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<第十一章 ワシントン軍縮会議>

 大正十(1921)年。


 ようやくユンボの国産試作一号機が出来た。輸入した牽引車を改造するだけなのに予想以上に時間が掛かってしまった。

 この時代にCADは無いし、設計図を書いて誰かに渡したら、すぐに部品ができるという訳でもない。だから仕方がない。

 一年ちょっとで出来たのは早いのか遅いのか分からない。


 完成したのは牽引車の上に操縦席とアームとバケットを付けたもので、なんと、動作は油圧ではなくて電気モーターです。

 高圧に耐える油圧ポンプがどうしてもできないみたいで、電気モーターからチェーン駆動で動力を伝えます。

 それでも上部の回転、アームの上下、バケットの動きは本物と同じように動きます。

 まあ、チェーン駆動なんで遅いし、ちょっと負荷がかかるとチェーンが切れちゃうんですけどね。

 ですから硬い地面は掘れません。

 それにサイズはミニショベルを一回り大きくしたくらい。俺の乗ってたユンボの半分以下だ。

 それでもダンプに土を乗せるのはできます。それだけでも工事スピードは格段に上がるはず?


 ここがスタート。こっから改良していけばイイんだ。ガンバレ、俺。

 それで俺はユンボ優先の毎日を送ってます。国内視察はしばらくお休み。

 俺が毎日テストしてます。操作性、移動性、視認性、耐久性、限界能力……等々。これが製品につながるかと思うとやる気も出てくる。


 ちなみに、ダンプカー、ユニック、ブルドーザー、ロードローラーの先行四種類は製品版の第一陣が出荷されてます。

 主に陸軍の工兵隊、政府の公共事業で使われてます。といってもエンジンの馬力が小さいから、大活躍とはいかない。

 正直に言うと、工期は短縮できるけど、コスト面では人間を雇ったほうが安い。けど、初期投資だと思って使ってくれてる。

 ちょっとだけ申し訳なく思ってしまう。

 この恩は良いユンボを完成させることで返そう。



 ある夏の暑い日、中尉が気になることを教えてくれた。


「石川県の小松って町に○松製作所という会社ができたそうだ」

「えっ、それって、あの○マツだよ」


 あぁ、一年待てば○マツブランドの重機を作れたのか。待てば良かった。

 でも、○マツがいつ出来たのかまで覚えてなかったから、待つに待てなかった。

 残念すぎる。くやしいー。くそっ、ついてない。だあああああぁーーー。


「ねぇ、中尉。その会社にも重機を作らせられないかなぁ」

「今はまだ無理だな。会社が小さすぎる。もう少し大きくなれば○菱の競合会社として使えないことは無いが、その頃には大きな差が開いてるから追い付くのは難しいのではないか」

