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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、砂漠に行く
322/907

317 クマさん、大サソリと戦う

 1人残ったわたしはスコルピオンに視線を向ける。


「さて、残ったはいいけど、どうしようか。くまゆる?」


 一緒に残ったくまゆるに問いかける。


「くぅ~ん」


 そんなことわからないよ、的な顔をするくまゆる。

 それはそうだよね。


「炎の熊で焼けるかな」


 ちょっと、イメージしてみる。甲殻を焼けなくても、中は熱で焼けるかもしれない。鍋をねっすれば熱は裏側まで伝わる。中に熱が伝われば、中を焼くことができるかもしれない。

 くまゆるを見ると、「くぅーん」と鳴いて、小さく首を横に振っている。

 なんでかな?

 くまゆるは体を起こすと、自分のお腹に手を触れる。


「お腹が痛いの?」

「くぅ~ん」


 くまゆるは首を横に振る。

 どうやら、違ったらしい。

 くまゆるは首を動かして、大きなスコルピオンを見る。


「スコルピオン?」


 くまゆるのお腹……、スコルピオン……、それに導かれる答えは……、えっと……。

 ポン。ああ、分かった。


「水晶板か」


 わたしの答えが合っていたのか、くまゆるは嬉しそうに鳴く。

 自分のお腹を触っていたのはスコルピオンの中の水晶板を表していたらしい。

 そうだよね。水晶板の強度がどれほどのものかわからない。クマの炎の熱で耐え切れるとは思えない。クマの炎はかなりの温度だ。クマの炎で熱したら、壊れるかもしれない。電化製品は温度を上げれば壊れる。

 パソコンもそうだから、夏の間はエアコンを付けっぱなしだった。


 でも、そうなると同様に電撃系の魔法も使えない。体内でどのような影響を与えるか分からない。体内に電撃が流れて水晶板が割れでもしたら、取り返しがつかなくなる。そう考えると内部破壊の魔法は使えない。

 あとは水、氷、風、土になるけど、どれも致命傷を与えられる気がしない。

 戦う前はクマさんチートを使えば簡単に倒せるかと思ったりしたけど、体内にある水晶板のことを考えると、攻撃方法が狭まれていく。

 これは意外と面倒な戦いになるかもしれない。

 教えてくれたくまゆるの頭を撫でてお礼を言っておく。


 それじゃ、大きなスコルピオンと戦う前に、邪魔な小さなスコルピオンの処理といきますか。

 わたしは2、3階ほどの高さから身を乗り出して、真下辺りに歩いているスコルピオンめがけて、氷の矢を放つ。

 氷の矢はスコルピオンの背中に突き刺さる。でも、なにごともなかったように歩いている。

 途中で止まった?

 甲殻が硬いせいなのか、氷の矢に威力がなかったためか、今の程度の攻撃では倒せないみたいだ。

 雑魚だと思って、少し甘くみていたかな?

 もっと、硬く、鋭く、速くしないとダメみたいだ。

 氷の矢が刺さったスコルピオンは尻尾を上に向ける。そして、上にいるわたしに向けて針を飛ばしてくる。わたしはとっさに体を低くして避ける。

 わたしは体を這いずりながら下を見る。すると、スコルピオンが集まり出してきた。

 ちょ、速いよ。

 一本の氷の矢を放っただけだよ。

 どんだけ連携が取れているのよ。でも、ここにいれば大丈夫のはず。と、思っていたら、スコルピオンが壁をよじ登ってくる。

 冗談でしょう。しかも、登ってくる速度が速い。

 でも、これで通路の壁を塞いだことは正しかったことになる。万が一にもスコルピオンがここからカリーナたちを追いかけることはできなくなった。


 わたしは登ってくるスコルピオンの真上に移動する。スコルピオンは本能のまま壁をよじ登ってくる。真上のポジションを取れば、がら空きの頭が当ててくださいと言わんばかりにわたしに姿を見せる。

 わたしは小さな口をカチカチさせながら登ってくるスコルピオンの口にめがけて、硬く、鋭く、速い、氷の矢を放つ。氷の矢はスコルピオンの口に突き刺さり、地面に落ちて動かなくなる。

 どの生物もそうだけど口は弱点だ。歯とか防がれなければ、体内を破壊して終わりだ。

 わたしは、よじ登ってくるスコルピオンの口をシューティングゲームのように、狙い撃ち落としていく。数は多いけど確実に数は減っていく。


 単純な作業でスコルピオンを全滅させることができるかと思ったけど、大きなスコルピオンがゆっくりと動き出す。そして、頭がわたしの方へと向く。ギョロっとした黒い目がわたしを捉えた。気持ち悪い。

