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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、海に行く

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100 クマさん、石像を作る

 アトラさんが用意してくれた昼食をとり終える。
 一般的な魚料理だったがクリフは文句一つ言わず食べていた。その姿を見て、アトラさんが一喜一憂していた姿は面白かった。

「それじゃ、外に馬車を用意をしましたので、トンネルに向かいましょうか」

 昼食をとり終わったわたしたちに声をかける。
 アトラさんが皆が昼食を食べている間に準備をしていたらしい。
 外に出ると屋根付きの馬車が停まっている。

「クリフ様、ミレーヌさん。狭いですが、狭いですが、お乗りください」

 確かに王都で見た、貴族のグランさんの馬車に比べると小さい。
 でも、貴族がいないミリーナの町では、この馬車を用意するのが限界だろう。
 それを分かっているクリフは、文句を言ったりはしない。

「構わない。気にするな」

 馬車の中は対面式の3人かけだ。
 クリフ、ミレーヌさん、アトラさん、お爺ちゃんたちの3人。
 運転席にはジェレーモさんが向かう。
 わたしの席は?
 もしかして、屋根!
 と言うことはなく、ジェレーモさんとアトラさんが運転席に座るらしい。 
 ジェレーモさんの運転で馬車は動き出す。

「嬢ちゃん、ありがとうな」

 クロのお爺さんが対面に座っているわたしにお礼を述べる。

「遠くから、クリモニアの領主様を連れてきてくれて」
「嬢ちゃんには感謝の言葉も出ない」
「しかも、我々のために、トンネルまで作ってくれて」

 三人のお爺ちゃんズに礼を言われる。
 面と向かって言われるとムズ痒いものがある。

「適当に作ったトンネルだから、そんなに気にしないでいいよ」
「あれで適当とか、おまえ、トンネルを作っている職人が聞いたら怒るぞ」

 隣に座っているクリフが突っ込みを入れてくる。
 適当とは言ったが。一応、丁寧に作ったつもりだ。ただ、途中から単調な作業に飽きて、鼻歌を歌いながら作った事実もある。
 トンネルを作るのに気にしたのは、高低差と強度に水回りぐらいだ。もちろん、馬車は二台通れるスペースを作ったつもりだったけど、大型の馬車のことは頭から抜け落ちていたのは愛嬌だ。

 馬車はゆっくりと進み、ガタガタと揺らしながら目的のトンネルの近くまで来る。
 クリフが馬車を止めるように言い、馬車から全員降りる。

「こっから、歩いて行くぞ」

 何故かクリフが先頭で歩いて行く。
 場所を知っているのはわたしたち三人だけとはいえ、貴族様が森の中を先頭で歩いちゃ駄目でしょう。
 一応、探知魔法で、辺りを確認して魔物や人が居ないことは確認しておく。
 もっとも、馬車が通る大道からトンネルまで、そんなに離れていない。
 トンネルにたどり着くと、アトラさんたちは大きく息を吸い込む。

「このトンネルがクリモニアの街まで繋がっているの?」

 トンネルを覗き込みながらアトラさんが尋ねる。

「正確にはクリモニアの街に向かう道だな」
「真っ暗ね」
「光と風の魔石を付ける予定だ。もちろん、費用はこちらで持つから安心しろ」

 魔石の話が出た瞬間、ミリーナの町の代表者5人の顔が曇った。それを見たクリフが安心させる。

「いいのですか? もっとも、我々に費用を出せと言われても、今の町にはそんなお金はありませんが」
「通行料として回収するから大丈夫だ」
「通行料ですか?」
「このトンネルがあれば、この町からクリモニアに魚介類を売りに行けるし、クリモニアからも買いに来る者もいる。それに、この町にある海を見に来る者もいる。通行量が増えれば収入も増える」
「海を見にですか?」

 いまいち、ミリーナの住人にとって、海を見に来る感覚が分からないようだ。
 まあ、地元の観光地ほど、地元の者にとっては当たり前の物だから、遠くから見に来る気持ちは分からないのだろう。

「この町で生まれ、長い間、育った者には分からないかもしれないが。海を見たことが無い者にとっては、見るだけでも価値がある」
「そんなものですか」

 お爺ちゃんは納得がいかないように首を傾げている。

「おまえたちはクリモニアの街を見たいと思わないか?」
「思います」
「それは」
「行きたいのう」
「それと、同じことだ。だから、多くの者がこの町に来ると思った方がいいぞ。だが同時に、静かな町が騒がしくなるかもしれない。荒くれ者が来るかもしれない。おまえたちは、いろんな物を手に入れる代わりに、失う物もあると思った方がいい。だが、おまえたちが俺を選んだことは後悔はさせないように頑張るつもりだ。だから、おまえたちも町のために頑張れ」
「クリフ様・・・」
「このトンネルが完成すれば人は来る。それまでに、警備兵を増やしたり、冒険者を雇ったり、治安の強化をしろ。もちろん、俺の方からも人は貸し出す。その一部を賄うのが通行料と思ってくれればいい」
「本当にそんなに人が来ますか?」
「来る! 俺が宣伝をするからな。人が行き来してもらわないと俺が困る」

