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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、王都に行く

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61 クマさん、王都の冒険者ギルドに行く

 王都に来て3日目。
 本日はノアの護衛依頼の報告をするために冒険者ギルドに行く予定だ。
 それと王都にある冒険者ギルドを見てみたいからでもある。
 なので、フィナにはノアと一緒にお出かけをしてもらうことにした。
 わたしの格好とフィナの年齢だと冒険者が絡んでくる可能性があるためだ。
 わたしだけなら十分に対応ができるがフィナにもしものことがあったらティルミナさんに申し訳がない。

 そんなわけで1人で好奇な視線を浴びながら冒険者ギルドに向かう。
 冒険者ギルドは商業ギルドで説明を受けた通り、家の近くの大きな通りを真っ直ぐに進む場所にあった。
 王都の冒険者ギルドの建物はクリモニア街の数倍ある。
 ギルドの大きさが数倍あれば冒険者の数も数倍いる。
 これって絡まれる可能性も数倍に増えるってことだよね。
 フィナを置いてきて正解だったかな。
 今もギルドの中に怖い顔をした冒険者が中に入っていく。
 その中に今からわたしも入るんだよね。
 猛獣の檻の中に入る子猫の気分だ。
 おまえも猛獣の熊だろう、などの突っ込みはなしでお願いします。

 クマさんフードを深く被り、視線を合わせないように冒険者ギルドに入る。
 入った途端に視線がわたしに一気に集中する。
 クマ、背の低い女の子、1人、目立つ要素が多いかな。
 ひそひそ話が始まる。

「なんか、かわいい、クマさんが入ってきたぞ」
「ほんとだ熊だ」
「クマね」
「かわいい格好ね」
「熊が襲ってきたぞ。誰か討伐しろ。ギャハハハハ」
「あんたね。冗談でもそんなこと言っちゃだめでしょう。女の子が怖がるでしょう」
「それじゃ、俺が討伐しようかな」
「あんたが近寄ったら、クマが逃げちゃうわよ」

 ガタ、
 椅子が倒れる音がする。

「ブラッディベアー……」

 奥にいた男が呟く。

「そのクマに手を出さない方がいい」
「なに、おまえ震えているんだよ」
「あいつには関わらないほうがいい」

 男はそれっきり黙ってしまう。

「なんだ。あいつ」
「それよりも誰か声をかけろよ」
「それじゃ、俺が忠告してやるか」

 2mを上回る巨漢が笑いながら近づいてくる。

「よう、クマのお嬢ちゃん。そんな可愛らしい格好で何しにきたんだ。お嬢ちゃんみたいな子がくるような場所じゃないぞ」
「依頼達成の報告に来たんだけど」
「依頼報告ってお嬢ちゃん、冒険者なのか」
「そうだけど」

 周りから笑い声が漏れる。

「おいおい。いつから、ここはこんな子供まで冒険者になれるようになったんだ」

 テンプレの会話だな。

「邪魔なんでどいてもらえますか。ギルドカードは持ってますし、ちゃんとした冒険者です」
「なら、俺が冒険者として力があるか確かめてやるよ」

 男の手がクマさんフードに伸びる。わたしはその手を掴み、ギルドの外に放り投げる。
 周りの冒険者は唖然と眺めている。

「おまえ、何しやがる」

 一人が何が起きたか理解すると、周りも一緒に反応する。
 そして、なぜか襲い掛かってくる。
 意味が分からないんだけど。
 お仲間だったのかな。
 同じように襲い掛かってくるので、腕を掴みゴミを放り投げるように外に向けて投げる。
 これを3回ほど繰り返す。

「あのう、ギルドの中で喧嘩は困るのですけど」

 可愛らしいギルド職員がおどおどしながら注意してくる。
 見た目は受付嬢かな。
 でも、どうしてわたしに言うかな?
 どっから見てもわたしが被害者だよね。

「わたしに言っているの」
「はい、そうです。クマさんの格好をしたあなたに」
「どうみてもわたしが被害者だよね? 襲われたのはわたしだよね? 数人の男に囲まれて暴行されかけたのはわたしだよね? 注意するなら外に倒れている男たちに言ってもらえる?」
「それは……」
「つまり、あなたは抵抗せずに数人の男たちに殴られ、犯されろと言うの?」
「でも、ギルド内では喧嘩は駄目です」
「あなた、頭大丈夫? 現状把握している?」

 受付嬢に問いかける。

「おい、小娘、いきなり何しやがる」

 外に放り出した男たちが中に入ってくる。

「ほら、喧嘩はよくないでしょう。止めてきてくれる?」

 受付嬢に男たちの方を指す。

「それは……」

 入ってくる男たちに受付嬢は怖がって言葉を濁している。
 やっぱり、Gは自分で処理しないと駄目のようだ。
 入ってくる男たちを風魔法で外に吹き飛ばす。
 受付嬢の横を通り抜けて外に出る。
 そこには立ち上がろうとする5人の男たちがいる。

