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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、王都に行く

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69 クマさんの知らないうちに事件は起きていた

 とある魔術師がいた。
 10年前、魔術師は王都を追放された。
 魔術師は復讐を誓った。
 ただ、犯罪者を生贄にして魔法を使っただけなのに片腕を切り落とされて王都を追放された。
 あの国王は許せない。
 ただの死に方ではすまさない。
 あいつが守っている国を壊してやる。
 破壊してやる。
 国民を殺してやる。
 絶望を与えてやる。
 生きたまま、自分の国を滅びる姿をみせてやる。
 そう誓って10年が過ぎた。

 ゴブリン5000、
 ウルフ5000、
 オーク500、
 ワイバーン50、
 ワーム1

 集めに集めた。
 復讐のときが来た。
 男は歓喜した。
 ついにここまで来たのだ。
 男の体はやつれ、顔には生気が無くなっている。
 でも、その復讐心をもって国王に絶望を見せるためだけに生きてきた。
 魔物を操る魔法は男の生命力を奪うものだった。
 だが、復讐さえ出来れば自分の命さえ捧げるつもりだった。

 まずは国王の絶望する顔を見てやろう。
 男は王都に向かう。
 城の中に侵入する。
 男は過去にここで働いていたため抜け道の1つや2つは知っていた。
 気づかれないように国王のいる執務室に入る。

「貴様誰だ」
「お忘れですか。10年前に追放されたグルザムですよ」
「……グルザム」

 国王は痩せ細った男が誰か分からなかった。
 数年前とはあまりにも変わっていたのと、この男が城の中にいること自体がありえなかったためだ。

「お久しぶりです」
「なんで、貴様がここにいる」
「もちろん、侵入してきたからですよ。ああ、人は呼ばないでくださいね。話をしに来ただけですから」
「話だと?」
「今、この近くで魔物の群れが発見されて大変なんですよね」
「なんで、それを貴様が知っている」
「それはもちろん、わたしがあなたに復讐するために集めたからですよ」
「復讐だと」
「はい、復讐、恨み、憎しみ、憎悪、なんでも構いません。わたしはあなたが苦しむ顔が見たいだけです」
「なら、十分に見ただろう」

 国王は魔物の数に多少であるが苦しんでいた。
 大なり小なり被害が出るのは間違いなかったから。

「いえ、まだです。あなたの国がワイバーンによって破壊され、オークによって国民が犯され、殺される姿、ゴブリン、ウルフの魔物が国の中を徘徊して子供たちを殺す姿を見て絶望するあなたを見たい」

 グルザムは想像しただけで嬉しそうにする。

「貴様……」
「わたしを殺そうとしても無駄ですよ。脱出手段をなにも用意せずに来たわけがないでしょう」

 国王は手にかけた剣を止める。

「わたしが魔法を発動すれば、魔物はこの王都に向かって来ます。数日でこの王都を魔物が襲ってくるでしょう。それにわたしが死ねば魔法も発動します。あなたはどっちにしろ黙って見ているしかない」
「この国は冒険者も騎士も兵士もいる。そんなに簡単に王都を落とせると思うな」
「もちろん、落とせるとは思っていませんよ」
「半分でもいいですよ。ワイバーンで門を破壊し、そこから、魔物が進入するだけで構いません。それだけでどれぐらいの国民が死にますかね」

 グルザムは笑みを浮かべる。

「冒険者はすでに魔物討伐に出発した。兵も準備をさせている。冒険者や兵が犠牲になるかもしれないが、国民は守ってみせる」
「冒険者に魔物は倒せませんよ」
「なんだと」
「強大なワームを用意をしてあります。冒険者は美味しい餌となるでしょう。そして、餌を求めて王都に来ます」
「貴様!」
「ワームを倒せなければ、ゴブリン、ウルフを倒す者もいない。この国は破壊される。あなたの苦しむ顔が見れるわけです」
「ふざけるな!」
「ふざけてません。わたしの命をかけて作り出した魔法。ゴフォ」

 グルザムは口から血を吐き出す。

「この魔物を操る魔法はね。少しばかり、融通が利かないのですよ。わたしの魔力、生命力を奪っていきます。最後まであなたの苦しむ姿を見ることが出来ないのは残念ですけど、途中まで楽しむことにします」

 グルザムは魔法を発動させる。
 魔力を全て奪い去っていく。
 グルザムの僅かに残っている生命力も奪い去っていく。

「グルザム!」
「これで、ワームも目覚め、ワイバーンも魔物たちも王都に向かってくるでしょう。わたしはあなたの苦しむ顔をどこかで見ながら王都が破壊される様子を見物でもさせてもらいます」

 グルザムは苦しみながら笑顔で姿を消してしまった。

「グルザム!!!!!」

 その叫びはグルザムには届かなかった。

「どうしたのですか、国王様」

 国王の叫びに男が近衛兵が駆けつける。 

「すぐにザングを呼べ」
「はい!」

 近衛兵は敬礼をして駆け出す。
 まもなくザングが現れる。
 髭を生やした年配の男性が執務室に入ってくる。
 この国の宰相である。

「国王、お呼びですか」
「すぐに、騎士、兵士、魔法使いを集めて、魔物討伐に向かわせろ」
「いま、エレローラが準備をしています」
「魔物の中にワームがいることを伝えろ。それに対策をしろと伝えろ」
「ワームですか」
「そうだ。このままでは王都にいる冒険者の多くが無駄死にするぞ」
「国王様、その情報はどこで」
「今は時間がない。後で説明をしてやる。だから、急げ」
「はい」

 ザングは急いで部屋から出て行く。

「間に合ってくれ」

 そう思うが、ワームを倒すのにどんだけ被害が出るかわからない。
 グルザムは誕生祭のとき、人が集まるときを狙っていたと考えられる。
 倒せなければ被害はとんでもない数になる。

「くそ、対応策はないのか」

 王都から、冒険者が出発して、翌日には騎士、魔法使い、兵士が出発する。
 その三日後、とんでない報告が入ってきた。
 Aランクの冒険者が魔物を全て討伐したと。
 国王は開いた口が開いたままになった。
 その報告をしてきたのはギルドマスターの手紙。
 信頼がおけるものだった。
 安堵するが、Aランク冒険者って誰だ。
 たまたま、居合わせたのか。
 疑問がいろいろ残るが危険は去ったことになる。
 あとは王都のどこかにいるグルザムを見つけ出すことだった。
 だが、国王が執務室に1人になっているとグルザムが現れた。

「どういうことですか。兵士、冒険者が戻ってきているのですが」
「貴様が用意した魔物は全て、Aランク冒険者が倒したそうだ」
「Aランク冒険者? そんなわけがない。高ランクの冒険者は遠くにいるはず。わたしがそう仕向けたのだから」
「俺にもわからん。ギルドマスターの手紙に書いてあるだけだ」
「嘘だ。ゲフ」

 グルザムは吐血する。

「わたしの復讐は何も出来ずに終わるのか。その誰とも分からない冒険者のせいで。わたしの計画は完璧だったはず……」

 グルザムは絶望に満ちた顔で国王を見る。

「なんでだ。なんで、貴様は笑っている」
「これで終わりだ」

 国王は剣を抜き、グルザムに切り捨てる。
 今のグルザムには避ける力も、避ける考えも無かった。
 ただ、復讐が出来なかった。それだけが心を埋め尽くしていた。
 国王は近衛兵を呼び、グルザムの死体を処理させる。

「その冒険者には礼を尽くさないといけないな」

 王都を、国民を、冒険者を、兵士の命を守ってくれたのだから。


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