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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、海に行く

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99 クマさん、いらない子?

 翌日の朝。朝食を食べ終えて、一階の食堂でこれからのことを話しているクリフとミレーヌさん。

「それじゃ、トンネルの使用料の一部はギルドを通して、ユナのカードに振り込む感じでいいな」
「問題は魔石の確保ね」
「光の魔石と風の魔石か。商業ギルドの方で集められるか?」
「出来ないことは無いけど、相場が崩れるのが怖いわね」
「やはり、王都で仕入れた方がいいか?」
「その方がいいと思うわ」
「それに、これだけ大事になると、王都への報告は手紙だけって訳にはいかないよな」
「奥さんに会えるから良いじゃない」
「仕事が無ければな。現状だって仕事はあるんだぞ。それがトンネル、この町を領地にすれば仕事も増える。そんな忙しい中、王都に行かないといけないと思うと気が滅入るぞ 」

 わたしは聴こえないフリをしてオレンの果汁を飲んでいる。
 冒険者は楽でいいね。好きな時にご飯を食べ、好きな時に寝る。素晴らしい職業だ。
 ファンタジー物の漫画や小説があるけど。よく、領地経営なんて面倒なことをするよね。わたしには出来ない。やろうと思う主人公たちは凄いと思う。
 まあ、わたしは主人公たちが活躍する端の方で、のんびり暮らすからいいけど。
 わたしの幸せは人が忙しそうにしている横で、他人事のようにオレンの果汁を飲んでいると感じるね。
 ああ、冒険者で良かった。
 わたしがそんなことを考えている間も二人の話は続く。

「それと、通行のことで考えたんだけど、全てを片側交互通行にしなくてもいいんじゃない。せっかく、馬車が二台分通れるスペースはあるんだから。徒歩、馬などは通してもいいと思うんだけど」
「だが、トンネルの中で走る馬鹿がいるかもしれないぞ。そうなると危険だぞ」
「柵でも作る?」
「流石にそこまで手が回らないぞ」
「そうね。しばらくは片側交互通行にして、様子見ね」
「その方がいいだろう。通行量を把握してからでも遅くないだろう」

 などと、二人が熱心に話し込んでいる。一般人のわたしは関係が無いので茅の外で話を聴いている。
 うん、本当に領主もギルドマスターも大変な職業だ。
 そんな会話を二人がしているとセイがやってくる。

「皆さん、おはようございます。冒険者ギルドに来て欲しいのですが、よろしいでしょうか」

 二人は問題が無いので了承する。
 さて、二人が話している間、わたしは何をしてようかな?
 わたしが立ち上がらないのを見て、クリフが声を掛けてくる。

「ユナ、何をしているんだ。行くぞ」
「わたしも行くの?」
「何を当たり前のことを言っているんだ」

 呆れ顔で言われる。

「これから話すことは町同士の話だよね」
「ああ、そうだ」
「わたし、必要ないよね」
「何を言っているんだ。おまえが、中心人物だろ。そのおまえが居なくてどうするんだ」

 あれ? 
 いつの間にわたしが中心人物になったの?

「ミレーヌさん?」

 助けを求めるようにミレーヌさんを見る。

「この中で、この町のことを知っているのはユナちゃんだけだから必要よ。相手が嘘を吐くとは思わないけど。ユナちゃんの知識は必要だから、来てもらわないと」
「交渉とは、良いところは話すが、不利益になることは話さないものだ。だが、お前さんがいる前では相手もそんなことはしにくくなるだろう」

 そうなのかな?
 そんなことをする人たちには見えないけど。まあ、クリフたちは住人の性格は知らないから仕方ないけど。
 断る理由も見つからないので、仕方なく付いて行くことにした。

 冒険者ギルドに着くと、前回と同じ部屋に案内される。
 部屋に入ると、アトラさんとお爺さんの3人が席に座っている。
 そして、もう一人、顔見知りの男性がある。ダモンさんが紹介の時に言っていた商業ギルドのマシな職員だ。
 アトラさんはわたしたちに椅子に座るように促してくれる。

「この度はミリーナの町まで、お越しになってくれてありがとうございます」

 アトラさんが席を立ち、お礼を述べる。

「まさか、クリモニアの領主様がお越しになってくれるとは思いませんでした」
「コイツの頼みだしな」

 クリフはわたしの方を見る。
 別に頼んだ記憶は無いんだけど。手紙を渡して、説明をしただけなんだけど。

「コイツが馬鹿なことをして、さらに非常識な物を作って、これからのことを考えると部下に任せられん」
「そうですか。わたしどもは彼女にはいろいろ助けられました」
「俺もだ」

 どうして、不服そうに言うかな?

