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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、誕生日会に参加する

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166 クマさん、誕生日ケーキを作る

「ユナお姉ちゃん! 先に帰っちゃうなんて酷いよ~」

 フィナが怒りながらわたしに抱き付いてくる。
 もしかするとタックルだったかもしれないけど、フィナをしっかりと受け止める。

「ごめん。ドレス選びに時間がかかると思って」

 巻き込まれてたくないから、逃げたとは言えない。

「でも、フィナのドレス姿は楽しみだよ」
「ユナお姉ちゃんは着ないんですか?」
「着ないよ。わたしが着ても似合わないからね」
「そんなことないです。ユナお姉ちゃんのドレス姿は綺麗だと思うよ」
「ありがとう」

 お世辞でもそんなことを言われると嬉しいね。

「そうだ。ユナお姉ちゃん」
「なに?」
「誕生日プレゼントどうしよう。必要だよね。でも、なにを用意したらいいのかな? ノア様に尋ねたら、必要ないよって言われたけど。駄目だよね?」

 ノアは平民のフィナに気をつかったのかな?
 人によっては参加してくれるのがプレゼントよりも嬉しいときもある。
 ミサもフィナがプレゼントが用意できないから参加ができないって言われるよりも。プレゼント無くても参加してもらった方が嬉しいと思う。
 でも、フィナとしては手ぶらで参加はしたくない。でも、貴族のミサになにをプレゼントをしたら良いか分からないってところかな?
 まあ、わたしだってクリフにプレゼントの参考を聞かなかったら、なにをプレゼントをしたら良いかわからなかった。

「でも、わたしはミサ様が喜んでくれるようなプレゼントなんて買えないし」

 困った顔をするフィナ。

「それに、もし変な物をプレゼントしたら……」
「それじゃ、わたしと共同でプレゼントしようか?」

 フィナが1人でプレゼントを用意できないなら、わたしと共同のプレゼントにすればいい。
 もし、それで他の人たちが見て、バカにするような者がいたら、恥をかくのはわたしも一緒だ。

「ユナお姉ちゃんと?」
「うん、一緒にプレゼントすればフィナも安心でしょう」
「いいの?」
「いいよ。とりあえず、ケーキは贈ろうと思っているんだけど。どうかな?」
「ケーキですか!」
「ケーキなら一緒に作れるし、2人からのプレゼントにすればいいよ」
「本当にいいの?」
「いいよ。一緒に作ろう」
「ユナお姉ちゃん、ありがとう」

 さっきの抱きつき方と違って、優しく抱き付いてくる。

「あと、くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみも贈ろうと思っているんだけど」
「くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみ?」

 いきなり、そんなことを言われても分からないよね。
 フィナに説明するために、昨日シェリーが作ってくれた、試作のくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみを見せることにする。ぬいぐるみは部屋に飾ってあるため、フィナを連れてクマハウスの中に入る。

「ユナお姉ちゃん! なんですか。この可愛いぬいぐるみは!?」

 フィナは部屋に置いてあったくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみを抱き締める。

「くまゆるとくまきゅうにそっくりです」

 わたしもそう思うんだけど、職人気質があるのかシェリーは納得をしていない。刺繍も完成度が高かったし。元からの性格なのかな。

「シェリーに作ってもらったんだよ。本当はフローラ姫に喜んでもらえるかなと思って作ってもらったんだけど。ミサにプレゼントしたら喜んでくれると思うんだ」
「はい。絶対に喜びます」

 フィナはぬいぐるみを抱き締める。
 フィナもぬいぐるみが欲しいのかな?
 まだ、フィナも10歳の女の子だ。それに父親を小さい頃に亡くし、母親は病気でぬいぐるみや人形などの子供が遊ぶ玩具などは買えなかったと思う。それはシュリも同様のはず。
 それなら、フィナとシュリにぬいぐるみをプレゼントをするのもいいかもしれない。解体などの仕事をする子だけど。まだ、子供だ。
 そうなるとシェリーには何個頼むといいかな。
 数が多くなればシェリー1人じゃ大変だろうし。テモカさんに相談した方がいいかな。

「これから、シェリーのところにぬいぐるみを頼みに行くけど。フィナはお昼は食べた?」

 わたしは広場の屋台で買い食いをしてきた。

「ノア様のところで頂きました」
「大丈夫だったの?」

 王族との食事は緊張したって言っていたけど。

「はい。お昼はノア様と2人だったので大丈夫です」

 同年代のノアなら平気なんだね。やっぱり、同じ貴族でも領主のクリフと娘のノアとでは違うのかな。それにノアは漫画や小説に出てくるような意地悪な貴族の娘じゃないし。平民のフィナにも優しく接してくれる。
 少し、クマのことになると変な子になるけど。優しい良い子だ。

 フィナもお昼は食べ終わっているようなので、シェリーのところに行くことにする。
 クマハウスを出ると、そこにはこれから会いに行こうと思っていた人物のシェリーがいた。そのシェリーの様子が少しおかしい。左右にふらついている?

