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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、従業員旅行に行く。

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364 クマさん、島を歩く (4日目)

「でも、綺麗な場所ですね」

 島の海岸を歩く。意外と草木は少なく歩きやすい。島の内側に行けそうなところもある。全てが草木で覆われてはいないようだ。
 シアの言う通りに遠くを見る分には見晴らしは良く、綺麗だ。ただ、崖の下を見ると渦潮が回っているので、怖さも感じる。天国と地獄の境と言われても違和感はない。
 一番の不安はフィナたちが落ちないかだけど。フィナもシュリも言い付けを守ってくまゆるとくまきゅうに乗っているので、その心配もない。

 シュリの方を見ると先ほど取ってあげた2つのリンゴの1つをくまきゅうにあげて、もう1つのリンゴを小さな手で持って、美味しそうにかじっている姿がある。

「くまきゅうちゃん、美味しいね」
「くぅ~ん」

 果物がこんなになっているなら、クマの転移門を置いて、好きなときに取りに来るのも良いかもしれない。
 そして歩き続けると、今度はバナナを発見する。まさか、バナナまであるとは思わなかった。でも、バナナは緑色ですぐには食べれそうもなかった。今度取りに来たいね。
 わたしはあらためて周囲に生えている植物を見る。
 うーん、歩いていておかしいと思っていたけど。やっぱり、この島はいろいろとおかしい。

「ユナさん。この島、なにかおかしくないですか?」
「シアもそう思う?」

 地域や季節に関係なく果物があったり、植物が生えている。あれは椰子の木だよね。小さな島に世界の植物があるって感じだ。この島が世界中を動いているなら、鳥が種とか運んで来る可能性は十分にあり得る。
 でも、それが育つかは別の話になる。

「わたしも学園にある図鑑で見ただけだから、はっきりとは言えませんが、違う地域の植物が生えてます」
「だよね」

 シアの言葉にわたしは頷く。
 初めはオレンやリンゴがあることに喜んだけど、バナナとか椰子の木とか、ありえないでしょう。いくら、動く島でいろいろなところに行っているとしても、環境が違う植物が育つのはありえない。 
 もしかして、変な島に来ちゃったかな?
 一応、探知スキルで確認するが、魔物の反応はない。わたしの考えすぎなら、いいんだけど。

「そんなに変なんですか?」

 なにが変なのか分からないフィナが尋ねてくる。

「そうだね。あの木がリンゴの木と一緒にあるのが、まずおかしいね」

 わたしはバナナがなっている木を指す。

「植物はね。その地域によって、育つものが違うんだよ。もちろん、同じようなものもあるけど、その地域にしか育たないものもあるんだよ」
「そうなんですね。知りませんでした」

 まあ、学校も行っていないし、初めて見る植物もあるだろうし、知らなくても仕方ない。

「わたしも学園で知ったから、恥ずかしがることはないよ」

 そして、わたしたちは周囲を確認しながら、島の周りを半周ほどする。
 島を半周ほどすると、開けた場所に出る。ここまでに魔物の反応はない。この島には魔物はいないみたいだ。獣も出くわしていない。

「うわぁ、綺麗です」

 少し高台になっていて、水平線が見える。綺麗だね。何もない海が続いている。

「海がどこまでも続いています」

 フィナは両手を広げて、大きく息を吸う。それをシュリが真似をする。

「ユナお姉ちゃん。この海の先には何があるんですか?」
「うーん、行ったことがないから分からないけど。ずっと進めば陸があると思うよ。そして、そこには見知らぬ人が暮らしていると思うよ」
「見てみたいです」
「わたしも~」
「そうだね。いつかは見て見たいね」

 いつかは別の大陸に行ってみたいものだ。ここから行くなら和の国になるのかな。
 でも、何日も船に乗るのは面倒くさいんだよね。
 高台から降りて、残りの半周を回ろうとすると、フィナがなにかを見つける。

「ユナお姉ちゃん、あれは?」

 フィナが指差す先には大きな不自然な大きな石がある。フィナはくまゆるから降りると大きな石に近寄る。

「ユナお姉ちゃん。この石に文字が書かれているよ」

 フィナの言葉にわたしたちは駆け寄る。

「これは石碑?」

 わたしの背よりも高い石碑に文字が刻まれている。
 一瞬、誰かのお墓と思ったが違うみたいだ。石碑は長い間放置されていたのか、薄汚れている。わたしは水魔法を使って、石碑の汚れを落とす。
 えっと、なんて書かれているのかな?

『この島に来た者に告ぐ。この島のことを知って来た者が悪意を持つ者でないことを祈る。もし、偶然に島に来た者がいたら、島が動き出す前に立ち去るがよい』

 どう言うことだろう。悪意を持つ者って、それに島が動くことを知っているってことだよね。

「……クリュナ=ハルク」

 わたしが続きを読もうとすると、シアが一番下に書かれている文字を見て、驚いている。

「どうしたの?」
「ここにクリュナ=ハルクの名が」

 シアは名前が書かれている箇所を指差す。

「誰?」
「ユナさん、知らないんですか!?」

 うん、異世界から来たわたしは知らないよ。もしかして、超有名人で知らないと不味い人? わたしはフィナやシュリの方を見る。

「知りません」
「わかんない」

 良かった。知らない仲間が2人もいた。
 どうやら、それほど有名な名前ではないみたいだ。シアの口ぶりからして、誰でも知っている名前かと思ったよ。もし、誰でも知っている有名人だったら、怪しまれていたかもしれない。

