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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、いろいろ作る

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112 クマさん、旅館風クマハウスに行く

後書きに大事な報告があります。
 デーガさんの料理を美味しく食べている二人の姿がある。
 美味しく食べてくれると嬉しくなる。
 そんな二人を見ながら食事をしていると、アンズが話しかけてくる。

「それでユナさん、さっき言ってた欲しい食材ってなんですか? わたしが用意しましょうか?」

 アンズが申し出てくれる。

「たぶん、売ってないから用意は出来ないかも」
「売ってないんですか?」
「売っているところ、見たことが無いからね」
「でも、この町の近くで採れるんですよね?」
「うん、山で見かけたからね」
「どんな食材なんだ?」

 食材に興味を持ったデーガさんが話に入ってくる。

「タケノコだけど」
「タケノコ? なんだ?」

「この町の裏の山にある竹だけど、知らない? 緑色の筒みたいな」
「いや、竹ぐらいは知っている。あんな固い物、どうやって食べるんだ」

 その言葉を聞いて納得した。
 竹が土から育つ前の状態を知らないんだ。
 誰も、竹が育つ前に、掘り起こそうとは思わない。
 わたしだって、何も知らなかったら、竹を見て、土に埋まっている竹を食べようとは思わない。

「違うよ。タケノコ。竹が育つ前の状態の竹だよ」
「そんな物が食べれるのか?」
「美味しいよ。お米と一緒に炊いてもいいし、そのまま茹でて食べてもいいし、他の食材と一緒に炒めてもいいし。いろんな食べ方があるよ」

 一番の目標はタケノコご飯を目指すことだ。

「タケノコは手に入れるのは大変なのか?」
「大変だけど、頑張れば子供でも採ることはできるよ」
「よし、分かった。俺も行く!」

 デーガさんがそんなことを言い出す。

「お父さん!」
「料理人の俺が知らない食材が近くにあるんだ。採りに行かないんでどうするんだ。もし、クラーケンのときに知っていれば、食材になったんだぞ」
「そうだけど。宿はどうするのよ」
「俺が一日いなくても、大丈夫だろ」
「無理だよ。お兄ちゃんは海に行っちゃうし、お母さんと二人であの人数を捌けないよ」
「採りに行くのは日の出の早朝だから一日はかからないよ」
「そんなに早くか」
「その方が美味しいタケノコが採れるからね」

 テレビで見た、タケノコの番組をうろ覚えで答える。
 タケノコを掘るのは朝が良いと言っていた。
 味が美味しく、香りも良いと聞いた覚えがある。日に当たると、苦みが出るから、掘るのは朝方の時間帯が勝負だと。

「なら、アンズ、朝の仕込みは手伝ってやるから、朝食は一人でやってみろ」
「無理だよ~」
「嬢ちゃんのところで店を開くんだろ」
「そうだけど」
「何事も経験だ」
「うう、お母さんと二人で大丈夫かな? それにわたしもタケノコ採りに行きたいよ。お父さんが朝食を作って、わたしがユナさんとタケノコ採りに行くのは駄目なの?」
「それは駄目だ。俺が採りに行く。そんな美味しい食材が近くにあったのに知らなかったなんて、料理人として、許されない」
「それなら、わたしだって」
「今回は俺が行く。こればかりは娘でも譲れん。嬢ちゃん、いいか」
「いいけど。喧嘩はしないでよ」
「うぅ、分かりました。今回は我慢します。でも、ユナさん、今度はわたしも連れて行って下さいね」

 デーガさんとは日の出の時間に町の入り口で待ち合わせすることになった。

「必要な物はあるか?」
「土を掘り起こすから、鍬があるといいかな。もし、見ているだけなら、わたしが魔法で掘り起こすけど」
「いや、アンズにも言ったが経験だ。自分で掘ってみる」

