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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、エルフの里に行く

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223 クマさん、フィナに連絡をする

 クマハウスを見たラビラタは驚きの表情を浮かべる。

「なんだ、これは!?」
「わたしの家だよ」
「どうして、クマの形をしているんだ?」

 誰もがクマハウスを見て思うこと、そしてほとんどの者はわたしの格好を見て納得することが多いけど、ラビラタは直球で尋ねてきた。
 返答はノーコメントにしたいけど。

「クマの加護があるからだよ」

 先日、エルフ少女にクマさんの格好について尋ねられたことを、そのままクマハウスに置き換えることにする。便利な言葉だ。

「クマの加護か」

 ラビラタはクマハウスとわたしを交互に見て、納得したようで、それ以上の追及はしてこなかった。
 クマの加護。これだけで納得をしてくれるのは助かるけど、気持ち的には微妙なところだ。

「だから、村だと目立つから、ここにしようと思ったの。村からも近いし」

 滝の上から村は見える。走れば時間も掛からずに村に向かうことができる。

「確かに目立つな。でも、危険なのはかわりないぞ」

 ラビラタはクマハウスのことは納得してくれたけど、ここに建てることは難色を示す。
 う~ん、善意で心配してくれているのを説得するのは難しいね。
 嫌われても良いなら、適当に促したり、悪意だったら、殴って終わりなんだけど、どうしたものか。
 わたしたちの間に短い沈黙が流れる。
 うん、そうだ。

「この子たちがいるから心配はないよ」

 少し考えて、わたしはくまゆるとくまきゅうを召喚する。
 くまゆるとくまきゅうを見て、ラビラタは再度、驚きの表情を浮かべる。

「召喚獣のクマか。強いのか?」
「強いよ。それに魔物が来たら教えてくれるから、危険もないよ」

 ラビラタはクマハウス、くまゆる、くまきゅうを見て、最後にわたしの方に視線を向けると笑みをこぼす。

「サーニャの奴も、変な奴を連れて来たものだ」

 初めてラビラタに笑顔が出る。

「わかった。好きにするがいい。ただし、なにかあった場合、我々エルフは責任を持たない。それだけは言っておく」

 魔物が出る場所に家を建てるんだ、自業自得だ。それを魔物に襲われたからと言ってエルフの責任にするつもりない。

「うん、大丈夫。なにかあっても責任を押し付けたりしないよ」

 わたしの言葉に納得したのか、ラビラタは村の方を見る。

「そう言えば名乗っていなかったな。俺はラビラタ、今は結界内の監視役をしている。もし、魔物が出たら報告してくれ、すぐに対処する」

 自分でも対処出来るけど、頷いておく。
 そのとき、くまゆるとくまきゅうが少し顔を上げて「クーン」と鳴く。
 どうしたの?
 わたしはくまゆるたちが見ている方に視線を向ける。
 空に黒い点が見える。
 動いている?
 とり?
 くまゆるたちが反応するってことは魔物!?
 わたしは探知魔法を使う。
 魔物の反応が出る。魔物の種類はヴォルガラス。
 鷲などよりも一回り大きい鳥の魔物。
 移動速度が速い。数は10。

「どうした?」

 わたしの反応がおかしいことに気付いたラビラタが声をかける。

「魔物が来ている」

 わたしは方角を指すと、ラビラタも目を向ける。

「オルバル山。もしかして、ヴォルガラスか!」

 ラビラタがわたしが指した方を見ながら叫ぶ。
 確かにヴォルガラスが飛んでくる方角には山がある。
 ってことはあの山にヴォルガラスは棲息しているってことになる。

「結界は!?」
「あの距離では、すでに中にいる!」

 ヴォルガラスはすでに姿を捉える距離まで来ている。
 特徴である赤い(くちばし)まで確認できる。
 ゲームでは嘴には毒があり、毒を受けると麻痺って動けなくなる、少し面倒な魔物だった。