「土下座をして謝るなら許すけどどうする?」
「ふざけるな!」

 風魔法を地上から上空に向けて発動させる。
 男たちを地上数百メートルまで飛ばす。
 それを見物していた人たちは驚いている。
 地上からは米粒ほどの大きさにしか見えない。
 段々と大きくなっていく。

「ぎゃあああああああ」
「だれかーーーー」
「死ぬーーーーーー」
「…………」

 落ちる寸前に風のクッションを作る。
 男たちは地面に叩きつけられることはなかったが放心状態になっている。

「土下座する?」

 男たちはわたしの言葉を聴いていない。
 面倒なので放置することにする。

「あらあら、騒がしいと思ったらクマさんがいたのね」

 エルフ?
 耳が長い女性が微笑みながらこちらを見ている。
 色白で美人さんだ。

「暴行されかけたから反撃しただけよ。証言ははギルドの中にいる他の冒険者たちがしてくれるよ」
「そうなの、ラン?」

 エルフは先ほどわたしを注意しようとした受付嬢に尋ねる。

「えーと、はい。このクマさんがギルドに入ってきたら、中にいた冒険者がクマさんに近寄ったのです。そしたら、クマさんが冒険者を外に放り投げました。それを見たほかの冒険者さんも次から次へと外に放り投げ飛ばされました。それでわたしがクマさんを止めようとしたんですが、止まってくれなくて、クマさんは冒険者さんたちに(とど)めを刺しにいったんです」

 おいおい。
 合っているようで微妙に合っていない。
 その説明だとわたしが悪人に聞こえるよ。

「なるほどね。あなたが噂のクマさんね」
「えーと、あなたは?」
「わたしはこの王都でギルドマスターをしているサーニャよ」
「サーニャさんはエルフですか」

 気になったので聞いてみた。

「そうよ。本当は冒険者だったんだけど、50年ほど前に前任者が引退してね。わたしがなったのよ」

 エルフは街にいたときにもたまに見かけた。
 話したことはなかったけど。

「あなたのことはグランから話を聞いているわ。ザモン盗賊団を1人で討伐したクマの格好をした女の子。グランが大袈裟に言っているだけと思ったけど、本当だったみたいね」

 放心状態の冒険者たちを見る。
 立ち直った冒険者はふらふらしながら他の冒険者たちの肩を借りて立ち上がっている。
 わたしに突っかかってくる者はいない。
 また、上空に飛ばされたくはないのだろう。

「とりあえず中に入りましょうか」
「あれはいいの?」
「いいのよ。新人に喧嘩を売る馬鹿どもだから、これで少しは新人に喧嘩を売るようなことはしないでしょう」

 再度ギルドに入る。
 みんなの視線がわたしに集中する。

「だから、あのクマに手を出すなって言ったんだ」
「おまえはあのクマ知っていたのか」
「ああ、怖さも強さも知っているよ。だから、止めろって言ったんだ」

 そんな声が聞こえてくる。
 もしかして、クリモニアの街にいた冒険者かな。
 しかも、あの怖がり方、殴り倒した冒険者の1人かも。

「それで、ギルドには依頼の報告に?」
「ええ」
「それじゃ、ギルドカードと依頼達成書をいいかしら」

 ギルドカードとエレローラさんのサインが入った依頼達成書を渡す。

「フォシュローゼ家の護衛の依頼ね。はい、これが依頼料ね。あとこれがグランの護衛の依頼料ね」
「グランさんの?」
「先日グランが来てね。あなたが来たら依頼料と依頼達成を頼まれたのよ」

 グランさん、2日前会ったとき、何も言ってなかったのに。

「ファーレングラム家の護衛もフォシュローゼ家と同様ランクDの依頼扱いで処理させてもらうわね」

 と言ってもランクDのわたしがランクCに上がるわけではないので意味がない。
 でも、ギルドカードには護衛任務成功回数2/2が付く。
 この数が増えれば知らない人の護衛を受けたときに好印象が与えられるらしい。
 まあ、50/100と50/50とでは50/50の方がいいに決まっている。
 今回、護衛任務を受けたけど、今後は知り合いじゃない限りうけるつもりはない。移動が遅くて面倒だ。
 何よりもクマハウスが使えず、野宿が面倒だ。

「あと、ザモン盗賊団の件は少し待ってね。王家の兵が討伐に向かったらしいから、それが終わり次第、依頼達成扱いにするから」
「そうなの?」
「盗賊を50人捕らえ、そのことによって情報が得られたのだから、十分資格はあるわ。でも、完全に討伐してからになるから、少しまってね」

 報告が終わり、ランクDの依頼が2つ達成される。
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