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氷のパズル
作:天青石



Piece-2 真実


「あら、奇遇ね」



見渡す限り続く平原に、唯一存在する"高さ"を持つもの。緑のない大きな山。

そのガレキで構成された山のふもとに、二人の人間がいた。

一方は真っ赤に染まった服が見るからに痛々しい、傷だらけの少年アキラ。

もう一方は純白の作業着にサーベル装備という、違和感ありまくりな少女だ。





「私もアキラよ。アキラ・エルステッドって言うの」

少年と同じ名前、アキラと名乗った少女はサーベルを収め、質問を続けた。

「あんたはなんて呼ばれてるの?私は"アキラ"って呼ばれてるけど」

「僕…?僕は…僕もアキラって呼ばれてるよ…」

「はぁ?それじゃあ被っちゃうじゃない」

アキラ(♂)が答えると、アキラ(♀)は即座にそう言い捨てるなり黙り込んだ。




少しの間をおいて、彼女は再度口を開く。

「あんたは…そうね、苗字は氷室でしょ?だったらあんたは今からアイス!」

なんて安易かつ適当な提案だろう、とアキラ(♂)は思った。しかも命令形だ。

彼は不快に思い反論しようとしたが、そうする前に彼女が第二言を発しそれを遮る。



「どう?氷室だからアイスルーム、それじゃ長いからアイスにしたみたのよ!ついでに言うと私の好物の"アイスクリーム"からも取ったかな? あんた、もしかすると嫌だなんて言わないでしょうね? 言わないわよね?」

長いセリフを彼女は一息で言い切った。やはり命令形な上に威圧まで付け足してあった。

どうやら自分の考えは何が何でも通す性格のようだ。





言い終えたアキラ(♀)を見て、ずいぶん勝手な事を言ってくれるな、とアキラ(♂)は思ったが、反論するような気力も有力な理由もなかったので、苦笑しつつも素直に受け入れることにした。

「わかったよ…アイス、アイスね…」

「よしっ、決まり。これで混乱は避けられるわ」





話が一段落したところで、今度はアキラ(♂)改めアイスがアキラに質問した。

「そういえば、ここはどこなんだい?君は何者?そのサーベルは何?」

次々に飛んでくるアイスの質問に対し、アキラはすらすらと答えていく。



お陰で彼はここはエリニア平原で、彼女は近くのエリニア町の住人だというのが分かった。

それとここへすぐ来れたのは、彼女が住んでいるのが町の外れでここに近かったからということも。

彼女のサーベルは護身用で、やたらと大きいのにはちゃんとした理由があるらしい。




今までは質問に流暢に答えていたアキラだったが、

アイスが「何で僕はこんなところに来たんだろう?」という質問をした途端、

「えっ?………あー、あれは…………………………」と突然口ごもってしまった。



彼女はいろいろと思考を巡らせているような表情をしていたが、結局は

「その辺の話は整理がついたらまとめて話す」とだけ言って口を閉じてしまった。

何となく重そうな内容のせいか、長くなりそうな沈黙の時間がスタートする。





「………………………えーっと」

しばらくして、そんな空気が苦手なアイスは話題を変えることにした。



「痛てて…。それにしてもひどいな。全治何週間…いや、何か月かかるやら…」

アイスはそう呟き軌道修正。そしてそれに対しては即座に回答をするアキラ。

「何言ってんのよ。30分もあれば完治するわよ」



答えた直後、あっ、というような表情をしながら彼女はアイスの方を振り向き

「そういえば治療を忘れていたわ」

と言いつつアイスに向かっていきなり両手を突き出した。

「へ?30分? それって一体― 」

「はっ!」

言い終わるより前にアキラの手から「光の帯」が生み出され、彼を包み込む。



「へ?あ?うわぁっ!?」



アイスは膨れ上がった山吹色の光の中にすっぽりと納められた。

思いがけないことに驚き、とっさにアキラに問いかける。

「いいいい一体これは!?何をして!?」

「回復術、ヒーリングよ。動かないで」

彼女は質問に簡潔に答えると、意識を集中させ治療に専念し始める。



アキラが出した光は強烈で、直視できないほどだった。

傍から見るとまるで彼が発光しているようにも見え、

まるでその場所に小さな太陽が作られたように感じられる。





アイスは全身にビリビリとした痺れたような感覚が走るのを感じた。、

そしてそれに呼応するかのように痛みが和らいでいき、傷口もみるみるうちに塞がっていく。

彼は直感的に細胞が活性化されているのを感じ取ることができた。



その時アイスは一つの事に気付いて、再度アキラに問いかけた。

「あの」

「なによ。集中力が要るんだから話しかけないで」

「何でわざわざ起こしてから治療してるの?起こしたら痛―」

「それは、助けたのが私っていう証明をするためよ」

「……………………………そうですか」

「そうよ」

「…………」

アイスはアキラのことが、すごく非常識な人に思えてきた。





30分もすると、アイスの体は完全に治っていた。

無理矢理回復速度を上げたので疲れはあるが、傷のほうは跡形も残っていない。



「すごい… 君って魔法使い?」 と思わず呟くアイス。だが、

「何言ってるの?この世界じゃこんなの普通よ」 とアキラは答えた。



「いや、僕はそんなの使えないし、使っている人を見た事もないよ」

アイスは何を言ってるんだろうと思いながらそう反応したが、

「当たり前でしょ。あんたたちの世界じゃ使える人はいないわ」

そうアキラは当然のように答えた。ついでに

「あんただって、すぐ使えるようになるわよ」と言い放つ。



そのせいでアイスの頭は完全に混乱してしまった。

「え?待って、なんか割れて、気が付いたらここで、魔法?世界?あれ?」

そんな彼の様子を見て、アキラは溜め息まじりに結論を教えてやった。



「ここはアンタがいた世界じゃないの。別世界なのよ」















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