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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、いろいろ作る

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116 クマさん、学園に行く

 翌日、アンズに会いに宿屋に向かう。

「2人とも、本当に今日、帰るの?」
「はい。十分に楽しみましたから」
「お母さんに会いたい」

 とのことで、今日帰ることになった。

「そんなわけでクリモニアに帰るから」

 宿にいるアンズに伝える。

「わたしもトンネルが完成したら、すぐに行きますね」
「もし、わたしがいなかったら、孤児院のティルミナさんって女性を訪ねて」

 トンネルがいつ完成するかも分からないし、わたしも毎日クリモニアにいるわけでもない。しばらくしたら王都に行かないといけないし。

「ユナさん、いないんですか?」
「ちょっと、面倒な仕事があってね。いない可能性があるから。でも、安心していいよ。ティルミナさんは、この子たちの母親だから」
「そうなの?」

 2人を見るアンズ

「はい。お母さんはユナお姉ちゃんのお手伝いをしてます」
「そうなんだ。分かった。孤児院ね」

 アンズに伝え、デーガさんにも挨拶して町を出発する。
 帰りはわたしがくまゆるに乗って、2人はくまきゅうに乗る。
 トンネルを進み、クリモニアに戻ってくる。
 そして、借りた物を返さなければいけない。

「それじゃ、お借りした娘さんはお返ししますね」
「役にたったかしら」

 2人ともティルミナさんに抱きついている。そんな娘の頭を撫でているティルミナさん。

「2人とも頑張ってくれましたよ」
「なら、いいけど。2人とも楽しかった?」
「はい、楽しかったです。海、大きかったです。船にも乗せてもらいました」
「食べ物、おいしかった」

 2人とも旅行であったことを報告する。
 それを嬉しそうに聞いているティルミナさん。

「ユナちゃん、ありがとうね。貴重な体験をさせてもらって」
「今度、ティルミナさんも一緒に行きましょうね」
「そうね。そのときは一緒に行かせてもらおうかしら」

 それから旅行話も終わり、2人は旅行疲れが出たのか、眠そうだったので部屋で眠ることになった。
 ティルミナさんと2人きりになったわたしはアンズのことを説明をする。

「それじゃ、その子たちが来たら面倒をみればいいのね」
「お願いします。お金は気にしないで使っていいので、お店の内装はお任せしますね」

 ティルミナさんに話を通しておけば、わたしがいなくても大丈夫だろう。
 ティルミナさんと別れて、孤児院に向かう。
 孤児院の近くの立地にアンズたちが住む社員寮? 宿屋風の社員寮を建てる。
 一階は共同スペースにして、2階、3階に4畳半ほどの部屋をいくつか作る。
 1人部屋なら、これでいいかな。宿屋もこんな感じだったし。
 これぐらいあれば人が増えた場合も大丈夫かな。


 数日後、クマの転移門を使って王都に移動する。
 クマハウスで待っているとエレローラさんがやってくる。

「おはよう。ユナちゃん」
「おはようございます」
「それじゃ、学園に案内するわね」
「本当に行くんですか?」

 どうも、同年代の子相手はどうも苦手意識がある。
 引きこもりをやっていたせいかな。

「約束でしょう?」
「そうですけど。替わりが見つかるとか」
「ユナちゃんが引き受けてくれたから、捜してないわよ」

 そうなんだ。
 諦めてエレローラさんと学園に向かうと、ちらほら制服を来た生徒が歩いている。王都を歩いているときに時々見かけた制服だ。紺と白色の制服だ。全員、紺色のマントを着けている。
 学園に向かうわたしたちを生徒たちは目線を合わせないように見ている。
 そして小声で、

「クマ?」「どうして熊が学校に」「クマの横にいるのエレローラ様だよな」「なんだ、あの変な格好は」「可愛いけど、恥ずかしい格好ね」「やべえ、あんな面白い格好、初めて見たよ」「劇でもするの?」「恥ずかしくないのかしら」「僕は可愛いと思うよ」「手を見ろよ。クマだぞ」「それを言ったら足だって」「どこであんな服、売っているのかしら」「近寄ったら喰われるかな」「わたし抱きしめたい」「あんな格好で歩くなんて有り得ないだろう」「俺、前に王都で歩いているの見たことがある」「僕も知り合いに聞いたことがあるよ」