 お爺ちゃんズは信じられないような顔をしている。
 わたしもクリフの考えに一票だ。
 なにも考えずに作ったトンネルだけど、この町に迷惑が掛かる可能性もあることに今更ながら気づいた。

「取り敢えず、俺が昨日一日で考えた案を言っていくぞ。出来る出来ないは今後の話し合いで決めていく」
「はい」

 お爺ちゃんズは頷く。
 大丈夫かな?
 お爺ちゃんズを見ていると不安になってくるんだけど。

「まず、町をこのトンネルの位置まで広げる」
「町を広げるのですか?」
「町の入り口から、ここまで大した距離じゃないからな。木々を伐採して、この付近に駐屯所を作る。そうすればトンネル、海岸から来る者を同時に警備をすることが出来る。近いのに二ヶ所に配備するのは無駄だからな」
「木々を伐採して、町を広げてどうするのですか? 現状で土地には困ってませんが」
「この町に宿屋は何件ある? 馬車が何十、何百来た場合停める場所はあるか? その者たちが食事をする場所はあるか? この町に家を建てたいと言った者に土地を提供する場所はあるか? 土地の活用方法は沢山ある。足らないぐらいだ」
「本当に、そんなに人が来るのですか」

 お爺ちゃん、そのセリフは何度目?

「来る! 静かな町でなくなるのは間違いないな。恨むなら、このトンネルを作ったクマを恨むんだな」

 そこで、わたしに振りますか。

「でも、俺は未来のことを考えたら、悪いことじゃ無いと思うぞ」

 クリフの頭の中にはクリモニアとミリーナの町の未来図が出来ているのだろう。それはいい方向に進んだ未来図が描かれているんだと思う。

「そうね」

 クリフの言葉にアトラさんが頷く。

「そうですな。人は進まないと行けません。老人の古い考えではいけないのでしょうな」
「どっちも、良いところも悪いところもある。それを選ぶことが出来るんだから、感謝しないといけないな」

 そこで、皆がわたしを見る。

「次にトンネルの通行に関してだが、馬車は二台が通れる大きさがあるが、基本、片側交互通行にする。奇数日と偶数日で分けようと思う。大きな馬車が通ったら、トンネルを塞ぐことになるからな。その辺の管理もしてもらうからな」

 アトラさんたちは頷く。

「まあ、当分先の話だ。まずはトンネルに魔石を付けないことには通れないからな」

 話は進んでいく。
 クリフは次々と自分の案を言っていく。そして、話し合い、もとい、クリフの一方的な説明が終わる。
 そして、クロのお爺ちゃんがわたしの所にやって来る。その後ろから二人のお爺ちゃんも付いてくる。

「お嬢ちゃん。ありがとうな。こんな、素晴らしいトンネルを作ってもらっても、わしらは何のお返しも出来ない」
「盗賊を討伐してもらい、クラーケンを倒してくれた。それだけでも感謝しきれない。なのに、我々の町のために、こんな素晴らしいトンネルを作ってくれた」
「そんな、嬢ちゃんに我々は何も返す事が出来ない」

 え~と、トンネルはクリモニアの街にいるわたしの所に魚介類を運ぶ為に作ったんだけど。
 まあ、わたしも嬉しいし、お爺ちゃんズも嬉しい。だから、問題は無いかな。

「それで、嬢ちゃんに頼みがある。トンネルの入り口にお主のクマの石像を作ってくれないか」
「クマの石像?」
「クラーケンを倒した場所にあるクマの像と同じものでいい。このトンネルを作った者に感謝を忘れないためじゃ。わしも何時までも生きられるとは限らない。これから先、今回のことを町の住人は忘れてはならない。だから、作ってくれないか」

 えっ、それって自分の銅像(クマ)を自分で作れってこと。
 なに、その恥辱プレイ。

「そうだな。それはいい考えだな」

 クリフがわたしたちに話を聞いていたのか、そんなことを言い始めた。
 しかも、ニコニコ笑いながら、絶対に面白がってる。

「反対側の入り口にもユナ(クマ)を頼む。おっと、違った。クマ(ユナ)を頼む」

 同じように聴こえるのは気のせいだよね。

「冗談だよね」

 お爺ちゃんズは真面目な顔をしている。断れる雰囲気ではない。

「それにトンネルにも名前が必要だろう。貴様が作ったんだ。俺がこの場で名前を付けてやる」

 クリフがニヤリと笑う。
 嫌な予感しかしない。

「ベアートンネルでどうだ」
「…………」

 わたしは開いた口が塞がらない。

「いい名前じゃ」
「素晴らしい」
「嬢ちゃんに感謝をしながら通るのじゃな」
「代々受け継げられていく」
「それなら、町の住人も未来永劫忘れない」

 この場にいる全員がベアートンネルに賛同の意思を示した。

「やめてーーーーーー!」

 わたしは叫ぶが、受け入れられることは無かった。

 自分で自分の半身である、くまゆるとくまきゅうの銅像を作ることになった。
 なに、この恥辱プレイ。
 もう、恥ずかしくてお嫁にいけない。行くつもりはないけど。
おかげさまで100話目です。
当初から読んでいる方も、最近から読み始めた方もありがとうございます。
これからも、よろしくお願いします。



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