「いや、大丈夫だよ。だって、世界の○マツだよ。やってくれるよ」

「そうか、そう言うなら○菱の生産力が足らなくなってきたら、やらせてみるか。その代わり、いつになるか分からんぞ」

「ぜひ、お願い。待ってるから。絶対だよ」


 俺が○マツの敵になるというのは悲しいけど、○マツならやってくれるはずだ。

 陰で応援するから、ガンバレ。世界を目指せ○マツ。


「それと、○ンマーという商品を見つけたぞ」

「えっ、あの○ンマー?」

「あの○ンマーかは知らんが、大阪の山岡発動機工作所というところが○ンマー変量式石油発動機というのを作った」

「おぉ、それは、あの○ンマーだよ。○ンマーは小型ディーゼルで有名なんだ。そうか、○ンマーってこんな昔から在ったんだ……。

 ねぇねぇ、○ンマーに重機用のディーゼルエンジン作らせられないかな。

 ドイツから貰ってきたのって、船用で大きすぎて、そのままじゃ重機に乗せられないんだよ」


 中尉がちょっと考え込む。


「こちらから話を持っていくのは不自然だな」

「そっかぁ……」

「しかしだな、軍の車輌用ディーゼルエンジン研究の委託先を公募するという手がある。応募してくるかもしれんな」


 中尉がニヤリと悪そうな笑いを顔に張り付けながら言った。


「イイ! それ、イイよ。それでいこうよ。○ンマーならやってくれるよ」

「分かった。調整してみよう。ただし、来年度の予算からになるぞ」

「もちろん半年くらい待つよ。お願いします」


 ○マツも○ンマーもあと一年早く動いてくれてれば、色々上手く行ったのに。

 ほんとにタイミングが悪い。

 今からでも遅くない。両社に期待しよう。



 十月。

 久しぶりに玉串の会に呼ばれました。俺の意見も聞いてみたいそうだ。呼ばれても大したこと言えないんだけど。

 ちなみに中尉も呼ばれてます。

 議題はワシントン軍縮会議の交渉案作り。

 今回皇太子殿下はヨーロッパ歴訪から帰られたばかりで御欠席だ。


 軍縮会議のことは全く知らなかった。授業でやったかもしれないけど全く覚えてない。覚えてれば中尉に話したんだけど、知らないんだからしょうがない。でも、なんとなく、みんなの視線が厳しい気がする。


 軍縮会議の主な内容は、国ごとに戦艦の保有量を決めましょう。そして新しく作るのは止めましょうということだ。

 これで戦艦の数のことがはっきりした。

 おそらく軍縮条約の結果、戦艦建造は長門・陸奥まででストップ。その後、何らかの理由で条約が無くなって大和と武蔵を作るのだ。

 空母は最初、赤城・天城を戦艦から改造する予定だったが、横須賀で関東大震災の影響があって天城を中止にして、加賀を改造したのだ。スッキリした。


 政府内、軍部内でも軍縮案は意見が割れているそうだ。

 玉串会員は大幅な軍縮を望んでいる。

 強硬派は米英に対して最低七割の戦力を望み、穏健派は対米英で半数+アルファで良いという。

 ちなみに、皇太子殿下は玉串情報を重視すべきというお考えのようだ。

 俺の意見も聞かれる。


「どうせ戦艦は使わなくなるんですから、減らすか小さくして代わりに空母と駆逐艦を増やせば良いのではないでしょうか。

 戦艦と駆逐艦と飛行機・潜水艦はジャンケンみたいな関係だと思います。

 戦艦は駆逐艦に勝って、駆逐艦は飛行機・潜水艦に勝って、飛行機・潜水艦は戦艦に勝つ。

 どうしても戦艦で戦いたいなら、相手が戦艦で戦わざるを得ない状況をどうやって作るかですよね。

 こっちが戦艦出してるのに、向こうが飛行機と潜水艦しか出してこなかったら勝負になりません。

 こっちがパーばっかり出すと相手に分かってたら、相手はチョキを出すでしょうから。

 まあ、バランス――ちょうど良い割合というのがあるんじゃないでしょうか」


 俺は専門家じゃないんだから、よく分からない。だから聞いてほしくないのに。

 戦艦が無いというのはなんか寂しいし不安だ。でも戦艦ばっかりだったら空母にやられそうだし。かといって予算の関係で両方たくさん作るわけにもいかないんだろう。


 その後話し合いが続けられて、会としての結論が出た。


・陸奥は工事を急ぎ条約交渉までに完成させ既成事実化する。天城、赤城の工事人員を応援に当てる

・戦艦保有比率は最低六割を維持し、七割を目標とする

・戦艦保有枠で妥協する場合は代わりに戦艦余剰枠の空母への振り替えを求める

・戦艦の空母化を行う時は加賀型二隻とする。天城型は標的艦または解体とする

・天城は何らかの理由を設けてこれ以上工事を行わない

・日英同盟は絶対堅持。自動参戦条項を廃してでも堅持する

・代表団の裁量範囲を広くし本国との通信量を減らす。もって暗号解読の危険を減らす

・暗号使用は十分留意し、換字表は本交渉専用の物を使用する

・皇太子殿下帰国次第、条約の交渉条件を公の会議で決定する


 対米英比五割ではどうやっても強硬派を説得できないこと。また五割では金剛型の二隻を廃艦にしなければならないことから、最低六割が決められた。

 また、付随して次のことも決まる。


・これを機に陸海共に大幅な軍縮を行う

・航空機性能向上を考慮し国防方針の再検討を行う

・陸軍の近代化、火力重視、機動力重視への転換

・海軍の海上護衛・通商破壊の重視、航空戦力・条約対象外戦力の増強

・兵部省の復活(陸軍省、海軍省を兵部省の配下の庁へ格下げ)

