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HUNTERS
作:グリコ



第三話:始まり


「な…何?」

ライオンを見て初めに口を開いたのは俺ではなくケイトだった。

「…クッ…アハハ!」

すると目の前で唸っていた獣は急に笑い出して、次に光った。

「思ったとおりだ、この小僧。素質がある」

獣は…男になった。堀の深い顔立ちに、短く無造作に跳ねた黒髪。ガッシリとした肩幅に高い背。そしてケイトやクリスと同じ黒い制服。

男は、尻餅をついた格好で固まっていた俺に手を差し伸べた。

「俺の名前はロイス・ターキン。お前は?」

「林 大和(ハヤシ ヤマト)

「そうか…ヤマト。確か…日本の、戦艦の名前だよな。いい名前だ」

「…」

手を握り、フッと笑みを漏らした。この男は、何か人懐こさというか温かみに包まれている。

ようやく俺は少し安心した。すると目の前で雄雄しく立っていたライオンは一瞬で消えてしまった。

「それはそうと…ケイト。クリス。日本での任務は完了したのか?」

尻についた泥をはらいながら、男に名指しされた二人のほうを盗み見た。命令口調…この男、偉い人なのか?

「ハイ…もちろんです、隊長。しかし…後で少しお話をする事が」

ケイトは地面に目線を落とした。それを見た男は、こめかみを指で掻きながら気楽そうに言った。

「ん、分かった。で──小僧、じゃなかった、大和!こっちだ、来い!」

隊長…何かの偉い人だと分かって、また俺は少し緊張した。





森を歩いていくと、急に頑強な塀に囲まれた灰色の建物の一部が現れた。背の高い木々に囲まれて、今まで見えなかった。

建物を囲む塀にはどこにも入り口らしき場所はなった。どこから入るのだろうかとキョロキョロしていると、正面に何か小さいセンサーのような突起部位があるのを見つけた。ロイスがそれの目の前に立つと、センサーから声が発せられた。

『──合言葉を』

「ウルブ」

まるで常識を聞かれた大人のように、ロイスは億劫そうに言った。

『…認証しました。次にアイ・センサーを起動します』

すると機械は突起した部位がさらに持ち上がり二対の細い金属が出てきた。その二股の金属はロイスのこめかみをそっと押さえ、中心から発せられる赤い光線をロイスの目元に当てた。

『…認証しました。団員ナンバー1、ロイス・ターキン隊長。本部へお入りください」

「どーも」

ガラガラと塀が開き、ロイスはズコズコと入っていった。俺は塀の中に入った瞬間、その巨大さにため息が出た。

見えていたのは本当に建物の一部だったらしく、塀は恐らく何ヘクタールもある建物を囲うように永遠と続いていた。



「素質があると分かったからには、もうそろそろ話してもいいだろう?」

応接間のような広い部屋で、ロイスは尋ねた。

フカフカの白いソファにロイスと共に座っているケイトは深く頷き、クリスは窓の縁に座って空を見上げていた。その端正な横顔は、男でも見惚れる程であった。俺は沈み込むソファに少し嬉しくなった。

「では…何から聞きたい?大和」

「…ここはどこですか?」

それが、まず最初に聞きたい質問だった。日本からどれだけ離れた位置に居るのだろう…

「ここは、リノ島。世界地図には描かれていない、秘密の孤島だ」

「リノ島…」

「リノ島は太平洋のほぼ真ん中に位置する。どこの陸地からも遮断されていて…ハンターズの団員しか知りえない孤島だ」

「太平洋の真ん中!?」

そんな孤島に、先ほどまで普通の日本の高校生だった俺が居る等…到底納得できるわけなかった。

「ああ。まぁ…嘘か本当かは時期に分かる」

不満そうな俺の表情を汲み取ったのか、ロイスはニヤリとして言った。

「……じゃあ、ハンターズって何ですか?」

何度も会話に出るその言葉。知らないなんて分が悪すぎる…俺は口を尖らせた。

「…ハンターズが、何か…か」

しみじみとした口調で、ロイスはケイトと目線を合わせた。部屋の中が、独自の静けさに佇んだ。

「…?」

「ハンターズとは、一言で言えば『死に囚われた者の集団』」

──ドキリ、とした。死なんて言葉…何年ぶりに意識しただろう。俺を可愛がってくれた爺さんが…亡くなってからか……

「大半の団員が『MAに大切なモノを奪われた』という理由でハンターズに入っている。他に能力のあるものが居れば、我々は世界中からスカウトしてくる」

なんだか、恐ろしい理由だと思った。

「そう、なんですか。…では、その…MAというのは一体…」

「MAが何かを知りたいならば、身をもって知ることだ!」

カチャ、という音がして持っていたカップを机に押し付け、ロイスは言った。鋭く細い目に怒りがこみ上げているのが分かる。

「……悪い。他に何か聞きたい事はあるか?」

「ありません」

ロイスがソファから立ち上がったのが合図のように、クリスとケイトも立ち上がった。

「そうか。なら、お前には今日から寮で生活してもらう。相部屋は…ケイト、頼む」

「ハイ」

ケイトは素早く上がり俺を見て、微笑んだ。俺は心臓が高鳴るのを感じた。この子と…同じ部屋で暮らすのか…?

「大和、くれぐれも勘違いするなよ」

それを察知したクリスはケイトと俺の間にその体を割り込ませた。

「俺が、お前らの部屋の鍵持ちだ」

「……」

甘い話には裏がある、か。

























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