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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、ドワーフの街に行く

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399 クマさん、試しの門に向かう

 わたしはリッカの年齢を聞いて、呼び方を変えるか悩む。さすがに年上を呼び捨てにするのは気が引ける(クリフ、トウヤは除く)ので、リッカさんと呼ぶことにする。リッカちゃんって呼ばなくて良かった。

 そして、お土産を買ったわたしたちは、少し遅めの昼食を食べる。もちろん、食堂に入ったら視線の的だったよ。

「リッカさん、ありがとうございました。弟に良い物が買えました」

 ルイミンは嬉しそうにしているが、本当にクマの置物をお土産にして、弟のルッカが喜ぶのかな。だからと言って、エルフの男の子に騎士の置物も似合わない気がする。エルフの子供だったら、なにを喜ぶのかな?

「喜んでもらえたなら、良かったよ。食事を終えたら、次はどこに行きます? どこでも案内しますよ」

 まだ、全てを回ったわけじゃないけど、少し行ってみたいところがある。

「この街に試しの門があるって聞いたけど、どこにあるの? わたし、ちょっと見てみたい」
「試しの門? もしかして、ユナちゃん。参加するの?」
「参加はしないよ」

 そもそも、クマに頼む武器職人はいない。

「知り合いの冒険者が参加するから、少し気になって」

 少しどころか、興味がある。面白そうなイベントだ。参加してみたいけど、できないので、ジェイドさんの応援に行くつもりでいる。当日、ジェイドさんたちと一緒に行ってもいいけど。その前に一度、試しの門を見てみたい。

「そうなの? ゴルドもガザルもお父さんもユナちゃんの実力を褒めていたのに、もったいない。お父さんが剣を作れば、ユナちゃんに頼むのに」
「もう、ロージナさんは剣を作らないの?」
「う~ん、分からないです。今はやる気が起きないみたいです。でも、さっきゴルドとガザルのナイフを見たとき、久しぶりにお父さんの真剣な顔を見ました。もしかすると、作るかもしれないです」

 もし、そうなったらいいね。わたしとフィナが来たかいがあった。フィナがいなければ、ゴルドさんのナイフを見せることができなかった。わたしが来なければガザルさんのナイフを見せることができなかった。
 2人が作ったナイフを見せることができて良かった。ゴルドさんもガザルさんも師匠のロージナさんが剣を作っていないと知ったら悲しむかもしれない。だから、王都やクリモニアに戻ったとき、どう報告するか少し困っている。本当のことを言うか、誤魔化すか。でも、武器を作ってくれるようなら嘘を吐かずにすむ。

 昼食を終えたわたしたちは試しの門がある場所に向かう。

「だいぶ歩くと思うけど、、みんなは大丈夫?」

 リッカさんが言うには試しの門は街外れにあるから、距離があるらしい。
 まあ、どんなに遠くてもクマ装備があるわたしは大丈夫だ。

「わたしも見てみたいですから、一緒に行きます」
「わたしも行きますよ」

 2人とも元気に返事をする。
 そして、試しの門の近くまでやって来た。
 リッカさんが言うとおり、離れた場所にあった。あったと言うよりは、ここの先にあると言った方が正しいかもしれない。

「なにこれ?」

 目の前には山に上がる階段がずっと続いている。

「もしかして、この階段の上?」
「この上です」

 わたしは見上げる。見ただけで、太ももが痛くなりそうだ。

「いったい、何段あるの?」
「数えたことがないから、分からないです」

 1000段以上はあるよね。そもそも、引きこもりのわたしが長い階段なんて登ったことも見たこともないので、見ただけで実際の階段数を想像することもできない。ただ、とてつもなく長い階段なのは間違いない。
 まあ、わたしは何段あろうが、クマの靴があれば登れない階段はない。でも、フィナたちはそうもいかない。

「えっと、2人はどうする。残る?」
「わたしは森を走り回っていますから、このぐらい大丈夫ですよ」
「わたしは登れるか分からないけど、頑張ります」

 誰もいなければ、くまゆるとくまきゅうを召喚するんだけど。そうもいかない。階段を見上げれば、登っている人が数人いる。

「もし、疲れたら、わたしがおんぶしてあげるよ」

 フィナぐらい、おんぶして階段を登るぐらいなら、クマさんチートを使えば簡単だ。

「頑張ります」

 フィナは上を見上げてゆっくりと階段を登っていく。ルイミンは身軽に階段を数段飛ばしで駆け上がっていく。リッカさんは「登れるかな」と小さな声で呟くと階段を登っていく。
 そんな3人をわたしが追いかけて登っていく。

「うぅ、ルイミンさん。早いです」

 ルイミンはかなり先の上で手を振っている。さすが、森で育ったエルフだけのことはある。この程度の階段はルイミンにとっては山を駆け抜ける程度みたいだ。
 フィナはルイミンを追いかけようとしたが、途中で息切れをする。
 途中から自分のペースで登り始める。わたしはフィナのペースに合わせて登っていく。