・大本営の常設化

・これらは今から準備し、震災後に公表実施する


 この付随事項に関して元老から質問が出た。


「兵部省の復活は軍部の反対が強いのではないか。大臣の椅子が一つ減るわけだ」


 中尉が説明する。


「大本営に新たに統合司令本部を設置し、司令本部長職を新設します。この職の位階・宮中席次・勲等功級を国務大臣と同程度とします。これでも納得しなければ、軍部大臣現役武官制を復活させれば良いでしょう。さらに、兵部省の下には陸軍庁、海軍庁を設けることとなるので、長官職二名の椅子が新たに増えることになります。念のため申しますと兵部大臣と参謀本部長は陸海でたすき掛け人事を考えております。おそらく、軍部は兵部副大臣、司令副本部長の設置を要求してくるでしょうが、これは拒否し将来の餌とする予定です」


 餌という言葉に元老が苦笑いする。


「かなり、混乱するであろうな」

「それが狙いです。二十年後に本当に戦争があるならば今の内に膿を出し切らないといけません。今変えると二十年後、実働部隊である佐官以下は新体制しか知らぬ者が大半になり、軍全体で当たり前になります。そして、この案の本当の狙いは天皇陛下を戦争責任からお守りするためです」


 元老が不思議そうな顔をした。


「榊原の話によると戦後天皇陛下の戦争責任について取りざたされたそうです。それは、取りも直さず戦争指導部の責任の所在がはっきりしないためです。万が一我が国が負けた時に戦争責任を取り首をくくられる人間を作ること、それが本案の目的です。兵部大臣と司令本部長には陛下に代わり罪をかぶり絞首台の露となっていただく。この案こそ天皇陛下の藩屏たる我々が今なすべきことです」


