岩場の地形を走る一台の列車、デンライナー。その列車の食堂車に、未来とイマジン、ハナ、ナオミが乗っている。
「お前、名前は何だ?」
未来はイマジンに訊ねた。
「名前?そんなのねえよ」
「そうか、じゃあ付けてやるよ。何が良い?」
と、ハナに振る未来。
「えっ、何で私が?」
「はい時間切れ。そうだな、全身赤くて鬼の面をしてるから・・・」
「モモタロス」
イマジンが答えた。
「桃太郎酢?」
「モモタロスだっ、ボケんで良い!」
「すまん。で、何でモモタロス?」
「理由なんか無え、頭にパッと浮かんだんだよ、パッとな」
「そうか、じゃあそれで決定」
「えっ、良いの!?」
ハナは驚いた。
「良いんじゃね?本人の口から出た言葉だし」
「それもそうね」
納得するハナ。
「所でよ、お前の事は何て呼んだら良いんだ?」
イマジン・モモタロスは未来に訊ねた。
「うーん、未来で良い」
「そうか」
グワン──突然、食堂車と隣の車両とを繋ぐ扉が開き、杖を付いた男が入って来た。
「あ、オーナー」
と、ハナ。
「「オーナー?」」
未来とモモタロスは声を揃えて言った。
「紹介はするわね。こちら、デンライナー責任者のオーナー」
「まんまだな」
と、モモタロス。
「だな」
と、続いて未来。
「お初にお目に掛ります。私が、デンライナーのオーナーです。そちらのお嬢さんとイマジンは?」
「二人はイマジン倒す為に電王として立派に働いて下さっている方です」
「モモタロスだ」
と、親指で自分を差すモモタロス。
一方未来は、人指し指を上に向け、腕を頭より高く挙げて、
「お祖父さんが言っていた。天の道を往き、未だ来ぬ平和を掴み取る少女・・・私の名は、天道 未来」
「そうですか」
オーナーはそう言うと、席に着いて旗が立ったプリンをナオミに要求した。
オーナーのプリンは、直ぐに運ばれて来た。
「頂きます」
オーナーはスプーンを手に取り、プリンを端から掬って食べ始めた。そして、中央の爪楊枝の旗が倒れそうな所、食べるのを止める。
ヘプシッ!──突然、未来が嚔をした。
オーナーは驚いた様子で中央の旗を見つめる。どうやら、嚔のせいで旗が倒れたらしい。
「また今回も、新記録は達成出来なかった・・・」
「「新記録?」」
と、未来とモモタロスが声を揃えて言う。
「オーナーはね、何かを食べる時は何時もああやって旗を残すのよ。何処まで旗が倒れないか、挑戦してるのよ」
「「変わった趣味だな」」
と、再び二人の声が重なる。
「あのさ、とても気になってるんだけど、どうして二人とも同時に同じ事言うの?」
ハナが唐突にそう訊いた。
二人は顔を合わせると、さあ、と両手を顔の横で広げた。
現在、とある場所で一人の少年が実体の無いイマジンに願い事を言っていた。
「俺の願い、何でも叶えてくれるんだよな?じゃあさ、恋人が欲しい。強くて格好良くて、優しくて面倒見が良く、俺だけを見てくれる様なの女の子」
イマジンは考える人の如く、顎に手を当てながら言った。
「うーん、それは難しい願いだね・・・」
「どんな願いでも叶えてくれるんじゃないのか?」
「そりゃ叶えたいけどさ、そんな都合の良い女の子いるかな?」
「見付けるっ、そんで俺の彼女にするのがあんたのする仕事!」
「やれやれ・・・」
イマジンは丸い光体になると、少年の体の中に入った。
瞬間、少年の瞳が紫になり、帽子が出現し、数十本の髪の束が紫に変色した。その風貌は、先程の少年とは思えないぐらいの格好いい顔、所謂イケメン顔になっていた。
イマジンが憑依した少年は、その場を跡にした。
岩場を走るデンライナーは、徐に停車した。どうやら、次の駅に着いた様だ。とは言っても、辺りには何も無い。
デンライナーのドアが開き、未来が降りてくる。
「じゃ、私学校だから」
と、振り返りながら言う。
「気を付けてね」
「ああ」
と、未来は前に向き直り、扉を開けた。その先は、学校の昇降口になっている。
「待てよ未来」
唐突にモモタロスが歩を進める未来を呼び止めた。
「何だ?」
と、笑顔で振り向く。
「俺も連れてってくれないか?俺がお前をボディガードしてやるよ」
未来がキリッとした顔になる。
「とか言って、本当は私の体使いたいだけなんだろ?」
図星。モモタロスはギクッとした。
「結構だ。私はあんたより強い」
「カーッ、言ってくれるじゃねえか!」
と、モモタロスは頭を掻き毟り、
「そこまで言うんならお前、俺の力に頼らずイマジン倒してみろ!」
「良いよ、やってやるよ。てめえなんか絶対呼ばねえからな!」
未来はそう怒鳴りつけると、扉の向こうへ行って閉めてしまった。
(あ、いけない。少し言い過ぎたかも・・・?)
