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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、海に行く

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97 クマさん、トンネルに向かう

 出発当日、クマハウスで待っていると、クリフとミレーヌさんがやってくる。 

「待たせたな」
「そんなに待っていないけど、どうしてミレーヌさんがいるの?」

 意外な組み合わせだ。そう思うのは見慣れないせいかもしれないけど。

「何故って、ミレーヌがこの街にある商業ギルドのギルマスだぞ。確か、おまえたち知り合いだったよな」

 クリフは何かを思い出すように言う。
 初耳なんだけど。そもそも、わたしは商業ギルドのギルマスに会ったことがなかった。

「知り合いだけど。ミレーヌさんって、ギルドマスターだったの?」
「あれ、言ってなかったっけ」

 (とぼ)けたように言う。
 絶対にわざと言わなかったんだ。

「冗談よ。言うタイミングが無かっただけ。わたしがギルドマスターでも普通の職員でも、わたしたちの関係は変わらないでしょう」
「ミレーヌさん、見掛けより、年齢行ってます?」

 いつも、ミレーヌさんは受け付けの席に座っているし、若いしギルドマスターとは思わなかった。考えられるのはエレローラさんと同様に、見た目詐欺かもしれない。

「失礼ね。見た目通り、20代よ」

 それって、幅が広くない?
 20歳と29歳じゃ、かなり違うと思うんだけど。まあ、言いたく無いってことは後半なんだろうけど。それでも、その年齢でギルドマスターって凄いと思うけど。
 でも、ミレーヌさんがギルマスと考えると、つじつまが合うことも出てくる。卵を販売するときも、ミレーヌさんの独断が多かった。
 それに、一職員に領主に卵を売らないことを頼んで、実行する力があるわけがないし。今、考えれば可能性はあった。

「おまえさんが20代でも、30代でも、40代でもかまわん。いつまでも、ここにいてもしょうがないだろう。さっさと行くぞ」
「ちょ、ちょっと、20代と30代じゃ、天と地の差があるわよ。それに40代って何よ! 女性にそんなことを言ったら嫌われるわよ」
「大丈夫だ。貴様と違って、俺はすでに結婚してるし、子供もいる」

 あんな綺麗な奥さんと可愛い娘さんがいれば勝ち組だろう。問題は跡継ぎの男の子がいないことかな。わたしが知らないだけでいるかもしれないけど。シアの存在も王都に行くまで知らなかったし。

「もしかして、喧嘩売ってる?」
「事実を言ったまでだ」

 二人の間が剣呑な雰囲気になっていく。
 もしかして、犬と猿?
 どっちがどっちか、わからないけど。
 そんなことよりも、

「ミレーヌさん。ミリーラの町に来てくれるんですか」
「そりゃ、商業ギルドの不祥事だし、トンネルの話が本当なら見てみたいし、トンネルがあればミリーラの町と交易が始まるだろうし。そうなるとギルドマスターのわたしが行かないと処理が出来ない案件が、たくさん出てくるし。なによりも、噂のユナちゃんのクマに乗せてもらえるなら、仕事をサボってでも行くよ」

 いつも、商業ギルドの仕事をしているように見えるけど、ギルドマスターとしての仕事はしているのかな?

「おまえは仕事をしろ!」
「だから、仕事しにミリーラの町に行くんでしょう」

 そう正論を言われて黙り込むクリフ。

「それじゃ、ユナちゃん。噂のクマに会いに行きましょう」

 わたしの肩を掴むとミレーヌさんは歩き出す。
 その後ろを、呆れた顔でクリフが付いて来る。
 街の外に出るときに門の兵士に変な組み合わせで驚かれる。それりゃ、領主様とギルドマスターが一緒にいれば驚くよね。その驚かれた中にわたしが入っていないことを祈ろう。
 街の外に出て、くまゆるとくまきゅうを召喚する。

「これが、噂のクマね」

 クリフにくまゆるに乗ってもらい。ミレーヌさんには、わたしと一緒にくまきゅうに乗ることをお願いした。
 ミレーヌさんがくまきゅうに近づく。

「くまきゅうって、こっちの白い子よね」

 くまきゅうの首辺りを擦ると、くまきゅうは気持ちよさそうにする。

「ええ、白い方がくまきゅう、黒い方がくまゆるです」
「ふふ、ユナちゃんらしいネーミングセンスね」
「それって、どういう意味?」
「見た目と同じで、可愛らしい名前って意味よ」

