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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、ドワーフの街に行く

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411 クマさん、魔力を込める

「だが、アイディアを出せと言われても、正直に言うしかないだろう」
「クマの嬢ちゃんが試しの門に挑戦したら、一回で閉じたと言うのか? そんなことを言ったら俺の頭がおかしいと思われるぞ」

 ギルマスとロージナさんが振り返り、後ろを歩くわたしのことを見る。

「それは同感だな。挑戦したが、すぐに負けたならわかるが」
「誰も、そんなクマの格好をした女の子がゴーレムと戦い。甲冑騎士、数体と戦い。三戦目ではオオトカゲと戦い。自分のコピーと戦い、魔力の壁を壊したら、試しの門の魔力が尽きたと言っても誰も信じない」

 もう、言いたい放題だ。でも、わたしとしても話されても困る。それに、わたしが表に出て、もの凄い試練を乗り越えて、試しの門の魔力を使い切ったと言っても、わたしのことを知らない人は誰一人信じないだろう。
 いつも思うけど見た目って大切だよね。

「それに誰が作った武器かって疑問になる」
「それはロージナさんが、……作ったことにはできないよね?」
「ロージナが武器を作っていないことは知られている。なのに武器を作った本人にするのは無理がある」
「それじゃ、本当のことが言えないなら、あとは嘘を吐くしかないんじゃない?」
「それが問題だ。皆がそれなりに納得して、俺に被害がない方法だ」

 この人、逃げる気だよ。まあ、ギルマスは悪くない。もちろん、ロージナさんが悪いわけでもないし、わたしも悪くない。まさか、試しの門の魔力が切れるとは誰も思わない。悪いのはこんな魔力を消耗する試しの門を作った人物だ。
 でも、皆が納得して、ギルマスに迷惑が掛からない方法か。そんな上手い方法なんてあるのかな。
 しかも、考える時間はそれほどない。

「試しの門が閉まったら、出れないの?」
「すぐに閉まることはない。ただ、どれほどの猶予があるかはわからない。普通は試練の終了が終わりを示したら、すぐにでるようにしている。閉じ込められたりでもしたら、困るからな」

 そうだよね。試しの門が閉まると言うのに残る馬鹿はいない。普通に出るだけだ。

「それじゃ、高ランク冒険者が挑戦したら、魔力切れを起こしたことにするとか?」
「普通、見習い鍛治職人の武器を高ランク冒険者が使って参加なんてしないだろう。それにそんな冒険者がいれば話題になる。追及されても、答えることができない」

 考えても否定の言葉ばかりが返ってくる。
 それなら、魔物が現れたことにしたらと思ったけど、討伐に冒険者が集まってくるだけだ。試しの門に挑戦する冒険者はたくさんいる。それに扉が開かなくなる理由が説明できない。

「それじゃ、洞窟が崩れたことにすればいいんじゃない? 洞窟が崩れて通れないことにすれば中に入れないし。なんなら、わたしが魔法で壊そうか?」
「やめてくれ」

 ギルマスは本当に嫌な表情をする。

「別に本当に壊すわけじゃないよ。ちょこっと、入口から見える程度に」

 試しの門の扉がいつ完全に閉まるか分からないけど、数人に見てもらえれば、広まるはずだ。

「それに、崩れた洞窟を補修する話になれば、すぐにバレるぞ」

 まあ、洞窟が塞がれたとなれば、修復が必要だ。見せかけの崩壊じゃ、見ればすぐにバレる。

「そこはギルマスの俺が1人で直すとか、言って」
「そんなことができるわけがないだろう。それに扉が閉まれば開かない理由にはならない」
「それに来年が困るだけだな」

 わたしの考えにギルマスもロージナさんも否定する。人が一生懸命に考えているのに。

「それじゃ、どうするの? わたしは出たら帰るよ」

 いても何もできない。
 ギルマスとロージナさんは階段を登りながら考え込む。
 本当に考えているのかな、このおじさんたち。ギルマスにしろロージナさんにしろ、この手の誤魔化すこのは苦手そうだ。それとも、わたしが悪どいのかな?

