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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、ドワーフの街に行く

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380 クマさん、お姫様と2人とアイスを食べる

「そういえば、国王と王妃様は来ないの?」

 いつもなら、呼んでもいないのにやってくる。門兵も走って行った。そろそろ、部屋に来ててもおかしくはない。

「王妃様は分からないけど、国王陛下は仕事で来ないわよ。それで国王陛下からの伝言、美味しい物があったら、取って置くようにだって」

 あの国王は……わたしが来れば食べ物を持ってくると勘違いしていない?
 例え、あったとしてもフローラ様に持って来ているのであって、おっさんのために持って来ているわけじゃない。

「たべもの?」

 フローラ様が食べ物って言葉に反応してしまった。なにか食べ物あったっけ?
 少し考えて、アイスクリームがあったことを思い出す。

「冷たいお菓子でも食べる?」

 自分はクマの着ぐるみのせいで、気温の変化に気付きにくい。暑いことに気付けば、アイスクリームのことがすぐに頭に浮かんだのに、クマの着ぐるみのおかげでアイスクリームが頭に浮かばなかった。フローラ様を見れば、薄手の可愛い服を着ている。

「つめたいおかし? おいしいの?」
「冷たくて美味しいよ」
「それじゃ、たべる」

 わたしはクマボックスからアイスクリームが入ったカップとスプーンを取り出す。

「あら、ユナちゃん。新しい食べ物?」
「海に行くときに暑いと思って、冷たいお菓子を作ったんですよ」
「もちろん、わたしの分もあるのよね」

 やっぱり食べるんですね。わたしはエレローラさんの分と他に4つのアイスクリームをテーブルの上に出す。

「アンジュさん、これはアンジュさんとゼレフさんに国王と王妃様の分です。暑いと溶けてしまうと美味しくなくなるので、冷凍庫で保存してもらえますか?」
「わかりました。それでは急いで、冷凍庫に仕舞って来ますね」

 アンジュさんはアイスクリームを持って部屋から出て行く。なにか、忘れているような気がするけど、気のせいだよね。

「それじゃ、頂きましょうか」

 フローラ様とエレローラさんはアイスクリームを食べ始める。

「あら、冷たくて美味しいわね」
「うん、おいしい」

 2人を見ていたら、わたしも食べたくなったので、自分の分も出して、食べる。
 3人でアイスクリームを食べていると、ノックもされずにドアが開いた。もしかして、国王か王妃様かと思ったら、どちらも違った。

「本当にユナが来ている」

 部屋に入って来たのはフローラ様の姉である、この国のお姫様のティリアだった。そうだ。すっかり忘れていた。今度、来るようなことがあれば、呼んだり、食べ物を用意してあげるって、約束したっけ?
 だから、さっき、アイスクリームを取り出したとき、何か忘れているような感覚になったんだ。

「お城の中を歩いていたら、『クマが来た』『クマが歩いていた』って聞こえてきたから、もしかしてと思ったら、本当にフローラの部屋に来ているんだもん」

 ティリアは文句を言いながら、わたしたちのところにやってくる。

「そしてまた、わたしをのけ者にして、なにか食べているし。どうして、エレローラは呼んで、わたしを呼んでくれないの!」

 そんなことを言われても困る。そもそもエレローラさんは呼んでいない。国王も王妃様も呼んでいない。みんな、勝手にやってくるのだ。わたしが呼んだことは一度もない。

「おねえさま、おこってる?」
「怒っていないよ。フローラ、それ美味しい?」
「うん、おいしいよ」

 満面の笑顔で答える。その表情を見たティリアの発する言葉は、容易に想像が出来た。

「わたしも食べたい」

 想像通りの言葉が口から出てくる。
 ここで冷凍庫にティリアの分を用意してなかったことが知られたら、次回来たときに騒がれる。ここは誤魔化すため、ティリアにアイスクリームを出してあげる。

