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遠き開発  作者: 安 幸村
序章
1/52

週刊ゲーム通信

『週刊ゲーム通信』――二〇一三年五月XX日号特集

『ゴールデンウィークはこれで遊べ! 話題作クリエイターズ・インタビュー』


"いよいよやってくるゴールデンウィーク。今が旬の話題作をたっぷりと遊ぶチャンス! 中でも、老舗メーカーであるヴィルヘルミナのアクションRPG(アールピージー)剣戟けんげきの彼方に』は編集部でもハマる人が続出のオススメの一作だ。スマートフォンで遊べる本格的なアクションRPGとしてリリースから半年を経て人気が急上昇中の今作について、開発を担当したオストマルクのディレクターである紺塔生雄こんとういくお氏のインタビューをお届けする。同作の魅力について、たっぷりと語ってもらったぞ。"


――『剣戟の彼方に』、本当に人気急上昇中ですね。

紺塔「ええ、お陰様でセールス的にも好調になりましてヴィルヘルミナさん共々ホッとしています。ユーザーさんは勿論各ゲームメディアからの反響も多くありまして嬉しいですね。苦労した甲斐があったなあと」


――紺塔さんにとっても、思い入れのあるタイトルということでしょうか。

紺塔「はい。とにかく、今のスマートフォンでプレイするRPGの世界に、新風を巻き起こしたいと立ち上げたタイトルですからね。キャラクターデザインにたんさん、BGMに咲山さきやまさんと、もう一流のクリエイターをそろえた。後の肝心のゲームデザインの方で私がこけさせるわけにはいかないと、プレッシャーも相当なものでしたが(笑)」


――改めて、このタイトルが立ち上がった経緯を教えていただけますか?

紺塔「まず、私はスマートフォンで遊べるRPGを作りたいと考えていました。そこへ折良くヴィルヘルミナさんからRPGを作らないかというお話をいただきまして。今までは、いわゆるブラウザ型のゲームが主流で、これがまた大変売れているわけですが、そこにクリエイターとして風穴を開けたかったんです。また、昨今ではパーティ制が主流なのですが、その流行へのカウンターとして、もっと硬派に一人で戦うRPGというものを作りこめば面白いものができるのではないかと。もう一つ、昨今のコンシューマのRPGというものはどうしても要素が多く複雑になりがちで、それをスマホで遊んでもらえるシンプルな形に原点回帰してみようと思いまして。それでアイデアの原型を企画書として書き上げました。


――なるほど。シナリオは紺塔さんご自身が手がけられていますが、キャラクターデザインに人気の丹さんが担当されることになったのはどのような経緯なのでしょうか?

紺塔「私は丹さんのつややかなキャラクターが大好きで、一度お会いした時に今度お仕事をご一緒できたらいいですねというお話はしていたんです。今回その絶好の機会だと思いましてお願いしたところ、快諾していただけました。内心は断られたらどうしようかとビクビクしていたんですよ(笑)。それからプロジェクトが加速度的に動き出した、というところですね」


――企画書の時点でのコンセプトは、『乱世の立身出世。一人戦い続ける硬派なアクションRPG』とのことですが、それはゲームに具体的にどう落としこまれたのでしょうか?

紺塔「硬派さ、という点で申し上げれば、重厚さを追求したシナリオは勿論なのですが、それをゲームシステムにまで落としこまないと僕が手がける意味がないですからね。一人で戦い抜くというコンセプトはそのままに、矛盾している様ですが、パーティ制RPGのバトルで色々なことができるという楽しさは両立させたかったんです。そこに苦労しましたよ。プレイヤーは勿論パーティを組んだりはしないのですが、ゲーム中『仲間』と呼べるべきキャラクターたちはいる。でも一人で戦うのがコンセプトのゲームですからバトルには参加させられない。じゃあ、仲間はどうバトルに関わる形がいいのか、そこはすごく苦労しました。で、ご存じだとは思いますが、試行錯誤の末に彼らとの思い出を、『メモリアルアクション』という形でゲームに落としこんでいます。ゲームとしては、イベントパートの進行に応じて『思い出』、メモリーが手に入る。それをアビリティスロットにセットしておくことで、様々なスキルを仲間から教えてもらった技として、バトル中に発動させることができるようになるという、今の形に落ち着きました」


――なるほど! 自分一人で戦いながらも仲間との絆が感じられるシステムだなあと思っていたんですが、そうやって生まれたわけですね。

紺塔「はい。バトルでやられた瞬間に発動させるとまた新たな効果があったりと、『メモリー』の使い道を探るのが楽しく、またそれを手に入れた時の主人公の心情というものをユーザーは分かっているので、シナリオとバトルを、ユーザーの内面からリンクさせることができて、スマホを握る手にも力が入るところまでは持って行くことができたと思いますね」


――確かに。今私も第七章までプレイさせていただいたのですが、メモリアルアクションを発動させると、その時のイベントや仲間が思い起こされて、ゲームに入りこむことができましたね。反面、『お供』はほとんど使ってないんですよ、一人で行くのでも充分楽しくて。

紺塔「(苦笑)まあ、お供は使っても使わなくてもいいものですから」


――操作するキャラは一人だけなのに、ここまで多様な戦い方できるのが本当に楽しい作りになっているゲームだと思います。

紺塔「そう言っていただければゲームデザイナーとしては本当に嬉しいです。スマホで遊べるRPGとしての手応えは充分にあると思いますし、夏には新キャラクターに加えて新章と新大陸が追加されますので、またじっくりと楽しんでいただけたらと思います」

"次のページからは、これから始める人のためにゲームシステムを詳しく解説していくぞ――"


 朝のコンビニの活気の中、早見雪乃はやみゆきのは雑誌コーナーで手に取った『週刊ゲーム通信』の特集記事をそこまで読み進めると、陶芸で『ろくろ』を回しているかの様なポーズを取っている紺塔の写真を一瞥いちべつしてから次のページをめくり、自分が携わったゲームの解説記事に目を通していく。

 その脳裏に、株式会社オストマルクでの開発の日々がよぎっていくのだった。


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