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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、海に行く

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87 クマさん、ウルフの在庫処理をする

 アトラさんから盗賊の話を聞くと。
 盗賊の人数は二十人以上。
 人相は顔を隠しているため分からない。
 護衛が就いている場合は襲って来ない。
 護衛無しだと襲われる。
 強さは戦った者がいないため情報は無し。
 盗賊は山から見張っている。
 アジトは山のどこかとしか分からない。まあ、それは探知魔法を使えばいい。

「捕まっている人は居るの?」
「たぶん、女性が捕まっているわね。男の死体だけが残されていたから」

 その言葉で安心して殺せるね。
 お金だけなら半殺しで許してあげたけど、男は殺し、女は連れ去る。
 十分にわたしの怒りのリストに入る。

「でも、本当に一人で倒しに行くの? ギルドカードを見る限り大丈夫だと思うけど」

 心配そうに気遣ってくれる。
 身長は低い、性別は女、可愛らしいクマの着ぐるみを着ている。
 まあ、見た目はか弱そうな女の子だからね。

「只今、戻りました」

 アトラさんと会話をしていると男性ギルド職員が帰ってくる。

「お帰り。収穫はどうだった?」

 アトラさんが職員の仕事の成果を尋ねる。
 ギルド職員が首を横に振る。

「ウルフが一匹だけです」
「足りないわね。他のメンバーは?」
「芳しく無いと思います」
「そうよね」

 先ほど言っていた山に狩りに行っていた職員みたいだ。
 そんな職員を見ていたら職員と目が合う。

「ギルマス、こちらの可愛らしい格好をした女の子は誰ですか」
「冒険者のユナよ。昨日、この町に来たそうよ」
「冒険者ですか。僕は冒険者ギルドで働いているセイと言います。よろしくお願いします」

 職員はわたしの見た目に拘わらず、丁寧に挨拶をしてくれる。

「ウルフ、欲しいの?」
「さっきも言ったけど、この町は食料不足だからね」
「ウルフでよければ提供出来るけど」
「本当? 助かるけど。でも、自分の食べる食料もあるでしょう」

 この町では食料を手に入れるには難しい。
 それを心配してくれている。

「問題ないよ。ただ、わたしが提供したことは黙ってて欲しいけど」
「構わない。誰にも言うつもりはないわ。セイ、あなたも黙っておくのよ」
「はい、わかりました」

 黙っておいてくれることを引き換えにウルフを提供することにする。
 在庫処分。
 このウルフ五千匹が意外と減らすことができない。
 下手に売ることも出来ない。大量に売れば街の価格崩壊を起こす可能性もある。
 無料で配布なんてすれば、ウルフで生計を立ててる低ランク冒険者が困る。
 必然的にクマボックスの肥やしとなっている。

「それじゃ、ウルフを千匹ほど出すけど、どこか場所ある?」

 街の人口がどのくらいか分からないけど、これだけあれば十分かと思う量を提示してみる。

「……は? 今なんて」

 なんか、二人が口を馬鹿のように開いている。

「どこか場所がある?」
「違うわよ。千匹って言わなかった!?」
「言ったけど」

 食料難の住人に渡すなら1000匹じゃ足らなかったかな?

「足らない? なら、二千匹だすけど?」
「違うわよ。どうして、そんなに持っているのよ! それ以前にどこに仕舞ってあるのよ!」
「倒したから持っている? 沢山入るアイテム袋を持っているから?」
「そうだったわね。あなた英雄だったわね」
「英雄?」

 セイさんが聞き返す。

「なんでもないわよ」

 これ以上聞かれないようにアトラさんがセイさんとの会話を打ち切る。

「ユナ、本当に持っているならウルフは百匹でいい。千匹も貰っても解体が出来ないわ」

 それはもっともなことだ。
 職員が何人いるか分からないけど、百匹解体するのもそれなりに時間がかかるだろう。

「足りる?」
「十分よ。足らなくなったら、そのときにお願いするわ」

 それだとわたしのウルフの在庫処分が出来ないんだけど。

「セイ、彼女を倉庫に案内してあげて。そして、戻ってきた職員全員で解体、住人に配布をお願い。あと、彼女のことは内密にすること」
「わかりました。ユナさんこちらへどうぞ」

 セイは返事をすると倉庫に案内をしてくれる。
 その倉庫にウルフ百匹取り出す。

「ありがとうございます。これで助かります」
「足らなかったら言ってね」

 在庫を減らしたいからと心の中で呟く。





【商業ギルドマスター視点】

「どうなっているんだ!」

 俺は部屋にいる部下を怒鳴りつける。

「どうして、冒険者ギルドのやつらがウルフを大量に持っている!」
「倒したからでは」

 部下の一人が答える。

「おまえは馬鹿か。一日や二日でそんなに大量に倒すことが出来るわけないだろう」」
「ギルマス、もしかして、先日来た冒険者では」

 部下は三日前に来た冒険者の事を言っている。
 四人パーティーだ。
 剣士が二人、魔法使いが二人の理想的なパーティーだ。
 ランクも高く。俺が誘ってやったのに断りやがった。 

