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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、学園祭に行く

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270 クマさん、合奏を楽しむ

「凄かったね」
「うん。最後の剣がぐるぐる回って、カシャンって格好良かった」

 シュリは腕をぐるぐる回して、剣を鞘に仕舞うポーズを取る。
 ちびっこたちは興奮が収まらずに騒いでいる。わたしも感動した。こう言う異世界っぽいのが見たかった。

「ユナは出来ますか?」

 ティリアはシュリに聞かれた質問をわたしにしてくる。

「あれは練習の賜物だからね。最後の剣を回して、鞘に収めるぐらいだったら出来るかもしれないけど」

 ゲーム時代に剣を握ったのが嬉しくて、抜刀の練習とかをした。あと、魔物を倒したあとに格好良く剣を仕舞う動作をしていた恥ずかしい思い出がある。
 似たような感じだからやろうと思えば出来るかも知れない。

「それは見てみたいですね」
「見せる機会があったらね」

 日本人特有の断り方だ。
 時間があったら行くね。と言う断り方と同義だ。
 わたしもゲームでパーティーに誘ったことがあった。それで、時間があったら行くねと返事をされたが現れることが無かった。あとで問い合わせると「だから、時間があったらと言ったでしょう」と言われた。これは遠まわしの断り方だ。

「今でもいいですよ」

 どうやら、日本人特有の断り方は通じなかったみたいだ。
 今度は分かりやすく、こんなところで武器を出すことが出来ないと丁重にお断りする。
 ティリアは残念そうにしたが、制服を着ているから目立つことはしたくない。学園の教師にでも見つかったら面倒になる。ティリアがいるとしても説明だけで時間が取られる可能性がある。学園祭の時間は有限だ。大切にしないといけない。

「次はどうする?」

 剣舞をしていた場所は休憩を挟んだあと、もう一度やるらしい。もう一度、見ても良いんだけど、ティリアが別の提案を出す。

「そうね。みんなが感動したみたいだから、次も感動ものを見に行こうか。時間的に間に合うはずよ」

 ティリアは近くにいたノアとミサの手を掴むと走り出す。

「ティリア様!」
「ユナたちも行くわよ」

 ノアの叫びを無視して走るので、わたしたちもティリアを追いかける。ティリアの案内でやって来たのは、大きな建物。円形のような形をしている。
 なんだろう。体育館みたいだけど。もっと、大きく、ヨーロッパにある神殿のような建物?
 そんな建物に学生や一般の人が中に入っていく姿がある。

「中でなにかあるの?」
「入れば分かるよ。でも、楽しんでもらえると思うよ」

 未だに何を見るか教えてくれないティリア。でも、一般の人や学生が入って行くから大丈夫だと思うけど、少し不安になる。
 ティリアを先頭にわたしたちは、体育館っぽい建物の中に入って行く。
 中に入ると、正面には大きなドアがあり、開いている。建物の中に入った人たちはドアの中に入っていく。わたしたちも入るのかと思ったら、ティリアは左の通路に歩き出す。

「こっちだよ」

 中を覗きたかったけど、ティリアが歩き出すので中を見ることは出来ない。
 進むと階段があり、登って行く。最上階に上がるとドアが並んでいる。ティリアは迷うこともなく歩き、真ん中辺りのドアの前で止まる。そのドアは他のドアと違って大きい。ティリアはドアの近くにある魔石らしきものに触れる。すると、鍵が開いたような音がすると、ドアが開く。

「それじゃ、中に入って」

 シュリは部屋の中に入ると、小走りに部屋にあるバルコニーらしきところに移動する。フィナが追いかけ、ノアたちも続く。
 ここはどうやら、劇場のような建物で、ここは見る場所みたいだ。しかも、最上階の中央の部屋になる。たぶん、この階にあったドアは全て、このような部屋になっているんだと思う。

「ティリア、ここは?」
「王族が使う部屋かな? 滅多に使わないんだけど、王族が鑑賞するときにここを利用するの」

 つまり、ここは王族専用の部屋ってことになる。
 そんな部屋のバルコニーから見渡すと、一番奥に舞台らしきものも見える。その舞台の前には椅子があり、人が座っている。

「わたしたちが入っても良いの?」

 わたしの質問に、ノアとミサの2人が頷いている。たぶん、平民のフィナたちよりも貴族のノアたちの方がここの場所の意味を理解しているのかもしれない。

「大丈夫よ。わたしもいるし、この部屋が使用される話も聞いていないから、安心していいよ」

 安心できる要素がどこにもないんだけど。フィナなんか緊張しているよ。貴族であるノアやミサでさえ、どうしたらいいか、困っている。唯一、シュリが部屋を目を輝かせながら見ている。

