私は、罪を犯した。
罪を犯したからには、罰を受けねばならない。
彼が下した罰は、懲役5分。
彼の大きな腕の中に、閉じ込められる。
行きかう人ごみの中で。
すごく強く。
だけど、優しく。
「・・・本当に心配したんだ。」
私の罪は、待ち合わせの遅刻2時間だ。
こんなに遅れたのは、初めて。
病院が込んでいたんだもの。
携帯の電源も今日に限って切れていたんだもの。
連絡を取ろうにも、取れなかったの。
だけど、言い訳はしなかった。
罪は罪だ。
私は彼の胸の中に顔をうずくめる。
「・・・ごめんね。」
懲役を受ける限りは、反省しなければならない。
彼の腕の中から、赤ん坊を抱いた若い夫婦が見えた。
すごく、幸せそうな、笑顔。
すごく、幸せそう。
・・・・私たちも、あんな夫婦になれるかな?
・・・・なりたいな。
今なら言えるかな?
言ったら、驚くかな?
言ったら、驚くだろうな。
「・・・あと、1分。」
彼の腕の中は、信じられないほど、心地いい・・・
あと、1分。
この温もりがあれば、生きていける。
だから、今なら言える。
本当は、すごく怖いけど。
「・・・ごめんね。もう、別れよ・・・」
・・・・0分。
彼は、本当に、驚いている。
でも、ごめんね。
本当に、ごめんね。
なんか、もう、治らないらしいよ。
本当にびっくりしたよ。
もうすぐ、死んじゃうんだって。
・・・・・・私。
あなたは罪を犯してないんだもの。
懲役[私の居ない時間]なんて、そんな刑に服す事ないよ。
だから、何も言わずに、別れようね。
「・・・・さよなら」
本当に幸せだったよ。
完
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