表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、学園祭に行く
263/907

259 クマさん、ノアの髪で遊ぶ

 王都に来て数日が過ぎる。

 シュリを連れて王都見物したり、サーニャさんやガザルさんのところに顔をだしたり、王都にあるクマハウスの掃除をしたり、庭でくまゆるたちと遊んだり、いろいろと(おこな)った。

 そして、学園祭当日になる。


「それじゃ、わたしは準備があるから早く行くけど、みんなは時間になったら来てね。ノア、学園の入り口で待っているんだよ。迎えに行くまで勝手に動いちゃダメだからね」

「お姉様、何度も言わなくても分かっています」

「うう、それから、お金は持った? 忘れたら、なにも買えないからね」

「ちゃんと、お母様から預かりましたから大丈夫です」


 ちなみにお金を貰ったのはノアだけでなく、フィナもシュリもお金をもらっている。始めは遠慮をしたフィナだったけど、エレローラさんとの会話勝負に負けて、受け取る姿があった。

 エレローラさんはわたしにまで、お金を渡そうとしたが、ノアたちの護衛料を頂いているので丁重にお断りした。


「それから、それから」


 シアはノアに言うことを、その場で足踏みをしながら考えている。


「お姉様、もう大丈夫ですから、早く学園に行ってください」


 いつまでも学園に行かない姉を叱りつける。


「うぅ、わかった。それじゃ、ユナさん、ノアたちをよろしくお願いします」

「うん、シアも頑張ってね」

「それじゃ、いってきます!」


 シアはスカートをなびかせながら、部屋を飛び出していった。


「お姉様。わたしはもう、子供じゃないのに」

「いや、子供だからね」


 シアが部屋から出ていくと部屋の中は静かになる。

 わたしたちが家を出るのは、まだ時間がある。


「ああ、そうだ。ノア、こっちにおいで」

「なんですか?」


 トコトコとわたしのところにやってくる。


「椅子に座って」


 わたしが言うと、ノアは素直に椅子に座る。わたしはノアの後ろに回りこみ、クマボックスから、櫛をだして、ノアの長い金色の髪を梳かし始める。


「な、なんですか?」


 いきなり、わたしが髪の毛を梳かし始めたので驚いたみたいだ。


「ほら、クリフから変な悪い虫が近寄らないように頼まれたでしょう」

「お父様の言葉を信じているんですか?」

「ノアは信じていないの?」

「分かりません。でも、パーティーでもないのにわたしに近寄ったりはしないと思いますよ」


 ノアが言うのも理解ができるが、わたしの貴族に関する知識はファンタジー小説や漫画で読んだ程度だ。どのようにノアに近付いてくるかわからない。

 もしかすると、一緒に学園祭を見学しようと言う者も現れるかもしれない。でも、10歳の年齢を考えればあり得ないのかな。でも、相手が年上の場合もある。年齢が離れている結婚は貴族の物語ではよくあることだ。それを考えると…………。


「でも、それでどうしてわたしの髪を梳かしているんですか?」

「髪型を変えようと思ってね。あまり、会っていない人なら髪型を変えたりすると分からなくなるでしょう」


 遠くから見た場合、気付かれる可能性が低くなる。人は特徴で相手を覚えるものだ。もし、わたしが私服に着替えたら何人の人間がわたしと気付くか分かったものじゃない。それに髪型1つでノアと気付かれる可能性が低くなれば安いものだ。


「だから、念のために髪型を変えようと思うんだけど、ダメかな?」

「ユナさんがやってくれるなら、いいですよ」


 ノアの許可も出たので、髪型を変えることにする。


「それじゃ、どれが良いか言ってね。フィナもシュリも感想お願いね」

「はい」

「うん」


 綺麗な長い髪をとかしながらノアに似合いそうな髪型を考えてみる。まず、始めに後ろ髪を2つに分けてシアと同じツインテールにしてみる。


「シア様と同じです」

「シア姉ちゃんです」


 フィナがノアの前に鏡を持ってくる。


「お姉様と同じ髪型です」


 ノアは嬉しそうに髪を触る。


「似合っているけど、駄目だね」

「どうしてですか!?」

「だって、シアに似ていたら、すぐにばれちゃうでしょう」


 なら、なんでしたかと問われれば、ノアのツインテール姿が見たかっただけだ。さすが姉妹だから髪型を同じにすると似ている。シアが小さいときはノアに似ていたのかな?

 わたしは次にポニーテールにしたり、サイドテールにしたりしてみる。


「ノア様、可愛いです」

「ノア姉ちゃん、可愛い」


 どれもノアには似合って可愛い。どれにするか困ってしまう。

 ノアの髪で遊んでいると、エレローラさんが部屋に入ってくる。


「あら、なにをしているの?」

「ノアの髪で遊んでいます」

「ユナさん、違うでしょう」


 ノアに指摘されて、本当のことを説明する。遊んでいるのも事実だけどね。


「なるほどね。そういうことなら、わたしも参加しないといけないわね」

「お母様!?」


 それから、エレローラさんも参加して、ノアの髪型論議が始まる。お団子結びにしたり、三つ編みにしたり、その他もろもろとする。エレローラさんが参加したことで、さらにバリエーションが広がる。

