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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、いろいろ作る

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108 クマさん、絵本作家になる?

「どうして、商業ギルドに行ったユナちゃんが、魔物退治をしているの?」

 ハチミツたっぷりのホットケーキを食べているわたしにティルミナさんが尋ねてくる。

「流れ的に?」

 ティルミナさんは溜め息を吐くと諦め顔になる。

「でも、ありがとうね。やっぱり人気商品だから、販売中止にはしたく無かったから助かったわ。子供たちも喜ぶし」
「オーナーらしいことが出来て良かったよ」
「ユナちゃんはいつでもオーナーらしいよ。わたしもモリンさんも孤児院の子供たちもね。みんな感謝しているんだから」

 ティルミナさんからお世辞の言葉をもらい、追加でホットケーキや人気のあるパンを注文する。

「そんなにどうするの?」
「ちょっと出掛けてくるから、そのお土産」
「了解。それじゃ、キッチンに伝えておくから」
「ティルミナさんは?」
「居ないかもしれないけど、レムさんのところに行ってみるわ。ハチミツの価格の話をしたいから」

 ティルミナさんはキッチンに声をかけると店から出ていった。
 注文したパンはしばらくすると、子供たちが運んで来てくれる。パンを受けとるとクマハウスに戻り、クマの転移門を使って王都に転移する。
 王都にあるクマハウスから出て目的のお城に向かう。
 クリモニアの街と違って、人とすれ違うとわたしに向ける視線の数が多い。そう考えるとクリモニアの街も住みやすくなったと感じられる。

 お城に到着すると門番にギルドカードを見せる前に、『どうぞ』と言って道を開けてくれる。門番の仕事がそんなことで良いのか、と思うけど、面倒なチェックが無いのでわたしが文句を言う筋合いはない。
 ただ、気になるのは数人いる門番の一人が、わたしを見ると駆け出したことぐらいだろう。
 あれって、間違いなくあれだよね。
 わたしは小さく溜め息を吐き、諦めて目的の部屋に向かう。
 何度も通っている通路を通り抜けていく。最近ではお城で働いている人たちに挨拶をされることが増えている。お城の外と違って、お城の中では驚いた顔を見ることは減っている。もう、お城でもクマの着ぐるみが受け入れられたってことなのかな。

 目的の部屋に到着するとノックをする。中から女性の返事が返ってくる。

「冒険者のユナです」

 ドアの中の人物に答えるとドアが開く。
 出てきたのはフローラ姫の世話係をしているアンジュさん。
 二十代前半の女性だ。

「これはユナ様、いらっしゃいませ」
「フローラ様はいる?」
「はい、いらっしゃいます」

 ドアを開けて中に通してくれる。

「クマさん」

 わたしに気付いたフローラ姫が駆け寄ってくる。

「フローラ様、元気にしてましたか」
「うん」
「アンジュさん、お昼持って来たけど、大丈夫かな?」
「はい、大丈夫です。料理長には伝えておきます」
「料理長には謝っておいてね」

 たぶん、料理長は王族の昼食の準備をしているはずだ。もちろん、その中にはフローラ様の分も含まれている。そんな、料理長の邪魔をしてしまうのだから、謝らないといけない。

「はい。でも、先日ユナ様が料理長にお渡ししたレシピを喜んでいましたから、それほど怒らないと思いますよ」
「そうなら、いいけど。それじゃ、これを料理長に持っていってあげて、パンの新作だから」
「はい。分かりました。では、わたしは料理長のところに行きますので、フローラ様のことをお願い致します」

 頭を下げて部屋から出ていく。

「フローラ様、お腹空いてますか」
「うん、お腹空いた」
「それじゃ、少し早いけどお昼にしましょう」

 わたしは部屋にあるテーブルにパンを並べていく。焼きたてのため、とても良い匂いがする。

「わあ、美味しそう」

 フローラ様は目を輝かせながらパンをみる。

「どれを食べてもいいの?」
「好きな物を食べていいですよ」

 フローラ様はどれにしようかと悩んでいると、ドアがノックされ、中から合図もしていないのにドアが開く。
 入って来たのは、いつものメンバーだ。
 この国のトップの国王にエレローラさん。最近では王妃様も来るようになっている。
 やっぱり、門番が走った理由って、国王たちに知らせるためだよね。

「入るぞ」
「お邪魔するわね」
「ユナちゃん、いらっしゃい」

 いつも思うけど、仕事は良いの?という突っ込みはしない。

「今日も美味しそうなパンだな」
「一応、聞くけど、なにしに来たの?」
「それはおまえさんが来たからだろう」
「それ以外に理由なんてないわ」

 国王と王妃がそんなことを言い出す。

「国王様が平民が出した食べ物を食べてもいいの?」
「そんなの、今更だろう。お前さんが本気になれば毒なんて使わなくても、俺の首なんて簡単に切れるだろう」
「でも、そこは安全に気を使うのが国王でしょう」