「それなら、魔力って注ぐことはできないの? この試練って魔力で動いているんでしょう? なんならわたしが魔力を注ぐけど」

 わたしの魔力はたくさんあるみたいだから、見習い鍛治職人の試練なら、数回ぐらいならできるかもしれない。まあ、試しの門が閉まりそうなのは少なからずわたしの試練のせいみたいだし、魔力を注ぐぐらい問題はない。

「……」
「……」

 わたしの言葉にギルマスとロージナさんが顔を見合わす。

「わたし、変なことを言った?」
「魔法陣を使って、この地形に集まる魔力を一年掛けて集めているんだぞ。人が一人魔力を注いだぐらいで、どうにかなるわけがないだろう」
「まあ、そうだけど。魔力には少し自信はあるから、見習い鍛冶職人、数人分ぐらいの試練なら出来そうかなと思って。数人分できれば、誤魔化すこともできるかなと……」
「確かに、数人分でもあれば誤魔化せるかもしれないな。今年は魔力が少なかったとか」
「それに過去にも1日で閉じたこともあったしな」

 わたしの新しい案にロージナさんとギルマスが考え込む。

「そもそも、魔力の補充なんてできるのか?」
「わからん。したことはない」

 知らないって。したことがなければ知らなくても仕方ないけど。
 まあ、作る人と管理する人、使う人は別だからね。ゲームを作った人、ゲームを売る人、ゲームで遊ぶ人。ぐらいに違いはあるのかもしれない。わたしだって、ゲームのシステムのことを聞かれてもわからない。
 でも、誰がこんな魔法陣作ったんだろうね。わたしも魔法陣とか作れないのかな。魔方陣が作れるスキルとかあったら便利なんだけど、覚えていない。

「でも、本当に嬢ちゃん。魔力は残っているのか? あれだけ魔力をナイフに注いで、壁を壊しただろう」

 わたしは魔力を手に集めてみる。
 うん、ある。たしかにナイフに魔力を集めたけど、ナイフにすべては注ぎ込めない。限界はある。全ての魔力をナイフに込めたわけじゃない。

「大丈夫だよ。まだ、残っているよ。それに今回はわたしの試練のせいみたいだし」
「悪いのはそこのオヤジだ」

 ギルマスがロージナさんを軽く睨む。

「おまえさんは俺よりも多くの冒険者を見てきたのに、嬢ちゃんの実力もわからなかっただろう」
「わかるわけがないだろう。どっから見ても、クマの嬢ちゃんは強いようには見えん」

 二人が睨み合う。
 ドワーフは頑固な人が多いのかな。
 わたしは小さくため息を吐く。

「それで、魔力は注ぎ込むことはできるの?」
「ああ、それっぽい場所はある。確かめてみる価値はある」

 ギルマスは少し歩みを速め、階段をのぼっていく。それと同時に徐々に暗くなってくる。本当に魔力が切れるみたいだ。これは急がないといけない。
 階段を上がり、通路を進むと目の前に扉がある。わたしたちが入ってきた扉だ。試しの門の入口でもある。
 でも、ギルマスは左に歩き出す。

「こっちだ」

 少し歩くと、岩壁にドアがある。

「ロージナはここで待っててくれ。本当はギルマスの俺しか入れない場所だ。嬢ちゃんは今回だけ特別だ」
「わかった」

 ロージナさんをドアの前に置いて、部屋の中に入る。洞窟に穴を掘ったようで、壁は岩肌が見える。広さはちょっとした大部屋ほどある。天井もわたしの倍の高さはある。

「嬢ちゃん、本当に大丈夫なんだよな?」
「たぶん」
「それなら、こっちに来てくれ」

 ギルマスに呼ばれて、部屋の中心に来ると、魔方陣があり、中心には魔石が嵌められている。さらに魔法陣のあちらこちらにも大小を含む魔石がある。
 中心にある魔石が一番大きい、わたしが倒したクラーケンの魔石ほどではなかったが、大きい魔石があった。魔石の色は無色で、クラーケンの魔石のように青くないみたいだ。
 ギルマスは腰を下ろし、魔石を確認する。

