挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、誕生日会に参加する

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

162/442

158 クマさん、策略を練るが失敗する

 ガザルさんと別れて、お城までやってくる。
 そして、ギルドカードの入城許可書もあるのにかかわらず。顔パス、ならずクマパスで城の中に入る。それと同時に別の門兵が駆け出す。うん、いつもと同じ光景だ。
 このギルドカードに書かれている入城許可書って意味がないね。使用するときがあるとすれば、わたしが着ぐるみを脱いだときかな。脱いだら、脱いだで別の問題が起きそうだけど。
 お城の中を着ぐるみの格好で歩いていると、すれ違う人が軽く頭を下げて、挨拶をしてくれる。
 普通、こんなクマの着ぐるみ姿で城の中を歩いていたら、間違いなく通報レベルだ。日本で言えば国会の中を着ぐるみで歩いているようなものだ。
 目の前に1人の女性がいる。わたしは一応、軽く頭を下げて通り過ぎようとした。でも、女性はわたしのことに気付くと、近づいてくる。

「その、絵本。ありがとうございました。子供も楽しく読んでます」

 それだけ言うと、頭を下げて去っていく。
 なんのことかと思えば絵本か。そう言えば、忘れていたけど、お城限定で配ったんだっけ。
 でも、わたしが描いたことが広まっているの?
 う~ん、わたしが描いたことはエレローラさんに黙っててと言ったのに。これはエレローラさんに抗議しないとダメだね。
 フローラ様の部屋に着くまでに同様なことが起き、今度は握手を求められる。

「次の絵本、子供と楽しみに待っています」

 もしかして、わたしの職業、絵本作家になってる?
 イヤイヤ、わたしは絵本作家じゃないよ。次回も描く予定もないし。
 エレローラさんにちゃんと言って、これ以上広がらないようにしてもらわないとダメだね。
 でも、どうして作者名も書いていないのに、わたしが描いたって知ったんだろう。
 わたしが描いたことが分からないように本名は載せていない。
 まあ、分からないことを考えても仕方ないので、フローラ様の部屋に到着したので、ドアをノックする。すると部屋の中からアンジュさんの声がしてドアが開く。

「あっ、ユナ様、いらっしゃいませ」
「アンジュさん、こんにちは。フローラ様はいますか?」
「はい、いらっしゃいます」

 部屋の中に入ってフローラ様に挨拶をしようと思ったら、アンジュさんの後ろから、フローラ様が顔を出した。

「クマさん!」

 わたしを見たフローラ様は満面の笑みを浮かべ、抱きついてくる。

「フローラ様、こんにちは」
「クマさん、こんにちは」

 フローラ様はちゃんと返事を返してくれる。
 とてもあの国王の血が繋がっているとは思えない可愛さだね。ああ、王妃様に似たんだ。将来、王妃様に似て美人さんになるね。

「それではユナ様。お部屋の中に、どうぞお入りください」

 アンジュさんの誘いを受けて部屋の中に入ろうとしたが歩みを止める。

「ユナ様?」
「クマさん?」

 いきなり、歩みを止めたわたしに声をかける二人。

「フローラ様。今日は天気もいいから、庭園に行きませんか?」

 ここにいると絶対に国王は来る。それを避ける方法を思い付いた。
 わたしは過去に何度もフローラ様の部屋に訪れて、毎回フローラ様の部屋で食事をした。そして、国王は今回もフローラ様の部屋にわたしがいると思っているはず。
 なら、簡単なことだ。食事をする場所を変えればいい。
 国王やエレローラさんのせいで、フィナからダメージを喰らったんだから、少しぐらい仕返しをしないと気がすまないからね。

「そうですね。フローラ様、今日は良い天気ですから、庭園に行きましょうか?」
「クマさんが行くなら行く」

 アンジュさんはわたしの考えに疑うこともなく了承して、フローラ様はわたしの真っ黒い作戦に笑顔で了承してくれた。
 その笑顔を見て、少し罪悪感がでる。
 でも、2人から了承を得たので、『国王、フローラ様の部屋に行くが誰もいない作戦』を実行するため、庭園に行くことにする。
 これで、国王がフローラ様の部屋に行っても誰も居なくて、困る顔が頭の中に浮かぶ。
 ささやかな、嫌がらせだ。

「ユナ様、どうかしましたか?」

 わたしの変化に気付いたのかアンジュさんが声をかける。
 ヤバイ、頬が緩んでいたようだ。

「なんでもないよ」
「そうですか? それではユナ様。わたしはお茶の用意をしますので、フローラ様をお願いしても、よろしいでしょうか?」

 わたしが了承すると、アンジュさんは頭を小さく下げてお茶の準備をしに向かう。

「それじゃ、フローラ様、庭園に行こうか」

 フローラ様にクマさんパペットを伸ばすと、フローラ様は小さな手で握ってくれる。わたしとフローラ様は手を繋いで、庭園に向かう。
 できれば庭園に向かう間も誰にも見つからないで到着するのが理想だが、3人ほどの人とすれ違ってしまった。あの3人から庭園に向かったわたしたちの情報が国王の耳に入らないことを祈る。

 庭園に到着すると、綺麗な色とりどりの花が咲いている。先日、フィナがエレローラさんと一緒に見た光景だ。さすが、王宮の庭園だ。前にも見たけど綺麗だね。
 こんな綺麗な庭園も、お城にいる関係者しか見れないんだよね。そう考えると勿体ないね。しかも、お城の関係者は仕事をしているから、この庭園には近寄らない。
 だから、現在もこの庭園にはわたしとフローラ様しか歩いていない。フローラ様は花を嬉しそうに見ている。フローラ様の様子を見ると、あまり庭園には来ないのかな。
 フローラ様の手を引っ張り、庭園の中央に向かう。この庭園の中央には花をゆっくりと楽しむ場所が設けられている。
 庭園の中央には、円形のテーブルにそれを囲むように四つの椅子が置かれている。ここでおしゃべりをしたり、軽く食事をしたりできるようになっている。雨が降っても濡れないようにテーブルの上には屋根もしっかりある。もしかすると、雨の日の花を見たりするのかもしれない。などとロマンチックなことを考えてみるが、誰がするの? と考えてしまう。
 国王は論外だし、王妃様ぐらいかな。
 そう思って庭園の中央に到着すると、先客がいた。

「あら、ユナちゃんにフローラじゃない。こんなところにどうしたの?」

 王妃様が1人で椅子に座り、庭園を眺めていた。
 王妃様が1人っていいの?
 お城の中だから、いいのかな?