 生徒たちの声が聴こえてくる。

「帰っていい?」
「駄目に決まっているでしょう」

 逃げられないように腕を掴まれる。
 ヒソヒソ声を聴きながら、学園の前にやってくる。
 中世のお城のような建物だった。

「これが学園」
「12歳から、18歳の子たちが通っているわ」
「大きい」

 見上げるように学園を見る。

「ある程度のお金は必要になるけど。基本、王都にいる子供の多くが通っているからね」

 孤児院にも小さな学校でも作ろうかな。
 子供たちも多いし、読み書きはもちろん、計算の仕方は少しは教えているけど、社会などは教えていない。でも、子供たちは仕事もしているし時間が無いかもしれない。少しは考えないとダメかな。

 学園の中に入り、職員室らしき場所に連れていかれる。
 まずは生徒の担任に会うそうだ。
 どうも、職員室って想像するだけで気分が滅入るけど。それはわたしが学校に行っていなかったせいかもしれない。
 職員室に入ると30代ぐらいの男性のところに連れていかれる。

「シューグ先生」
「これはエレローラ様、それと……クマ?」
「この女の子が冒険者の護衛に頼んだユナです」
「エレローラ様。冗談でしょうか。わたしの目には12、3歳の女の子にしか見えないのですが。もしかして入学希望者ですか?」
「彼女はれっきとしたランクCの冒険者ですよ」
「ランクC……」

 疑うような目で見てくる。
 ここで罵倒の1つや信用出来ませんとか、否定的な言葉でも出てくれば帰るんだけどな。
 エレローラさんがギルドカードを見せるように言うので仕方なく、カードを見せる。

「職業、クマ?」

 どこを見ているんですか。

「ランクを見てください」
「ああ、すまない。冒険者ランクC。本当に? 偽物じゃありませんよね」
「本物よ。それはエレローラの名に誓って保証するわ」
「信じられませんが。エレローラ様を信じます。それに彼女が護衛する班にはエレローラ様の娘さんもいるので、危険な目に合わせるとは思いません」

 そこは『信じられないから、大事な生徒はまかせられません』と言うところじゃないかな? そうしたら、出ていく口実になるんだけど。
 それだけ、わたしの不安な格好を払拭するほど、エレローラさんは信用されているってことかな。
 ギルドカードを返してもらい、クマボックスに仕舞う。

「それで、ユナさんでしたか。今回の実習訓練について、説明は必要ですか?」
「危険があるときだけ護衛をして、生徒の行動を報告するだけって聞いたけど」
「はい、基本は生徒の自主性を大事にしてください。移動先、おこなう行動、それが間違っていても口を挟まないであげてください。でも、それに危険が伴う場合は止めてください」
「難しいことを言うのね」
「だから、依頼する相手を見つけるのが大変なのよ」

 面倒な依頼を受けてしまったかもしれない。
 まして、年齢が近い相手の護衛とか、面倒ごとしか想像ができない。

「それで、どこまで行くの?」

 近いといいんだけど。

「馬車で3、4日ほどの村だ。そこまで荷物、小麦粉を運んでもらうことになっている」
「往復で10日ほどね」

 ちょっと遠いかな。
 くまゆるを使えば1日で往復できそうだけど。

「それじゃ、移動は馬車ってこと?」
「ええ、そうなるわね。だから、ユナちゃんのクマは禁止だからね。馬が驚いちゃうから」

 確か、そんなことを言っていた記憶がある。馬車の長距離の運転とか馬の世話があるとか。

「つまり、馬車の中で寝ていればいいのね」
「そうなるわね」
「エレローラ様!」
「冗談よ。でも、基本、護衛になるから暇になるのは確かね。ユナちゃんのやり方で守ってくれればいいから」

