俺の名前は貫太。
三人の家族と一緒に暮らしている。
ちなみに無職だ。
それでも家族はそんな俺を可愛がってくれている。
静かに待っていれば毎日必ず食事を貰える。
食事が終われば後はゴーロゴロ。
適当に家族の話を聞いて相槌打っとけばそれでOK。
便所でクソをたれても勝手に掃除してくれる。
昼間はみんなクソ真面目に仕事に行って誰も家にいない。
故にこの家は俺の城みたいなもんだ。
夏はエアコンガンガン効かせて汗知らず。
冬はこたつに入ってヌックヌク。
ストーブ点けて正面に独占だ。
夜も本来が外客用に買った高級ソファーを奪い取ってグースカピー。
いやいや毎日快適だ。
他に望む事など何も無い。
強いて言えば家族の人間がちょっと口うるさい事かな。
何故か礼儀や規則には厳しくやたらとうるさい。
腹が減ってるのに全員揃うまで『待て』と言われて食わせてくれない。
風呂なんか大嫌いなのに月に一回は無理矢理入れられる。
うるさくするとすぐに怒られる。
全くいちいち口やかましいもんだ。
俺よりもペットの方が余程うるさいだろうが。
あぁ、そうそう。
仕事といえば一つ家族に頼まれている事がある。
犬の散歩だ。
家には二匹の犬がいる。
名前はリョウタとシュンスケ。
犬種はミニチュアダックスフンドと言うらしい。
困った事にこの二匹が笑ってしまうぐらいに頭が悪い。
リョウタは一日中家の中を走りまくって悪さをする。
そのたびにいつも主人に怒られてケツを叩かれている。
シュンスケは表面こそ静かで忠犬気取っているが腹黒い。
いつも家族がいない所でぬいぐるみを引きちぎったりする。
この前は俺が入った後のトイレをグチャグチャにしてみんなを困らせた。
主人の心犬知らずとは正にこの事だ。
このバカ二匹を散歩に連れて行ってやらないと家の中で平気て『アタ』をする。
その防止の為に二匹を散歩に連れて行くのが俺に与えられた唯一の使命だ。
夏ならまだ夕方には涼しくなるからいい。
しかし冬はイカン。
手足がしばれて外に出るのすら億劫だ。
しかもこの二匹が春夏秋冬お構い無しで走り回ってくれる。
俺はいちいち走りたく無いんだよ。
お前らのペースに付き合わされる俺の身にもなってくれ。
しっかし本当にコイツらは気楽だよな。
飯貰って散歩行って後は家でグータラ。
お犬様天国もいいとこだぜ。
ふぅ。
そういや腹減ったな。
もう夕方か。
さてそろそろこのバカ達と一緒に散歩に行く時間だな。
おっ。
言ってる間に家の一階から人が上がってくる。
いよいよ出番か。
しゃーねーな。
俺も食わせて貰っている身分だから文句言えねーし。
「リョウタ、シュンスケ、カンタ! 散歩だ散歩! さっさと行くからついて来い!」
やれやれ。
お兄ちゃんに言われたら逆らえないもんな。
いつも頭撫でて可愛がってくれるし。
寂しい時とか寒い時には膝の上で抱っこしてくれるし。
おいおい何だよ犬二匹。
俺を出し置いて先に玄関に行くなって。
「雨降ってきそうだから散歩簡単で良いわよ」
「はーい、じゃあ母さん行ってきます」
俺は人間の中でも一番小さい『チワワ』と言う種類らしい。
この犬二匹より俺の方が小さいのが気になるがまぁいいか。
毎日の散歩はかったるいけど外で用を足すのは何か爽快だしな。
散歩帰ってきたらビーフジャーキー食べてまたボールで遊んで貰おっと。
しかし、人間とは実に気楽な生き物だ。
生まれ変わったらまた人間に生まれてきたいものだ。
ワンワン!
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