 自分より偉い人が死ぬ話を平然とするとは中尉はものすごい度胸だ。びっくりする。

 中尉の大胆発言に参加者全員がザワザワする。

 そして、元老が長い時間考えてから言った。


「そこまで考えてあるなら問題無かろう」



 と、こんな感じでまとまったが、イカイとかクントウコウキュウって何だ? いまだに中尉の話には分からない言葉が出てくる。

 それに、なんか妙に具体的な内容もあるし、俺情報とは関係無いのも入ってる。

 中尉の思惑が入ってるのか、それとも別の誰かなのか、俺の知らないところで誰かが何かしてる気がする。



 十月吉日。

 皇太子殿下が摂政になられた。

 とはいっても天皇陛下が事実上の退位をされている訳で微妙なお祝いムードの中、皇太子殿下、政府及び軍首脳が出席して軍縮会議に関する会議が行われた。

 そして、玉串の会で決定した内容に沿ったものが案として提出された。

 玉串情報を知らない軍の重鎮から反対意見が出た他は異論も無く、そのまま採択された。

 実は事前に皇太子殿下とも打合せ済みだし、出席者の半分は玉串の会員だしで、完全な出来レースだった。


 未来を知ってる俺からすると不思議じゃない内容だけど、知らない人間にとってはクーデターにも近いことらしい。

 当然のように大騒ぎになって、軍上層部は大混乱になった。

 最初知らされたのは将官クラスだが、佐官クラスに伝わるにつれて不満が拡大していく。

 話をややこしくしたのは強硬派と穏健派の両方ともに、メリット、デメリットがあったことだ。

 しかし、摂政皇太子殿下ご臨席の会議で決まったことは覆らない。

 結果に文句を言わせないためにわざわざ皇太子殿下の摂政就任を早め、会議に御出席頂いたのだ。


 下の人間は上へ猛烈な突き上げを行い。上の物は陸海大臣へ激しい苦情を入れる。

 だけど、逆らう者は派閥に関係なく容赦なく配置転換、予備役編入、退役になった。

 陸海軍三長官でも手を出しにくい皇族軍人・重鎮に対しては皇太子自らお話して説得された。

 こうして軍部の混乱は表面的には収まっていった。



 年が明けて大正十一(1922)年。

 軍縮条約は日本の希望に近い形で締結された。


・戦艦、空母の保有比率は米英日で五対五対三

・戦艦の余剰枠を空母に転用することは可、逆は不可

・陸奥の存続を認める


 日本代表団が当初から協調的に交渉した結果だろう。

 問題もあった。

 日英同盟は米国の横やりで内容を変えて存続することになった。太平洋で二国間だけが軍事同盟を結んでいるのは安定を害するとの主張だ。その結果、日英同盟は相互参戦規定でも、中立規定ですらなく、単なる友好条約になった。実質的な空文化だ。

 これにより、日本の首脳陣、特に玉串会ではアメリカの姿勢に疑念を持つことになった。


 中尉なんかは


「やはり米国はアジア進出の手を緩める気はないようだな」なんて言ってる。


 また、軍縮条約と同時に他の条約も結ばれた。

 太平洋の軍備制限などについて定められたが、日本の強硬な主張によりミッドウェー、ウェーク、南鳥島、マーシャル諸島の軍事利用禁止及び既存軍事施設撤去が盛り込まれた。

 ミッドウェーの基地が無ければ将来ミッドウェー海戦が起きた時に懸念材料が一つ減ることになる。

 日本としてはポートモレスビーにも何らかの制限を掛けたかったが、オーストラリアは条約対象外であり、できない話だった。


 条約内容が公表されると日本中が大騒ぎになった。

 これまでは、軍中央の大佐(と一部の中佐)レベルまでしか交渉内容を知らされていなかったが、内容が明らかになると、若手士官と一部国民が騒ぎ出した。


「対米六割は国辱である」と。


 だが、軍需産業以外の経済界と一般市民にはおおむね好評。

 騒ぐ士官は派閥、能力に関係なく力で抑えられた。


 海軍は早速とばかりに旧型艦の廃艦、解体を進めていく。

 同時に加賀型の空母改装設計を開始する。


「なぜ加賀型なのか。速度が速く甲板が長い天城型の方が良い」


 との意見には、建造費節約のため建造の進んでいる加賀型とすると押し切った。

 英空母にならって多段式飛行甲板の案もあったが、俺情報に従って最初から一層式飛行甲板と二段式格納庫に決まった。アニメじゃないんだから三段空母は無いでしょ。

 20cm砲搭載の案についても、俺の対空砲と機関銃を増やしたほうが良いとの意見が採用された。

 20cm砲って、巡洋艦クラスで使うものだそうだ。巡洋艦と撃ちあう状況なんて素人考えでもアウトでしょ。そんなことまで考えてたらキリが無い。


 海軍大臣からは


「最初から完成形にするのは米英に答えを教えるようなものだ」


 との意見も出たけど、予算を抑えることが優先された。

 ちなみに今回の空母の件では、天城の二年分の工事費、将来発生したであろう改装費の節約で一千万(平成時八百億)円近く節約できた計算になるそうだ。役に立ったみたいで本当にうれしい。


 また、陸軍も大軍縮を実施する。

 師団が二十一個から日露戦争前の十七個師団へと四個師団削減された。約二割の削減だ。

 よく暴動が起きないものだ。普通の会社で二割の社員が解雇されたらストや裁判と大騒ぎになるだろう。

 高齢士官の予備役化を進めたり、軍学校の教員を増やしたり、下士官は出来るだけ残すとかの手は打ったらしい。

 他にも航空機や戦車の研究部隊の拡大とかもやってる。

 ちなみに海軍も通商戦、対潜の研究部署を作っている。


 他に来年の大震災に備えた対策も順次実施されている。

 陸軍東京砲兵工廠は大阪砲兵工廠と統合して堺に拡大移転された。移転費用を減らすために、大阪から近く海に面していてまとまった面積を確保できる場所として選ばれたそうだ。