「ユナお姉ちゃん。それにフィナちゃんも、もしかしてお出かけですかぁ?」
「シェリーのところに行こうと思っていたんだけど」
「わたしのところですかぁ?」

 シェリーは小さくアクビをする。

「ちょっと、シェリーにお願いがあってね。それでシェリーはどうしてここに? まさかもう出来たの?」

 昨日の今日だ。早くない?

「はい。寝ないで作りました」

 笑顔で言った。
 そんなに無理に急ぐものじゃないのに。わたしは静かにシェリーの頭の上に手を置く。どうして、ここまで頑張るかな。シェリーはわたしに頭を撫でられて笑顔だけど。目の下にクマが出来ている。
 もしかして、クマを作るためにクマを作ったと……
 ……自分で言っていて寒くなった。

「そんなに急がなくても良かったんだよ」
「作っていると楽しくなっちゃって」

 笑顔を向けるが顔には疲労感がででいる。
 う~ん。魔法で回復させてあげてもいいんだけど。これは寝かせた方がいいね。

「持ってきたので見てもらえますか?」
「その前にベッドを貸すから寝なさい」

 今はぬいぐるみを確認する前にシェリーを寝かせないと駄目だ。

「ユナお姉ちゃん。大丈夫だよぉ」

 全然、大丈夫そうには見えない。先程からふらついているし、欠伸もしている。

「寝なさい!」

 今度は強めに言う。

「頑張って作ってくれるのは嬉しいけど。寝ないでまで作って欲しいと思わないよ」
「ユナお姉ちゃん……」
「だから、今は寝て休みなさい」
「うん」

 素直に頷くシェリー。
 シェリーをクマハウスに入れて部屋に案内する。そして、シェリーはベッドに入ると、すぐに寝息が聴こえてきた。

「シェリーちゃん、寝ちゃいましたね」
「どうして、そこまで頑張るかな」

 寝ているシェリーの頭を撫でながらそんな言葉が出る。
 ぬいぐるみ作りが楽しかったのはシェリーの顔を見れば分かる。嫌々作っているようには見えない。だからと言って睡眠を無くしてまで作るようなことじゃない。

「みんな、ユナお姉ちゃんの役に立ちたいんですよ」
「わたしの?」
「ユナお姉ちゃんは孤児院のみんなにとって、恩人であり、尊敬する人だから。みんな、ユナお姉ちゃんの役に立てるのが嬉しいんだよ」

 だからと言ってぬいぐるみを作るために徹夜をするのは困る。
 それに、わたしは恩人でも尊敬されるような人物ではない。ただ、好きなようにしているだけだ。
 孤児院に仕事を与えたのだって、たまたま偶然にコケッコウの卵を見つけただけだし。お店の仕事も人が足らないからお願いしただけだ。
 そして、みんな働いているんだから、賃金も貰うのは当たり前だ。だから、感謝されるようなことはなにもない。強いて言うならギブアンドテイクだ。
 仕事をしてもらって、お金を払って、わたしが欲しい物を手に入れる。だから、寝不足になるまで頑張らなくてもいいと、寝ているシェリーに言いたい。

「ユナお姉ちゃん。どうしますか。シェリーちゃんが寝ているからぬいぐるみさんが作れません」
「それじゃ、先にケーキでも作ろうか」
「はい」

 フィナと二人で誕生日ケーキを作ることにする。
 まあ、作るのは定番のイチゴのショートケーキだ。違うところは二段ケーキってところぐらいかな。
 わたしが下の段のスポンジケーキを作り、フィナが二段目のスポンジケーキを作る。生クリームは分担して作りあげる。

「ユナお姉ちゃん。わたしが書くんですか?」
「うん、フィナが書いてあげて」

 最後の『お誕生日おめでとう』と生クリームで書く役目はフィナに譲ることにする。

「うう、緊張します」
「失敗しても大丈夫だから、ぱぱっと書いちゃって」
「わ、わかりました」

 フィナは深呼吸をすると、イチゴの生クリームで文字を書き始める。ゆっくりだけど丁寧に一文字ずつ書いていく。

「で、できました」

 フィナは止めていた息を一気に吐く。

「完成だね」

 ピンク色の文字で『お誕生日おめでとう』と書かれている。

「ミサ様、喜んでもらえると嬉しいな」
「大丈夫だよ。頑張って作ったんだから」
「はい」
「それじゃ、痛まないうちに仕舞っちゃうね」

 ケースに入れて、蓋をしっかりしてから二段ケーキをクマボックスに仕舞う。

「ユナお姉ちゃんのアイテム袋は不思議です。このアイテム袋に入れておけば食べ物が腐らないなんて」
「まあね。特別製だからね」

 能力は感謝しているけど。全ての能力がクマに付いてるのは納得がいかない。これがクマに関係無い能力だったら嬉しかったんだけど。
 なにも与えられないで異世界に放り込まれるよりはいいけど。
 ケーキを作り終えたわたしたちはキッチンの片付けを始める。
 そして、片付けが終わった頃、キッチンにシェリーが入ってきた。
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