挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、ミスリルナイフを作る

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

152/441

148 クマさん、王都に帰る

 くまゆるとくまきゅうの交代で進み、王都に到着する。
 時間的にタイミング良かったのか、人もあまり居なく、待つこともなく王都に入ることができた。
 王都に入ると、その足で報告をするために冒険者ギルドに向かう。
 冒険者ギルドに入ると、冒険者の視線が一斉にわたしに集まるが、すぐに視線を外す。
 一瞬、なぜかなと思ったりしたが、先日、冒険者ギルドでしたことを思い出す。
 まあ、絡んでこないからいいかな?
 空いている受付嬢に行き、ギルドマスターのサーニャさんを呼んでもらう。
 わたしのことを知っているのか、受付嬢はすぐにギルドマスターを呼びに行ってくれる。

「ユナちゃん!」

 奥のドアが開くとサーニャさんがやってくる。

「ただいま」

 クマさんパペットを上げて返事を返す。
 ここで話をするかと思ったら、ギルドマスターの部屋に連れて行かれる。
 椅子に座ると職員の1人が飲み物を運んで来てくれる。
 重役みたいだね。

「それじゃ、話を聞かせてもらえる?」

 一番奥にいるゴーレムを倒したら、ゴーレムの発生が無くなったこと。
 一応、様子見でジェイドさんたちが10日間残ること、などを説明する。

「あとの詳しいことはジェイドさんに聞いて」
「分かったわ。でも、これでゴーレムの発生が無くなれば、兵士を出さなくて済むわ。助かったわ。ありがとうね」
「まだ、分からないけどね」
「話を聞く限り、大丈夫でしょう。今まで翌日には復活していたゴーレムが復活しなくなったんなら。でも、ジェイドたちの報告待ちになるから、依頼達成は後日になるけどいい?」
「いいよ。クリモニアの街でも良いんでしょう?」
「ええ、大丈夫よ」

 なら、なにも問題はない。

「それじゃ、わたしは帰るね」

 早く、フィナを迎えに行かないといけないからね。
 立ち上がったわたしをサーニャさんが引き止める。

「それはそうと、ユナちゃん。クリモニアじゃなくて、王都に住まない? そうしてくれると嬉しいんだけど」

 いきなり、そんなことを言い始める。

「今のところ、その予定はないよ」

 なんだかんだで、クリモニアの街は住みやすくなっている。
 好奇な目で見られることも無くなったし、絡んでくる冒険者も居なくなった。
 それにお店もあるし、王都に住むメリットは無い。むしろ、仕事が増えそうで嫌なんだけど。それに王都にはクマの転移門があるから、簡単に来れるから住む必要もない。

「そう、残念ね」
「でも、たまに遊びに来るよ」
「そのときにお願いをするかもしれないけど、そのときはお願いね」

 冒険者ギルドの報告も終わったので、エレローラさんのお屋敷に向かう。
 お屋敷に戻ってくるとフィナが綺麗な服を着て走ってきた。

「フィナ、ただいま」
「ユナお姉ちゃん!」

 わたしのお腹に抱き付いて来る。
 お腹は大きいから受け止められるよ。ちなみにわたしのお腹が大きいって意味じゃないよ。着ぐるみのお腹が大きいんだよ。

「フィナ、可愛い格好をしてるね」

 どこかの令嬢と言ってもおかしくないぐらい、似合っている。

「可愛いクマさんの格好をしているユナお姉ちゃんに、言われたくないよ。それに好きで着てるわけじゃないよ。エレローラ様に無理やり着せられたんだよ」

 可愛いと言われてもベクトルが違うような気がするんだけど。
 着ぐるみの可愛いと綺麗な服を着ての可愛いには大きな差があるよ。女の子なら、着ぐるみ姿を可愛いって言われるよりも、綺麗な服を着て、可愛いって言われた方が喜ぶと思うよ。

 でも、フィナが元気そうで良かった。
 もしものことがあったら、ティルミナさんに申し訳がないからね。

「ユナちゃん、おかえり。鉱山の件は終わったの?」

 フィナがやって来た方向から、エレローラさんがやって来る。

「一応ね。あとは様子見ってことで帰ってきたよ」
「そう、お疲れさま。今日は美味しい食事を用意するから、食べてね」

 食事の前にお風呂に入ることになり、フィナと一緒に入ることになった。

「フィナ、わたしが居なかった間、王都は楽しめた?」

 フィナの背中を洗いながら尋ねる。
 フィナの反応がない。否定も肯定もしない。
 あれ、楽しく無かったのかな?

