「先輩、いいんです! ほんとにあたしが悪いんですから!」
ルーフェイアがとっさに間に入らなかったら、またひと悶着あったかもしれない。
「けどねえ、ルーフェ!」
「ほんとなんです!
あの、先輩、すみませんでした。こんどから……気をつけます」
少女が丁寧に頭を下げる。
だがタシュアはそれに答えるどころか、完全に無視して視線を本に戻しただけだ。
「――!」
再び何事か言いかけたロアだが、今度もルーフェイアが止める。
「あたしが悪いんですから!」
「………」
少女の必死の懇願に、ロアもようやく怒りの矛先を納めた。
タシュアを睨みつけてから、ルーフェイアの手を引いて図書館を出て行く。
「ところでさ、なんだってあんなやつに、ちょっかいだしたわけ?」
外へ出てから、ロアは少女に尋ねた。
「あの、本の詳しい題名……見たくて」
「だからって何も、あんなののそばに、わざわざ行かなくたって」
ロアが呆れる。
「あの、そんなに……ダメないんですか?」
「いけないもなにも――って、そうか。ルーフェは知らなかったんだ」
ロアはタシュアと同クラスだし、しかもほとんど同時に入学しているが、ルーフェイアはまだ学院に来て一年と経っていない。いくらタシュアが有名人とは言え、同級生でないのだから、知らないのもうなずけた。
「あいつさ、タシュア=リュウローンって言うんだよね。で、学年でもトップクラス。それにあの通り、外た目もまぁ、悪くないんだけどさ。けど中身がねー!」
よほど腹に据えかねたのか、息つく間もなくロアが喋る。
「ったく、あの口の悪さだよ?!
本人は『事実言ってるだけ』って言うけどさ、なんでも言やぁいいってもんじゃないっての!」
ロアはまだ、怒りが収まりきっていないようだ。
「でも……あたしが……」
「ほんとにそうでも、普通ああは言わないよ!
――あ〜もう! また腹立ってきた。ちょっとルーフェ、どっか行って憂さ晴らしっ!」
ルーフェイアの手を強引に引いて、ロアは食堂へ向かった。
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