未来は浮かない顔で俯き、ガラス戸に寄り掛かった。そこへ、帽子を被った少年がやって来て、声を掛けた。
「おや、元気が無いですね。彼氏と喧嘩でもなさったのですか?」
その問いに未来は顔を上げ、
「まぁ、そんな所かな。てかお前、何だその格好?」
と、目を凝らして帽子の少年を見つめる。
(紫の髪に紫の瞳・・・?この特徴、恐らく奴だ。こいつ、絶対入ってる)
「そんなに僕を見つめて・・・僕の顔に何か?」
「いや、別に・・・。それより今日の放課後、お、屋上に、き、来てくれないか?その、は、話したい事あるし」
未来は態とらしく頬を真っ赤に染め、慌てふためきながら言った。
「じゃっ、そう言う事だから、放課後待ってるよ!」
未来はそう言って、少年から慌てて離れた。
(何言っちゃってるんだ私!?それにしても、あいつ結構格好良かったな)
未来は顔を更に赤くし、全身を火照らしてしまった。
(って、何考えてんだ私!?熱い・・・胸が、ドキドキする・・・。ひょっとして私、あいつに、ほ、ほほ、ほ、ホの字?)
ボン!──未来は顔から白煙を噴かした。
放課後、屋上で未来が待っていると、そいつはやって来た。
「あっ、拓也。ホントに来てくれたんだ」
「勿論だよ。可愛い女の子に呼ばれて行かない男なんていないさ」
「か、可愛いだなんてそんな」
未来は思わず顔がにやけた。
「で、僕に話しって何かな?」
「話し?うん、あのね、拓也に一寸訊きたい事があるんだけど、拓也って付き合ってる人とかいるの?」
(なっ、何言ってんだ私!?そんな事が聞きたいんじゃない!)
「付き合ってる人?今はいないけど・・・」
(うしっ、これはチャンス!)
と、ガッツポーズを取る未来。
(って違うよ!そんなのどうでも良いよ!私が聞きたいのはイマジンの事なのに!)
「じゃ、じゃあさ、もし私が、拓也の事好きで好きでしょうがなくて、付き合ってくれとか言ったらどうする?」
大胆発言!思ってもいない事を口にしてしまった未来。拓也と言う少年の次なる言葉は、
「良いよ、付き合っても。僕も君の事、好きだし」
(うわぁ、もう駄目だ。お願いモモタロス、助けて!)
モモタロスが食堂車で居眠りをしてると、頭の中で響く声によって起こされた。
『お願いモモタロス、助けて!』
「五月蠅えっ、自分で何とかしろ!」
『ごめん、モモタロス。先刻は言い過ぎた。この通り謝る。だから、力を貸して!』
「しょうがねえな。その代わり、帰って来たら土下座だ」
『それは却下!』
「じゃあ知らねえ。自分で何とかしろ」
『わ、解ったわよ。土下座でも、何でも、するから・・・』
するとモモタロスは、未来の下へ飛んで憑依した。
「俺、参上!」
と、ファイティングポーズを取るM未来。
「やいやいてめえっ、正体を現わしたらどうだ!?」
そう言って、M未来は目の前の拓也の胸倉を掴んで持ち上げ、睨み付けた。
「何だ、イマジンが憑いてたのか。ま、契約完了したし、そろそろ良いかな」
刹那、拓也の体から光体が飛び出し、イマジンが実体化した。
「あれ、俺こんな所で何を?」
意識を取り戻した拓也は、
「って、先輩!?」
と、怯えて身体中が震えた。
「あ、あの、ぼぼぼ、僕、せせ、先輩に、な、何かしました?」
拓也は恐る恐る訊ねた。
途端、M未来は未来に戻り、拓也を手放した。
「否、今回は私が悪い。ごめん」
未来はそう言って、頭を下げた。
「それからお前の事虐めて、喝上げして、本当にごめん」
「な、何言ってるの先輩?別に僕、そんなの気にしてないし、兎に角顔を上げて下さい」
と、宥める賺す拓也(※:詳しくは前回の一発ネタ参照)。すると、イマジンは言った。
「何だか知らないけど、僕の事忘れてない?」
「あっ、そうだ!」
未来はイマジンの方を振り向いた。
「てめえ、こんな奴相手によくも私に告白させてくれたな!」
「先輩、僕の事好きだったの?って事は、今までの行いは、好きな子をどうしても虐めてしまう、と言うあれですか?」