「でも、お城の見学に行ったんでしょう? あと、王都見物も」
「エレローラ様に綺麗な服を着せられて、汚さないように気をつかったりして、お腹が痛くなったよ」
「あはは、そうなんだ」
「笑い事じゃないよ~。それから、その格好でお城に連れて行かれたんだよ」
「でも、お城見物したんでしょう」
「うん、エレローラ様にいろいろお城の中を案内してもらって、綺麗な庭園も見させてもらったよ」

 ああ、確かあったね。綺麗なお花が咲いているんだよね。

「でも、そこに国王様が現れて、あとのことはほとんど覚えてなくて」
「あの男は、女の子がお花を見ているときぐらい、静かにできないのかな」
「だから、ユナお姉ちゃんが用意してくれた昼食の味、覚えていないの。ごめんなさい」
「いいよ。また、作ればいいだけだから。それにしても国王だよね。ちゃんと、言わないとダメだね」
「ユナお姉ちゃん?」

 あの国王はわたしが来てもすぐに近寄ってくるし、ちゃんと仕事しているのかな?

「今度、国王に会ったら、フィナに近付かないように言っておくよ。だから、今度は安心してお城見物をしようね」
「やめて~~~~」

 風呂場にフィナの声が響いた。
 なんでかな?


 風呂から上がったわたしたちが食堂に向かうと、エレローラさんと学園から帰って来ていたシアがすでにいた。

「あら、もう白いクマさんの格好?」
「食べたら寝るからね」

 今日はエレローラさんのお屋敷に泊まることになっているので、食べたら寝るだけだ。

「ユナさん、ゴーレムは強かったですか?」

 シアが鉱山の話を聞きたそうにしている。

「強いかどうかは分からないけど。坑道の中だから、戦いにくかったね」
「そうなんですか?」
「力を出しすぎると崩落の恐れがあるからね。他のゴーレムを討伐に来ていた冒険者も、そのことで困っていたよ」
「それをどうやって倒したんですか?」
「くまゆるとくまきゅうに手伝ってもらったよ」

 嘘は吐いてはいない。
 実際に土ゴーレムと岩石ゴーレムを倒すのを手伝ってもらった。

「それと、シアもフィナの面倒を見てくれてありがとうね」
「いえ、フィナちゃんは良い子だから、大変じゃありませんよ」
「そんなこと無いです。いろいろと迷惑をかけて」

 フィナは否定するがシアはニコニコと微笑ましそうにしている。
 なんだかんだで、楽しそうで良かった。
 食事の間はエレローラさんに報告を兼ねて鉱山の話をした。
 主にジェイドさんたちの話をする。
 自分のことは目立たない程度に説明をする。
 もちろん、電撃魔法とクマの転移門のことは話さない。
 戦い方の話は曖昧にして誤魔化す

「ユナさん、わたしと同い年なのに、凄いです」
「別にシアは貴族に産まれたんだから、強くならなくてもいいでしょう?」
「せっかく、学んでいるんだから、強くなりたいです」
「だからと言っても、近くの初心者の森以外は認めないわよ」
「うん。わかっている」

 シアは母親のエレローラさんには逆らおうとせず、素直に頷く。
 それから、美味しい料理を食べ終わり、与えられた部屋で休もうと思ったら、エレローラさんに引き止められた。

「ユナちゃん、ちょっと待って」
「なんですか?」
「ユナちゃん、明日には帰るのよね」
「そのつもりだけど。フィナをそろそろ、親御さんのところに帰さないと心配させると思うし」

 わたしがそう言うとエレローラさんがスリリナさんに合図を送る。
 合図を受けたスリリナさんは一度部屋から出ていく。

「なんなんですか?」
「今回の報酬を渡そうと思ってね」
「報酬は10日後に達成の有無が分かれば、クリモニアの冒険者ギルドで受け取るよ」
「違うわよ。忘れたの? ミスリルのナイフをあげるって」

 確かにそんな約束をしたような。でも、ミスリルゴーレムを手に入れた今だと、無理に要らないんだけどな

「今、要らないとか思わなかった?」

 エスパーか!
 そんなことを考えてるとスリリナさんが布を抱きしめて戻ってくる。
 そして、エレローラさんに布に包まれた物を渡す。
 エレローラさんは受け取った布をほどくと、中から出てきたのは、装飾された短刀だった。
 エレローラさんはわたしのところまでやって来ると、その短刀を差し出す。

