「またお会いしましたね」
何気なく――タシュアにとって先日の出来事は日常風景の一つでしかない――言ったのだが、少女の表情にあきらかな怯えが走った。
「い、いや……」
様子がおかしい。
「タシュア、なにか変じゃないか?」
「そうですね。
――ルーフェイア?」
さすがのタシュアも声のトーンを、小さい子に話しかけるような、そういうものに変える。
だが少女は、さらに怯えただけだった。
「いや……来ないで……」
わずかにあとずさる。
どうみても、普通の精神状態とは思えなかった。このまま放っておくのは危険だと判断して、タシュアは少女に近づく。
「ルーフェイア、どうかしたのですか?」
それは普段のタシュアからは考えられないほど、穏やかな調子の声だったのだが、少女の反応はあまりにも唐突だった。
「いやぁっ!!」
叫ぶといきなり、踵を返して駆け出す。
だが、その先に足場はない。
華奢な少女の身体は宙に投げ出され――水面へと落ちた。
◇Rufeir
立ちあがって振りかえった先、あたしの視線が捉えたのは――タシュア先輩。
とたんに恐怖に襲われる。
「またお会いしましたね」
あの、冷たい声。
――怖い。
「ルーフェイア?」
――来ないで。
思わずあとずさる。
「ルーフェイア、どうかしたのですか?」
先輩が近づく。
「いやぁっ!!」
思わず逃げ出した。
後ろへ。
「あ……」
いきなり足元が途切れる。
身体が宙に浮いた。
――落ちる?
次の瞬間、あたしの身体は海中に沈んでいた。
水底から見上げる水面が、奇妙なくらい綺麗だ。
――そうか、これで死ぬんだ。
不思議なくらい冷静だった。
でも考えてみれば、今までだって、生きてこれたのが不思議なくらいだ。だからいつ終わったって、おかしくない。
それが今だってだけなんだろう。
息が詰まる。
そこで、あたしの意識は途絶えた。
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