 海軍横須賀工廠は既に修理改装のみ行い新造はストップしている。来年八月末には一時的に空にする予定だ。

 天城、赤城も廃艦が決定している。標的艦は旧式戦艦に追加装甲を施して使うそうだ。



 九月。

 去年中尉と約束した車輛用ディーゼルエンジンの研究委託先の公募が行われた。

 研究内容はホルト社製牽引車に搭載可能で同程度の大きさのディーゼルエンジンの開発。目標は五十馬力。研究期間は二年以内。

 特許及び製造権は軍に所属し、受託企業には製造許可が降りると同時に開発費の半額補助が出る。○菱からの技術支援もある。


 ○ンマー側は知らないが応募さえしてくれれば採用が決定している。

 そして、○ンマーはこちらの思い通りに応募してきて、無事に採用された。

 中尉のことだから情報を流して誘導したと思う。

 でも、これでユンボのディーゼルエンジンの国産化に目途が付いた。



 俺は軍縮の騒ぎとは別にユンボ開発を急いでいた。ユンボ本体よりもエンジンが先にできてしまうのはくやしいからだ。

 毎日試作機のテスト、修正、テスト、修正の繰り返しだ。

 試作一号機が終わったと思ったら試作改良型。その次は量産試作型とテストは続く。

 それにユンボ以外の建設機械の改良もある。


 俺は大型の運転免許も取ってたのでダンプを運転できる。

 会社が暇な時に社長の許可を貰って合宿免許で取った。大型を持ってると地味に便利なのだ。現場で運ちゃんが居ない時にちょっと動かすとか、会社の駐車場で奥に止めてあるのを前に出す時とか。

 それで、ダンプ他のテストも俺がやっている。

 作ったダンプは元の世界で言うと二トントラックくらいの大きさなので、普通車とあまり変わらない気がする。

 ちなみに俺が持ってる免許資格だとユンボ、ダンプ、ブルドーザーは使っても良かったけど、ロードローラーはダメだった。あれは別の資格だ。まあ、この世界だと関係ないから俺がテストしてる。


 それから、これが大変なんだけど、工場の生産ラインのことも相談されてる。

 以前に工場のベルトコンベアーの話を中尉にしたことがあったけど、それが関係者の耳に入ったらしい。

 工場なんて小学校の時に太田市の自動車工場の見学に行ったことしかない。後はテレビのニュースとかバラエティで映るのをたまに見るくらいだ。

 そういえば、あそこの工場は昔、飛行機工場だったって聞いた気がする。


 メシ係さん経由で調べてもらったら、太田の近くに中島飛行機製作所というのがあった。これが、戦後に自動車工場になるわけだ。

 こっちへ来て四年たってもまだ伝えきれてない情報があるんだと分かった。気を付けよう。

 普段から手帳を持ち歩いて、こまめにメモを取るようにしてるんだけど。


 まあ、俺の知ってる工場情報なんて、ベルトコンベアーや、ジャスト・イン・タイム、カイゼンという言葉を知ってる程度。内容も何となくしか知らない。

 部品が必要な時にタイミングよく持ってくるとか、みんなで会社を良くするためにアイデアを出しましょう、とかいうことでしょ。

 会社に居た頃、社長がカイゼンを真似したのか、良いアイデアを出した社員には金一封を出すとかやってた。ろくなアイデアが出なかったのか、誰も賞金はもらえなかった。

 社長は大卒で合理的だったのは良かったけど、ちょっと先走り過ぎるところがあったんだよね。


 半端情報でも知らないより知ってる方が良いだろうと知ってる限りを○菱さんに伝えた。


次章は5/20(火)19時に予約投稿しています。

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