「俺の誘いを断ったあいつらか。でも、それは無い。あいつらは盗賊討伐に向かってこの町にいない」
「それじゃ、どうやって」
「それを調べるのが貴様らの仕事だろ。どうやってあいつらがウルフの肉を大量に手に入れたか調べろ!」

 部下は部屋から飛び出すように出て行く。
 使えない部下を持つと苦労する。

「くそ、あと一ヶ月、儲けさせてもらうはずだったのに。そしたら、こんな辺鄙な町から出て行ってやるのに」

 五年前この町の商業ギルドマスターになった。
 元々は大きな街の商業ギルドの職員だった。それがギルドマスターになれると聞いて受けてみればこんな辺鄙な町にだった。
 それでも頑張ってきた五年間。
 お金を貯めて、大きな街に戻るためにやってきた。
 でも、それもクラーケンの出現によって壊れた。
 馬鹿町長は逃げ出し、住民も逃げ出す。
 この町の金は全部俺の物だ。
 町の外にお金を持ち出す訳にはいかない。
 だから、そんな逃げ出す住民から金を奪うことにした。
 ゴロツキの冒険者を雇い、盗賊の真似事をやるように命じた。
 金を見せ、襲った女は自由にして良いと言ったら喜んで盗賊になった。
 冒険者どももこんなクラーケンがいる町から出て行く予定だったのだろう。その出て行く前にお金をかせぎたかったんだろう。
 だから、俺の口車に乗ってきた。 
 冒険者が盗賊になったことで、この町は孤立することになる。
 海はクラーケン、外に繋がる道は盗賊。あとは危険な山脈だけ。必然的に住人は町に残ることになる。

 逃げ出した住民は盗賊に襲われ、財産を奪われる。
 逃げ出さない住民は食料を買うために高い代金を払うことになる。
 この町の住人から絞れるだけ搾り取ってから町から出て行くつもりだった。なのに、ここで冒険者ギルドが無料でウルフの肉を配布しやがった。
 そのせいで客からは安く販売しろとか、無料にしろと言い出す馬鹿までいやがる。
 今までは数匹が限界だったはずなのに、どうして、いきなり大量のウルフを手に入れたんだ。
 さっさと先手を打たないと稼ぎが無くなることになる。

 待っていた情報はその日の夜に報告された。

「クマが怪しいと思われます」

 そんな報告をしてきた部下が馬鹿に見えた。
 実際に馬鹿だから仕方ない。

「お前、俺を馬鹿にしているのか」
「いえ、違います。クマの格好をした女がいるんです」
「クマの格好をした?」

 そんな変な格好している奴がいるのか?

「はい、調べた結果、昨日、この町に来たそうです」
「盗賊に襲われずに来たのか」

 その変なクマの女以外もいるのか?

「話しによると一人で山脈を越えて来たみたいです」
「「貴様、馬鹿か。あの山を越えて来たっていうのか!?」」
「門番をしている男から聞きましたから間違いないかと。話しによると、山脈越えをしようとした住人を助けたそうです。その翌日、海岸にいるクマを何人もの住人が見てます。それから、冒険者ギルドに向かうところも見てます」
「そのあとに、大量のウルフってことか」
「はい、そうです」

 いったい何もんなんだ、そのクマは。
 大量のウルフが入るとなると、かなり上位のアイテム袋だ。
 格好はともかく、山脈を越え、そんなに大量に入るアイテム袋を持っているならベテランの冒険者だろう。

「そのクマの女は何歳ぐらいの女なんだ」
「背が低く十二、三歳ぐらいかと」

 二十代後半から三十代の女と思ったらガキだった。

「貴様馬鹿にしているのか。そんな子供が一人で山脈を越え、ウルフを大量に持って来たって言うのか」


 十二歳のガキの女だと。馬鹿にしやがって。
 そんなガキがどうやって山脈を越えてくるんだ。少しは物事を考えてから報告しやがれ。だから、馬鹿は嫌いなんだ。
 だが、時間が経てば経つほど集まってくる情報はどれもクマに関する情報ばかりだった。

「冒険者ギルドの見張りをしていた者が言うには、ウルフの素材はまだ沢山あるそうです。そのため、明日の狩りはせずに、解体作業をすると言ってました」

 これ以上食材を出されたら儲けが無くなる。
 誰も商業ギルドから買わなくなる。
 怪しいのはクマの格好をした女。

「そのクマの女はどこにいるか調べてあるのか?」
「はい、宿屋に泊まってます」
「あの筋肉の宿屋か」
「はい」
「なら、今夜、襲うぞ。冒険者を四、五人集めろ」

 深夜、クマの女が泊まる宿を襲うことにする。
 ウルフを持っていれば奪えばいい。
 持って無ければ、それでも構わない。
 女は盗賊に渡して処理をすればいい。あんだけ多ければ、ガキが好きな物好きな奴もいるだろうし。
 とにかく、行動を起こさないと俺の未来は無い。

 だが、宿に向かった冒険者は誰一人戻ってこなかった。

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