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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、海に行く

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90 クマさんの知らないうちに事件は起きていた。その2

【商業ギルドマスター視点】

 どう言うことだ。
 宿屋にいるガキの女を襲わせた冒険者が戻ってこない。
 他の部下に、宿屋の様子を見に行かせたが、静かなものだと言う。
 もしかして、金を払ったのに、襲いに行かなかったのか。
 それしか、考えられない。
 翌朝、部下の一人が商業ギルドにある俺の部屋に入ってくる。

「ギルマス」
「どうした」
「昨日、宿屋のクマの少女を襲いに行った冒険者が、今朝捕まりました」

 こいつ何を言っているんだ。襲うように言った時間は夜中だぞ。それが、なんで今朝捕まるんだ。

「今朝で間違いないのか」
「はい。今朝、宿屋から冒険者ギルドの職員に連れて行かれるのを見ました」
「あいつら、今朝、襲いに行ったのか」

 それなら昨日の夜に戻らなかった理由は分かる。
 だからと言って、早朝に襲いに行くか?
 それで捕まるとか馬鹿だろう。
 だから、俺の指示に従わない馬鹿は嫌いなんだ。
 そのせいで、俺が疑われることになるんだぞ。

「どうしましょうか」
「ほっとけ」
「ですが」
「あいつらから、俺の名前を出しても証拠はない。濡れ衣と言えばいい」

 失敗したから、次はもう襲えない。
 使えない冒険者どもだ。
 問題はガキの女が、あと、どれだけ食材を持っているかだ。
 多くはないはずだが、面倒だ。

 コンコン
 ドアがノックされる。

「なんだ」

 職員が入ってくる。

「冒険者ギルドのギルドマスターが来てます」

 やっぱり来たか。
 部下を部屋から追い出し、職員に言う。

「部屋に通せ」

 部屋に胸を強調した服を着た女が入ってくる。
 冒険者ギルドのギルドマスターのアトラだ。

「久しぶりね」
「それで何のようだ」
「昨日の夜、宿屋で冒険者が襲われたんだけど、何か知らないかしら」

 昨日の夜?
 今朝、捕まったって聞いたが。

「知らんな」

 とりあえず、知らないフリをする。

「襲ったのは、最近、この商業ギルドに出入りしている冒険者なんだけど」
「だからと言って、俺が全ての冒険者の行動を知っているわけじゃないぞ」
「でも、捕まえた冒険者が言うには、あなたの指示を受けたと言っているのよ」
「知らんな。どうして、知りもしない冒険者を俺が襲わないといけないんだ」
「ウルフを奪い取るためでしょう」
「もしかして、貴様の冒険者ギルドで大量のウルフを配布をしたのは、その冒険者なのか」

 知っていたが、いかにも、今知ったように言ってやる。

「ええ、とっても可愛らしい冒険者よ。そんな彼女が襲われて、わたし、かなり怒っているんだけど」
「なら、その捕らえた冒険者を処刑にでもしたらどうだ」
「あくまでも、自分は関係無いと言うのね」
「もちろんだ。俺もいつ襲われるか分からないから、そんな冒険者はすぐに処罰することを勧めるよ」
「分かったわ。また来るわ」

 来ないでいい、と心の中で呟く。
 アトラは帰ったが、このまま終わるとは思えない。
 あのギルドマスターは何を考えているのか分からない。
 そろそろ潮時かもしれないな。
 町を出ていくなら早い方がいい。
 あと、1ヶ月儲けたかったが仕方ない。
 これも、馬鹿な部下とクマの格好をした女のせいだ。
 俺が盗賊と繋がっている事を知っている、3人の部下を呼び集める。
 俺が裏で何をやっているか知る者の数は少ない。
 少ない方が情報は漏れないし、処分するのも楽だからだ。
 少々予定が早まったがこの町から出ていくことを3人に伝える。
 3人には今夜にでも町を出て、ボーグに合流するよう言う。
 3人が町を出る同時刻に商業ギルドで得たお金を俺が盗み、3人が盗んだようにみせるつもりだ。
 そして、ボーグと合流した3人は盗賊に殺される手はずになっている。
 死体が道に転がっていればお金は盗賊に奪い取られたことになるだろう。
 そうなれば、商業ギルドで得た金は俺の物になる。

