挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、従業員旅行に行く。

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

375/442

370 フィナ、隠し部屋のことを誤魔化す (4日目)

 ユナお姉ちゃんは、わたしたちを残して部屋から出て行きます。
 表情は心配しないで、と言っています。ユナお姉ちゃんはくまゆるちゃんと、魔物が集まってきた島に戻ります。「行かないで」と言いたいですが、止めることはできませんでした。そして、ユナお姉ちゃんが部屋から出て行くと、扉がゆっくりと閉まります。そんな扉をくまきゅうちゃんが見ています。きっと、寂しいのかもしれません。そんなくまきゅうちゃんにシュリが抱きつく。くまきゅうちゃんがいるだけで、シュリも落ち着いている。

「フィナちゃん、ここは本当に大丈夫なの?」

 シア様が少し不安そうに尋ねて来ます。ここはクリモニアにあるユナお姉ちゃんのお家の下です。魔物に襲われることは絶対にないです。でも、そのことをシア様に話すことはできません。ここがクリモニアってことはユナお姉ちゃんとの秘密です。
 そもそも、あのクマさんの扉を通ると、クリモニアの街のユナお姉ちゃんのお家の地下に繋がっている説明なんて出来ません。話しても信じてもらえないと思います。

「この部屋はどんな魔物が来ても大丈夫です」

 わたしは断言する。だって、クリモニアだもん。
 扉はいろいろなところに繋がっているので、閉じた瞬間、元の場所とは繋がっていないそうです。だから、外にある扉を叩いても壊しても、この部屋にある扉は壊れたりしないそうです。
 だから、なにがあっても、この部屋は安全だと言ってました。でも、ユナお姉ちゃんが冗談で「クリモニアが魔物に襲われたら、ここも危険かもしれないけどね」と笑いながら言ってました。
 でも、地下の部屋の中は安全だと思います。

 シア様は椅子から立ち上がると、部屋の中を歩き回ります。そして、クマさんの扉のところに行きます。
 扉は両扉になっていて、クマさんのレリーフが左右にあります。この扉を開けると、いろいろな場所に行くことが出来ます。本当に不思議な扉です。もしかして、ユナお姉ちゃんはこの扉を使って、クリモニアに来たのかもしれません。前に何処からの来たのかと尋ねたら、「もの凄く遠いところだよ」と言っていました。でも、二度と戻れないような雰囲気がありましたから、違うかもしれません。扉があれば戻れますからね。
 そんなクマさんの扉にシア様が触れ、扉に力を込めます。

「あれ、開かない」

 シア様は押したり、引いたりしますが、扉はびくともしません。

「シア様、その扉はユナお姉ちゃんじゃないと開きません」
「そうなの?」
「ユナお姉ちゃんが言うには、その扉はユナお姉ちゃんにしか開けられないそうです。だから、魔物も人も入ってくることはできません。だから、絶対に安全なんです」

 盗賊や怖い人が来てもこの扉を開けることはできません。

「それじゃ、横の壁を壊せば」

 シア様はコンコンと扉の隣の壁を叩きます。

「たぶん、壊れないと思います」
「本当にこの部屋は頑丈なんだね」

 頑丈と言うか、クリモニアの街のユナお姉ちゃんの家の下です。その壁の先はなにもないと思います。たぶん、土があるだけだと思います。だから、こちらから叩こうが壊れたりしないです。なにか、シア様に嘘を吐いているようで、心が痛みます。

「でも、それじゃ、窓もなにも無いから、外の様子が全然わからないね。ここが安全でも、外の様子が分からないと少し不安だね」

 この部屋には窓もありません。まあ、地下だから仕方無いです。窓があったらばれちゃいます。
 シア様は扉を開けるのを諦めて、戻ってきます。

「なにかあれば、くまきゅうちゃんが教えてくれるから大丈夫ですよ」
「そうだね。くまきゅうちゃんは魔物が近寄ってくれば、教えてくれるからね」
「くぅ~ん」

 くまきゅうちゃんがシア様の言葉に鳴きます。「任せて」と言っているのかな? ユナお姉ちゃんじゃないので、くまきゅうちゃんがなんて言っているのか分かりません。
 ユナお姉ちゃんはくまゆるちゃんやくまきゅうちゃんの言葉が分かるのが羨ましいです。わたしもくまゆるちゃんやくまきゅうちゃんと会話がしてみたいです。

「それにしても、ユナさんの家はクマだらけだね。家もクマだし、扉もクマだし。本人はクマの格好を馬鹿にされるのを嫌がるのにクマの格好しているし」
「クマが好きだから、バカにされるのが嫌なのかもしれないです」
「それなら納得かな。でも、あそこまでクマが好きな人、初めて見たよ。だから、クマの召喚獣まで手に入れることができたのかな?」

 そうかもしれません。
 家もクマさんだし、遠くと話せる魔道具もクマさんの形をしていますし、乗り物の馬車もクマさんです。ユナお姉ちゃんはクマさんが大好きなんだと思います。
 会話をしていると、シア様も落ち着いて来たみたいです。そして、シュリの様子を見ると、くまきゅうちゃんから離れて冷蔵庫を開けている。

「シュリ?」
「お姉ちゃん。アイスやケーキが入っているよ。食べていいのかな?」

 シュリも怖がったり、緊張している姿がない。良かった。もし、この部屋を使うようなことがあったら、ユナお姉ちゃんに「みんなを落ち着かせてあげてね」と頼まれています。どうやら、その心配はないみたいです。

「たぶん、良いと思うけど。食べすぎはダメだよ」
「うん!」

 シュリはアイスクリームを取り出すと、くまきゅうちゃんの背中で食べ始める。こぼしちゃダメだからね。
 アイスを食べ始めたシュリを見たシア様も、冷蔵庫からケーキを取り出します。