要らぬ誤解。
「そんな訳あるか!」
と、拓也の顔面に足を載せ、ぐりぐりと回した。
「やっ、やめて下さい先輩!痛いから!」
イマジンは未来を弾き飛ばした。
「痛っ!」
と、尻餅を着く未来。
「僕の契約者に乱暴な事しなで下さい。じゃ」
イマジンは空間をこじ開け、拓也の過去へと飛んだ。
未来は拓也の頭にカードを翳した。すると、カードにイマジンの姿が刻印され、赤い文字で05.03.13と表示された。丁度、今から2年前の中学の卒業式だ。
「拓也、この日付に覚えは?」
「その日は僕の、中学の入学式だった。絶対に忘れたくない、最高の1日。あの日、僕は帰りに同じクラスの子達に虐められてて、偶々通り掛かった先輩と同じぐらいの女子高生に助けて貰ったんだ。格好良くて強くて、直ぐにあいつらを追い返してくれた。その後、その娘は何処かへ行ってしまったけど、その時僕はドキドキしてて、もう一度会いたくなった。何でって、好きになってしまったから」
それを聞いた未来は、拓也の頭を撫でてやった。
「良い話しだな、泣けるぜ。よし、用事済ませたら私がその娘に会わせてやるよ。待ってな」
未来はそう言って、ライダーパスにカードをセットし、ベルトを出現させてセタッチした。
「変身!」
瞬間、未来は電王・プラットフォーム姿を変える。
(あっ、その姿は・・・!?)
「じゃ、ちょっと過去に行って来る」
電王はそう言って、目の前に現れたデンライナーに乗り込み、3年前の4月8日へと向かった。
2005年3月13日──とある中学校の入学式。制服が無ければ小学校低学年では無いのかと疑うくらいの身長の拓也が、4,5人の男女に虐められていた。
校門を通る他の生徒達は、恐れを為して見て見ぬふりをしている。
「痛いよ、止めてよ」
拓也は言うが、いじめっ子軍団は断じて止めない。
「ほら泣けよ」
と、4,5人の中で最も背の高いリーダー格っぽい男子が言った。
「ママー助けてー、ってな」
と、髪の長い女子が言う。するとそこへ、
「おい、お前ら!1人の相手すんのに5人で相手なんて卑怯者がする事だぞ!?」
と、5人の背後に立っている女子高生が言った。
「何だお前?」
いじめっ子軍団は振り向いた。
「ちっ、女か」
「細くて弱そう」
「やっちまおうぜ」
軍団は全員賛成すると、女子高生に一斉攻撃を仕掛けた。
しかし、女子高生は軽く身をかわし、全員まとめて回し蹴りで吹っ飛ばした。
「覚えてろよ!」
軍団は慌てて逃げて行った。
「大丈夫か?」
女子高生は拓也の方を向き、手を差し出した。
「あ、ありがとう」
拓也はそう言って、女子高生の手を取って立ち上がった。
(格好いい)
拓也は憧れの眼差しで少女を見つめた。
「あの、僕、島田 拓也って言います。今度、ちゃんとお礼しようと思うんで、お名前と連絡先、教えてくれませんか?」
「名前は天道 未来。お礼は要らない」
と、その時、拓也の体から砂が零れだし、イマジンがその砂から現れ、暴れ始めた。
先程まで、見て見ぬ振りをしていた生徒達は、慌てて逃げ出した。
「じゃ、私はあいつに用があるから」
未来はそう言って、ライダーパスを出し、ベルトを出現させてセタッチした。
「変身!」
刹那、未来は電王・プラットフォームに姿を変えた。
「遅えな、待ちくたびれたぞ」
電王はそう言って、暴れているイマジンを蹴り飛ばした。
「うわっ!」
イマジンは吹っ飛び、地面に叩き付けられた。
「こちとら先回りしてあんたの事待ってたんだ。相手してくれたって良いよな?」
イマジンは、ふう、と溜め息を吐き、
「君の噂は聞いてるよ。電王だね?けど、聞いてる姿とは違うみたいだね」
「どうでも良いだろそんな事!」
電王はデンガッシャーを組み立てた。しかし、何の機能も為さない。
「おかしいな、この間は剣に成ったんだけど・・・」
『おい、俺に代われ!』
と、頭の中でモモタロスが叫んだ。
