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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、海に行く

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85 クマさん、ミリーラの町に着く

申し訳ありません。
過去に出てきた名前と同じだっただめ、雪山で出会った男性の名前をダモンに変更しました。
 洞窟の前にある雪を魔法で吹き飛ばすと外は快晴だった。
 昨日の吹雪が嘘のように晴れ渡っている。
 元引きこもりには眩しいぐらいだ。

 二人には先に洞窟から出てもらい、クマハウスを仕舞う。 
 わたしが外に出ると、二人は新雪のため歩くのに苦労している。

「ユナちゃん、家はどうするの?」

 昨日の食事のときに打ち解けて、呼び方が『さん』付けから『ちゃん』になっている。
 わたしとしてもその方が落ち着く。

「魔法で出したから、仕舞うこともできるよ」
「ユナちゃんって、本当に凄い冒険者なのね」
「ランクDの普通の冒険者だよ」

 自分で言っておいてなんと胡散臭いセリフかな。
 こんなクマの格好をして、一人で雪山に居て、魔法で家を出し入れ出来る冒険者が他にいたら見てみたいよ。

「それじゃ、昨日の夜に説明をした召喚獣を呼び出すけど驚かないでね」

 昨日の食事のときに召喚獣のクマのことを話し、こぐまのくまゆるたちを見せている。
 でも今日は昨日と違って大きさが違う。

「大きい・・・」
「ダモンさんとラーニャさんは昨日紹介したくまゆるに乗ってください」
「これが本当に昨日と同じのクマなのか」

 恐る恐るダモンさんはくまゆるに近づく。

「本当に大丈夫なのか?」
「悪さをしたり、悪口を言わなければ大丈夫よ」
「悪口って、人の言葉が」
「分かりますよ。くまゆる、しゃがんで二人を乗せてあげて」

 その言葉にくまゆるは腰を下ろす。
 その様子にダモンさんは言葉を失う。

「その・・・くまゆる・・・よろしく頼むな」

 ダモンさんがそう言ってくまゆるに乗る。
 くまゆるは首をダモンさんに向けて頷く。

「凄い、本当に言葉を理解している」
「ラーニャさんも乗ってください。出発しますので」

 ラーニャさんは頷き、夫のダモンさんの後ろに乗る。二人が乗るとくまゆるがゆっくりと立ち上がる。
 大人だとくまゆるに乗るのは二人が限界かな。

「落ちないと思うけど、しっかり、掴まっていてくださいね」

 わたしもくまきゅうに乗り、町に向けて出発をする。
 進む速度は遅め、始めは歩く速度で進み、慣れてきたら少しずつ速度を上げる。
 雪山だから平地ほど速度を出すことは出来ないけど人が歩くよりは速い。

「山の天候は変わりやすいから、少し急ぎますね」

 速度を少しだけ上げ山脈を登っていく。
 途中で現れるスノーダルマは火の魔法で倒していく。
 くまゆるがいるから大丈夫だと思うけど、二人が攻撃でも受けたら面倒だからね。

「こんなに簡単に・・・」
「すごい」

 二人はわたしに会うまでは魔物を見つけると隠れてたり、道を変えたりしてたそうだ。
 まあ、スノーダルマは打撃じゃ倒せないから、一般人には無理かな。
 しばらく進むと山の反対側に出る。

 遠くに広がる青い海が広がっている。
 おお、夢にまで見た海だ。
 この雪山を降りて行けば海が待っている。
 クラーケンも一緒に待っているけど。
 居なければ最高だったんだけどな。
 でも、ここから見えるからと言って近いとは限らないんだよね。
 見えるけど、遠い。
 感覚的に富士山の上から降りる距離はあるはず?
 もっとも、引きこもりのわたしは富士山には登ったこと無いし、たとえ登ったとしても引きこもりの体力では登れる気がしない。