 それ以前に王族が使う部屋を平民が使っちゃ駄目でしょう。貴族のノアとシアならまだしも。その観覧席の立派な椅子は国王と王妃様の椅子だよね。
 椅子同様に部屋にあるソファーは素人のわたしでも分かる高級感が漂っている。

 でも、そんなことを気にもしていないティリアはみんなに向かって、「それじゃ、みんなは適当に座って」と言い出す。
 座ってと言われても誰も椅子には座らない。シュリが座ろうとしたのをフィナがシュリの手を掴んで離さない。
 まあ、あの国王や王妃様ならなにも言わないと思うけど。国王が座る椅子には座りたくないだろう。わたしだって座りたくないよ。
 なので、全員は丁重にお断りして、部屋の提供だけ、受け取っておく。

「それで、なにか始まるの?」

 観客だろうと思う人が集まっている。舞台もあるし、なにかやるんだと思うんだけど。

「この時間なら、合奏だったはずよ。とっても素晴らしいから、聞いてみるといいよ」

 それは楽しみだ。
 全員でバルコニーから舞台を見ていると、楽器を持った学生が舞台に上がって行く姿がある。
 学生が舞台に上がると、全員で一礼をする。そして、演奏が始まる。
 音は大きく、建物の中に響き、心まで伝わってくる。音楽に詳しくないわたしでも、素晴らしいことだけは分かる。シュリもフィナも経験したことない合奏を目を見開いて舞台を見つめている。
 もちろん、ノアもミサも聞き惚れている姿がある。
 何度か曲が変わるが、そのたびに聞き惚れる。全て、初めて聞く曲だけど、どれも、心に響いてくる。
 全ての曲が終わり、学生が一礼して、舞台から下がっていく。わたしを含め、みんなが拍手をする。
 ちなみに、拍手をしたかったのに、クマさんパペットをしていたため、ポフポフとしか拍手にならなかった。

「凄かったです。わたし、こんな合奏を聞いたのは初めてです」
「喜んでもらえて嬉しいわ」

 フィナの感想にティリアは喜んでいる。たしかに、フィナではないけど。良いものを聴かせてもらった。こんな場所で学生とは言え、素晴らしい演奏を聴かせてもらった。

「お姉様も出来るのかな?」

 シアが楽器か。似合っていると思うけど。どうなんだろう。やっぱり、貴族だと練習をさせられるのかな?

「それで、合奏は終わり?」

 もう少し、聴いてみたいけど。学生は舞台から降りている。

「たしか、次は演劇だと思うけど、見ていく?」

 演劇か、見てみたいな。合唱がこのレベルなら、演劇にも期待が持てる。

「みんなはどうする?」
「みたい!」
「わたしも構いませんよ」

 みんなから反対意見は出ないので、見ていくことになった。
 準備中、飲み物をだして、開催されるのを待っている。そんなとき、ドアが開く。

「なんだ。誰かいるのか?」
「お父様?」
「ティリアか。どうしてここに?」
「おねえちゃん?」

 部屋に入ってきたのは国王で、その後ろからフローラ様が入ってきて、ティリアに抱きつく。さらに王妃様まで入ってきた。

「あらあら、お客様がいっぱいね」

 王妃様がわたしたちを見て、微笑む。

「お父様、どうしてここに?」
「フローラが学園祭に行きたいと言い出してな。来たはいいが、俺たちが歩くと目立つからな。ここなら、騒がれることがないから、来たわけだ」

 確かに、国王様や王妃様にフローラ姫が歩いていたら、間違いなく騒ぎになる。それに、護衛もいるだろうから余計に目立つ。

「ふふ、なにを言っているんですか、あなたが仕事をサボってフローラを口実にお城を抜け出したのでしょう」

 王妃様がいきなり暴露して、国王が慌てだす。

「フローラが行きたがっていたのは事実だろ」
「そうですが、護衛の方もいらっしゃいますから、わたしとフローラだけでも大丈夫でしたよ」

 国王はなにか言いたそうにしたが、口を閉じる。そして、わたしを見るがすぐに視線は通り過ぎ、フィナとノアの方に視線が移る。

「そっちにいるのはエレローラの娘のノアールだったな」

 ノアを見たあと、フィナとシュリを見る。

「たしか、フィナちゃんとシュリちゃんよね」

 王妃様が答える。
 そして、フローラ姫がシュリの方に近寄って、嬉しそうにする。

「なんだ、知っているのか?」
「シュリちゃんはフィナちゃんの妹よ。こないだ、お城に来たときにお話をしたわ」
「ああ、エレローラの奴が、俺にユナが来たことを報告させなかったときか。しかも、また、食べ物を持って来たんだろう」
「ええ、甘くて、とっても美味しかったわ」
「あまくて、ふわふわだった」