「俺は一度家に戻る。すぐに戻るから、お前たちも準備をしておけ」

 俺は家に戻り、金目の物をアイテム袋に仕舞っていく。
 中には町から逃げ出す住人から、奪った物もある。
 町の物は俺の物だから、何も問題はない。
 ボーグは金と女しか興味が無く、それだけを渡しておけば扱いやすい馬鹿だった。
 まあ、あいつはお金以外の貴重品は売り捌くルートは持っていないだろうし。宝石の価値をあいつに言っても無駄だからな。

 家の中の金目の物と食料をアイテム袋に仕舞い込むと商業ギルドに戻る。
 何やら、商業ギルドが騒がしい。
 なんだ?
 俺がいない間に何があった。
 職員たちの顔を見ると笑顔が見える。

「どうした?」

 近くにいる、嬉しそうにしている職員に聞いてみる。

「それが、盗賊が討伐されたそうです」

 なんだと、

「これで、道が通れるようになります。そうすれば食料も入ってきます。もう、こんな生活から抜け出せますね」

 職員は嬉しそうに話す。
 ふざけるな!
 盗賊が討伐されただと。
 それが本当なら、部下の3人の処理が出来ない。
 それよりも問題は、

「盗賊はみんな死んだのか?」

 死んでいれば、何も問題はない。
 死人に口無し。

「盗賊は捕まったみたいです。しかも、ほとんどの盗賊がこの町の冒険者だったらしくて。現在、冒険者ギルドのギルドマスターが詰問しているそうです」

 生きているだと!
 それはまずい。
 全員が俺の指図だと言えば、流石に言い逃れも難しくなってくるぞ。
 何か、いい方法は無いのか?

「しかも、倒したのがクマの格好をした女の子で、しかも、見てきた子が言うには可愛い女の子だって言ってましたよ」

 また、熊か。
 いったい何者なんだ。
 ウルフの肉を大量に持ち、それが入るアイテム袋を持ち、早朝に襲ってきた冒険者を捕まえ、盗賊まで倒すってどんな熊だ。

「ギルマス。これで、ギルマスの考えが実行出来ますね。肩身の狭い思いをしてきましたが、これでどうにかなりますね」

 この一ヶ月、俺はギルド職員を命令を従わせるために嘘の指示をだした。
 まず、食材を高く売るのは今後盗賊がいなくなったときに大量の食材を仕入れするためだと。またはクラーケンを討伐するための依頼料にするためと。
 それで馬鹿な職員は半分は信じた。
 職員は俺の指示に従い、食料を金持ちを中心に売って、お金を稼いできた。
 でも、それだけだと残りの職員からも住人からも反発は起こる。
 貧乏人には食材が回らなくなる。
 貧乏人がいくら死んでも俺は痛くも痒くもないが、うるさいので、金にもならない貧乏人には痛んだ魚、ウルフや動物の人気がない部位を渡してやった。

「ギルマス?」
「何でもない。とりあえず、冒険者ギルドの報告待ちだ。もしかすると残っている盗賊もいるかもしれない」

 あいつ(ボーグ)がやられるとは思えない。

「そうですね。もし派遣をして、盗賊が出てきたら困りますからね」

 職員は納得して、引き下がる。
 俺は商業ギルドにある自分の部屋に向かう。
 いいアイディアが浮かばない。
 最低でもボーグが捕まって無く、約束の場所にいないといけない。
 もしくは、部下の3人は俺が殺すか。
 行動するにしても情報が少なすぎる。
 だが、時間が経てば、俺の逃げ場がなくなる。
 考えているだけで時間が進んでいく。
 考え事をしているとドアがノックされる。

「なんだ」
「冒険者ギルドのギルドマスターが来ました」

 もう、来やがったか。
 暇な奴だ。

「それじゃ、ここに案内しろ」
「それが、外に来て欲しいとのことです」
「どうしてだ?」
「それが・・・・」
「わかった。俺が行けばいいんだな」

 外に出ると、俺が雇った盗賊が、雁首がんくびを揃えて並んでいた。
 全員が縛られ、口も塞がれている。
 これを見せるために、俺を外に呼んだのか。
 盗賊の顔ぶれをみるとそこにはボーグが・・・・ボーグ?
 体格、全てがボーグを示しているが、顔が酷いことになっている。
 しかも、あのボーグが大人しく地面に座っている。
 俺が知っているボーグなら、暴れているはずだ。信じられない光景だ。
 そんな中、アトラが先頭に立つ。
 うん? アトラの後ろに、小さな黒い物が見える。
 熊?
 そこには小さな女が熊の格好をしていた。
 もしかして、噂の熊か? こんなガキに、盗賊団がやられたのか。
 もう、笑うしかない。こんな変な格好をした女に、俺のシナリオが壊されたのか。
 笑いをかみ殺して、何もないように尋ねる。