電王はやれやれと言った様子で(勿論、仮面の下の表情は見えないが)、ベルト赤いボタンを押してライダーパスをセタッチした。
「Sword form」
モモタロスが電王に憑依し、アーマーが出現。電王はソードフォームに移行した。
「俺っ、再び参上!」
電王が叫びつつ、ファイティングポーズを決めると、デンガッシャーは突然ソード状に変化した。
『この武器は人を選ぶのか!』
と、電王の頭の中で叫ぶ未来。
「ギャーギャー喚くな!」
電王は怒鳴り散らした後、イマジンに向かって言う。
「面倒だから早めに終わらせてやるぜ!」
電王はデンガッシャーを振り回し、イマジンが怯んだ隙にライダーパスをセタッチして投げた。
「Full charge」
瞬間、剣先が上空へと吹っ飛んだ。
「俺の必殺技!Part two」
と、デンガッシャーを適当に振り回し、トドメの一撃に真上から真下へ一気に振り下ろした。
「そんなんじゃ倒せないよ?」
イマジンはそう言って、振り下ろされる剣先を素手で受け止めた。
「何っ、俺の必殺技を受け止めただと!?」
電王は驚き戦意喪失。体からモモタロスは抜け去ってしまった。
それと同時に剣先も消失し、電王はソードフォームからプラットフォームへと戻ってしまった。
「試合放棄かモモタロス!?」
『俺の必殺技を受け止めやがった。上には上がいる。俺はこの先、戦っていけるのか?』
「モモタロス!」
『悪いな未来。俺は今戦う気が無え』
ちっ──電王は舌打ちをし、
「ふざけやがって・・・!」
と、拳を握りしめた。
「あれ、お仲間は戦う気を失くしちゃったみたいだよ?」
イマジンはそう言って、徐に歩き出した。
「ねぇ、その体、僕に頂戴?」
「嫌だっ、それだけはマジで嫌だ!」
「じゃあ力尽くで貰っちゃおう」
イマジンはそう言って、電王目掛けて走り出した。
電王は咄嗟に構え、相手の動きを見極めた。
(どう出る?)
イマジンはジャンプし、空中で一回転して電王の背後に着地した。
(何っ、後ろに着かれた!?)
電王は慌てて振り向くが時既に遅し。イマジンの体の半分が、電王の体に入り込んでいた。
「くっ、絶対入れさせねえからな!」
電王はそう言って、イマジンの侵入を拒む。
「抵抗しないで、素直に明け渡してよ?」
しかし、電王は譲らない。
「堪えると苦しいだけだよ?」
(確かにその通りだ。私が耐えるより、それでこいつの気持ちが晴れるなら、素直に貸してやった方が良いのかな?)
電王は考えた末、
「ちょっとだけだよ?」
そう言って、拒むのを止めた。
「やりい!」
イマジンは大喜びで、電王に完全憑依した。
電王はベルトの赤、青、黄、紫の内、紫のボタンを押してライダーパスをセタッチした。
「Gun form」
瞬間、アーマーが出現し、電王はガンフォームに移行した。
一方、デンライナー食堂車の隅っこで小さくなっていたモモタロスは、咄嗟に立ち上がり、
「未来が乗っ取られた!」
「何ですって!?」
ハナは取り敢えず驚いた。
「モモ、あなたがイマジンに必殺技を受け止められてショックで戻って来たのが悪いんでしょ!絶対取り返しなさいよ!」
「お前に言わなくても解ってるよ」
モモタロスはそう言って、未来に憑依しようと飛んだ。が、直ぐに跳ね返され戻って来てしまった。
「モモ!?」
「ええいっ、もう一度だ!」
モモタロスは再度飛んだ。しかし、結果は同じだった。
「畜生、一体どうすりゃ良いんだよ!?」
『何もしなくて良いよ、私なら大丈夫だから』
そう頭に響いたのは、未来の声。どうやら、意識はある様だ。
『それに私決めたんだ。これであいつの気が済むんなら、って』
「そうかよ!で、そっちの状況は?」
『相変わらず、イマジンとして動いてるよ』
「どう言う事だ?」
『頭悪いなお前、解説してやろうか?町中破壊して回ってるって事だよ!』
「おいおい、お前そんなんで良いのかよ?」
『言っただろ、これで此奴の気が済むんならって』
「あー、もう勝手にしろ!」
