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Chapter:04 理解
Episode:29
「お見舞いとは、ずいぶん甘いですね、シルファは。そんなに甘やかして、どうするのです」
 案の定、彼の毒舌が始まる。
「あのままじゃ、可哀想だろう」
「元を正せば、ルーフェイアのほうが悪いのですよ」
「だからお見舞いが、ダメなのか?」
「そうは言っていないでしょう」

 まだタシュアの毒舌は続いていたが、どうせ言い合いではかなわないから、口をつぐむ。だいいち彼も口では言うが、ここでケーキを放り出して帰ったりはしない。
 それよりも、ムアカ先生が入れてくれるかどうかが、よほど心配だった。
 そっと診療所のドアを開ける。

「あの……」
「どうしたの? ケガでもした?」
 言いながら顔を出した先生が、驚いた。
 何をしに来たのかは、私たちの様子を見てすぐに分かっただろう。けれどそれをさせていいのか、考えているふうだった。

「困ったわね、気持ちは分かるのだけど……」
 先生が言いたいことは、私にも分かる。
 確かに上手くいけばいいが、かえって事態が悪くなる可能性も高い。かといって、このままにも出来ない。

「そうですか、では私はこれで」
「ダメだ!」
 先生の様子を見て、さっさと帰ろうとしたタシュアを、強引に引き止める。何とかしなければならないし、それをやれるのは、今だけでたぶん私だけだ。
 上手く言葉が出てこなくて、それでも言いたくて、ムアカ先生のほうを見る。

「――分かった。シルファ、あなたに任せるわ」
「すみません」
 どうにか許可をもらって、おそるおそる奥の病室へ入る。
 気配を感じたのだろう、あの金髪の子がこちらを向いた。だが私のことは覚えていないようで、誰だろう、という表情を見せる。

「具合は……どうだ?」
 声をかけながら近づくと、この子の顔に怯えが走った。私の後ろのタシュアに、気づいたのだろう。
「心配しなくていい、大丈夫だ」
 あの時と同じ表情に、思わず走りよって抱きよせた。

「大丈夫だから……」
 小さく震える少女を、強く抱きしめて頭を撫でる。
 こんなこと、あってほしくない。
 ここは、安全でなければいけない場所だ。
 だから……。


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