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返信━yoshika━

初めての返信には、何とも味気ない言葉が載せられていた。

 ━君は、誰?・・・━

メールに書かれていたのは、この一言だった。
期待して開けたメールの内容に、良佳は大きく溜息を吐く。まるで肩すかしをされたような気分だ。言葉にもならずに先程から洩れるのは溜息ばかり。どう返すべきか・・・・今度はそればかり考えている。
「誰?」と聞くからには名前を聞いているのか、それとも性別?年齢?・・・その他いろいろ。
(自己紹介しろって意味じゃないよね・・・?)
この手の質問は意図が分からず困る。直接会っているのなら聞き返す事も出来るが、果たしてこのメールに対する返事が、問いかけと言うのはどうなのだろうか。
(質問に質問で返すのは失礼にならないのかな・・・)
 今まで散々好き勝手にメールを送っていたのに、何を「今更」とも思う。それでも、返事が無かった時とは違う。相手に嫌われるのではないか・・・そう思うと怖くて応えに迷ってしまう自分がいる。
(・・・どうしよう・・)
 かれこれ2時間ほど、良佳はこんな状態で返信を出来ずにいた。最も、メールが送られてきたのは昨日の夜中。良佳が寝ている間に、相手は返事をする気になったらしい。どういう心境の変化かは分からないが、もしも自分の「詩」が相手の心を動かせたなら嬉しいと思った。

 昨日の今日で外出する気にもなれなかったから、朝からベットの上に膝を抱えて座っている。手には携帯電話。時折月のストラップが揺れ膝に当たる。
 両親は今日はいない。二人とも仕事に出ている。平日の昼間なのだから当たり前だが、誰にも干渉されない時間が彼女には幸せに思えた。
「どんな人なんだろ・・・・」
 携帯の画面をみつめポツリと呟く。返事が返ってくるまでは気にも留めなかった事なのに、たった一言のメールを読んだだけで相手がどんな人なのか気になって仕方がない。 
 思えば大胆な事をしたものだ。顔も知らない、名前も、性別も・・・そんな人に不躾にメールを送るなど、冷静に考えれば出来ない。メールを受け取った人も、迷惑この上なかっただろう。
(それでも・・・・信じたかった・・・)
 自分の気持ちが、叫びが、いつか誰かに届くと信じていた。信じていなければ、生きられなかった。
 「独り」が淋しくて・・・辛くて・・・どうにかなってしまいそうだった。誰かに聞いて欲しい。その思いで届く宛の無いメールを送った。祈るような気持ちで。
  
 その結果がコレだ。
「やっぱり・・まずは謝罪するべき・・?」
 相手がいるのなら・・・今までのメールに相手がいたのだから、きちんと謝罪をするのが筋だろうか。良佳は携帯を握りしめる。不安、緊張、期待・・・全てが入り混じった頭で冷静に返事を考えた。


『キミ思い、
 淡い期待に染められて、
 応えを待った、時は過ぎ。

 ただ思う、
 貴方を「月」と呼ぶのなら
 礼を尽して、仰ぎ見る。

         yoshika  』


 浮かんだのは、もう何度目かも分からない「詩」のメール。
 内容は、感謝と謝罪。こんな古風な言い回しになってしまったのは、相手がいる事が・・・誰かに届くという事が、妙に気恥かしいせい。
 ドキドキといつもより早い鼓動を打つ胸に、良佳はそっと深呼吸をする。
(・・・大丈夫・・・大丈夫)
 自分に何度も言い聞かせ、ようやく「送信」ボタンを押した。


 昼下がり、空は快晴で月はまだ深い眠りの中にいた・・・。
 


ようやく、二人がメールのやり取りを始めました(^_^;)

この先は同じような話が良佳・深澄、それぞれの視点によって進められます。
勿論、別行動の話もありますが・・・二人がメールや行動を共にしている時は、そんな感じで進みます。
 まだ続きますので、宜しくお付き合い下さいませ~(^^ゞ
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