「それでは話を始める前に自己紹介をします。わたしは冒険者ギルドのギルドマスターしているアトラです。現在は町の補佐的な仕事をしています」

 それに習うようにお爺さん3人が自己紹介をする。
 そして、最後に商業ギルドのジェレーモさんが挨拶をする。

「俺は・・・自分は商業ギルドで働いているジェレーモです。どうして、自分がここに呼ばれた理由が分からないのですが?」
「おまえさんには、商業ギルドの代表として来てもらった」
「代表ですか?」
「そうだ。今後のことは、こちらにいるクリモニアで商業ギルドのギルドマスターをしている彼女の指示に従って仕事をしてもらいたい」

 老人の一人が言う。

「どうして、自分なんでしょうか?」
「不真面目だが、優しいからな」
「お主、魚を盗んで、食料に困っている家庭に配っておっただろう」
「ばれていたのですか」
「当たり前じゃ、魚など買えるほどの財力がない家庭で、魚を焼く匂いがすれば分かる」
「だからと言って俺とは限らないんじゃ」
「わしらの情報網を甘く見るな。そんなことぐらい分かる」
「それじゃ、見逃されていたんですか」
「わしらだって、食料が金持ちだけに渡ることは心苦しかった」
「だから、裏でお主のことをいろいろ庇っていてやったんだぞ」
「そうだったんですか」
「だから、わしらは町に住人を大切に思ってくれているお主を、商業ギルドの代表として呼んだのじゃ」
「そんな訳です。この町の商業ギルドのことはこの者に指示を出してください」

 クリフとミレーヌさんに頭を下げるお爺さんたち。

「ええ、分かったわ。存分に働いてもらうわ」

 その言葉にジェレーモさんは諦め顔になる。
 相手側の自己紹介も終わり、今度はミレーヌさんが自己紹介を始める。

「わたしはクリモニアで商業ギルドのギルドマスターをしているミレーヌ。今後、いろいろとお願い事をすると思うからよろしくね」
「はい」

 返事をするジェレーモさん。

「それじゃ、最後に俺だな」

 そう言ってクリフが自分の自己紹介を始める。
 あれ、最後?
 わたしの自己紹介は?
 もしかして、わたしはいらない子?
 まあ、全員わたしのことは知っていると思うけど。
 全員が自己紹介をして、わたしだけしないと除け者感がある。

「俺はクリモニアの街の領主をしている、クリフ・フォシュローゼだ。だからと言って言葉使いは気にしないでいい。俺はそのぐらいでは気にならないようになったからな」

 そこで、わたしを見るクリフ。
 何故に?

「それじゃ、時間も無いことだし、急ぎの案件を決めましょう」
「手紙でも、読んだが。俺の街の領地に含まれるってことでいいのか」
「はい。その代わりに庇護下に入れて欲しい。この街で何かがあったときに助けて欲しい」
「クラーケンか」
「はい」
「始めに言っておくぞ。クラーケンなんて、簡単に倒せる魔物じゃないぞ。そのクマが非常識なだけだからな」

 クリフがわたしに向けて指をさす。
 人を指さしちゃ駄目って教わらなかったのかな。

「はい、分かっております。二度と現れないと思いますが。もし、同様な魔物が現れた場合、食料等の援助の確約をして欲しいんです」
「食料か。おまえたちはクリモニアとこの町の距離を知って言っているのか」
「それは・・・・・」
「・・・・・・」

 全員が黙りこむ。
 全員がクリモニアまでの距離を考えたのだ。
 結論から言えば遠い。
 食材を運ぶには手間と時間がかかる。

「冗談だ」

 クリフが笑い出す。一緒にミレーヌさんも笑う。
 その笑いに戸惑うアトラさんとお爺さんの三人。

「クリフ様?」
「食料の件は了解だ。もし、この町が食糧難になったら、援助はしよう。ただし、我が街でも同様に食糧難になった場合は確約は出来ないが、それでもいいか」
「はい、もちろんです。この町で食糧難になる場合は海に出れなくなったときです。クリモニアの街と同時期にならないと思います」
「そうだな。俺もそう思う。だから、クリモニアで食糧難になった場合は援助をしてもらうぞ」
「はい」
「でも、問題はどうやって流通を確保するかよね」
「それは大丈夫だ。このクマのお陰でな」

 クリフがわたしを見る。
 その言葉にミレーヌさんとわたし以外の全員が頭の上にクエッションマークを乗せる。

「このユナがこの町のためにクリモニアに向かうトンネルを作ってくれた」
「ちょっと・・・・」

 わたしが口を挟むよりも

「それは、本当ですか!」
「ああ、俺たちはそのトンネルを通って来た」
「その、冗談ではないのですよね」
「話を聞けば冗談にしか聞こえないが、本当のことだ。早馬を使えば1日、2日もあれば着くはずだ。さすがに馬車だとどれくらい掛かるかは、分からないが、数日で着くはずだ」
「・・・・・・・・・」
「後でトンネルの活用方法を決めるために、トンネルのある場所に行きたいが、いいか?」
「はい、もちろんです。わしらもトンネルを見たいです」

 それから契約などが書面で契約をされていく。
 え~と、わたし必要だったのかな?