「おまえは隠れていろ!」

 ラビラタはわたしに指示を出して、ヴォルガラスを睨みつける。

「襲って来るの?」

 このまま、違う方向に飛んで行く可能性もある。

「あいつは我々エルフを襲う。だから、下がれ」

 ラビラタの言う通り、ヴォルガラスは滑空してくるように、近づいてくる。
 しかも、速度を上げている。
 ラビラタは構えてヴォルガラスを迎え撃つ。
 わたしはラビラタの後ろに下がって援護することに決める。
 魔物が来るのに逃げるわけにはいかないし、ラビラタが戦うのを邪魔することもない。
 迫ってくるヴォルガラスにラビラタの風魔法が襲う。だが、固まって飛んでいたヴォルガラスは散開してラビラタの風魔法を躱す。
 そして、ヴォルガラスはわたしたちに向けて、四方から襲いかかってくる。

「わたしのことは気にしないで!」

 わたしは叫び、自分に迫ってくるヴォルガラスを対処する。
 ラビラタも少しだけわたしを見て、「分かった」と一言だけ言う。
 わたしは自分に迫ってくる4羽に向けてラビラタ同様に風魔法を放つ。


 風の刃がヴォルガラスを襲う。ヴォルガラスは翻してかわそうとするが、先ほどのラビラタの魔法と違って、距離は近く、風の刃は速い、タイミング的に避けることはできない。
 わたしの風の刃は4羽のヴォルガラスの体を真っ二つに斬り、そのまま地面に落ちる。
 ラビラタの方を見ると、三羽は撃ち落したが、残りの三羽を取り逃がしたみたいだ。
 三羽はわたしたちの方を横を通り抜けて、空に飛び上がる。もう一度、襲い掛かって来るかと思ったけど、そのまま飛び去って行く。
 ラビラタは魔法を放つがヴォルガラスには届かない。

「くそ!」

 ラビラタは悔しそうに森の奥に逃げて行くヴォルガラスを見送る。
 探知魔法外に行くので追うことも出来ない。
 ラビラタは構えを解き、わたしの方を見る。

「助かった。おまえが4羽は倒してくれたことに感謝する」
「でも、逃げられちゃったよ」
「大丈夫だ。他にも見回っている者もいる。ヴォルガラスぐらいなら、いきなり襲われない限り倒せる」

 たしかに、魔法さえ命中すれば倒せない魔物ではない。魔法が使えない者には厄介な魔物だが、魔法が使えるエルフなら問題はないみたいだ。

「俺は報告を兼ねて、一度村に戻る。おまえさんはどうする?」
「ここに残るよ」
「そうか、なにかあれば村に逃げて来るんだぞ」

 ラビラタはわたしに言葉をかけると、村に向けて駆け出す。
 その姿はすぐに森の中に消えて行く。
 残ったのはわたしとくまゆるとくまきゅう、それに倒したヴォルガラスが7羽、地面に落ちている。
 これは売れるのかな?
 それ以前に貰っていいのかな?
 まあ、あとで渡せと言われたら渡せばいいし、とりあえずクマボックスにヴォルガラスを仕舞っておく。


 わたしはくまゆるとくまきゅうを小熊にさせて旅用のクマハウスに入る。
 やっぱり、クマハウスは落ち着く。
 わたしがソファーに座ると、左右にくまゆるとくまきゅうが飛び乗り、丸くなる。
 誰もいないときは二人の指定位置だ。
 わたしは一休みをするとクマフォンを取り出して、フィナに連絡をする。
 この時間は家にいるか、ティルミナさんの仕事を手伝いしているところかな。
 フィナのクマフォンに向けて通話するがでない。
 フィナには人がいたら出ないように言ってあるから、もしかすると近くに誰かがいるかもしれない。
 通話を切ろうとした瞬間、クマフォンにフィナが出る。

「もしもし、フィナ?」
『ユナお姉ちゃん?』

 無事に出てくれた。
 それにしても、こんなに距離が離れているのに繋がるもんだ。
 さすが神様チートスキルだ。
 まあ、元の世界でも衛星携帯もあるし、ほとんどの場所と繋がる。
 でも、これってどんな仕組みになっているんだろうね。

「今、大丈夫?」
『はい、大丈夫です。掃除と洗濯が終わって、休んでいるところです』

 なら、話しても大丈夫だね。

「そっちは変わったことはない?」
『うん、なにもないよ。ユナお姉ちゃんの方は大丈夫?』
「無事にエルフの里に着いたよ」
『良かった。でも、エルフの里か、わたしも行ってみたいな』
「それじゃ、来る?」

