ハァ、ハァ……誰か助けてくれ
もう一日中、私は森の中から追い掛けてくる物から逃げている。
なぜこんな事になったのか?
それは、私の彼女がテントの中で何物かに殺されていた事から始まった。
彼女と私は、その日森にキャンプに来ていた。
私は彼女に聞いた。
「なんで今キャンプなんだ?」
彼女は驚いたようにいった。
「何言ってんの?あんたがキャンプ行こうって言ったから、こうして来たわけじゃない。」
私はそんな事言った覚えはなかったが、
忘れてしまっていたんだと自分にいいきかせた。
しかし、さすがに季節が季節なだけに、私達のほかにキャンプに来ている人はいなかった。
キャンプはなんのへんてつもなく、時間だけが刻々とすぎていった。
そして夜になった、やはり電気がないと何もできない。彼女は何も言わず、私より先に眠ってしまった。
私も眠ることにした。
そして私は指先のヌルッっとした感覚に目が覚めた。
それは血だった。
そう、それは彼女の血だ。
彼女は死んでいたのだ。
私は混乱した。なぜ彼女が死んでいるのか?いつ死んだのか?
すると突然耳鳴りがして、声が聞こえた。
その声は恐ろしく低い声だった。
「男の方も殺すか」
その声を聞いて私は森へ走って逃げた。
訳もわからずただ必死で逃げた。
奴の息遣いがすぐ後ろにきこえる。
恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い………
私はただ無心で走るしかなかった。自分が今森のどの位置にいるかなんて考える暇はない。
奴は恐るべき早さで追ってくる、考える暇があれば走って逃げなければならない。
そうして私は一日中走った。
「ハァ、ハァ……誰か助けてくれ。」
私はその場に倒れた。
私の人生はこれで終わりだ、奴に殺されて死ぬのか。
私はそのまま眠りについた。
しかし私は生きていた。
奴は私を殺さずに生かしておいたのか?
多くの疑問が私の頭の中に浮かんだ。
しかしどれも答えは見つからなかった。
すると遠くに人影が見えた。
「奴か!」
私は最初そう思ったが、違った。
その人影は警察だった。
私の目の前が光輝いた。
私は急いで警官に駆け寄った。
警官も私に気が付いた。
微笑んで私を迎えてくれた。
助かった。
《ガチャン》
私の手首に手錠がかかる。
そして警官が言う
『小野寺 豪、貴様を殺人容疑で逮捕する。』
後ろで奴が笑っていたように思えた。
私は刑務所でわなく病院に送られた。
精神病院だ。
白衣の女医が私に言った。
「貴方は多重人格障害なのよ」
「違う!私はまともだ!彼女を殺してない。奴が彼女を殺したんだ。」
「奴って誰?姿をみたの?」
そう言われれば、私は奴の姿を一度も見ていなかった。
突然記憶がよみがえる。
私が楽しそうに何かを追い掛けている。
体中血塗れだ。まるでケダモノ。
「貴方が奴て言ってる存在が貴方なのよ」
私は叫んだ。
「それじゃ、私は一日中、自分から逃げるために必死に走っていたと言うのか!」
そして記憶が途絶えた。
目が覚めた時には、目の前にいた女医が舌を出して死んでいた。
耳元で奴の声が聞こえた。
『よう兄弟、また〈追い掛けっこ〉しようぜ……』 |