ケーキは大成功だった。間のシフォンはまったくつぶれていないし、ムースもいい具合だ。
なんだか嬉しくなって、仕上げのクリームをぬる手が弾む。
スライスした果実も乗せて、銀色の小さな砂糖菓子を星のように振って、完成だ。
「……よし」
これを作ったのは初めてだが、我ながらよく出来たと思う。
――そういえば、味見をしてもらっていないな。
新作のケーキは、タシュアに食べさせて味を訊くのがいつもだ。けれど今からもうひとつ作るわけにはいかないし、これをタシュアに食べさせたら、お見舞いに行く時期を逃してしまいそうだった。
仕方ない、と自分を納得させる。
だが用意しておいた箱に入れようとしたところで、タシュアが入ってきた。
もしかして、考えていたことがばれてしまったのかと慌てる。こういうことはなぜか、彼はカンが鋭かった。
「新作ですか?」
言いながらケーキを見た彼が、不思議そうな表情になる。どうやら単純にここへ来ただけで、私の考えていることを察知したわけではないようだ。
それに考えようによっては、かえっていいかもしれない。
「いつもとずいぶん、趣向の違うケーキですね」
「ああ。少し、変えてみた」
なにしろ年下の女の子向けだ。見た目もそういうふうに作ってある。だがふだんはタシュアにあわせて、シンプルに作ることが多いから、彼にしてみれば珍しいのだろう。
「では、味見でも」
「ダメだ!」
とっさにケーキとの間に入って食べられないように防ぐと、タシュアがまた、怪訝そうな顔になった。
「どうしたのです? 毒が入ってるわけでもないでしょうに」
「その、これはだから、人にあげるんだ」
「おや、それはまた珍しいこと」
私にあまりそういう相手が居ないことを、タシュアはよく知っている。
「今これを箱に入れるから……ちょっと持って、くれないか?」
「まぁ持つくらいかまいませんが、どこへ行く気なのです」
こんども不思議そうな彼に、「ちょっと」と答えながら、クッキーも詰める。加えて本も何冊か持って、私は立ち上がった。
「ずいぶん大荷物ですね。本は持ちますよ」
――そう。
タシュアはけして冷たくない。ただ、それを周りが知ることはないだろう。
私の後ろを、彼がついてくる。
「……なるほど、そういうわけですか」
寮を出たところで、タシュアは行き先を察したようだ。
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