 わたしたちを乗せたクマたちは雪山を駆け降りて行く。
 くまゆるに乗っている二人は先程から騒いでいる。
 止めてくれとか、速いとか、死ぬとか言っている。
 まあ、下り坂を駆け下りているから仕方ない。
 テレビで見るジェットコースターってこんな感じなのかな? 乗った事がないけど。
 それから数時間後、麓まで降りてきた。

「二人とも大丈夫?」
「はい、なんとか」
「だ、大丈夫だ」

 始めはあんだけ叫んでいたが途中から静かになり、二人は一生懸命にくまゆるに抱きついて耐えていた。

「でも、俺たちがあの山をどれだけの時間をかけて登ったかを考えると悲しくなるな」

 山を降りてきたわたしたちは、途中でくまゆるたちから降りて歩いて町に向かっている。
 理由は騒ぎを起こしたくないからだ。
 そして、夕暮れ前には町に着いた。

「本当に一日で戻って来てしまった」

 二人は自分たちの苦労はなんだったんだろうと呟いている。
 町の近くまでやって来ると潮風が吹いてくる。
 海まで来たと感じられる。と言っても日本じゃ、海に行ったことないんだけどね。
 でも、ゲームの中の海はあるよ。
 魔物がいる海だけど・・・。

 町に近づくと門兵が立っている。

「ダモン、戻ってきたのか!」
「ああ、死にかけたところをこの嬢ちゃんに助けてもらった」

 門兵はわたしを見る。

「うん? クマ?」
「冒険者のユナよ」

 ギルドカードを見せる。

「ランクD・・・」

 わたしみたいな小娘がランクDで驚いている。
 よくてランクEにしか見えないだろうし。

「ダモン、それでクリモニアの街まで行けたのか?」

 ダモンさんは首を横に振る。

「途中で力尽きた」
「そうか、でも助かって良かったかな。クマの嬢ちゃんありがとな」
「来る途中で見つけただけだから、気にしないでいいよ」
「そうか。町の状態はダモンから聞いていると思うが歓迎する」

 そう言って町の中に通してくれる。

「これからユナちゃんはどうするの?」
「今日は遅いから明日に備えて寝るよ。だから、宿を紹介してくれると助かるけど」
「宿か、食事が出ない可能性もあるぞ」
「いいよ。食べ物なら持っているから」
「でも、ユナちゃん、宿を取らなくてもわたしたちの家に来てくれれば」
「うーん、よしておくよ。せっかく、久しぶりに家族と会えるでしょう。わたしに気を遣うことないよ」
「でも、あんなに食料をもらって」

 昨日のうちにアイテム袋にウルフを3匹、小麦粉、野菜を入れて渡してあげた。
 この二人はアイテム袋も持っていないのにクリモニアまで買い出しに向かったのだ。
 アイテム袋が無いからこそ二人で登ったのだろう。
 でも、食材を持って本当にあの山脈を登るつもりだったのかと思うと無謀もいいところだ。
 それだけ、切羽つまっていたってことかな。

「お礼は町を案内してくれればいいよ」
「ありがとうね。見たいところがあったら言ってね。明日案内してあげるから」


 町の中に入ってしばらく歩くが活気が無い。
 人通りが少ないのだ。
 大きな広場に行っても人の数が少ない。
 その代わりにわたしの格好を奇異の目で見る人も少ないから助かるんだけど。

「本当なら、ここには屋台が沢山出ているんだけどね」

 寂しそうに言う。

「クラーケンのせいで魚が捕れなくなって誰も商売が出来なくなったんだよ」
「捕れる魚は商業ギルドが独占しているんだっけ?」
「ああ、あいつらはこんな状況なのに金儲けのことしか考えていないからな」

 わたしの商業ギルドのイメージはまさにそんな感じだけどな。
 手を擦りながら、「儲かりまっか?」とか言ったりして。

「ダモン!」

 後ろからダモンさんを呼ぶ声がする。
 後ろを振り向くとダモンさんと同い年ぐらいの男性がやってくる。

「ジェレーモ・・・・・」
「いつ戻って来たんだ」
「ついさっきだ」
「そうか、おまえが山脈を越えてクリモニアの街に向かったと聞いたときは驚いたぞ」
「食べ物が残り僅かだったからな」
「それはすまない」