 先日、お城見学をしたときのことを言っているんだね。あれはわたしは悪くない。エレローラさんが止めたんだ。

「フィナと言ったな。ユナに会ったら、お城に来ることがあったら、俺の分も用意しとくように言っておいてくれ」

 えっと、目の前に本人がいるのに、フィナにわたしのことを伝言される。フィナは困ったようにわたしを見る。でも、わたしから、名乗り出るのもね。ティリアも少し笑みを浮かべて黙っているし。ノアもミサも自分からは国王に話しかけたりはしない。
 それから、国王はミサの方を見る。ミサのことを知らなかったようで、ミサは国王に挨拶をする。

「ファーレングラム家の娘か。いったい、どんな組み合わせなんだ」
「お父様がユナを紹介してくれなかったので、友人にユナを紹介してもらいました。そのときに知り合いになりました」

 国王は部屋の中を見渡す。わたしをチラッと見て、考え込む仕草をする。
 一応、国王はわたしの顔を、始めてあったときに見ているよね。まあ、ほんの少しの間だったけど、胴体がクマじゃないから、認識出来ないとか?

「おまえさん、どこかで会っているか?」

 わたしに向かって尋ねる。
 はい、何度も会ってますが。

「あなた、先程からなにを言っているのですか。その女の子はユナちゃんですよ」

 王妃様がニコニコしながらわたしの方を見る。

「「「「「…………!」」」」

 その言葉にわたしも含め、この部屋にいた全員が驚きの表情を浮かべた。

「そうか、見覚えがあると思ったら、ユナか」

 やっぱり、忘れていたのね。

「一度、見ていますよね」
「わ、忘れていたわけじゃないぞ。おまえがクマの格好をしてないから、すぐに分からなかっただけだ」

 つまり、胴体のクマで認識していると。

「それで、どうして、おまえはそんな変な格好をしているんだ」

 この人、変な格好って言ったよ。どうして、制服姿が変な格好になるの。クマの格好をしても変と言われ、普通の制服を着ても変と言われ、わたしにとって変でない服ってなんだろう。

「シア。……エレローラさんの娘のシアにクマの格好だと目立つから、と言われて、着せられました」

 変な格好をしている理由を説明する。国王はわたしのことをジロジロと見る。

「なんですか?」
「いや、おまえも普通の格好をすれば、普通の女の子に見えるんだと思ってな」

 失礼だ。クマの格好をしてても中身は普通の女の子だ。
 わたしが、少し膨れていると、フローラ様が近づいてくる。

「クマさんなの?」

 わたしは腰を下ろし、フローラ様に視線を合わせる。そして、クマさんパペットを目の前でパクパクさせて見せる。これで信じてくれるかな?
 でも、反応が鈍い。
 まあ、いつも。「クマさん、クマさん」って呼ばれているんだから、やっぱり、フローラ様もわたしのことはクマと認識しているのかな?
 わたしは頭を撫でてあげる。すると、フローラ様の顔が花が咲いたような笑顔になる。

「クマさんのなでかたとおなじだ」

 そこで判断しますか!

「ユナお姉ちゃんが頭を撫でるときは優しく撫でてくれますからね」
「うん、ユナ姉ちゃんに頭を撫でられると、ぽわんって気持ちよくなるの」
「わかります! ユナさんは撫で方に愛情があります!」

 フローラ様の言葉にみんなまで賛同し始める。
 わたしはそんなスキル持っていないし、愛情も込めていないからね。感謝の気持ちや、可愛いねって気持ちぐらいだからね。


王族が揃いました(長男はいませんがw)
王妃様はすぐにユナと気付きました。のんびりをしている性格ですが、観察力はあるみたいです。
フローラ様はナデナデで気付きましたw

次回、普通に続きかな?
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