 クマの転移門を使えばすぐだ。

『いきなり、わたしが行ったらサーニャさんに驚かれるよ』

 たしかにそうだ。
 でも、今度来るときは連れて来てあげよう。
 それにはどこかにクマの転移門を設置しないといけない。
 まあ、最悪、ラルーズの街にある転移門を使えばいい。

「それじゃ、そっちもなにもないんだね」
『うん、……あっ』

 フィナがなにかを思い出したように声をあげる。

「どうしたの? なにかあったの?」
『ユナお姉ちゃんが出て行ってから、しばらくしたら、ゼレフさんとエレローラさんが来たよ』
「ゼレフさんとエレローラさん?」

 エレローラさんならクリフが治める街だから、来るのは分かるけど、ゼレフさん?

「もしかして、わたしに用だった?」

 そのぐらいしか思いつかない。

『ユナお姉ちゃんにも会いたかったようだけど、お店を見に来たみたい』
「お店?」
『うん、視察とか言っていたかな? 2人ともお店を見たり、料理を注文していたよ』

 ああ、そう言えば、一度クリモニアにあるわたしのお店を見たいって言っていたから、見に来たのかな。

「それで、なにか言っていた?」
『凄い美味しいって褒めていたよ』

 それは、モリンさんが作ったパンだし、エレナさんも一生懸命にケーキを作る練習をした。子供たちも一生懸命に補佐をしている。美味しいのは当たり前だ。

『あとお店に飾ってあるクマさんの人形を見て、笑っていました』

 笑うって失礼だね。
 たしか、あれって、誰かがクマっぽくした方が良いって言って、わたしが作ったんだよね。
 お客さんには人気がある。欲しがる人が多数いたと聞いた。
 だから、笑うところでは無いと思う。

「ゼレフさんとエレローラさんが来たら、みんな驚いたんじゃない?」
『うん、お母さん、凄く驚いていたよ』
「ほかのみんなは」
『知っているのはお母さんとわたしだけです。ミレーヌさんが先に来て、黙っているように言われたから。普通のお店の様子を見たかったみたいです』
「フィナは大丈夫だったの?」
『驚いたけど、お母さんほどには』

 フィナも段々と貴族との免疫がついて来たのかな?
 昔は貴族相手になると緊張していたのに。
 まあ、最近ではノアと一緒にいることも多くなったみたいだし、ミサの誕生日会も参加したし、フィナも強くなったみたいだ。
 その点、ティルミナさんは貴族との関わりは、ほとんど無いから、会えば驚くよね。

「でも、いきなり来たんだね。連絡ぐらいくれてもいいのに」
『ユナお姉ちゃんを驚かせるつもりだったみたいです』

 確かに、いきなり2人が現れたら驚いたのは間違いない。
 クリモニアで会いたかったような。驚かされずにすんで良かったのか、微妙なところだ。

『だから、残念がっていました』

 エレローラさんの残念がる顔が浮かぶ。今度会ったときになにか言われるかな?

「それで、ゼレフさんたちは帰ったの?」
『うん、2日ほどいたけど、すぐに王都に戻らないといけないって、帰りました』

 本当にお店の視察に来ただけみたいだ。

『ユナお姉ちゃんによろしくって言ってました』

「それ以外に変わったことはない?」
『お母さんが、ユナお姉ちゃんがいないことに怒ってました』

 ティルミナさんの怒っている顔が、思い浮かぶ。
 でも、エレローラさんやゼレフさんがいきなり来たのはわたしのせいじゃないよね。
 だけど、わたしのせいで来たから、わたしのせいになるのかな?
 それから、他愛もない話をして通話を切る。

 フィナもそんなことがあったんなら、連絡ぐらいしてくれても良かったのに。
 でも、連絡を受けても、なにも出来ないから同じことかな。
 クリモニアに戻るわけもいかないし、サーニャさんの前でクマフォンも使えない。
 使えたとしても、フィナにあれこれ指示をだして、クマフォンのことをエレローラさんに知られるのも面倒だし、これで良かったかもしれない。
クリモニアの話も書きたいですね。
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