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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、海に行く

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80 クマさん、お店を始めて2日目

 キッチンで仕事をしているとルリーナさんが少し困った顔をして入ってくる。

「ユナちゃん、ちょっといい?」
「どうしたの?」
「ちょっと、わたしやギルでも手に負えない子が来たから」
「誰か来たんですか?」
「貴族の女の子よ」

 思い当たる貴族の女の子って一人しか思い付かないんだけど。
 そもそも、この街に貴族がどのくらいいるのかも知らないから、思い描いている人物とは限らないけど。

「普通の貴族だったら、何とかするんだけど」

 店内に入り、入り口に向かうと窓ガラスからギルに突っかかっている金色の髪の少女がいる。
 間違いなくわたしの知っている人物だ。

「中に入れて下さい。わたしはユナさんに用があるんです」
「少し待ってくれ。今、ユナを呼びに行っている」

 ギルが入り口を塞いでいる。
 やっぱり、貴族の女の子ってノアのことだったのね。
 二人はにらみ合っている。
 いつまでも見ているわけには行かないので2人の前に出ていく。

「ノア、何をしてるの?」
「ユナさん!」
「…………」
「この人たちが中に入れてくれないんです」
「まあ、2人には開店時間までのボディガードをお願いしたからね。2人ともよくノアが貴族って知っていたね」
「何度か領主様と一緒にいるのを見かけたからね」
「それで、ノアはどうしたの?」
「どうしたのじゃありません。しばらく、用があって来れませんでしたので。それで今日来てみれば、なんですか、この店は!」

 ノアは入り口にある二頭身のクマを指差す。

「先日来た時はこんなの無かったのに」

 頬を膨らませながら怒っている。

「それで今日はどうしたの?」
「もちろん、プリンを食べに来ました」

 開店前だけど追い返すわけにもいかないのでノアを連れて店の中に入る。
 中に入った瞬間、ノアの動きが固まる。

「な、な、なんですか!!!」

 ノアは叫び声を上げる。
 ノアがわたしに近づいてクマの手を握る。

「ぜひ、わたしの家にもお願いします!」
「クリフに怒られるよ」
「説得します!」
「しないでいいから、これで我慢しなさい」

 手を振りほどいてクマのねんど○いどを造ってノアに渡してあげる。

「ありがとうございます。一生の宝にします!」
「しないでいいから」

 そんな土で作った人形を一生宝物にされても困る。
 ノアは人形を大事に抱えながら飾ってあるクマを見ながら店内をまわる。
 そして、一言。

「全部欲しいです」

 そんな言葉はもちろん無視をする。

「そう言えば最近どうしてたの?」
「王都に行っている間に勉強が遅れたので、お父様に家庭教師を付けられて勉強をしていました」

 確かに王都では遊びまくっていた。
 貴族の娘なら勉強は必要だ。
 馬鹿な貴族より、頭の良い貴族の方がいい。

「でも、お父様酷いんです。全然外に行かせてくれないんですよ」
「勉強をしなかったから仕方ないんじゃない」
「たまには息抜きぐらいさせてくれてもいいと思います」
「それじゃ、プリンをごちそうするから勉強も頑張りなさい」

 とりあえず、ノアを席に案内する。
 ノアをいつまでもほっとくと店内をうろつくので椅子に座らせる。
 でも、座っても首を回して店内を見渡している。

「少し早いけど、プリン以外も何か食べる?」
「いいのですか?」
「いいよ。ほとんどの調理は簡単な物だからすぐに持ってこれるよ。あっ、でも、プリンは一個までね。数があまり無いから」

 ノアにプリンと小さなピザとオレンの果汁を持ってくる。

「お店は開店しないのですか」
「ちょっとね」

 昨日の出来事を簡単に説明をする。

「それは仕方無いですね。一度食べたら、わたしだって人に話したくなります」
「でも、その数が予想外だったのよね」
「ユナさんは甘いです。このプリン以上に考えが甘いです。国王の誕生祭でプリンが出たときの会場を見せてあげたいです」

 プリンをスプーンに乗せてわたしにつき出して、すぐにスプーンを咥える。

「国王から少し話を聞いたけど、作った料理人を教えてほしいと言う問い合わせが多かったとか」
「それは当たり前です。会場にプリンが出てきたときは皆、初めて見る食べ物に首を傾げていました。でも、国王がプリンを勧めて全員が食べると、会場は大変なことになったんですよ」

 え~と、先を聞くのが恐いんだけど。

「こんなに美味しい食べ物は誰も食べたことがありませんでした。会場は騒ぎになりました。誰も、作り方も食材も想像がつかない。高級食材を食べている貴族の誰も分からなかったんですよ。みんな国王に駆け寄り、聞く者がたくさんいるほどです」

 プリン一つでそんな大騒ぎが。

「でも、国王は作り方も、誰が作ったのかはお話しませんでした。もちろん、わたしは知ってましたから面白おかしく見てましたけど」
「もしかしてやばいかな」
「何がですか?」
「ここで販売していることが知られたら、作り方を教えろと押しかけてくる者が現れるかなと思ってね」

 そしたら、子供たちが危険な目に合う可能性もある。

「大丈夫だと思いますよ。国王がこう言ってました『これを作ったのは俺の親友だ。直にこの食べ物はある場所で販売される。この店、及び関係者に被害を与える者がいたら処罰をする。他の者にやらしたから平気とか思うなよ』と言ってましたから」

 それって国王とわたしが知り合い(親友)ってことを全ての貴族に示していないか?