 男はダモンさんお言葉に謝る。

「ジェレーモのせいじゃない。ユナ、紹介するよ。商業ギルドで働いているジュレーモだ」
「悪徳商業ギルドの?」
「こいつは、マシなほうだ」
「マシな方って、そんな言い方ないだろう」
「それでも、あいつらの仲間ってよりはいいだろう」
「そうだが、俺にも、その珍しい格好をした女の子を紹介してくれないか」
「冒険者のユナだ。俺たちの命の恩人だ。雪山で倒れているところを助けてもらった」
「そんな危険な状態だったのか。ダモンを救ってくれてありがとう」

 お礼を言われた。

「それで食料は手に入ったのか」
「このユナが持っていた食料を譲ってもらうことになった」
「そうか。これで先日来た冒険者が盗賊団を倒してくれれば、どうにかなるんだが」
「それは無理だろう。どうせ逃げ出すよ」
「ランクCだから、逃げ出すようなことはしないだろう」
「ランクC、それなら」
「ただ問題は町から出ていく者の依頼を受けるかもしれないことだ」

 冒険者ランクC、強いのかな。
 クラーケン倒せなくても盗賊は倒して欲しいものだ。
 それからしばらくしてジュレーモさんとは分かれ道で別れた。

「ユナちゃん、ここが宿屋よ」

 意外にも大きな宿屋だった。

「他の町からも船を使って魚の買い付けに来る人もいるからね。今は来る人はいないから空いていると思うよ」
「ありがとう。それじゃ、明日はお願いね」

 二人と宿の前で別れて、わたしは宿に入っていく
 中に入ると日に焼けたマッチョがカウンターに座っていた。
 わたしが宿に入るとマッチョと目が合う。

「筋肉?」
「くま?」

 二人がお互いの特徴を言いあう。

「泊まりたいんだけど」
「おお、すまない。まさか客が来ると思わなかったからな。それで何名だ」
「わたし一人だけど」
「クマのお嬢ちゃん、嘘をいっちゃいかないよ。嬢ちゃん一人でここまで来ることは出来ないよ。海はクラーケン、海沿いの道は盗賊。一人で安全に来れる道が無いことはこの町の住人なら誰でも知っていることだぞ」
「山脈から来たからね」
「それこそ信じられないぞ。あの険しい山脈を越えて来るなんて」
「別に信じてくれなくてもいいけど、泊まれるの」
「部屋なら沢山空いているさ。ただ、食事が作れない」
「別にいいけど。おじさんの食べる物はあるの?」
「ああ、宿屋だからな。保存が利くものがいくつかある。ただ、それも知り合いに分ける程度しかない。言い方は悪いが余所者に食べ物を食べさせる余裕が無いんだ。食材を提供してくれれば作ってやるよ」

 モリンさんに作ってもらったパンとかその他の食べ物も持っているけど、不振な目で見られても面倒なので食材を提供することにする。
 クマボックスからウルフ、野菜、小麦粉を取り出す。

「それじゃ、これでお願い」
「こんなにか!?」

 筋肉(おじさん)は目の前に現れた食材を見て驚く。

「まあ、どのくらい滞在するか分からないけど、しばらくは泊まるから足らなかったら言って」
「よし、分かった。それじゃ、さっそく、食事の用意をしてやるよ。本当なら美味しい魚料理を食べさせてやりたかったんだがな。俺はデーガだ」
「わたしはユナ」
「ああ、よろしくなクマのお嬢ちゃん」

 どうして、名前を名乗ったのに名前を呼ばないかな。
 このまま広まると、『クマの嬢ちゃん=わたし』の方程式が世界に広まりそうだ。
 実際にクリモニアの街では『クマの女の子=わたし』の方程式が成り立っている。


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