 デーガさんの料理も食べ終わり、そろそろ、宿泊者が仕事を終えて戻ってくる時間なので、わたしたちは旅館風クマハウスに向かうことにした。

「ユナお姉ちゃん、大きいです」

 目の前に建つ、旅館風クマハウスを見て、フィナの第一声がそれだった。

「わたしも出来上がったのを見て、そう思ったよ」
「なんで、こんなに大きく作ったんですか?」
「今度、孤児院の子供たちでも、連れて来てあげようと思ったら、部屋の数が増えちゃって」
「やっぱり、ユナお姉ちゃんは優しいです。本当は孤児院のみんなが働いているのに、わたしたちだけ連れて来てもらって、少し、罪悪感があったんです。でも、ユナお姉ちゃんはちゃんと、みんなのことを思っているんですね」
「そんな、崇高な考えなんてないよ。みんな一生懸命に働いているんだから・・・・・そう、社員じゃなくて、従業員旅行みたいなもんよ」
「従業員旅行?」
「そう、働いているみんなに、わたしがみんなに感謝をすることだよ」
「どうして、ユナお姉ちゃんがわたしたちに感謝するの?」
「だって、わたしのお店で働いているでしょう」
「違うよ。ユナお姉ちゃんのおかげで、仕事があって、お腹いっぱい食べられて、温かい寝る場所もあるんだよ。もし、ユナお姉ちゃんのところで働けなかったら、食べる物も、寝る場所も困っていたよ。わたしもお母さんも孤児院のみんなも、ユナお姉ちゃんに感謝しているよ」

 うーん、説明が難しい。
 フィナの考えは仕事を与えてもらって、お金も食事も寝る場所も提供してもらっているのに、それ以上の感謝は必要ないと思っている感じだ。
 これが、日本で育ったわたしと異世界で育ったフィナの考えの差かな。

「ありがとう。でも、わたしが感謝したいからするんだよ」

 フィナの頭を撫でてあげる。

「今日は一日移動で疲れたでしょう。早く中に入りましょう。シュリも眠そうにしているし」

 フィナの後ろではシュリが眠そうにしている。

「はい」

 クマハウスに入ると、二人に一階の部屋の説明をする。
 シュリもクマハウスに興味が出てきたのか起きている。

「トイレとか水が飲みたかったら一階にあるから使ってね」

 それから二階はスルーして三階のお客様用の部屋に案内する。

「二人ともこの部屋を使って」
「広いです」
「ここで寝るの?」
「お風呂に入ってからね」

 三階の部屋はそれぞれが広く作られている。
 わたしたち以外にはいないので二人にはこの部屋を使ってもらう。

「明日は早いから、お風呂に入って今日は早く寝ましょう」

 そんなわけで四階にある風呂場に向かう。
 ちゃんと、男性と女性に別れている。
 暖簾に『女』と書かれた文字をくぐり、脱衣場に入る。

「ここで服を脱いで、奥がお風呂だよ」

 二人は備え付けの脱衣かごに服を入れ、風呂に向かう。
 わたしもクマさんの服を脱ぎ、後を追う。

「うわあ、大きい、お外も見えるよ」

 シュリがトコトコと歩いて行く。

「あれ、ユナ姉ちゃん。お湯入っていないよ」

 シュリに言われて気づく。浴槽にお湯が張ってない。
 当たり前のことだ。誰も使っていないし。今、帰ってきたところだ。
 わたしはお湯が出るクマの石像のところまで行き、クマの手に付けられている魔石を調整する。するとクマの口からお湯が出てくる。反対側にもクマがあるので同じようにお湯を出す。 
 どのくらいでお湯が溜まるかな?
 体を洗っている間に溜まればいいけど。
 とりあえず、いつまでも裸で立っている訳にはいかない。

「二人とも体と髪を良く洗ってね」

 わたしが二人に指示を出す。

「シュリ、外を見ていないで体を洗うよ」

 フィナが外を見ているシュリの手を引っ張って洗い場に連れて行く。
 わたしもクマの口から出る温度を調整をして、洗い場に向かう。
 ゴシゴシと洗っていると、フィナとシュリがやってくる。

