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たとえばあたしの初恋模様
作:一河善知鳥


夕日、風、机といす、カーテン、そしてあたし。あたしは今、教室って場所に立っている。スカートから伸びるよわっちい脚をがくがくさせて。
 時計の音が心臓のどきどきと混ざって時間の経過がよくわからない。今日の放課後。五時ちょうどに教室。
「あのさ、今日の放課後、話したいことがあるんだ…」
そう、クラスで一番―少なくともあたしの中では―かっこいい子に呼び出された…というわけではなく、あたしがもう気持ちを抑えられなくなって呼び出しちゃったのだ。もう気分はクラスで一番可愛いのはあたしって感じでいなきゃ平然を保ってすらいられない。だって、これがあたしの始めての告白。十五歳になったあたしの、遅めの初恋だ。

「あ。おう!」

「…う、おう」

「大丈夫?なんか顔引きつってるけど」

「緊張してるんだ」

「え、何に?」

…それって、気づかないふり?

「孝くんと二人っきりだから、じゃん?」

「そんなこといったら、俺だって緊張しちゃうじゃん」

「ほんと?」

「うん」

「それって、なんで?」

「なんで?…って、やっぱ女子と二人きりって照れるじゃんか。誰かが通ったら勘違いしそうだし」

「いいよ、されても。てか、されたい!」

「え?ちょっと、待って。それってさ―…」

「好きです。すごく」

「…そっか」

やっぱり、彼はすごいこういうことに慣れている。だって、真っ赤なあたしの顔を見てもいたって冷静。

「まぁ、届かない夢だよね」

「ええ?…まぁ、だけど俺…好きな人いるしなぁ…」

否定、しないか。

「でも、すっきりしたから、もういいや。聞いてくれてありがとね」

「うん…」

うん、って返す言葉がなくなっちゃうじゃん。

「…」

「…」

「……」

『…ねぇ?』

「あ。…いや、そっちから言ってよ」

「っと、俺…ちょっと帰らなきゃだわ。そろそろ」

ちょっと帰るって、いっぱい帰ってもいいのに。

「…そっか」

だけど、心のどっかであたしは「お前先に言えよー」「ええ?そんなのずるいよ」みたいな展開を期待していた。残念。…すごい遠慮した君の顔みたらもう、残念って言うしかないじゃんか。

「それじゃあ、また、…明日な」

「うん…、ばいばい」

彼が去ってしまった教室であたしはちょっと泣いた。夕日、風、机といす、カーテン、そしてあたしとシャボン玉みたいに大きな涙。でも、なんだかすぐに立ち直れた。いつまでも泣いてたら日が暮れるから。日が暮れたら学校って怖いから。あたしは歩き出した。
 そして、湿ってしまった教室をでたときにふと思った。

ははーん。これが初恋ってやつか(フラれたけど)。














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