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決意━yoshika━

 
 夜になり月が朧に霞む頃、良佳はまたあの公園のベンチに腰掛ける。
 今年の初め、良佳はここに座りただ月を眺めていた。やりきれない思いと潰れそうな心を抱いて、吐き出せない感情をメールの中の詩に込めた。 

「はぁ…」

 四月の夜は肌寒い。
 もう終わろうとしている桜の木さえ、震えているように風に揺れ、薄紅の中に所々見え隠れする葉桜が次の季節を伝えていく。二度と同じ時は来ないのだと…。

 携帯電話を握り、良佳は眼を閉じる。
 彼は、“深澄”は寂しくないのだろうか。
 送ったメールを思い返して、また一つ溜息が零れた。

 ―貴方は、きっと知っているはずです…―

 上から目線とか、そういうつもりはない。
 ただ、優しくて暖かい言葉を掛けられる彼が、その“孤独”を知らないとは思えなかった。変な子だとか、失礼な奴とか思われているかもしれない…。それでも…。

 彼なら、きっと分かってくれると信じていた―。

「…っ?」

 まるでその願いを聞き届けたかのようなタイミングで携帯電話が揺れる。その振動に良佳の心も大きく跳ねた。
 
―新着メール 1件―

 殺風景な画面に浮き出る言葉。良佳にとって救いとなる―彼からの―言葉。
 そう思っていた…。

『良佳。

 キミの言葉の意味が分からない。
 僕はそんな風にキミに言われるほど、僕の事を教えていない。
 分かったような事を言わないで欲しい。

 僕は、
 キミが思うほど立派な人間でもないし、
 優しくもない。何を勘違いしているの?

 自分を救えるのは、自分だけだよ。

 誰か―他人―に救って貰おうとか、欲しいとか思わないで。
 自分の足で立って。
 歩く事を止めないで。
 それは“卑怯”だよ。


                          深澄  』

 彼の言葉が胸を抉った。
 心が痛くて悲鳴を上げる。
 その言葉の意味を考えて良佳の頬を涙が濡らした。

 “自分の足で立って。
  歩く事を止めないで。
  それは“卑怯”だよ。“

 良佳の全てを見抜いたような、たった三行の言葉が痛かった。
 
「っつ…うっ…」

 ポロポロと零れ落ちる滴に、良佳は声を殺して泣く。
 彼の言うとおりなのかも知れない…そう思った。
 いつだって、“誰か”を求めていた。
 “誰か”に救って欲しかった。

 
 その考え全てを否定することは出来ない。
 “人”は“他人”を求めずには生きられないのだと思う。
 でも、今の自分は…。

 彼の言うとおりなのかも知れない。
 なんて“他力本願”で甘えているのだろう…。
 自分の足で立って、歩いて、足掻いて、皆そうやって生きているのかもしれないのに。
 自分は立つ事さえ止めてしまっているような気がした。

「立たなきゃ……立って、歩かなきゃ…」

 彼と対等の位置に居たい。
 救いを待つだけじゃなくて、いつか“孤独”に気付かない彼を救えるように…。
 そんな人になりたい。
 強く、そう思えた。

 
 生きるために。
 生きていくために、強くなりたいと願った夜だった。
自分自身の弱さに気づかせてくれた深澄からのメール。
生きる為に強くなろうと決めた。
いつか彼の”孤独”を解けるように…。
彼と、対等の位置に立てるように…。

また前に進み始めた良佳。
今後の展開にご期待下さい^^
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