「疲れたら言うんだよ」
「はい」

 わたしたちはルイミンを先頭に階段を登る。リッカさん、フィナ、わたしと続く。そして、階段を半分ほど登るとフィナの足が止まる。

「フィナ。ちょっと休もうか」

 わたしはクマボックスから冷たい水を出してフィナに渡してあげる。水が入ったコップを受け取ったフィナはコクコクと一気に水を飲み干す。

「ユナお姉ちゃん、ありがとう」
「ユナちゃん。わたしも水がほしい」

 リッカさんさんにも同じように冷たい水を渡してあげる。

「冷たくて、美味しい」
「ユナさん、わたしもください」

 上の方の階段にいたはずのルイミンが近くにいた。わざわざ、戻ってくるなんて元気だね。とてもじゃないがわたしの家の前に倒れていた人物と同じとは思えない。まあ、あれは数日間、なにも食べていなかったからでもある。
 わたしはルイミンに水が入ったコップを渡し、わたしも水を飲む。
 そして、わたしたちは歩き出す。

「ほら、フィナ、頑張って。疲れたなら、わたしの背中に乗る? それともお姫様抱っこがいい?」

 くまゆるとくまきゅうが召喚出来れば良いんだけど、出来るわけがないので、わたしの背中と腕の中を勧めてみせる。

「うぅ、そんな小さな子供じゃないから大丈夫です」

 フィナは少し頬を膨らませて、おんぶとお姫さま抱っこを断る。別に子供とかじゃなく、疲れているようならと思っただけだ。

「ユナお姉ちゃんは疲れていないんですか? 海のときはあんなに倒れていたのに」
「あのときはクマの加護がなかったからね。今はクマの加護を受けているから大丈夫だよ」
「なんですか。そのクマの加護って」

 息を切らしているリッカさんが尋ねてくる。

「クマの加護ですよ。クマから力を受け取っているんです。まあ、実際は魔力で体を強化しているだけですけどね」

 クマの加護と魔力強化を混ぜて、答える。

 階段は続き、クマ装備がなければ、間違いなく貧弱のわたしじゃ、絶対に登ることはできなかった。だから、クマ装備は外せない。
 そんなチート防具を付けながら階段を登っているのに対して、フィナは額に汗を浮かべながら登っている。
 うぅ、罪悪感が込み上げてくる。

「フィナ、いつでもわたしの背中と腕の中は空いているからね」

 わたしは背中と腕をフィナに見せる。
 フィナは少し微笑んで「大丈夫だよ」と返す。

 そして、ついに長い階段を登り終え、下を見る。長い階段が続いている。よく、登って来たものだ。クマ装備が無ければ、絶対に登りたくないね。でも、チート防具がない他の三人はちゃんと自力で登った。

「疲れました。でも、気持ちいいです」

 フィナが息を切らしているが、下に見える街並みを見ている。街が一望できる景色が広がる。これだけでも登って来たかいがある。

「試しの門に参加する人、みんな登ってくるの?」
「一年に一回です。それに鍛冶職人は付き合うだけで、試験に挑むのは冒険者だから大丈夫です」

 まあ、武器を振るうのは冒険者だ。冒険者なら、山や足場が悪いところを歩く。階段ぐらい簡単に登るはずだ。鍛え方が普通の人と違う。クマさんチートが無ければ絶対に冒険者なんて無理だった。

 下の景色を見たあと、山側の方を見る。階段を登った先には広場が広がり、奥の山際に建物が見える。その建物の周りには階段を登って来た人たちがいる。冒険者や鍛冶職人みたいだ。わたしたちと同様に下見にでも来たのか?

 下見に来ていた冒険者たちがわたしのクマの姿に驚くが、いつも通りに無視をして、建物の前までやってくる。白くて、神殿のような建物だ。神殿みたいな建物の前には大きな門のような扉がある。

「この扉が試しの門?」
「いえ、試しの門は、その扉の中にあります」
「中は入れないの?」

 わたしはクマさんパペットで扉をポンポンと叩く。

「試しの門が開いたときに、鍛治ギルドのギルマスが扉を開けます。それまでは誰も中には入れません」
「それで、いつ開くの? 近いうちに開くみたいなことを言っていたけど」

 トウヤの試験は試しの門が閉まるまでだ。そのことも気になるので尋ねる。

「それは誰にも分からないです。ただ、毎年この時期になると、門が開くとしかわからないんです」
「リッカさんの言い方だと、門が勝手に開くように聞こえるんだけど」
「はい。試しの門は勝手に開き、勝手に閉まります。だから、門が開く正確な日にちはわからないんです。それで、昔に試しの門を無理やり開けようとした人がいたらしく、試しの門の前に建物を建てることになったんです。今となっては建物を壊してまで門の中に入ろうとする人もいなくなりました」

 待てなくて、門を壊して入ろうとした人がいたらしいが、迷惑をかける馬鹿はどこにもいるみたいだ。
 でも、試しの門が開く日は決まっていないんだ。近いうちに開くといいな。

ついに話数で399話になりました。次回で400話です。早いものですね。

※7/28に7巻が発売されます。今巻も若干ストーリーの変更があります。楽しんで頂ければと思います。よろしくお願いします。
※ツイッターにて、韓国版と台湾版のくまクマ熊ベアーの画像を乗せました。興味がある人は見てください。クマは海外に進出していました。

※次回の投稿はSSの投稿になるかもしれません。もし、3日後に投稿がないようでしたら、本編の投稿は一回お休みして、6日後になります。ご了承ください。
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