船体が碧いうねりの間で揺れる。
青と白の街が近づいてくる。
「だいじょぶか?」
久々に外へ出たのを心配してるみたいで、イマドが声をかけてきた。
「うん。思ってたより、調子……いいみたい」
「そか」
長居はムリだろうけど、あの埠頭から海を眺めるくらいはできそうだ。
少し元気が出てくる。
やがて、船が止まった。
揺れる足元に気をつけながら降りて、歩き出す。
いつもと同じ、青い街。
風に混ざる潮の香。
シエラの船着場は入り江の中で、外洋はあまり見えないけど、ここは視線の先にどこまでも碧が広がる。
「きれい……」
穏やかな風、穏やかな海。
見てると気持ちが落ち着いてくる。
「あの先まで……行って、いい?」
「気をつけろよ?」
いちばん好きな、埠頭の先まで行ってみる。
近くで覗くとこの海、びっくりするほど透明度が高い。底まで見えて、きれいな魚が横切って行く。
「ねぇ、しばらくここにいて……いい?」
「あぁ。そしたらなんか飲むか? 買ってきてやるよ」
「……ありがと」
待ってろと言って、イマドは向こうの店のほうへ駆けて行った。
ひとりになる。
でも不思議と、あたしは落ちついていた。ここ数日の落ちこみが、嘘みたいだ。
――この海のせい、なんだろうな。
ぼんやりとそんなことを思った。
明日もまた、来てみようかな?
でもイマドはそうそう、あたしに付き合ってはいられないだろうし。
ゆらめく水面に手もとの石を投げると、ぽちゃんと沈んで輪を描いた。
それがなんだか、可笑しい。
端からみたらきっと変に見えるだろうけど、なんとなく笑みがこぼれた。
と。
(なに……)
なぜだろう。何かの、予感。
ぞっとして、あたしは振りかえりつつ立ちあがった。
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