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Chapter:04 理解
Episode:32
「その、すまない。タシュアはいつも……ああなんだ。このあいだのことも、悪気があったとか、そういうのじゃなくて……」
「――はい」
 今ならあたしにも、分かる。タシュア先輩は冷酷とかじゃなくて、人と距離を置くだけなのだと。

「良かったら……もう少し、食べないか?」
「あ、はい」
 シルファ先輩に言われて、食べかけたままになっていたケーキに手をつける。オレンジの味と香りが、爽やかだった。

「――おいしい」
「そうか、よかった」
 先輩の嬉しそうな顔に、あたしも微笑む。
「もっと、食べるか?」
「いいん……ですか?」
「ああ。そのために、作ったのだし」

 こんどは二人で並んで、ケーキとクッキーを口に運ぶ。どれもお店で買ったみたいにおいしかった。
 そうしてどのくらい、仲よく食べていただろう? とつぜん何かのアラームが鳴って、持っていたクッキーを落としそうになる。

「あ、驚かしてしまったな。その……当番、なんだ」
「え、先輩、それじゃ早く……」
 学院の当番は減点対象だから、忘れると大変だ。
 急いで片付けながら、シルファ先輩が立ち上がる。

「タシュアのこと――すまなかった」
「いいえ」
 先輩の言葉に首を振る。謝ってもらう必要は、ない。
「そうか。その、また、来るから」
「はい」

 シルファ先輩の姿がドアの向こうに消えたのを確かめて、あたしは枕元の引出しから、一通の手紙を取り出した。
 倒れる直前にファクトリーに問い合わせた、タシュア先輩の素性が、今ごろになって返ってきたのだ。
 わざわざ手紙で寄越したのは、監視されてることを考慮したんだろう。手紙は時間がかかるけど、そのぶん安全だ。

 封を切る。
――タシュア=リュウローン。性別男性、年齢及び生年月日不祥。
 その他、かなり細かいことが書いてある。
 それをあたしは、破り捨てた。


◇あとがき◇
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
明日より第7作、「立ち上がる意思」の連載に入ります。今までと同じく、夜8時過ぎの更新です。
明日は筆者サイト、小説家になろう/読もう内での検索、既存作よりのリンク等から、新作へお願いします

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