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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、いろいろ作る

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124 クマさん、謝罪を受ける

 ドアがノックされた。

「だれ?」

 ドアに近いシアが応対する。

「俺だ」
「マリクス?」
「少し話がしたいから、ドアを開けてくれないか?」

 シアがどうする? って感じでわたしたち2人を見る。

「わたしは構いませんよ」
「なんなら、くまゆるとくまきゅうを召喚しておくけど」
「それはいいですね」

 カトレアが賛同するので、ベッドの上に小熊のくまゆるとくまきゅうを召喚する。ベッドにちょこんと座る二匹。
 召喚された2匹を見てシアはドアを開ける。

「それで、こんな遅くになんの用なの?」
「その、なんだ」

 マリクスが言いづらそうにしている。
 これは…まさかの告白タイムなの!?
 修学旅行でよくあると言う噂のイベント。わたしは行ったことがないから実際は知らないけど。修学旅行に行くとカップルが量産されると言う。もしかして、この実習訓練も似たようなもの!?
 告白相手はシア、それともカトレア? どっちなの?
 聞き耳を立てながら二人の声を盗み聞きする。

「なんなの?」

 はっきりしないマリクスにシアが苛立ちをおぼえる。

「明日、出発する前に謝りたくてな」
「謝る?」

 シアが頭に『?』マークを乗せる。
 わたしの頭にも『?』が乗るよ。どういうことなの?
 告白じゃないの?

「わたし、なにかされたっけ?」
「おまえじゃねえよ。クマだよ。クマの格好をしたユナさんに謝りに来たんだよ」

 今、ユナさんって聞こえたんだけど。
 聞き間違い?
 それ以前にわたしに謝罪?

「ユナさんに謝りに?」
「そうだよ。ティモルと話し合ってな。明日、出発する前に謝りに来たんだよ」
「だから、僕たちを部屋の中に入れてくれるかな?」

 ティモルの声もする。ドアの外には二人いるらしい。

「ユナさん、どうしますか?」
「別に謝られることはなにもないんだけど」
「とりあえず、中に入れますね」

 そう言うと、マリクスとティモルが部屋の中に入ってくる。

「それでユナさんに謝るってなにを? 2人はユナさんになにかしたの?」

 シアが入ってきた二人を問い詰める。
 特に何かをされた記憶はないんだけど。

「俺たちは冒険者だと信じなかった」

 まあ、クマの着ぐるみを着た女の子を冒険者とは思わないよね。

「強いことを信じなかった」

 今までの経験からすると、初めてわたしを見て、強いと思った人は誰1人いないと思うよ。

「変な格好をした女って馬鹿にした」

 ああ、確かに言われたね。わたしもこんな格好をしている者がいたら馬鹿にするね。

「ユナさんに行動の許可を貰わないで、危険な行動をした」

 まあ、わたしを冒険者として見てなかったんだから仕方ない。

「あと、召喚獣のクマにお礼を言っていない」

 ベッドに乗っているくまゆるたちが首を傾げる。

「俺たちは命を救われたのにちゃんとお礼を言ってない」

 お礼は聞いたけど。
 どれも、そんな真剣になるようなことはないけど。
 わたしも慣れたのかな。

「気にしないでいいよ。実力を隠していたのはわたしだし。エレローラさんにあなたたちを自由に行動させてあげて欲しいって頼まれていたし。危険が無ければ、わたしはなにもしなかったし」
「でも、実際は僕たちを影から守っていたんですよね」
「それが仕事だし」
「僕は黒虎ブラックタイガーと戦うことなったとき、死を覚悟しました。それをユナさんが救ってくれました」
「俺のミスだったのに。ユナさんが尻拭いをしてくれた。みんなが死なずにすんだのはユナさんのおかげだ。俺はゴブリンぐらい倒せるといい気になっていた。その播いた危険な種をユナさんが刈ってくれた」

 う~ん、なんだろう。
 背中がむずかゆくなってくるんだけど。

「さっきも言ったけど、気にしないでいいよ。黒虎ブラックタイガーの事は誰も想像は出来なかったし、マリクスは村のためにゴブリン退治をしようとしただけだし。それにわたしの格好を初めて見て、冒険者と思う人は誰もいないよ」
「でも…」
「それにあなたたちになにかされたわけじゃないし。もし、喧嘩を売ってきたら買ったけど。そんなことはしなかったし。だから、気にしないでいいよ」
「…………」
「…………」