 国王は気にせずにわたしが持ってきたパンを食べている。

「うまいな」
「フローラ様のために持って来たんだから、勝手に食べないで下さい」
「わたし、これでいい」

 フローラ様はチーズがとろけたパンを取る。

「それも旨そうだな」
「おとうしゃま食べる?」

 フローラ様が国王にパンを出して首を傾げる。

「いや、俺はこれを食べるから大丈夫だ。今度貰うよ」

 つまり、また持ってくるんですね。

「それじゃ、わたしはこれを貰おうかしら」

 王妃様は卵サンドを手に取る。

「それじゃ、わたしも同じ物を」

 エレローラさんが王妃様と同じ卵サンドを取る。
 皆がそれぞれ食べていると、ドアがノックされアンジュさんが飲み物を持って戻ってきた。
 そして、なぜかコップが人数分、ちゃんと用意されている。

「それにしても、おまえは面白いことをしているな」

 なんのことを言っているのか分からないのでパンをかじりながら首を傾げる。

「トンネルとミリーナの町の件だ。先日クリフが来て、疲れきった顔で報告しに来たぞ」

 笑いながら言う。

「クリフはまだ王都にいるの?」
「今朝、仕事が山積みになっているから急いでクリモニアに帰ったわ」

 わたしの問いにエレローラさんが答えてくれる。

「領主の仕事も大変だね」
「他人事みたいに言うのね」

 だって他人事だもん。

「もし、クリフが過労で倒れたら責任とってね」
「それじゃ、トンネル塞ぐ?」
「それは国王として許可は出来ないな。クリフには頑張ってもらうしかないな」
「そういうことなら、責任は国王様ってことね」

 わたしはフローラ様の前にホットケーキを出し、ハチミツをたっぷり掛けてあげる。

「クマさん、これは?」
「ホットケーキよ。美味しいですよ」

 フローラ様は小さな手でフォークを握りしめて、ホットケーキを食べる。
 物欲しそうにしている大人にも、視線がホットケーキに向いているので出してあげる。
 フローラ様も食べ終わり、満足したようなので、二個目のお土産を出す。

「フローラ様、これをどうぞ」

 わたしは一冊の本を渡してあげる。
 本のタイトルは『くまさんと少女 二巻』

「あ、ありがとう」

 フローラ様は嬉しそうに受け取ってくれる。フローラ様が本を受け取ろうとした瞬間、後ろに控えていたアンジュさんが前屈みになって覗きこむように体をのばした。

「アンジュさん?」
「なんでもありません」

 なんでも無いって、気になるようだったけど。

「その絵本は先日の絵本の続きか?」
「そうだけど。フローラ様が気にいってくれたみたいだから、続きを描いてみたんだけど」
「おまえは多才だな。冒険者としても一流、魔法も一流、料理も上手い、絵本も描ける」
「絵は趣味程度だよ」
「それで、ユナに頼みがあるんだが」
「なに?」
「おまえさんが描いた絵本を複写してもいいか? 欲しがっている者が多くてな。いろんな方面から、聞かれるんだ。なんなら、国中に販売してもいいぞ」
「欲しがっているって、誰ですか?」

 この絵本は世界に一冊しかない。存在を知ることが出来ないと思うんだけど。

「主にこの城で働いている子供を持つ女性だな。最近では絵本を見た男どもも、子供のために欲しがっているぞ」

 その言葉を証明するかのようにアンジュさんがフローラ姫の後ろからチラチラと絵本をと覗き込んでいる姿がある。

「ユナちゃんの絵は頭に残るのよね。だから、みんな欲しがるのよ。わたしも何人にも絵本のことを聞かれたわ」
「でも、どうして、みんなフローラ様にあげた絵本のことを知っているの?」
「そりゃ、いつもフローラが嬉しそうに持ち歩いているからな」

 フローラ様を見ると嬉しそうに読んでいる。

「そう言うことなら複写してもいいけど」

 その言葉でフローラ様の後ろにいるアンジュさんが嬉しそうにする。

「でも、欲しがっている人の分だけにしてね」
「どうしてだ? 国中に販売すれば売れるぞ」
「だって、自分の作品が国中に広まるって恥ずかしいじゃない」
「今更、なにを言っているんだ。そんな、恥ずかしい格好をしているおまえさんが」

 やっぱり、異世界でもこの格好は恥ずかしい格好なの?
 最近だと、みんなが普通に接してくれるから、受け入れてくれているものとばかりに思っていたけど。

「ユナちゃんの格好は恥ずかしい格好じゃないわ。可愛い格好よ」

 エレローラさんがフォローをしてくれる。

「わたしも、くまさんの服が欲しい」

 欲しいならお店の服を持っているけど、国王様と王妃様の顔が対照的だ。国王様は渋い顔をして、王妃様は嬉しそうな顔をしている。
 嫌がらせで渡してあげようかな。

「とりあえず、分かった。複写をさせてもらうことでいいな」
「いいよ。あとわたしにも十冊ほどちょうだい」
「別にいいが、どうしてだ」
「そんなに喜んでもらえるなら、孤児院の子供たちにあげようと思ってね」
「そう言うことなら、分かった。エレローラ頼むぞ」
「さっそく、依頼をするわ」

 地域限定(お城限定)でわたしの絵本が販売されることになった。

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