「やっぱり、魔力が無くなっているな」

 魔石は色が濃いほど魔力があり、薄くなると魔力が少ない。
 無色の魔石の場合は魔力があると透き通った綺麗な色になる。でも、魔力がなくなると曇りガラスのようになる。目の前の魔石は曇りガラスのようになっている。

「それじゃ、この魔石に魔力を入れればいいんだよね」
「ああ、頼めるか」

 わたしは魔石の上にダブルクマさんパペットを乗せる。両手のクマさんパペットに魔力を集めて、魔石に魔力を注ぐ。徐々に魔石の濁りは消え、透き通るように光が戻ってくる。
 それと引き換えに、わたしの体から魔力が抜けていく。思ったより、魔力を持っていかれる。
 あと、格下の自分とも戦ったし、魔力の壁も厚かった。自分が思っていたよりも魔力を消耗していたかもしれない。
 これは白クマに着替えるべきだったかもしれない。でも、さすがに2人の前で着替えることなんてできない。これでも、15歳の乙女である。簡易更衣室を作ったとしても、着替えたくはない。
 だから、どうにか現状の魔力で足りて欲しい。

 わたしが魔力を込めていると、薄暗かった部屋が明るくなりだす。もしかして、現在進行形でわたしの魔力が使われている?
 でも、使われているってことはちゃんと魔力が注入されているってことになる。
 わたしは魔力を込め続ける。結構な魔力を注ぎ込んでいる。これって終わりはあるの?
 少し、ふらつく。

「嬢ちゃん。魔力なら、もう十分だ。それ以上入れると倒れるぞ」

 ギルマスが声をあげる。わたしはその声に反応して魔石から手を放す。そして、小さく深呼吸をする。少し魔力を入れすぎたかもしれない。

「嬢ちゃん、大丈夫か?」
「大丈夫。少し、魔力を予想外に持っていかれただけ」

 魔石は曇りガラスのような鈍い光は消え、無色透明の透き通るようになっている。これがどの程度まで補充されたかわからないけど、十分みたいだ。

「でも、助かった。これで、少しは試練は持つはずだ。それにしても嬢ちゃんは凄いな。まさか、ここまで回復するとは思わなかった」
「それならよかったよ」

────────────────────────────

 嬢ちゃんのおかげで無事に試しの門は開催されることになった。
 初日は見習い鍛治職人や低ランク冒険者が腕を試すためにやってくる。無事に再開できて良かった。中には一人前になるための試練になる場合もある。
 そして、俺は付き添いで、一緒について行き、試練を見守る。おれは回数が増える度に頭を抱えることになった。行われる試練の内容に毎回クマが現れる。
 ウルフのはずが、ウルフぐらいのクマ、タイガーウルフかと思えばクマ。壁にはなぜかクマの絵柄まである。これはあのクマの嬢ちゃんの魔力の影響としか考えられない。
 試練を行う冒険者やそれを見守る鍛治職人は、多少、おかしいと思うかもしれないが、そう言うものだと思って受け止めている。さいわい、試しの門の試練の内容は口外しないことになっているので、今回の試練がクマだらけになったことは、広まることはなかった。
 俺は今回のことは心の奥に仕舞っておくことを誓った。
 でも、クマが攻撃される姿を見ると心が痛むのはどうしてだろうか。
 来年はクマがでないことを祈る。

ユナが魔力を込めたら、試練がクマだらけになったようですw
まあ、ユナですからね。

※申し訳ありません、次回、一回お休みさせていただきます。早く投稿できたらさせて頂きます。
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