 一通り、説明を聞き、わたしが護衛する生徒がいる教室に向かう。
 中に入ると、4人の生徒が席に座って待っていた。

「クマ?」
「どうして、クマが?」
「クマよね?」
「ユナさん?」

 一人だけ違う反応の生徒がいた。
 もちろん、エレローラさんの娘のシアだ。
 教室の中には制服を来た生徒が4人いた。
 男子2人、女子2人だ
 この4人が護衛対象になるのかな。
 簡単に4人を表現するなら、少し髪が長めの頭が良さそうな男が1人、短髪の生意気そうな男が1人、金髪ドリルの女の子が1人、最後にシアになる。
 全員がわたしの方を見ている。

「おまえたち、静かにしろ」
「先生、そのクマはなんですか?」
「もしかして、俺たちのパーティーに追加メンバーとは言わないよな?」
「小さいから、それはないわね」

 生徒たちが勝手に話している間、シアは手を振って、1人ニコニコしている。

「違う。このクマは。ゴホン、このユナさんは」

 今、クマって言ったよね。
 先生はわたしのことをクマと言いかけて名前に言い直す。

「冒険者で、おまえたちの護衛をしてくれる人だ」

「はぁ、なにを言っているんだ先生。どうみたって、俺たちよりも年下じゃないか」
「そうです。先生。冗談もいい加減にしてください」

 金髪ドリルが怒る。
 本当にこんな髪型をした人がいるんだね。

「冗談じゃないわよ。彼女はれっきとしたランクCの冒険者よ。彼女にはあなたたちの護衛をしてもらうために、わたしがお願いして、来てもらったの。まさか、わたしの顔に泥を塗るマネをするような子はいないわよね?」

 騒ぐ生徒にエレローラさんが脅迫という名の説明をする。

「安心しなさい。彼女の実力はわたしが保証するわ」

 わたしなら、安心は出来ないだろうな。
 自分たちよりも年が低く見える女の子。
 さらに変な格好をしている。
 わたしの格好を見て冒険者だと思えないだろうし。
 どこにも、信じられる要素がない。
 これで、生徒たちが拒否したら、帰れるかな?

「エレローラ様、本当に彼女はランクCなのですか? わたしが知っている限りでは、ランクCになるには大変だと教えられてますが?」

 金髪ドリルが尋ねる。

「もちろん、大変よ。それだけで、彼女が凄いってことが分かるでしょう」
「でも、エレローラ様。そんな小さな女の子がランクCにいれば、僕が知らないわけがないんだけど?」

 長髪男子が知識を披露する。

「それはそうよ。彼女が拠点にしているのはクリモニアの街だから、この王都では知られていないわ。王都で彼女のことを知っている者は一部の者だけ」
「でも、そんなクマでもランクCなら、俺はランクBになれるな」

 短髪男子が笑いだす。

「わたしよりも、ランクが高い人がいるみたいだから、帰ってもいい?」

 問題ないよね。わたしよりも強いんだから、護衛はいらないよね。

「そんなの駄目に決まっているでしょう」

 うぅ、帰りたい。
 シアの方を見ると、金髪ドリルとの会話が聞こえてくる。

「ねえ、シアさん。学園も馬鹿にしているのかしら。あんな子供をわたしたちの護衛にするって。逆に、わたくしたちが守らないといけないじゃない」
「ふふ、カトレアさん。そんなことはありませんよ。最高の護衛です。もし、ランクSの冒険者が並んでも、わたしは彼女を選びますわ」
「あら、シアさんはあのクマさんのことを知っているの?」
「少しだけね」
「そうなの?」
「今回の実習訓練はつまらないと思っていたけど、楽しそうで良かったわ」
「そう? わたしは大変そうになりそうで嫌なんですけど」

 なら、大きな声で断ってくれないかな。

「とにかく、彼女にはあなたたちの護衛をしてもらうわ。拒否権はないわよ」
「エレローラ様、俺たちがそのクマを見捨ててもいいんですか?」
「構わないわよ」

 そこは助けようよ。

「死んでもいいなら、俺はなにも言わないよ」
「僕もいいよ。そもそも冒険者の護衛がなくても、これぐらいの実習はできますから」
「わたくしもいいですわ」
「もちろん、わたしもいいよ」

 全員が了承したので、護衛任務の仕事が確定してしまった。

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