 大きなスコルピオンは尻尾を高く上げると、尖端をわたしに向ける。わたしはとっさに頭を下げて、伏せる。大きなスコルピオンから数発の針が飛び出す。

 針はスコルピオンが登ってこようとしていた壁やわたしの後ろの壁に当たり、一部の壁が崩れ落ちる。そのおかげで登ってこようとしていたスコルピオンは地面に落ちる。

 針の大きさはわたしの腕ほどの大きさがある。先が尖っている。当たったらクマさん装備でも大丈夫か不安になる。衝撃は耐えられると思うけど、尖った先がどうしても気になる。クマ服が突き破られるとは思わないけど、ぶつかったときのイメージが湧かない。

 だからと言って、試しで喰らうつもりはない。


 大きなスコルピオンは攻撃の手を休めない。さらに針を飛ばしてくる。小さなスコルピオンも諦めずに壁を登ってこようとする。これは(まず)いかも。小さなスコルピオンと戦いながら、大きなスコルピオンと戦うのは面倒だ。できればもう少し、数を減らしたかったところだ。


 わたしは小さなスコルピオンを攻撃をしながら、くまゆるを呼ぶ。

 このまま、くまゆるを出したままだと危険なので送還させるためだ。もちろん、くまゆるの戦闘能力を疑うわけじゃない。でもスコルピオンの攻撃だけじゃなく、わたしの攻撃の巻き添えを喰うかもしれない。

 だから、くまゆるにもしものことがあったら危ないので送還することにした。

 でも、くまゆるは少し嫌がる感じに「くぅ~ん」と鳴く。


「わたしは大丈夫だから」

「くぅ~ん」


 わたしはくまゆるを撫でるが、くまゆるは嫌がる。


「危ないから、お願い」

「くぅ~ん」

「ゴメンね。戦いが終わったらぶから」


 わたしは嫌がるくまゆるを送還させる。心配してくれるのは嬉しいけど。わたしだって、くまゆるのことが心配だ。もし、くまゆるにもしものことがあったら、後悔しても後悔しきれない。きっと、自分が許せなくなる。

 くまゆるとくまきゅうはわたしの大切な家族だ。大切な家族を危険な目に遭わせるわけにはいかない。

 わたしは心の中でくまゆるに謝る。

 あとでちゃんと召喚するから許してね。

 でも、それには大きなスコルピオンを倒さないといけない。


「それじゃ、あばれますか!」


 わたしは周囲を気にせずに暴れることにする。わたしは2~3階ほどの高さから飛び降りる。

 わたしは両手にくまゆるナイフとくまきゅうナイフを握り締める。

 命名、黒い柄のミスリルナイフはくまゆるナイフ、白い柄のナイフはくまきゅうナイフと名づけた。相変わらずのネーミングセンスだけど、ガザルさんがわたしのクマさんパペットの色に合わせて作ってくれた。それなら、その色に合わせて名前を付けた。

 わたしはナイフを両手に握り締めながら、小さなスコルピオンに向かって走り出す。そして、水魔法を小さなスコルピオンに向けて放つ。水をかけられたスコルピオンは一瞬硬直をする。わたしは右手に持つくまゆるナイフで尻尾を切り、首にくまきゅうナイフを差し込む。

 わたしはそのまま、二匹、三匹と斬り倒したところで、大きなスコルピオンがゆっくりと体を動かす。尻尾の向きがわたしを追尾している。そして、想像通りに針を連射するように飛ばしてくる。


「ちょ」


 わたしは足に力を入れて、横に躱す。そのまま、大きなスコルピオンの周囲を右回りに走りながら、小さなスコルピオンを水魔法で動きを止め、くまゆるナイフとくまきゅうナイフで切り捨てていく。

 それにしても、本当にカリーナたちには戻ってもらってよかった。

 自分が戦っている姿を見られたくない。

 もちろん、チートの力を見せるわけにもいかない。怖がらせたかもしれない。なによりも、クマの着ぐるみの格好で魔物と戦っている姿なんて、シュール過ぎて見せられたものじゃない。

 もし、ゲーム内で着ぐるみ姿のキャラが魔物と戦っているのを見たら、わたしなら間違いなく笑う。

 クマの着ぐるみが魔物に武器で攻撃をしたり、クマの着ぐるみが周囲を走ったり、クマの着ぐるみが魔法を放ったり、クマの着ぐるみが飛び跳ねたりする。

 そんな姿を見たら、笑いものだ。

 でも、元いた世界と異世界の常識は違う。カリーナは笑ったりはしない。心配する顔が浮かぶだけだ。

 わたしは息を吸って気持ちを入れ替える。


 わたしは大きなスコルピオンの周囲を走りながら、小さなスコルピオンを倒して、数を減らしていく。その間も大きなスコルピオンはわたしを追尾して、針を飛ばしてくる。

 うっとうしい!

 でも、小さなスコルピオンを倒さないと足をすくわれることになる。

 わたしが半分ほどの小さなスコルピオンを倒すと、大きなスコルピオンがクルッとその場で回ると尻尾を伸ばして、遠心力で尻尾を回す。

 速い!