「はい、ユナちゃん」

 目の前に差し出された短刀は凄く高そうなんだけど。
 細かい細工などがされている。
 心の中で受け取ってはダメと鐘が鳴っている。

「なんですか。この綺麗な短刀は」
「約束のナイフよ」

 エレローラさんは鞘から短刀を抜き出す。
 綺麗だ。

「これ、解体用じゃないよね?」
「ええ、違うわね」
「戦闘用でもないですよね」
「違うけど。一応、ミスリルだから、切れ味は良いわよ」

 女性が持つ護身用みたいだけど、なにか違うような気がする。

「いらないです」
「どうして? 報酬よ」
「なにか、裏がありそうだから」

 クマが危険信号を鳴らしている。そんなスキルはないけど。

「なにも裏なんてないわよ。安心して受け取っていいわよ」

 エレローラさんの笑顔が怖いんだけど。
 でも、ここで負けたらダメだ。

「丁重にお断りさせてもらいます」
「もう、察しがいいんだから」

 口を尖らせるエレローラさん。

「やっぱり、なにかあるんですか?」
「たいした理由じゃないわよ。この短刀にはフォシュローゼ家の紋章が入っているの。なにか、困った時があれば、これを見せれば大体は片付くわよ」

 つまり、黄門様の印籠ってことかな。

「どうして、わたしに」
「だって。ユナちゃん、トラブル体質でしょう?」

 確かにそうだから、否定はできない。
 このクマさんの着ぐるみのおかげでトラブルに巻き込まれることも多い。

「でも、それだけですか?」
「どちらかと言うと、こっちが本音かな。他の貴族にユナちゃんはわたしの関係者だと知らせておこうと思ってね」
「エレローラさんの関係者?」
「ユナちゃんの実力を知って、ろくなことを考える者が出ても面倒だからね。だから、ユナちゃんの後ろにはフォシュローゼ家がいることを示しておこうと思ったのよ」

 どうやら、わたしのことを思ってのことだったらしい。

「だから、バンバン使っていいから」
「使いませんよ」

 無料(ただ)より高い物は無いとはと、よく言ったもんだ。
 印籠を使いまくって、あとで請求をされたらたまったものではない。

「ちなみに商業ギルドとかで使うと、紹介状がなくても、この前みたいに土地を融通してくれるよ」
「うっ」
「バカな貴族に絡まれたら、大人しくなるよ」
「うっ」
「あっ、でもフォシュローゼ家の紋章を知らない人に使っても意味がないけどね。それでも役に立つと思うわよ」

 短刀を再度、差し出すエレローラさん。

「わたしがこの短刀(フォシュローゼ家)を使って、悪い事をするかもしれないよ」
「うふふ、ユナちゃんは面白いことを言うわね」
「今のところ、笑うところ?」
「どこの世界に、孤児院の面倒をみたり、少年が困っていたら1人でブラックバイパーを倒しに行ったり、トンネルを掘ったら、ほとんど無償で譲渡したり、女の子の父親を守るために1人で魔物の群れを退治に行くような子が悪い子になるのかな?」

 エレローラさんはわたしの頬っぺたを突っつく。

「実際は裏があってなにかをたくらんでいるかもよ」
「それじゃ、一番近くにいる子に聞いてみましょうか」

 エレローラさんはフィナを見る。

「フィナちゃん。ユナちゃんは悪い人かな?」
「ユナお姉ちゃんはとっても優しい人です。もし、ユナお姉ちゃんが居なかったら、わたしもお母さんも死んでました。孤児院の子供たちもあんなに笑顔は無かったと思います。お父さんの話によればブラックバイパーも無報酬でしたって聞きます。それにミリーラの町もそうです。ユナお姉ちゃんは優しく、強く、悪いことは絶対にしないです」

 エレローラさんは頷いている。

「フィナ、分かったから。もう、なにも言わないでいいよ。恥ずかしくなってくるから」
「まだ、ユナお姉ちゃんの素晴らしさを半分も言ってないよ」
「言わないでいいよ」

 これ以上、フィナの口からわたしのことが出ないようにさせる。
 引きこもりの、褒められなれていない人間を褒めても困るだけだ。
 わたしは改めて、目の前の短刀を見る。

「受けとったら、エレローラさんの部下とか言いませんよね」
「言わないわよ」

 白クマパペットの口が短刀を咥える。

「もし、なにかあったら、フォシュローゼ家の名前を出していいからね」

 受け取ったのは良いけど、使うことは今のところない。保険代わりってとこかな。
 白クマパペットの口に咥えた短刀は、そのままクマボックスの中に吸い込まれていった。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