モモタロスは怒鳴り散らし、見限った。
「未来、何て?」
「自分から体をくれてやったんだとよ。しかも町中破壊して回ってるって」
イマジンに体を貸した電王は、華麗なステップでダンスをしながら、デンガッシャーで町中を破壊していた。
「ワーイ、楽しいなぁ」
と、男児の様な高い声で、デンガッシャーを発砲しまくる。
バキュンバキュン──辺りにデンガッシャーの発砲音が響く。
『ねぇ、何時まで続けるの?』
唐突に未来が頭の中で訊ねた。
「解んない。兎に角破壊しまくらなきゃいけない気がするんだ」
『解んないなら破壊すんのはもう止めてくんないか?』
「嫌だ。止めたらお前、僕の事倒すでしょ?」
『私は倒さないよ』
「本当?」
『ああ、本当』
「解った、じゃあ止める」
電王はそう言って、変身を解除した。そこへ、デンライナーが現れ、ハナが降りて来た。
「未来?」
ハナの呼びかけに、帽子を被った未来は振り向いた。瞳は紫、髪の一部も紫。憑依されている。
「「あ、ハナ」」
と、未来とイマジンの声が重なって出る。
「ハナじゃねえよっ、さっさと未来の体を離れろ!未来の体は俺の物だ!」
と、モモタロスがデンライナーの中から顔を出した。
「「あ、お前先刻僕に必殺技を受け止められた可哀想なイマジンだ」」
と、未来は言った。
ガーン!──モモタロスはショックを受け、車内に隠れてしまった。
『今のは流石に言い過ぎじゃない?』
と、イマジンに言う未来。
「そうかなぁ?」
イマジンはそう言って、未来の体から抜けた。
「じゃあ帰ろうか、ハナ」
未来はデンライナーに乗り込んだ。
「ちょっと待ってよ!あんた自分が何したのか解ってんの!?」
ハナはデンライナーに乗り込むと、恐ろしい形相で訊ねた。
「解ってるつもりだけど何か?」
と、食堂車に入る未来。続けてハナが入った。
「じゃあ何であんな事?」
その問いに、例のイマジンが答えた。
「それは、優しいからだよ。ね?」
と、未来を見て言う。
「否、それは違うな」
「何が違うの?」
「・・・気にするな」
「ええ、教えてよ?」
「自分で考えてみれば?それより・・・」
未来は目の前のイマジンを間近で凝視した。
黒みがかった紫の全身に赤い瞳、龍の様な風貌。
「僕の顔に何か付いてる?」
「いや、そうじゃない」
と、未来は更に見つめ、
「可愛い!」
イマジンを抱き締めた。
「うわっ、一寸何すんの?」
イマジンは驚き戸惑った。
「おい未来、此奴の何処が可愛いんだ?」
「ええ、観て解んない?」
と、イマジンの顔をモモタロスに向ける。
「痛い、放して」
イマジンは藻掻き苦しんだ。
未来は顔をクルッと自分の方に向け、
「あんた名前は?」
と、イマジンに聞く。
「僕、名前無いよ?」
「そうか・・・でも無いと困るから名前考えようか?」
(えっと、龍だからやっぱりあれね)
「うん、決めた」
「「リュウタロス!」」
イマジン・リュウタロスと未来の声がハモった。
途端、未来とリュウタロスは驚いた。
「今、同じ事言ったよな?」
未来の問いに、
「うん」
と、頷くリュウタロス。
「所でよ、そいつどうすんだ?」
と、モモタロスが唐突に訊ねた。
「勿論、契約に決まってる!」
未来は力強く言った。
「一寸、それ本気?」
と、ハナ。
「本気だよ。だってこんなに可愛いんだもん!」
未来はリュウタロスを再度力強く抱き締めた。
「く、苦しい・・・放して」
「あ、ごめん、大丈夫?」
未来は慌ててリュウタロスを放した。
「うん、大丈夫。それより契約だったよね?って事は、その体使っても良いって事だよね?」
「良いよ、条件さえ守ってくれれば」
未来は満面の笑みを浮かべて言った。
「条件?」
と、首を傾げるリュウタロス。
「条件其の一、私の命令は絶対。其の二、町は破壊しない。其の三、理由無しに突然入らない。これらの条件を全て守ってくれれば喜んで体貸すよ」
「解った。僕その条件守る」