「フィナちゃんも食べる?」
「はい、お願いします」

 シア様が用意してくれたケーキを食べます。やっぱり、美味しいです。
 ユナお姉ちゃんが1人で魔物がいる島に残っているのに、こんなにのんびりしてていいのかな?
 もしかすると、1人で戦っているかもしれません。だからといって、一緒に戦えるわけじゃありませんから、部屋にいるしかありません。
 それにシア様やシュリを不安にさせるようなことは言えないです。

「暇ね」

 シア様が呟きます。
 アイスクリームもケーキも食べ終わると暇になります。

「あっ、ゲームがあるよ」

 シュリが棚の箱から遊び道具を見つける。シュリが見つけたのはリバーシとトランプです。そう言えば、ユナお姉ちゃんに時間を潰すときは、これで遊んでねと言われていたのを忘れていました。
 人はジッとなにもせずにいると悪い方向に考えるものだから、ゲームで遊べば気が紛れると言ってました。
 シュリ、ナイスです。

「それはなに?」
「面白いよ。シア姉ちゃん、一緒に遊ぼう」

 みんなでリバーシで遊ぶことになりました。

 パチ、パチパチ。白が二枚黒になる。
 パチ、パチパチパチパチ。黒が四枚白になる。
 黒いクマさんが白いクマさんに変わります。数えなくても勝敗は分かります。

「また、負けた~」
「くまきゅうちゃん、勝ったよ」

 シア様に勝ったシュリは嬉しそうにくまきゅうちゃんに抱きつく。

「さっきはフィナちゃんにも負けて、シュリちゃんにも負けた」
「仕方ないです。シア様は初めて遊んだんですから。わたしとシュリは孤児院のみんなとよく遊んでいますから、勝てる方法を知っています」
「このリバーシは単純だけど、駆け引きが合って面白いわね。相手に取らせることや、あとで取り返すことも考えたり、多少の駒を犠牲にして、端を取るようにしたり、考えないとダメね」
「多いところを取るだけじゃ、勝てないです」
「これもユナさんが作ったの?」
「はい。子供たちの遊び道具にって。あとよく分かりませんが、考える勉強になるって言ってました」
「確かに、考えるね。なにも考えずにやっても、勝てないからね。勝とうと思えば、いろいろと考えないといけないね」

 ユナお姉ちゃんは小さいときから考えることで、脳が発達すると言ってました。だから、リバーシもトランプも考えるには一番の遊び道具だと言ってました。
 トランプは数字の勉強になるそうです。
 足したり、引いたりするゲームもあります。みんな、遊びたいから一生懸命に足し算と引き算を覚えます。
 だから孤児院の子供たちは簡単な足し算と引き算はできるようになっています。
 それから、絵本で文字の勉強したりしています。でも、クマさんの絵本はわたしが出てくるので恥ずかしいです。もちろん、他の絵本もありますが、クマさんの絵本が人気があります。
 ユナお姉ちゃん、絵本の続きを描くのかな?

「それにしてもユナさん、遅いね。大丈夫なのかな? くまきゅうちゃん、外は大丈夫?」
「くぅ~ん」

 シア様がくまきゅうちゃんに尋ねますが、くまきゅうちゃんは緊張感がない顔で鳴きます。その顔が安心感を与え、(なご)ませてくれます。

「くまきゅうちゃんが言うなら、大丈夫なのかな。それならわたしも外に行きたいけど、扉は開かないんだよね」
「はい。盗賊も入ってこれないようにするため、ユナお姉ちゃんしか開けられません」
「でも、ユナさんにもしものことがあったら、わたしたちこの部屋から出れるの?」

 隠し扉から出ることは出来ます。でも、それはまだ言えません。

「ユナお姉ちゃんは強いから、どんな魔物が来ても大丈夫です」
「ユナさん、あんな格好しているのに凄く強いからね。黒虎(ブラックタイガー)を倒したときは凄かったよ。そのあとの100体はいるウルフ討伐も1人で倒しちゃうし」

 タイガーウルフにブラックバイパー、ゴブリンキング、スコルピオンも倒している。本当にユナお姉ちゃんは凄いです。

「それになにかあれば、ユナお姉ちゃんが戻ってくると思います」
「そうよね。黒虎(ブラックタイガー)を倒すほどだもんね。ヴォルガラスぐらいなら、心配しなくても大丈夫かな?」
「シア様、ヴァルガラスは強いのですか?」

 ヴォルガラスの話はあまり聞いたことがないので、強さが分かりません。

「う~ん。普通の人からしたら脅威だけど。ユナさんほどになれば、危険はないんじゃないかな? ユナさん剣も魔法も使えるし。騎士団長のルトゥム様にも勝っちゃうぐらい強いから、ヴォルガラスぐらい大丈夫だと思うよ」

 ルトゥム様って、たしか学園祭でユナお姉ちゃんが戦った騎士様のことだったはずです。あのときの試合は凄かったです。ユナお姉ちゃん、格好良かったです。

「それじゃ、ユナさんが戻って来るまで、もう一回勝負しようか。今度は負けないよ」

 それから、わたしは気を紛らすため、リバーシやトランプをしました。
 そして、しばらくするとクマさんの扉が開きました。


フィナは一生懸命に誤魔化しました。

※BOOK☆WALKER様にて1~5巻セットの電子版が30%OFFの購入締め切りが4月13日までとなっています。029先生と作者のサインがもらえるかも? 作者のサインが邪魔とは言わないでくださいね。その気持ちは解りますからw
詳しくは活動報告でお願いします。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