「次に、この町の代表者を選出してくれ。今後はその者と話をしたい。もちろん、ここにいる人物でも構わない」
「つまり、町長ってことですか」
「そうだ。トップがいないと纏まる話も纏まらない」
「分かりました。近いうちに町長を決めておきます」
「なら、俺の方はこんなもんだな」

 クリフは言いたいことだけ言うと、ミレーヌさんに交代する。

「それじゃ、次は商業ギルドの件ね。この度はわたしどもの関係者が迷惑をかけたことを謝罪します。まず、アトラさんの報告書を見させてもらいました。こんな酷い事はあってはならないことです。この件は商業ギルドで擁護をするつもりはありません。クリモニアの街と同様の処罰を与えます」
「あのう、具体的には」
「死刑に決まっているだろ。この町は先程の契約によって俺の領地の一部になった。その処罰が決まっていないなら、クリモニアの街と同様の処罰を与えるのは当たり前だ。俺の町で好きなことをやったんだ。俺の大切な住人を殺された。こんなやつらは死刑にする。何よりも生かしておいても役にたたない。死刑にすることで救われる心が沢山ある。なら、死んでもらった方がいい」

 クリフが言っている心とは殺された関係者だろう。
 夫、奥さん、息子、娘、親戚、親友、祖父、祖母、今でも恨んでいるはずだ。

「この町の広場で、毒殺をする。見たい者は呼べ。それで、この事件のことは忘れてもらう」
「では、盗賊は」
「そうだな。この聞き取り調査に基づいて、殺しをした者、女に暴行した者は同様に死刑。残りは鉱山で働いてもらう」

 事件の首謀者たちはクリフの一言で処刑が決まる。
 その決定に口を挟む者はいない。
 このお爺さんたちは一般人だ。いくら、悪人でも自分たちで手を汚すことは出来なかったのだろう。
 その決断が出来るクリフはやっぱり、上に立つ資格も有り、能力があると思う。
 わたしも戦っている最中なら、殺せるけど。悪人でも、無抵抗の人間を殺せと言われても、すぐに頷くことは出来ない。
 それが出来るクリフは凄いと思う。

「もし、身内が文句を言って来たら、俺の名を出せ!」
「分かりました。その、クリフ様、ありがとうございます」
「礼などいらん。俺の仕事だったからしたまでだ」
「それじゃ、次は商業ギルドの今後についてね」

 その言葉でジェレーモに緊張が走る。

「皆さんから、聞きたいのですが。そこにいらっしゃる、ジェレーモさんは真面目な方ですか?仕事が出来る方ですか?人柄を教えてもらえませんか?」

 その質問に一瞬首を傾げるお爺ちゃんたちだが、すぐに返答をする。

「ジェレーモは不真面目だが、仕事はする男だ」
「サボっているところは見るが、住人からは好かれているな」
「今回も裏で魚を盗んで、貧しい家庭に魚を配っていたな」
「そうね。文句を言いながらもしっかり仕事をする男ね」

 ミレーヌさんはジェレーモさんの人柄を聞くと、

「なら、あなたにはこの町のギルドマスターをしてもらうわね」
「俺、・・・自分がギルドマスターですか」
「ええ、今回のようにギルドが不安定なときは、地元の信頼がある人物がなるべきなのよ。そうすることによって、住人が力を貸してくれるわ。わたしみたいな余所者がギルドマスターになっても、いい顔はされないからね」
「でも、俺にギルドマスターなんて」
「大丈夫。あなたを補佐させる者は派遣させるわ。あなたはゆっくりとギルドマスターとしての勉強をしていけばいい」
「ジェレーモ、わしからも頼む。お主の行動がどれだけ、わしらの心を救ってくれたか」
「サボりたければ部下に仕事を押し付ければいいじゃろ」
「ジェレーモ、頼む」

 頭を下げるお爺さんたち。
 でも、仕事はサボっちゃ駄目でしょう。

「分かりました。頭を上げて下さい。俺でよければ引き受けます」

 胸を張ってギルドマスターの職を引き受けるジェレーモさん。
 その言葉にミレーヌさんは微笑む。
 その笑みにジェレーモさんの顔が赤くなったのは気のせいではないはず。

「それじゃ、最後にトンネルの件だな」
「その前に食事でもいかがですか」

 アトラさんが時間の確認をする。
 時間的に昼食の時間だ。

「そうだな。食事をしたら、トンネルの場所に行きたいと思うが、いいか?」

 クリフの提案に断る者はいなかった。
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