リュウタロスはそう言うと、歓喜のあまり勝手に踊り出した。
「未来の事、お姉ちゃんって呼んで良い?ねぇ、良いよね?答えは聞いて無いけど」
「良いよ、好きに呼んで?」
「解った、そうする」
すると、モモタロスが勢い良く立ち上がり、リュウタロスに迫った。
「モモタロスどうしたの?」
「どうしたもこうしたもあるかっ、気に食わねえんだよ!」
モモタロスはリュウタロスを蹴飛ばした。
「出て行けてめえ!」
「お姉ちゃん、鬼が虐める」
プッ!──未来は吹き出した。
「鬼だって。確かに鬼だけどね」
「てめえ!」
モモタロスは怒り狂い、リュウタロスをボコボコ叩きまくり始めた。
「お姉ちゃん、助けて」
「止めろモモタロス」
「五月蠅え、お前は黙ってろ!」
ブチッ!──未来の堪忍袋の緒が切れた。
「リュウちゃん、私の体に隠れて」
リュウタロスは光体に成り、未来の体内に入り込んだ。
「あっ、てめえ卑怯だぞ!」
モモタロスは未来に向かって飛び込んだ。その結果、未来の谷間へダイブした。
「モモタロス?」
と、未来は裏声に成り、ニッコリ笑顔で拳をポキポキ鳴らし始めた。
刹那、火山の噴火音と共に灰色の煙が吹き出し、やがて晴れると全身痣だらけのモモタロスが倒れて痙攣を起こしている状態で姿を現した。
「次やったら本気で殺すよ?」
と、モモタロスを睨み付ける未来。
この時、ハナは思った。
(この娘に逆らったら、命がいくつ有っても足りないわ)
「あ!」
突如、未来が声を張り上げた。
「どうしたの?」
「制服ボタンが無い。屹度何処かで取れたんだ」
「そんなのまた付ければ良いじゃん。スペアあるんでしょ?」
「まぁ、あるけど・・・?」
2007年7月31日──突如、拓也の前にデンライナーが現れて止まり、未来が降りて来た。
「ごめん、長引いちゃった」
「いや、まだ5分しか経って無いです」
「あそっか。まあ良いや。取り敢えず卒業式に拓也が虐められてる所を助けたって言う女子高生に会いに行こう?」
「あ、その事なんですけど、あの時助けてくれたの、天道先輩なんですよね」
「はあ?お前何言ってんの?2年前って言ったら、未だ私北海道に・・・」
刹那、未来の脳裏に先程の光景がフラッシュバックと成って過ぎった。
拓也は徐にポケットから何かを取り出した。それは、未来の制服のボタンだった。
「これ、あの時の抗争で外れた先輩のボタン・・・。僕、これずっとお守りとして持ってたんです」
「お前、わざわざ拾ってくれたのか?しかも肌身離さず・・・」
「だって、これがきっかけで、仲良くなれるかなって思ったから」
「で、いつか恋人に発展して・・・って、夢見過ぎだよお前!」
「見させて下さいよ、夢・・・。僕、2年前のあの日から、先輩の事ずっと思ってた・・・。恋人の事も、将来のお嫁さんの事も、先輩が良いなって、思ってた・・・」
未来は一瞬、ドキッとした。
「先輩、否・・・未来さん!」
拓也は真剣な眼差しで、
「僕と」
未来を見つめ、
「付き合って下さい!」
その瞬間、未来の心臓がバクバク高鳴り、体が火照り出した。
「いや、そんな、急に言われても・・・私、拓也の事ずっと、虐めてた訳で・・・」
「良いんだそんな事は!先輩なら、今までの悪行の数々、許せる・・・」
「拓也・・・」
未来は拓也を抱き締めた。
「バカ・・・・・・バカだよお前。あんだけ虐められていて、それでも好きだから許すって・・・・・・本当のバカだ。でも・・・・・・一寸、嬉しいかも。そうね、拓也なら、良いよ。付き合っても」
「先輩・・・」
すると未来は拓也に顔を見せ、
「おっと、私達は交際してるんだから、先輩は駄目だ。私の事は、未来と呼びなさい」
「解ったよ、未来」
こうして未来は、拓也とカップルとなり、末永く幸せに暮らしたのでした。目出度し、目出度し。
「って未だ終わってな〜い!私の電王としての活躍はまだまだ続くんだからね!読まないとぶっ飛ばすから!」
THE END! |