「どうしたの?」
「ユナお姉ちゃんの髪は長くて綺麗です」
「ユナ姉ちゃん、キレイ」

 二人がわたしの髪に触れる

「ただ、長いだけよ」
「髪を洗うの、わたしがやります」
「わたしもやる~」
「別にいいよ。一人でも出来るから」
「ユナお姉ちゃんにはお世話になっています。わたしがユナお姉ちゃんに出来ることはあまり無いから、やりたいんです。でも、迷惑だったら言ってください」

 純粋な目で見てくる。心が濁っているわたしには眩しい。そんな目で見られたら断ることは出来ない。

「分かった。それじゃ、お願いしてもいい?」
「はい!」

 二人は仲好く、わたしの後ろに座り、髪の毛を念入りに洗ってくれる。

「こんなに長くなるのに何年かかるんですか」

 いつから伸ばし始めたか覚えていない。髪型に興味も無かったので、そのままにしていたら今に至るだけだ。

「わたしもユナお姉ちゃんぐらいまで髪を伸ばそうかな」
「わたしも伸ばす~」

 自分の髪を触るフィナ。
 手を上げて宣言をするシュリ。

「手入れが面倒だよ」

 そんな会話をしながら、わたしたちは洗い終え湯船に向かうと、お湯は半分ほど溜まっていた。
 湯船は広いので足を伸ばせば大丈夫かな?
 三人とも小さかったおかげで十分に温まることは出来る。
 足を伸ばし、体を沈ませて肩が浸かるまで沈ませる。
 やっぱり、足が伸ばせる風呂はいいね。
 フィナもシュリも気持ち良さそうに入っている。
 風呂は人類の最高の文化だね。
 シュリは外を見たり、お湯が出るクマの口に手を入れたりして遊んでいる。それを一生懸命に止めているフィナの姿がある。
 しばらく、なにも考えずにお風呂に浸かっていると、シュリが出たいと言い出す。

「お姉ちゃん、熱い」

 顔を真っ赤にしている。

「ユナお姉ちゃん、先に上がって良いですか?」
「いいよ。ドライヤーが置いてあるから、しっかり髪を乾かすんだよ」
「はい」

 フィナはシュリの手を引いて風呂場から出ていく。
 わたしもしばらくお湯に浸かり、風呂をあがる。
 脱衣所に行くと、フィナがシュリの髪をドライヤーで乾かしているところだった。
 シュリは眠そうにしている。

「はい、終わったよ」
「ありがとう。お姉ちゃん」

 シュリは目を擦る。眠そうだ。
 その横でフィナは自分の髪を乾かし始める。
 わたしは体を拭き、白クマに着替えて、腰よりも長い髪を乾かしていると、フィナが近寄ってくる。

「ユナお姉ちゃん、先に部屋に戻ってもいいですか?」

 フィナの後ろでは眠そうにしているシュリがいる。

「いいよ。温かくして寝るんだよ。明日は早いからね」
「はい。おやすみなさい」
「ユナ姉ちゃん、おやすみ」
「おやすみ」

 フィナは眠そうにしているシュリの手を引っ張って、脱衣所を出て行く。
 わたしは一人、髪の毛を乾かして、部屋に戻る。
 ベランダから外を見ると綺麗な星空が見える。
 引きこもりで、海に行ったことがないわたしには、この光景はテレビやネットでしか見たことがない。異世界に来て良かったと思う瞬間だった。
 あのまま引き籠っていたら、異世界に来れなかったら、絶対に見れないものだ。
 夜風にお風呂で火照った熱を冷ますと、明日も早いので寝ることにする。
 隣の部屋にいる二人に心の中で「おやすみ」と言って布団に潜り込んだ。




知っている方もいるようですが、皆様のおかげで書籍化します。

詳しいことは近いうちに活動報告に書かせてもらいます。
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