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ご近所トラブル@殺人鬼 作者:omg
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6/10

6話

「フンッ!.........フンッ!...........フンッ!」
現在、早朝の6時。一人の少女が、敷地内の庭で竹刀を素振りしている。竹刀を振う度に、ポニーテールにまとめている黒髪が揺れた。その容姿はまさに大和撫子というところだろうか。うなじに垂れる汗の量が、彼女の練習量を物語る。

 彼女もこのアパートに住んでいる一人だ。彼女は17歳の高校生。都内の高校に通っている。わけあって両親とは別居中である。彼女は高校で剣道部に所属しており、朝練の無い日はこうして自主的に練習をした後に、学校へと向かうのが日課だ。

彼女が素振りをしていると、前方からリサが歩いて来た。彼女は背負っている日本刀を下ろし、手に持ち替えた。
「..........ああ、サカナ。朝から元気ね。その様子を見たら男も元気になりそう」
リサは彼女の汗だくの姿を見てからかうように言う。リサを見つけた彼女は練習を一度止め、足元のペットボトルに口を着けた。

「やめて下さい。先生」

「その呼び方を止めなさい」

「先生は先生ですから。今日は稽古をつけてくれるんですか?」

「見ての通り、仕事帰り。また今度ね」

「えー」

「えー、って何よ」

「先生はそう言ってほとんど稽古付けてくれないじゃないですか」
サカナはリサの近くに歩み寄ると、リサよりも背が低いので、自動的に上目遣いになってしまう。
「お願いしますよ...........ね?」

「..........私に色目使ってどうすんの?」

「別に使ってませんから。先生がデカいんです」

「...........はぁ。良いわ。竹刀を貸しなさい。どうせもう一本あるんでしょ?」

「はい!」
サカナは小走りで、壁に立てかけていたもう一本の竹刀を持ってくると、リサに手渡す。リサは代わりに自分の持っていた日本刀をサカナに手渡す。サカナはそれをじっくりと鑑賞しながら、コンクリートの上にタオルを開いて、その上に日本刀を置いた。

「別にそこまでしなくても」

「いえ、当然の事ですよ!侍にとってこれは命なんですから」

「だから、私は侍じゃないって」

「知ってますよ。そんな事は」

「................」
「良いわ。好きなタイミングでどうぞ」
リサは竹刀を下段で構える。

「はい............では...........行きますっ」
リサに対して、サカナは竹刀を上段に構えると一歩、踏み込んだ。
「ッ!!」
上段から打ち込まれた竹刀を、リサは正面から受け止める。

サカナは力一杯押し込んだが、動く気がしなかった。竹刀で受けているのに、まるでコンクリートにでも打ち込んでいるような硬さだった。

「ここからどうする?」
リサが呟いた。

「..............こうします」
力ではやはり敵わない。なら、もっと量を打つ。早く。

サカナは踏み込んだ分一歩引くと、すぐさま竹刀を水平にし、胴を狙う。
だが、その打ち込みは簡単に避けられてしまった。
だが、サカナはそれを追従するように突きを繰り出す。狙うのは首だ。
首へと向かうサカナの突きを、体を捻って躱す。
それを見たサカナは強く踏み込んで、突き出した竹刀を素早く振り払う。

「...........」
振り払われた竹刀を、リサも強く踏み込んで弾く。

体勢を崩したサカナを見てリサは素早く、面へと打ち込んだ。
今度はサカナが上段を受ける形になる。

「くッ...........」

少しでも力を緩めると、すぐにでも手首が負けてしまいそうだ。
「...........」
サカナは思い切って力を弱めてみる。すると、リサの竹刀が滑るように右へ流れた。それに合わせて体は左に避ける。そして避けるのと同時に手首を返し、再度胴を狙う。リサの上体は前方に崩れている。