 ミレーヌさんは誤魔化すように笑みを浮かべる。
 くまゆる、くまきゅう、可愛いかどうか分からないけど。もう、愛着がある名前になっている。わたしにネーミングセンスがあれば、もっと良い名前が有ったかもしれないが、今はくまゆるとくまきゅうで良かったと思っている。
 二人はそれぞれが乗ろうとする。

「ユナちゃん、どうやって乗ったらいいの?」

 普通の馬と違い、鞍とか付いていない。
 くまきゅうは乗りやすく腰を下ろしてくれる。先にわたしが乗り、その後ろにミレーヌさんが乗る。

「鞍も無いのに座り心地がいいのね」
「長時間、乗っていても大丈夫よ」

 始めはクマの服のお陰かなと思ったら、王都にフィナとノアの二人で向かったとき、二人とも何とも無く。話を聞く限りではクマたちの力だとわかった。

 三人を乗せたクマたちはトンネルがあるエレゼント山脈に向かう。
 始めは軽く走る程度の速度で移動する。

「滑らかに走るのね」

 くまゆるとくまきゅうは併走しながら走っていく。

「速くていいな。馬車は遅いからな」
「流石に馬車と比べたら、この子たちが可哀想よ」

 それから、くまゆるたちは速度を上げ、昼を過ぎた頃にエレゼント山脈の麓に到着する。

「ここの辺だと思ったんだけど」

 トンネルを作った辺りにやって来る。
 マップを見ると、この辺のはずなんだけど。

「迷ったのか?」

 クリフが尋ねてくる。
 わたしが辺りを見渡していると、くまきゅうが勝手に歩き出す。

「くまきゅう?」

 くまきゅうは自分に任せろと言わんばかりにわたしたちを乗せて歩く。
 数分後には回りを木々で覆われたトンネルが見つかった。

「周りは木々が凄いのにこの箇所だけ木が無いわね」
「そこはわたしが野宿したときに、邪魔だったから整地したのよ」

 ちょうど、整地をしてある場所で休憩をとることにする。

「それにしても、クマのおかげで早く到着したな」
「商人が見たら、欲しがるね」
「冒険者だって欲しがるだろう」

 オレンの果汁を飲みながらくまゆるたちの感想を言っている。
 そして、二人はトンネルの前に立つ。

「これが、ユナが作ったトンネルか」

 大きなトンネルが目の前にある。

「大きさは、馬車がギリギリ二台すれ違うぐらいか」
「大型の馬車が通ったら、すれ違う事は出来ないわね」
「なら、いっそのこと奇数と偶数の日にちで分ければいい。そうすれば、中で事故ることは無いだろう」
「そうね。どっちにしろ、管理する者を駐屯させないと行けないし」
「あと、使用料も決めないといけないな」
「どのくらいが、適切なのかしら?」
「本来はトンネルを作るのに使用した資金によって決めるんだが」

 ふたりはわたしの方をチラッと見る。

「お金を取るの?」
「当たり前だろう。どこの馬鹿が無料で提供するんだ。維持費も掛かるし、ここを駐屯させる兵士か冒険者も雇わないといけない」
「雇わないと、トンネルの中に盗賊、魔物が入り込んだら逃げ道がなくなっちゃうからね」

 確かに放置していたら、魔物が入り込む可能性もある。そうさせないためにも駐屯は必要。しかも、両方の出入口で必要になる。そう考えれば使用料も必要になってくるだろう。

「それに、この暗さも魔石で明るくしないといけないだろう」
「そうね。光の魔石の設置と魔力線。これだけでもかなりのお金が掛かるわ」

 魔力線とは言葉通り魔力を通す線。地球で言えば電気を流す電線の事だ。魔力線はクマハウスにも使用されている。天井の光の魔石を光らせるために、手元の壁にある普通の魔石に触れると、魔力線を伝わって天井の光の魔石が光るようになっている。

