃないか。そう思っていた時だ。ここぞ! とばかりに社長が割り込んできた。

「いい人材を連れてきたぞ」
「いい人材だと?」
「このお嬢さんさ! なにせここの会場の酒を全種類制覇したんだ!」
「そんな馬鹿な。……おい、コイツの言うことは本当なのか?」
「えぇ、まぁ」
「…………」

そんなに疑わなくても良いじゃないか。まぁ、けどその気持ちも分かるけど。そんな風に考えていると話がどんどん進んでいた。社長が取引先相手にさっきの一部始終を語っていたのだ。そして聞いた取引先はニンマリと笑顔になった。

「ほぅ、ほぅ。お嬢さんはワインではBの7とCの1。日本酒であるのなら、Aの3とDの5と答えたそうだね。見る目がある!! しかし、だ。それならば日本酒で同じ系統のDの2の方がグレードが上だと感じなかったのか?」
「確かにそうかもしれません。しかし、持論になりますが……―」

自分の意見を語ると、直ぐに次の質問がぶつけられる。それを横で社長がうんうんと頷いて聞いているけど、本当にわかっているんだろうか? とまぁ、そんなこんなで繰り返しそんな問答が続いた。すると、突然取引先の人が拍手をしだした。

「見事だ。君が全部の酒を飲んだ事を認めよう。酒に詳しく強いことも認めよう。申し遅れたお嬢さん私は小野寺大地おのでらだいちという」
「私の方こそ、申し遅れました朝霧 都と申します。事務員をしております」
「事務員?! 冗談だろう? 今すぐ営業に職種を変更しろ。お前とはいい酒が飲めそうだ」
「も、申し訳ありません。そういう訳には……」
「はっはっはっはっは」
「笑い事ではありません、社長」

いきなり営業にしろとは無茶を言う。そもそも変更する気なんてないし。しかし、そんな私を他所に急に上機嫌になった小野寺さんの勢いは止まらなかった。

「お近づきの印にこの酒は如何だろうか? この会場にはない新製品なんだ。是非、感想を聞いてみたい」

目の前にドンと置かれたボトル。適当な小さめなグラスを探したが見つからず仕方なしに比較的大きめのグラスに注ぎ入れる。芳醇ほうじゅんな香りが鼻をついた。グラスを手にし、そのまま液体を流し込む。うーん。美味しいし、飲みやすいぞ。

どんどんとそのまま飲み干していく。半分位まで飲むと、もう脳内ではいつものノリになってしまう。ホストクラブでのノリ。という奴だ。

それも脳内で掛け声のコーラスが駆け巡っている。実は少し酔っているのかもしれない。そのまま勢いで全てを飲み込んだ。

音を立てて、グラスをテーブルに置くと静まり返った様子だったものの、一気に場が湧いた。

「流石だよ!! 朝霧君」
「まさかとは思ったがイイ飲みっぷりだ。この度数の酒を一気とは……ははは! いいぞ! お前となら契約してやる」

え? と振り返ればびっくり。いつの間にか周囲を人が取り囲んでいた。

壁に寄りかかってぐったりしていた営業の人達も。取引先の会社の人達も。まさかのさっき席を外した事務員仲間までもが拍手喝采。え――――っ、まさか一気飲みの光景、見られてたの? は、恥ずかしいんだけど。そんな自分を他所に周囲の人は私をネタにして盛り上がっている。

「いい飲みっぷりですな」
「今度、飲み会に誘ってみますか……地味な見た目に反してやりますね、お宅の営業の子」
「違いますよー。あの子、事務員なんですよ」
『え″。事務員?!』
「俺、事務員に負けたのか……大きな契約だったのに」

まさかただの事務員がと思わなかったみたいだ。けど、それって偏見じゃない? 確かに営業は飲む機会が多いけど、だからって強い人ばっかりとは限らない訳で。

けど、今回のイベントは本来営業の人が契約を取る為に開催された様なものだから仕方ないのかもしれない。

「そんなにお酒に強いなんて全然知らなかった。朝霧さん、教えてくれたら良かったのに!」
「飲み会に誘っても来てくれないんですもん、てっきり弱いのかと思ってたじゃん」

いいえ、こっそり家では宅飲みしてました。えぇ、していましたとも。お酒はある意味タブー。飲み会は論外とはいえ、多少前世を思い出すといってもどうしてもあの味は忘れられなかった。

ホント、色々飲んだ。ホストクラブで飲むと高額だったんだけど、普通の酒屋で買うと意外とリーズナブルだったりするんだよね。

だから、今世では面白がって高くて買えなかったお酒とか色んな種類のものを楽しんでたって訳だ。

しかしながら予想外の展開ながらも評価をされるのは嬉しい。私は今度は水の入ったグラスに手を伸ばしながら大人しくにっこりと笑うのだった。
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