 大きなスコルピオンの尻尾がわたしに迫ってくる。わたしは上に跳んで躱す。わたしが居た場所を物凄い速さで大きな尻尾が通る。その通った場所には小さなスコルピオンがいた。小さなスコルピオンは尻尾に巻き込まれて、弾け飛ぶ。そして、弾け飛んだスコルピオンは壁に衝突して息絶える。

 スコルピオンの死骸は威力を示すように潰れている。

 そんな攻撃を喰らったら、たまったものじゃない。たとえ、痛くなくても嫌だ。

 でも、これでスコルピオンが数匹減った。さらにスコルピオンはゴキブリのような素早さで横穴の巣に逃げ出し始める。

 これはこれでラッキーなのかな?

 これで周囲を気にしないで、大きなスコルピオンと戦うことができる。


 こっからが、本当の勝負だ。

 大きな水球を作り、大きなスコルピオンに向けて投げる。スコルピオンは回転させた尻尾で水球を破壊する。破壊された水球はスコルピオンに降りかかるが、動きは止まらない。

 いろいろと確かめるためにくまゆるほどの大きさの水球をスコルピオンに向かって撃ち込む。尻尾によって打ち落とされたものもあるが、数発はスコルピオンに命中する。

 でも、水がかかっても動きは鈍くならない。

 雑魚スコルピオンとは違うみたいだ。


 水は駄目と。

 次にベアーカッターを撃ち込む。大きな鋏で防がれる。少し傷が付いたぐらいだ。やっぱり、硬いものは切れないか。

 次に大きな岩を作り、おもいっきり回転をさせて放つ。スコルピオンは両手のハサミで顔を守る。

 岩はスコルピオンの甲殻をへこませる。

 力技が有効かな。

 でも、衝撃でスコルピオンの中にある水晶板が振動で割れたりしないか心配になる。

 どうしても、スコルピオンの中にある水晶板が気になって、思い切った攻撃ができない。

 段々とストレスが溜まってくる。

 それに狭い空間が、思ったよりも戦い難い。間合いが取りにくいのが厄介だ。

 そして、なによりも考える時間を与えてくれない。

 スコルピオンが迫ってくる。右手の大きな鋏でわたしを挟もうとしてくる。わたしは左周りに走り避ける。でも、その瞬間、クルッとスコルピオンの大きな体が回転する。

 わたしはジャンプして躱し、入ってきた入口の高台の部分に着地する。

 くそ、厄介だ。

 一度、戻って対処方法を考えた方がいいかな。

 わたしが一呼吸して、対処方法を考えようとするが、相手はそんな時間は与えてくれない。尻尾をわたしに向けると針を飛ばしてくる。

 わたしの後ろ上の壁が針の衝撃によって崩れ落ちてくる。

 ちょっとは考える時間をちょうだいよ。


 ああ、燃やしたい。電撃を使いたい。体内を焼きたい。おもっきり攻撃をしたい。ストレスが溜まっていく。弱い相手にいい気になって攻撃をされている気分だ。

 鼻をへし折りたくなってくる。

 地面に降り立ち、スコルピオンの正面に立つ。

 正面に立つと顔が怖い。気持ち悪い。這いずりよってくると、鋏を振り落としてくる。わたしは横に避け、前方にジャンプする。そして、スコルピオンの頭を土台にして、背中に降り立つ。

 絶好の勝機。

 わたしはくまゆるナイフに魔力を流して甲殻に突き刺す。くまゆるナイフは簡単に突き刺さる。くまゆるナイフとくまきゅうナイフで背中を斬っていく。

 でも、体内まで届いていないのか、血らしきものはでない。甲殻部分が厚いのか、ナイフは奥まで到達していないみたいだ。

 これはナイフじゃなくて、長い剣にしておけば良かったかな。本当ならナイフで傷つけた箇所から魔法を撃ち込みたい。でも、水晶板が近くにあったらと思うとできない。

 わたしがスコルピオンの背中で戸惑っていると、尻尾が襲いかかってくる。わたしはくまゆるナイフを横一閃に薙ぎ払う。尻尾の先が切れる。これで針を飛ばすこともできないはず。

 そう思ったのは一瞬で、尻尾の先が盛り上がると、新しい針先が出てくる。

 そんなのあり?

 これは根元から切り落とさないと駄目ってやつ?

 さて、どうしたものか。 




次で決着すると思います。

討伐方法は心の中に留めておいてもらえると助かります。

大した討伐方法ではありませんが、当てられると凹みますので……


次回、通常投稿(三日後)になるはず?


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 倒し方当てられたら凹むってそんなに自分の考えた倒し方が特別だと思ってるのかな。この小説は特別だけど魔物や倒し方は二番煎じだと思うし変なプライドは捨てればいいのに
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