「それに、お父様が国王様にユナさんを見守るようにと直に言われてましたから、何かあればお父様に言えば大丈夫ですよ」

 国王に領主の後ろ盾か。
 子供たちの安全を考えればこれ以上の存在はない。
 ありがたく国王の親友の称号は貰っておこう。
 いらないからと言って、返せる物でもないし。


 しばらくノアと話していると外が騒がしいのに気づく。
 確認をするために外に出ると数人の人だかりが出来ている。

「どうしたの?」

 ルリーナさんに尋ねる。

「それが、開店は昼からと伝えたら、今から待っていると言いだして」

 なるほどね。
 開店まであと30分も無い。
 並び始めるお客様がいてもおかしくはない。

「ルリーナさん、お客様を二列に綺麗に並ばせてください。もし列を乱す人や順番を抜かす人がいたら注意をしてください」
「いいの?」
「トラブルさえ起こさなければいいですよ。ルリーナさんには迷惑をかけますけど」
「いいよ。二列に並ばせればいいのね」
「はい、お願いします」

 開店前に全員で食事をして昨日の二の舞だけは防ぐ。
 開店時間になると行列は30人ほどいた。
 ルリーナさんのおかげでトラブルは起きていない。
 プリンの用意できた数は100個、お一人様一個限りとさせてもらう。
 ノアの話を聞いていたからプリンの注文が多いかと思ったけど、昼時のせいか、並んでいた多くのお客さんはハンバーガーとピザの注文が多かった。



「お疲れ様」

 ルリーナさんとギルにねぎらいの言葉をかける
 2人の仕事は終わり、用意した席に座っている。

「本当に凄い人ね」

 開店時間になると一度帰ったお客様や時間を知っているお客様が一斉にやってきたため、店内は混んでいる。

「でも、本当に美味しいね。このピザもハンバーガーも」
「・・・・・・」

 ルリーナの前には黙々と食べるギルの姿がある。
 不味く無いことだけは分かる。

「足らなかったら言ってね。プリン以外なら大丈夫だから」
「これが噂のプリンね。ヘレンさんにとても美味しいって聞いたよ」
「甘いから、男の人は苦手の人もいるかもしれないけどね」
「大丈夫だ。美味い」

 ギルが一口食べて感想を言う。

「うん、美味しいよ。一週間食べられるから役得ね」
「永久就職してもいいですよ。ルリーナさんにして欲しい仕事はたくさんありますから」
「素晴らしい誘惑ね。でも、まだ冒険者も続けたいんだよね」
「冒険者と言えば、デボラネとはどうするの」
「ああ、それね。わたしは別れようと思っているよ。もともと臨時だったからね。ギルはどうするの」
「決めていない」
「ギルも店で雇ってもいいよ」
「俺、戦うことしか出来ない」
「それだけで十分よ。護衛もできるし、冒険者希望の子供たちもいるから、いろいろ冒険者としての技術教えてあげて欲しいし」

 たぶん、冒険者になりたいと思う子がいるのはわたしのせいだ。
 冒険者であるわたしが孤児院の子供たちを助けたことによって、子供たちもわたしみたいになりたいと思っている子がいるらしいのだ。
 強くなって孤児院を守りたいと。
 院長先生の話によれば孤児院の子供たちは成人になっても働く場所がないので、多くが冒険者になる者が多い。だから気にすることないと言われた。
 働く場所ならある。だから、本当なら危険なことはさせたくないんだけど。

「あと、わたしがこの街にいないときには子供たちを守ってもらいたいから、仕事なんて沢山あるよ」
「考えておく」

 断るかと思えば考えとくの返事で驚く。
 てっきり、『俺は冒険者の方があっている』とか言うと思ったけど。

「ゆっくりでいいよ。今すぐって話じゃないから」

 二人をヘッドハンティングの返事は保留になったが急ぐことではないのでかまわない。

 お店、2日目も順調に終わり閉店を迎える。
 遅くに来たお客様はプリンを食べられなくて残念そうに帰る姿が見えた。
 課題は卵の数だ。
 余裕が出てくればサンドイッチも作りたい、作るならタマゴサンドは必要になってくる。(わたしが食べたい)


 ちなみに、ノアは執事さんに連れて行かれました。
 なんでも、勉強中に抜け出したのこと。
 ノアが泣いてわたしに助けを求めたけど、わたしには何も出来ませんでした。
 だって、執事さんが怖かったから。

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