ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
Chapter:04 理解
Episode:28
 ケーキは大成功だった。間のシフォンはまったくつぶれていないし、ムースもいい具合だ。
 なんだか嬉しくなって、仕上げのクリームをぬる手が弾む。
 スライスした果実も乗せて、銀色の小さな砂糖菓子を星のように振って、完成だ。
「……よし」

 これを作ったのは初めてだが、我ながらよく出来たと思う。
――そういえば、味見をしてもらっていないな。
 新作のケーキは、タシュアに食べさせて味を訊くのがいつもだ。けれど今からもうひとつ作るわけにはいかないし、これをタシュアに食べさせたら、お見舞いに行く時期を逃してしまいそうだった。
 仕方ない、と自分を納得させる。

 だが用意しておいた箱に入れようとしたところで、タシュアが入ってきた。
 もしかして、考えていたことがばれてしまったのかと慌てる。こういうことはなぜか、彼はカンが鋭かった。
「新作ですか?」
 言いながらケーキを見た彼が、不思議そうな表情になる。どうやら単純にここへ来ただけで、私の考えていることを察知したわけではないようだ。
 それに考えようによっては、かえっていいかもしれない。

「いつもとずいぶん、趣向の違うケーキですね」
「ああ。少し、変えてみた」
 なにしろ年下の女の子向けだ。見た目もそういうふうに作ってある。だがふだんはタシュアにあわせて、シンプルに作ることが多いから、彼にしてみれば珍しいのだろう。
「では、味見でも」
「ダメだ!」

 とっさにケーキとの間に入って食べられないように防ぐと、タシュアがまた、怪訝そうな顔になった。
「どうしたのです? 毒が入ってるわけでもないでしょうに」
「その、これはだから、人にあげるんだ」
「おや、それはまた珍しいこと」
 私にあまりそういう相手が居ないことを、タシュアはよく知っている。

「今これを箱に入れるから……ちょっと持って、くれないか?」
「まぁ持つくらいかまいませんが、どこへ行く気なのです」
 こんども不思議そうな彼に、「ちょっと」と答えながら、クッキーも詰める。加えて本も何冊か持って、私は立ち上がった。
「ずいぶん大荷物ですね。本は持ちますよ」

――そう。
 タシュアはけして冷たくない。ただ、それを周りが知ることはないだろう。
 私の後ろを、彼がついてくる。
「……なるほど、そういうわけですか」
 寮を出たところで、タシュアは行き先を察したようだ。



Web拍手 ←Web拍手です

FT小説ランキング  毎日OK:FT小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
 順位だけ見たい方はこちら

NEVEL Ranking  月に1回:NEWVELランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票


◇イラストいろいろです。随時募集中です♪◇
シエラ学院制服  Blue Ocean  ルーフェイア・シリーズ

自サイト美術室はこちら
掲示板はこちら。お気軽にどうぞ♪


筆者サイト
↑筆者サイトへ
最新話へのリンク、改行なし版等があります


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。