「ッ!!」
もらった。そう思ったが、リサは器用に指で竹刀を逆手に持ち替え、胴を狙ったサカナの竹刀を弾く。

竹刀を弾かれたサカナは、体を大きく晒してしまい、その隙を見逃す事無く、リサは竹刀を彼女の首に突き付けた。

「...........ふぅ。はい。稽古はここまでね」

「............」

「何よ。落ち込んでんの?」

「お腹空きません?」

「............ええ。空いたかもね」

「でもウチって今、食材切らしてるんですよね」

「へー。それで?」

「先にシャワー浴びて来ても良いですか?」
「それから先生の部屋に行きますね?」

「私に何か作れって言ってるの?」

「違いますよ。別に惣菜パンとかでも、良いんです」
「でも、私って朝はしっかり食べたくて」

「...............」
「早くシャワー浴びてきなさい。それから私の部屋に来て朝食を食べる。OK?」

「あ、ありがとうございます。先生と一緒に食べれるなんて嬉しいです」
サカナはニッコリ笑うと、リサの手から竹刀を受け取り、日本刀を手渡して、アパートに帰って行った。

「...........変な子」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


1年前。

サカナが学校から帰って来ると、アパート前でアンジーの鉢合わせた。二人はすでに知り合いだったので、軽く挨拶を交わす。
「あ、サカナちゃん。奇遇だね」

「今度サカナって言ったら、その目玉に打ち込みますよ」
肩にかけて持っていた竹刀に手を添えた。

「............ごめんなさい」

「冗談です」
竹刀を袋から出して、右手で持つ。

「............そうなの?でも止めとくね?」

「あ、ありがとうございます。優しいんですね」
右手で持っていた竹刀をそっと構える。

「..............ねえ。怖いんだけど」

「だから、冗談ですよ」
竹刀をゆらゆらと揺らし始める。

「ちょ、ちょっと!ねえ!ホントに冗談なの?」

「何がですか?」
竹刀を振るい、アンジーに当たる寸前で止めた。

「.................」

そこへアパートから出て来るリサが通りかかった。手には袋に入れた日本刀を持っている。
「............アンジー、アンタ何やったの?」

「り、リサぁ、助けてぇ」
アンジーは素早くリサの後ろに隠れた。

「何なのよ...........」

「..............」
サカナは、リサの手に持っている長細い袋をじっと見つめている。

「...........これ?」
リサはその視線に気付いて、袋を持ち上げた。

「はい。あ、千草ちぐさ 佳那かなです。103号室です」

「え、あ、ああ。じゃあ下の人ね。私は203号室のリサよ。よろしく」

「そうですか。それで、貴方も剣道を?」

「ん?剣道?...........ああ。まあ、そんなところかしらね」

「じゃあ、私とちょっと稽古しませんか?」

「...........良いけど、貴方の”それ”じゃあ、ちょっとね」
リサはサカナの竹刀を指さして言う。

「私では実力不足だと?安心してください。結構強いですから」

「.............へぇ。じゃあ、ちょっと見せてもらおうかしら」

「はい。では、行きますっ」
サカナは竹刀を構え、リサの前に立った。アンジーはその様子を見てすぐさまリサから離れる。

「いやいや。だから、私その、木の刀みたいな奴持ってないのよ」

「手に持ってるじゃないですか、おバカさんですね」

「..............」
「これは、違うわよ」
リサは袋を開ける。するとそこから出て来たのは鞘に納められた日本刀。リサは一応、鞘からも出して抜身も見せた。
「ね?だから、貴方のそれと、これじゃあ、出来ないのよ」

「............はい。そのようですね」
「私の負けです」

「は?」

「だって、そうでしょう?これじゃあ、”勝負にならない”わけですから」
何が面白かったのか、サカナは一人で笑っている。
「ありがとうございます。先生」

「先生?」

「はい。私の、剣の先生」
「私の事はサカナと、気軽に呼んでくださいね?」

それを聞いたアンジーは、思わず物陰から飛び出た。
「えー!だってッ」

「アンジーさん。何か?」
サカナはアンジーに竹刀を先を向ける。

「...........いーえ。なんでもー無いですよー」

「そうですか。じゃあ、先生?また今度稽古付けてくださいね?」
そう言い残すと、サカナはアパートの中へと消えて行った。

「............」
「変わった子」
リサはポツリと呟く。


これが、サカナとリサの初対面の瞬間である。ここからリサはサカナの先生となり、会えば稽古をつけるという間柄になった。





















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