「これが盗賊たちですか?」
「そうだ。皆、貴様に雇われたと言っている」
「知りませんね」
「まだ、しらを切るのか」
「知らないものは知らない」

 盗賊たちが俺を睨んでくる。
 捕まるなら死んでくれればよかったのに。

「それで、貴様、そんなに大きなアイテム袋を持ってどこに行くんだ」

 いきなり話を変えてきたが、なんでだ。
 もしかして、つけられていたのか。そして、俺が家の中でしていた行動も知られているのか。
 アトラの眼を見ると、確信がある眼をしている。

「仕事で使うだけだ。おまえには関係ないことだ」
「ほう、そうか。なら、その中身を見せてもらおうか」
「断る。どうして、貴様に見せないといけないんだ」

 やっぱり、知ってやがる。
 中を見られたら言い逃れが出来ない。
 盗んだ物が沢山入っている。

「わたしが全責任を持つ! ザラッドを捕まえろ」

 逃げ出そうとするが、元冒険者の冒険者ギルドの職員からは逃げ出すことは出来ない。

「やめろ!」

 アイテム袋を奪い取られ、動きを封じられる。

「それじゃ、中身を見させてもらおうか」

 アトラは剣を突き出し、俺のアイテム袋を突き刺した。
 その瞬間、アイテム袋に入っていた全ての物がぶち撒かれた。
 それを見た住人が騒ぎ出す。




【ユナ視点】

 わたしはアトラさんに連れられて商業ギルドにやってきた。
 わたしは必要無いと思うけど。
 なんでも、捕らえた盗賊団を商業ギルドに連れて行きたいと言い、わたしが盗賊と一緒にいると大人しくなると言う。わたしは猛獣使いか。
 連れていく理由は、相手の反応が見たいため、と言っていた。
 たしかに、ブリッツたちの知り合いの顔を見た瞬間、表情が変わった。
 殴り過ぎたかな?

 一瞬、わたしの方を見て笑ったように見えた。でも、それは一瞬のことで、アトラさんの方を向き、言い争いが始まった。

「わたしが全責任を持つ! ザラッドを捕まえろ」

 冒険者ギルドの職員が動き、アトラさんが剣を抜き、小太りの男が持っていたアイテム袋に剣を突き刺した。
 その瞬間、アイテム袋が壊れ、中に入っていた物が地面にバラ撒かれた。
 アイテム袋が壊れると、中に入っているアイテムが外に出るんだ。
 まあ、壊れたら、中身が取り出せなかったら困るもんね。

「おい、なんだ。この量は」

 地面にはお金になりそうな物がたくさん落ちている。

「あれ、ドモンさんの家で見たぞ」
「あれはドージュさんの」

 住人たちが騒ぐ。
 たくさんの物が落ちている中、地面に小さな袋から、赤い宝石の指輪がこぼれ落ちていた。
 それを見た一人の女性が小さく呟く。

「それはわたしの・・・盗賊に捕まったときに奪い取られた指輪・・・」

 その女性は盗賊に捕まっていた女性の一人だった。
 駆け寄って、大事そうに指輪を握り締める。
 目から涙がゆっくりと流れ落ちる。

「サイ・・・」

 名前を呼ぶ。
 そして、立ち上がり、叫ぶ。

「サイを返して!」

 ザラッドに近づき、顔を殴る。

「あなたが盗賊に命じて殺させた、サイを返して・・・・・・」

 女性は泣き崩れる。
 それを見た住人たちの怒りが爆発する。
 石がザラッドに向けて飛んでくる。
 それは顔に当たり、体に命中する。その石はザラッドを押さえている冒険者ギルドの職員にも命中する。
 でも、飛んでくる石は止まない。
 ザラッドの顔からは血が流れ落ちる。
 それでも、住人は石を投げるのを止めない。
 商業ギルドの職員は茫然と立ち竦んでいる。

「やめろ!」

 アトラさんが叫ぶ。
 その叫び声で、石は止まり、住人は静かになる。

「ザラッドの処分はわたしが責任を持っておこなう。冒険者ギルド、ギルドマスターの名にかけて」



 
やっぱり、ユナが出てこないと書いてて詰まらない。
+注意+
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