「冷たくておいしい。かき氷も冷たくて美味しいけど。これは違うね」

 カキ氷はあくまで、氷に味があるシロップなどをかけているだけだ。アイスクリームとは別なものだ。

「これなら、かき氷より沢山食べられそう」
「お腹を壊しますよ」

 お腹の冷やし過ぎは良くない。

「でも、わたしが学園に行っているとき、いつもみんなでこんなに美味しい物を食べていたのね」
「一応訂正だけはしておくけど、わたしはフローラ様に持って来ているだけで、他の人は勝手に来ているだけだからね。わたしは呼んでもいないからね」
「それにしては、毎回みんなの分を用意をしているわね」
「多く作っているだけで、決して、エレローラさんのためじゃないですよ」
「そんな意地悪、言わなくてもいいでしょう。みんな、楽しみにしているんだから」

 それから、アイスクリームを食べ終わり、まだ食べたそうにしていたフローラ様だったけど、お腹を壊しても困るので、戻って来たアンジュさんに、「明日以降に食べさせてあげて」と言ってアイスクリームを多めに渡す。そのせいで、アンジュさんを再度冷凍庫に行かせることになってしまった。
 もちろん、ティリアとエレローラさんの分も用意する羽目になった。

 アイスクリームを食べ終わったわたしたちは、お絵かきの続きを始める。それを見ていたティリアが口を開く。

「これはユナね。本当にフローラはユナが好きなのね。たまには姉であるわたしも描いて欲しいな」
「おねえさまを? うん、いいよ」

 だから、どうして、その黒い動物がわたしって分かるの! わたしは心の中で叫ぶ。絵を教える人はいないの? 王族なら芸術の勉強もあるよね?
 それから、フローラ様にクマの描き方を教える。珍しく国王と王妃様が来なかったので、平和な時間をフローラ様と過ごすことができた。

「それじゃ、フローラ様、また来ますね」
「うん」
「できれば、わたしがいるときに来てね」

 それは難しい。学園が始まれば、休みの方が少ない。会える確率は低くなる。
 だから、わたしはこう答える。

「善処するよ」

 その日は、一度クリモニアに帰ろうと思ったが、エレローラさんに引き止められる。シアを送って来たお礼として、夕食に誘われ、家に泊まることになった。

 翌日の朝。

「ユナさん、王都に来たら、家に寄ってくださいね」
「ノアとクリフによろしくね」

 シアとエレローラさんと別れたわたしはクマハウスには向かわずに違う方向に向けて歩き出す。
 ワイバーンと戦ったときにミスリルナイフを使った。その前もスコルピオンと戦ったときにも使った。せっかく王都に来たので、ナイフのメンテナンスをしてもらうため、ガザルさんのお店に向かう。

 いつもの視線を向けられたり、「クマだ」って言葉を聞きながら、ガザルさんのお店にやって来る。お店の中に入ると、すぐにアイアンゴーレムが出迎えてくれる。ちゃんと溶かされずに立っている。看板犬でなく、看板ゴーレムってところだ。
 アイアンゴーレムに軽く触れてから、店の奥に進む。まだ、早いせいかお客さんの姿はない。奥からはカーン、カーンと鉄を叩く音が奥から聞こえてくる。

「ガザルさん、いますか~」

 わたしはお店の奥に行きながら、ガザルさんを呼ぶ。すると、鉄を叩く音が止まり、声がしてくる。

「少し待ってくれ」

 そう、返事が返ってくると、再度、鉄を叩く音が始まる。そして、わたしがお店の中をうろついていると、鉄を叩く音が止まり、ガザルさんがやってくる。

「クマの嬢ちゃんか。すまなかった。ちょっと手が放せなかった。それで、今日はどうした?」
「ちょっと、王都に来ることがあったから、ナイフのメンテナンスをお願いしようと思って。せっかく、無料(・・)で見てくれるって言っていたからね」

 アイアンゴーレムをプレゼントしたら、メンテナンスは無料にしてくれると言った。だから、そのことを強調する。

「そんなに強調して言わなくても、ナイフぐらいメンテナンスしてやる」
「そう言えば、ガザルさんって、お店1人でやっているの?」

 1人で作るのと店番は大変だと思う。ゴルドさんにはネルトさんがいるけど、ガザルさんにはいないのかな? ドワーフって、女性は若く見えるけど、男性は小さなおじさんって感じで、年齢がいまいちわからない。