 どれも、似合って可愛い。


「ノアはどれが、良かった?」

「うぅ、頭が痛いです。お母様もユナさんも、わたしの髪の毛で遊んでませんか?」


 うん、遊んでいたよ。金色の髪に触れられる機会なんて、そうそう無いからね。フィナは髪が短いから自由度が低い。その点、ノアは髪が長く弄りがいがある。

 でも、そろそろ決めないと、家を出る時間になってしまう。

 エレローラさんたちと相談して、ノアの髪型を決める。最終的に大きなリボンを用意して、後ろで止める一つ結びをすることになった。

 あまり、特殊な髪型にして、目立ったら意味が無くなるからね。



 髪型を変えたノアを連れて学園に向かう。エレローラさんはわたしたちと一緒に学園祭に行きたそうにしたが、仕事に向かった。

 ノアは少し嬉しそうにスキップしながら歩く。そのたびに一本に結んだ髪が左右に揺れる。


「楽しみです」

「ノアも学園祭は初めてなんだよね?」

「はい。一人じゃ王都まで行かせてくれませんから」


 まあ、10歳の子供を1人で行かせるわけにはいかないよね。去年ならば9歳になる。余計にダメだろう。


「シュリ、絶対にわたしの手を離しちゃ駄目だからね」

「うん、わかってる」

「お金は落としちゃ駄目だからね」

「うん、大丈夫だよ」


 こっちはこっちで姉が妹を心配している姿がある。

 まあ、わたしが貴族も通う学園だから、先日のフローラ様にしたことと同じことをしないようにと注意したためだ。フィナもあの場では注意ができなかったので戻ってきてから、叱っていた。学園祭で変な貴族に絡まれでもしたら面倒だし、エレローラさんにも迷惑がかかる。だから、フィナはシュリの手を離さないように握っている。

 その姿を微笑ましそうに見ていると「なんですか?」とフィナがわたしを見る。


「うん? 姉妹ってこんなものなのかなと思って。シアもノアのことを一生懸命に心配していたからね」

「お姉様は心配し過ぎなんです」

「うん、お姉ちゃんは心配し過ぎ」


 ノアの言葉にシュリも賛同する。

 親の心子知らずじゃないけど、姉の心妹知らずって感じだね。

 わたしたちが学園に向かって歩いていると、他にも学園に向かうと思われる人たちも増えだしてくる。そうなると、わたしに視線が集まってくる。

 忘れていたわけじゃないけど、人が増えてくると視線も増えていく。子供連れの親子がわたしの方を見て「くまさん?」「学園祭のクマかしら」って声が聞こえてくる。違いますと、心の中で否定しておく。

 そして、視線を集めながらも学園に到着した。


「まだ、お姉様は来ていないようですね」


 学園の入り口にシアの姿は見えない。

 学園祭に来た人たちが、次から次へと学園の中へ入っていく。安全を管理するために、水晶板が置かれ、市民カードやギルドカードを翳している。

 わたしたちがシアを待っていると、遠くから子供たちが走ってくるのが見えた。そして、わたしに抱きつく。


「くまさんだ~」

「くま~」


 1人がやってくると、次から次へと子供が集まってくる。


「あら、学園祭で作ったのかしら」

「可愛いクマさんね」

「お母さん、わたしも行ってくるね」


 大人が子供たちを解放する。そのせいで子供がわたしに集まってきてしまう。そこは止めようよ。とりあえず、顔を隠すために深くフードを被る。


「ユナさん!」

「ユナお姉ちゃん!」

「ユナ姉ちゃん!」


 三人が心配そうにわたしを呼ぶが、それどころではない。わたしの周りに子供たちが集まって対応に追われている。魔物や敵なら、魔法やクマパンチで弾き飛ばすが、子供たちにそんなことをするわけにはいかない。


「くまさん、柔らかい」

「くまさん、モコモコ」

「ちょっと、離してくれないかな?」


 優しく言うが子供たちは離してくれない。時間が経つほど、子供が集まってきてしまう。周りにいる大人たちも微笑ましそうに見ている。

 だから、止めようよ。


「たすけて……」


 わたしが助けを求めると、


「ユナさん? なにをしているんですか!?」


 目の前に救いの女神シアが現れた。


「シア、助けて!」


 わたしはやってきたシアに助けを求める。シアはわたしの周りにいる子供たちを見て、ため息を吐くと、子供たちを引き剥がしてくれる。


「ほら、クマさんが困っているでしょう。離れてあげて」

「は~い」

「うん」


 シアが声をかけると、子供が一人一人、離れていく。シアのおかげで子供たちの包囲網から脱出することができた。


「シア、助かったわ。ありがとう」

「ユナさん、いったいなにをやっているんですか?」


 助けてくれたシアが呆れたような顔でわたしを見る。


「シアを待っていたら、子供たちが集まってきたのよ」


 わたしは立っていただけだ。別になにもしていない。

 子供たちの方を見ると、抱き付くチャンスを窺っているようにも見える。気のせいだと思うけど、恐怖を感じる。子供たちに襲われることが、こんなに怖いとは思いもしなかった。


「ユナお姉ちゃん、大丈夫だった?」

「ユナ姉ちゃん」

「ユナさん」


 ちびっ子三人がわたしに寄ってくると、他の子供たちも近寄ろうとする。

 わたしはフィナたちを静止させる。それを見たシアが状況を把握する。


「ここにいたら、また、集まってきますから、中に入りましょう」


 その言葉には賛成だ。

 わたしたちはシアの案内で学園の中に入る。子供たちが残念そうにしている姿があるが、こればかりはしかたない。


「シア。本当にありがとうね。助かったよ」

「ユナさんが、いつもその格好をしているから、忘れていましたが、目立つ格好なんですよね」


 別に忘れていたわけじゃないけど。まさか、学園祭のイベントの一部に思われるとは思いもしなかったよ。

 わたし、このまま学園に入って大丈夫かな?



シアの髪型を覚えている人はいないと思いますが、シアの髪型は書籍版でツインテールに変更してあります。(挿絵もあります)

なので、web版もツインテール設定で進みます。よろしくお願いします。


次回、クマさん、学園の中に入りますw


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