 マリクスとティモルはなにか言いたそうにする。
 シアもカトレアも黙って聞いている。
 長い沈黙って堪えきれないんだけど。

「とりあえず、何か食べる?」

 空気が重かったので、クマボックスからポテトチップス、フライドポテト、サンドイッチなどをテーブルの上に出す。

「食べていいのか?」
「いいよ。まだ、沢山あるから好きなだけ食べていいよ」

 マリクスはポテトチップスに手を伸ばして食べる。

「うまい」

 ティモルも同じようにフライドポテトに手を伸ばして食べる。

「うん、これも美味しいよ」

 どうやら好評のようだ。

「ユナさん」

 シアとカトレアがテーブルに乗っている食べ物を見ている。
 2人の目が食べたいと言っている。
 さっきまでカトレアはお腹を擦っていたのに大丈夫なのかな。

「2人とも食べていいけど、太ってもしらないからね」

 わたしは2人に忠告する。
 わたしの言葉にお腹と相談をする2人。
 そして、相談した結果。

「だ、大丈夫ですわ」
「わ、わたしも大丈夫です」

 女性2人のおかげで、マリクスとティモルの心も落ち着き、重い空気は消えていった。

「このパン美味しいな」
「家で食べるパンよりも美味しい」

 まあね。わたしが見つけたパン職人が作っているからね。

「わたしはこのポテトチップスが美味しいですわ」
「お前たちここに来るまでの間、こんな美味しい食事をユナさんから貰っていたのか」

 マリクスが羨ましそうな目で2人を見る。

「少しだけよ。さすがに実習訓練なのにユナさんが用意した食事を食べるわけにはいかないよ」
「本当は自分たちが用意した食事より美味しいから、ユナさんの食事が食べたかったんですけどね」

 次々と減っていく食べ物にわたしはモリンさんや孤児院の子供たちが作ってくれたパンをテーブルに並べていく。先程の暗い沈黙は消えたけど、わたしの貯蔵していた食料がみんなの胃袋に消えていく。
 みんな、ちょっと前に夕飯食べたよね。なんで、そんなに食べられるの?
 これが若者の胃袋か。わたしにはついていけない。
 わたしはくまゆるとくまきゅうを抱きしめながら、みんなが美味しそうに食べる様子を見ている。わたしのお腹にはこれ以上入らないからね。


 翌日、お腹を擦ってる4人の姿がある。
 4人は村長が用意してくれた朝食を断ることも出来ずに無理に食べていた。昨日の夜にあんなに食べるから。
 別にわたしは悪くないよ。みんなが勝手に食べただけだよ。

「それでは馬車には荷物を積んでおきましたので」

 村長はマリクスに説明をしている。

「荷物って」

 小声で隣で苦しそうにしているシアに尋ねる。

「今度はこの村から王都まで運ぶ荷物です。確か、糸や布だったと思います」

 なるほど、特産品ってわけね。
 あの気持ち悪い蚕がいれば納得。
 村長がマリクスとの会話を終えるとわたしのところにやって来る。

「ユナさん、今回はお世話になりました。もし、生徒たちになにかあったら大変でした」
「お礼なら、昨日の食事のときにたくさん聞いたよ」
「ですが……」

 村長はまだ言いたそうにするが、昨日の食事のときに散々お礼を言われた。

「それに、学生を護るのがわたしの仕事だから」
「わかりました。では、昨日お約束した物を用意させてもらいました」

 村長が目配りすると、村人の1人が大きな箱を持ってくる。
 中を見ると色取り取りの布と糸が入っていた。
 あの繭から作った物かな。

「ユナさん、いいな~」

 シアが箱の中を覗きこんで羨ましそうに言う。

「どれも高級品ですよ」
「そうなの?」
「貴族の間では人気がありますよ」

 まあ、くれるなら有り難くもらっておくけど。でも、いいのかな?

「本当に貰っていいの? 黒虎ブラックタイガーを倒したことは嘘は吐いていないけど、本当にわたしが倒した証拠はないよ」

 魔石の討伐の確認をしていない。
 王都や街に行かないと討伐した日付は分からない。
 過去に倒した黒虎(ブラックタイガー)の死骸を見せた可能性もある。

「そのときは、わたしの見る目が無かったことで構いません。それよりも、本当に倒してくれたのにお礼をしなかったときの方が、恥ずかしい行いです」

 とキッパリと村長は言う。

「ありがとう。素直に受け取っておくね」

 布が入った箱をクマボックスに仕舞う。

「はい。またお越しになってください」

 村長と村人たちに見送られて馬車は王都に向けて出発する。



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