「まあ、今は1人だ」

 なにか、口ごもるガザルさん。わたしも深くは尋ねたりはしない。普通に疑問に思っただけで、深くは聞かないでおく。

「ほら、見てやるから、ナイフを出せ」

 わたしはクマボックスから、ミスリルナイフを2本取りだして、ガザルさんに渡す。ガザルさんはナイフを鞘から抜き取り、ナイフを見つめる。

「特には問題はないようだな。ちゃんと、手入れもされている。一応、メンテナンスはしておく。それでいったい何を斬ったんじゃ?」
「…………」
「ゴブリンか、ウルフか?」
「……言わないと駄目?」

 ワイバーンとか言ったら驚かれるよね。

「別に言いたくなければ、言わないで構わない。ただ、武器を作った職人としては何を斬って、この武器の状態になったかを知りたいだけだ。弱い魔物と戦ってなったのか、強い魔物と戦ってなったのか。または、武器同士の打ち合い。そうやって、武器を見て、次回はこうしよう。今度はああやろうと考えたりする。だから、あくまで武器を作った職人として知りたいだけだ」

 そう言われると、嘘が吐けなくなるし、黙っているのも忍びなくなる。

「誰にも言わないって、約束をしてくれるなら」
「他言はしない。さっきも言ったが自分の作った武器が、どのように扱われて、何を斬って、現状の状態にあるのか知りたいだけじゃ」

 わたしは正直に話すことにする。

「えっと、ワイバーン」
「…………」
「その前は大きなスコルピオンも斬ったかな?」
「…………」

 わたしの言葉にガザルさんは持っているナイフとわたしを見比べる。

「冗談じゃないんだな。それにしてもワイバーンを斬ったのか……」
「凄い切れ味で、スパッと斬れたよ。ワイバーンの翼とか……」

 なぜか、言い訳するようになってしまう。

「それにしてもワイバーンか、本当に嬢ちゃんには驚かされるばかりだ。あと、大きなスコルピオンって、ちょっと前に冒険者が甲殻の一部を持って来て、騒ぎになっていたな」

 何かを思い出すように言う。
 もしかして、大きな甲殻ってジェイドさんたちのこと?

「そのスコルピオンの甲殻はお前さんと関係があるのか?」
「たぶん。でも、そんなに騒ぎになっているの?」
「うちは金属がメインだが、魔物の皮や素材で作っている防具の知り合いから話を聞いた。甲殻の一部なのにかなりの大きさがあって、その辺りの界隈では話題になった」
「うぅぅ、そんなことが……」
「一部しか無かったから、他の部分はどこにあるか、冒険者が持っているのか。他の冒険者が持っているか、
ちょっとした騒ぎになったみたいだな。冒険者たちに尋ねたらしいが、詳しいことは聞けなかったらしい」

 どうやら、ジェイドさん及び他の冒険者も約束を守って、わたしのことは黙っていてくれたみたいだ。

「まさか、おまえさんが関わっていたとはな」
「ちょっと、倒す羽目になっただけだよ。好きで倒した訳じゃないよ。それで、一緒に行動した冒険者に口止め料ってことで……」
「だから、冒険者は手に入れた理由や他の部位については黙っていたわけか」

 ガザルさんは納得したようで頷いている。

「それにしても、スコルピオンのことでも驚きなのに、ワイバーンか」
「そっちも、戦う羽目になっただけ。自分から倒しに行ったわけじゃないよ」

 フィナたちを守るためと、ミリーラの町に行かせないために戦った。自分から倒しに行ったわけじゃない。

「とりあえず、話は分かった。ちょっと、奥で手入れをしてくるから、待っておれ」

 ガザルさんはナイフを持って奥に行く。
 それにしても、スコルピオンでそんなことになっていたとは思いもしなかった。これじゃ、残りのスコルピオンの素材も簡単に売ったりは出来そうもないね。
 まあ、そのときはクリフや国王に引き取ってもらえば良いだけだ。

次回こそ、新章の話が出てくるはず?

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