「あと、風の魔石の設置も必要になるわね」
「こんだけ長いと必要か。それ以前に反対側までどのくらいの距離があるんだ。長さによっては休憩所も必要かも知れないぞ」

 わたし抜きで今後のトンネルの使用方法について、二人は意見を言い合っている。
 わたしとしては魚介類がクリモニアの街まで運ばれてくれば問題はないんだけど。そう、簡単にはいかないんだね。専門のことは専門家に任せるのがいい。だから、わたしは口を出さずにいる。

 休憩もほどほどにして、出発することにする。
 わたしはクマのライトを作り、前方に固定させる。わたしが動けばライトもわたしに合わせて動く。

「ユナ、悪いが速度は遅く頼む。トンネルの状況と長さが知りたい」

 くまゆるたちはゆっくりとトンネルの中を歩いていく。

「これを一人で作ったとか信じられないわね」
「もし、トンネルを掘っている国や、掘りたいと思っている国があったら引っ張りだこだな」
「土魔法が使える者なら、作れるんじゃない?」
「おまえは、自分がどんなに非常識なことをしたか、分かっていないな。確かにトンネルを作れる者は居るかもしれない。でも、数日で作るのは不可能だ。俺はお前さんの、魔法もそうだが、魔力量にも非常識を感じるぞ」

 白クマの服で回復しながら作ったとは言えず、黙りこむ。

「でも、ミリーナの町を領地にするなら トンネルのことは王都には報告しないといけないだろう」
「そうなると必然的に、どうやってトンネルを作ったって話になるわね 」
「黙っておけば、バレないよ」
「バレるわ!」

 クリフが怒鳴りつける。
 トンネルの中で大きな声を出すのは止めて欲しいんだけど。

「心配をすることはないんじゃない。たしか、この国ではトンネルは掘っていないはずだから」
「ユナの力を知ったらどうなるか分からないけどな。でも、ちゃんと進言しといてやるから、安心しろ」

 安心しろと言われても貴族よりも王族の方が偉いよね。どこに安心出来る要素があるの。

「その辺はエレローラがやってくれるから大丈夫だ」

 エレローラさん、確かに国王にタメ口を聞いていたね。
 本当にエレローラさんは何者なんだろう。この異世界に来て一番の謎の人物だ。

「水は落ちて来ないようだな」

 クリフが天井を見る。

「魔法で水の流れは外側にしているから落ちてこないよ」

 鍾乳洞みたいになっても嫌だからね。

「管理が楽になるな」

 かなり進んだが出口が見えることは無い。
 まだ、1/3ほどしか進んでない。

「この中で光が無くなったら恐いわね」
「ユナ、光は大丈夫か?」
「大丈夫だよ。何時間でも」

 消えたら作ればいいだけだし。

「流石に天井に光の魔石を取り付けるのは大変だから、左右の壁に取り付けるしかないな」
「その方が良いわね。片方が消えても、片方に光があれば安心だからね」

 そんな会話を続けながら進んで行くが終わりは見えない。

「長いな」
「まあ、あの山脈を直進させたとはいえ、かなりの距離はあるからね」
「休憩所が必要か?」
「無いよりは有った方がいいかもね」

 二人の視線を感じる。

「もしかして、わたしが作るの?」
「ここまで、作ったんだ。休憩所ぐらい作ってもいいだろう。中央辺りが分かると一番いいんだが。一度、正確な距離を計らないと駄目だな」
「距離は分からないけど、中央なら分かるよ」

 地図を見れば中央の位置は大まかだが分かる。

「本当か?」
「もうすぐだよ」

 地図を見ながら、くまゆるを走らせる。ちなみに地図は開いていても、この世界の住人には見れないらしい。このことはフィナで検証済みだ。

「だいたい、この辺が中心だね」
「おまえさんはそんなことまで分かるのか」
「まあ、だいたいだから余り当てにしないでね」
「少しの誤差ならいい。この場所に少し拓けた場所を作れないか?」

 わたしはクリフの指示通りに、土魔法で壁を掘っていく。

「凄いものね。こんなに簡単に穴が掘れるのね」

 しばらくすると、馬車が数台が止められるスペースが完成する。

「ここが、中央ならゆっくり行くこともないな。ユナ、悪いが速度を上げてもらっていいか?」

 クマの速度を上げて、残りの半分の道のりを駆け抜けて行く。

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