「え~~、3人とも知らないんですか? クリュナ=ハルクですよ。クリュナ=ハルク」

 何度も名前を連呼されても、知らないものは知らない。歴史上の人物だろうと、現在生きている有名人だろうが、異世界歴、数ヶ月のわたしの知識の中にはない。

「それで、誰なの? そのなんとかハルクって」
「クリュナ=ハルクですよ。Aランク冒険者で、冒険家で有名な」

 シアは力を込めて言うが知らないものは知らない。

「ごめん、知らない」
「はい、知らないです」
「知らないよ」

 3人に言われて、シアは落ち込む。

「冒険者なら、みんな知っていると思っていました」
「それで、そのクリュナ=ハルクって有名なの?」
「はい。冒険者なら目指す者もいますし、学園の教科書にも書かれています」
「冒険者なのに?」
「どちらかと言うと、冒険家として有名です。危険な地帯や人が誰も行かないところに行ったりするんです。誰も知らない植物を発見したり、誰も見たことがない魔物を討伐したり、凄い人なんですよ。彼のおかげで、新事実がわかったことが沢山あります」

 シアは興奮気味に説明する。
 クリュナ=ハルクって、そんなに有名人だったんだ。

「つまり、この石碑はクリュナ=ハルクって冒険家が作ったってこと?」
「誰かがクリュナ=ハルクの名を騙ったりしていなければ、そうだと思います」
「まあ、こんな誰も来なさそうな島で名を騙る必要はないから、本物の可能性が高いね」

 わたしは石碑に書かれている文字の続きを読むことにする。

『もし、この地について知る者が現れたなら善意ある者だと信じる。石碑に触れ、その魔力を込めよ。悪意有るものは触れることは許されん』

 そして、最後に名前が刻まれている。わたしが触れて魔力を込めようとしたが、シアがペタペタと石碑に触れている。

「なにをやっているの?」
「えっ、だって、善意がある者よ触れよ。って書いてあるから。でも、なにも反応がないです」

 ペタペタと石碑に触れているシアの真似をしてシュリもペタペタと触っている。

「シアに悪意があるってことじゃない?」
「ユナさん、酷いです」
「ユナ姉ちゃん。わたし悪い子じゃないよ~」

 シアに言ったのにシュリまでが頬を膨らませる。

「冗談だよ。魔力が少ないんじゃない?」

 魔力を込めよって書いてあるし。
 わたしは2人に代わって石碑に触れる。そして魔力を込めてみる。すると石碑が輝きだす。

「眩しいです」
「うぅ、眩しいよ~」
「シュリ」

 全員、目を閉じ、フィナがシュリを背中で庇ったところまで見えた。わたしもクマさんパペットで目を塞ぐ。そして、徐々に光が消えていく。目を開けて石碑を見ると、石碑の中から本が出てくるところだった。そして、本はゆっくりとわたしのところにやってくると、クマさんパペットの上に落ちる。
 石碑の中から本?

「ユナさん、大丈夫ですか? それとその本は?」
「その石碑から出てきたよ」

 さすがに異世界って言うべきか、たまに予想外の出来事が起きて驚かされる。

「ユナさん。それはもしかして、クリュナ=ハルクの本ですか!」
「なにそれ?」
「クリュナ=ハルクが冒険した話が書かれている本です。文献としても信用されている本なんですよ」

 なにか、ゲームに出て来そうなレア本みたいだ。

「そんな本がここにあるなんて、感動です。ユナさん、見せてください」

 今にもスキップしそうな勢いで本を見つめる。

「わたしも見る~」
「わたしも見たいです」

 わたしは皆が見えるように本を開く。えっと、『この本を手にしたってことは善意の者だと思う。心に悪意がある者には手に取ることは出来ない』

 どうやって判断しているか分からないけど、善意があるものって言われると、恥ずかしくなってくるんだけど。それ以前にわたしが善意? 自己中の塊のわたしだよ。この善意の判断基準、間違っているんじゃない?
 わたしが続きを読もうとすると、皆から予想外の言葉が出てくる。

「真っ白です」
「なにも書いていないよ」
「えっ、クリュナ=ハルクの本じゃないんですか!」
「なにって、ちゃんと書いてあるでしょう」
「えっ、真っ白で何も書いていないですよ。そうだよね。フィナちゃん、シュリちゃん」

 シアは2人に同意を求める。

「はい、何も書いていないです」
「うん、何も書いていないよ」

 どうやら、本当にみんなには本に書かれている文字は見えていないようだ。

「クリュナ=ハルクの本であっているよ。どうやら、わたししか見えないみたいだね」

 ってことは魔力が関係あるのかな?

「そうなんですか? ううぅ、クリュナ=ハルクの本が読めないなんて悔しいです。ユナさん、本には何が書かれているんですか?」

 わたしは軽く本を捲って軽く目を通す。

「どうやら、そのクリュナ=ハルク って探検家がこの島を調べたことが書かれているね」

 もしかして、この島の謎が書かれているんじゃない?

謎の本をゲットです。
初のランクAの冒険者の名前が出てきました。

次回、投稿が一日遅れるかもしれません。遅れたら、すみません。
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