「今日はフローラ様の部屋ではなく。ここで、食事をしようと思ったんですが、お邪魔でしたか?」
「そんなことはないわよ。わたしも一緒に戴いていいかしら?」

 断ることでは無いので了承するが、王妃様に勝手に食べ物を与えてもいいのかな。
 フローラ様にいろんな食べ物を与えている時点で今更だけど。

「クマさん、今日はなにを食べるの?」

 フローラ様は王妃様の右隣の椅子に座ると尋ねてくる。
 すっかり、わたしが来ると食べ物になってしまっている。まあ、毎回、来るたびに食べ物を持ってきているから、仕方ないけど。まるで、ひな鳥に餌付けをしてしまったようだ。

「甘くて美味しいものだよ。でも、ちょっと待ってね」

 わたしはケーキを出す前に残りの椅子に誰にも座らせないようにする。
 フローラ様の右の椅子にこぐま化したくまゆるを召喚して、正面にはくまきゅうを召喚して座らせる。
 これで、国王が来ても座ることができない。あとは、わたしがくまきゅうを抱きかかえて座ればokだ。
 完璧な作戦だ。
 だが、その作戦は一瞬で崩壊する。

「小さいクマさんだ~」

 フローラ様は椅子から飛び降りて、椅子に座っているくまゆるに抱きつく。そして、くまゆるを引っ張って椅子から下ろしてしまう。
 この状況は考えていなかった。
 さらに、王妃様も立ち上がり、くまきゅうを抱きしめる。

「あら、可愛いわね」

 さすがにフローラ様と王妃様にダメとは言えず、椅子に空席ができてしまった。

「クマさん。この子、大きいクマさんの子供?」

 そういえば、フローラ様は小さいくまゆるたちを見るのは初めてだっけ?

「違うよ。大きいクマさんを小さくしたんだよ」
「スゴい」

 フローラ様はくまゆるに抱きつく。なんか、ケーキどころじゃなくなっちゃった。まあ、フローラ様が楽しそうにしているからいいんだけど。
 フローラ様は庭園の中をくまゆると走り回る。転びそうで怖いんだけど。でも、王妃様はその様子をくまきゅうを抱きながら見ている。

「フワフワで気持ちいいわね」

 くまきゅうは王妃様の腕の中で気持ちよさそうにしている。
 わたしは手持ちぶさたになり、少し寂しい気持ちになる。

「ユナちゃんの召喚獣可愛いわね。わたしも欲しいわ」
「あげませんよ。それ以前に無理だし」
「あら、残念」

 王妃様はくまきゅうをさらに強く抱きしめる。くまきゅうが苦しそうだから、止めてあげて。
 しばらく、フローラ様がくまゆると遊んでいる姿を見ていると、アンジュさんがやってきた。でも、来たのはアンジュさん1人ではなかった。

「今日はここで食うのか?」
「ユナちゃん、今日はなにかな?」

 アンジュさんと一緒に国王、エレローラさんがいる。いつものメンバーが揃ってしまった。
『国王、フローラ様の部屋に行くが誰もいない作戦』が見事に失敗した瞬間であった。

「どうしてここに?」

 なんとなく、分かるが聞かずにはいられなかった。

「ああ、お前さんが来たと報告を受けたから、仕事を放り出してフローラの部屋に行こうとしたら、途中でアンジュに会って。そしたら今日はここで食事をするって聞いてな」

 どこから、つっこんだらいいのかな。
 とりあえず、仕事を放り出すな! と言いたい。

「それで、ユナ。娘と一緒にいるあのクマはなんだ」

 くまゆると遊ぶフローラ様を見て尋ねる。

「わたしの召喚獣のくまゆるだよ。前に見せたよね」
「くまゆるって、大きさが違うぞ」
「たしか、小さくできるんだっけ?」

 あれ、エレローラさんはこぐま化のことを知っていたっけ?
 たぶん、クリフ情報かな。
 クリフに話すとエレローラさんに筒抜けになるね。

「くまゆる、おいで」

 くまゆるを呼ぶとわたしの方に走ってくる。それを追いかけるようにフローラ様が着いてくる。

「あのクマがこんなに小さくなるのか」

 わたしのところにやって来たくまゆるを国王が抱きかかえる。

「おお、柔らかいな」
「おとうしゃま、とっちゃダメ」

 フローラ様は国王の足に抱きついて、抗議をする。
 とっちゃダメって、くまゆるはわたしの家族だからね。

「ああ、重いから気を付けろよ」

 国王はくまゆるをフローラ様に持たせてあげる。
 フローラ様の方が少しだけ大きいとはいえ、くまゆるを抱き抱えることはできずに尻餅を付いてしまうが、嬉しそうにくまゆるに抱きつく。
 ちゃんと返してくれるよね。
 くまゆるたちを引き離したら、フローラ様が泣く、未来図しか思い浮かばない。
クマ成分補充w
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