§18 バーベキューとネット小説
唐突ですが……
・ネット小説と言えども公開されている文章である。
・公開してある以上間違いは正さなければならないし、読者に不快感を与えるのは避けるべきだ。
・辻褄が合わないような展開はあってはならない。
・
・
・
・
というような考え方(またはそれに近い)に則った感想を(私の駄文にではなく他の作者の小説で)見かける事があります。
私はネット小説は私的な趣味の範疇であり、基本的に他者が論う対象では無いと思っているのです。インターネットという公開された空間を使うことは必ずしも公的責任を伴うことを意味しないというのが私の認識です。今回はこの部分をバーベキューを例に綴って見ます。
河原でも海辺でもバーベキューが出来るところの多くは公的空間です。私有地であることは決して多くは無いでしょう。なので、バーベキューを楽しむ人達は他者に対して「見るな」とか「近寄るな」というような文句は言えないのです※(公的空間に居るのですから当然です)。
※「アクセスブロック」を設定しても「読むな」が出来ない「小説家になろう」と仕組みは同じですね。
通りすがりの人が「雨に降られなくって良かったですね」とか「何を焼いているのですか?」とか「何処から来たの?」とか声をかけることを妨げるこは出来ません(常識的には……)。むしろそんな会話から発して、気が合えば同好の士として交流することもあるでしょうし、それはきっと楽しい一時なのだろうと思うのです。
ですが、仮令開かれたバーベキュー場であっても、「串焼き肉は羊にするべきだ」とか「豚汁に入れる芋は里芋でなければならない」とか「カレーにコンニャクを入れるのは間違っている」等と言ったら如何なるでしょうか? 少し想像してみて下さい。
確かに公的空間を使用する以上は一定の介入を受け入れる義務を伴います。それでもバーベキューは私的趣味の範疇であり、その趣味を他者に侵されない自由は保障されなければなりません。隣のグループから、火の起し方から味付けまでを指図されては堪りません。そして、バーベキュー場では概ねそのマナーについては認識を共有されているのだろうと思うのです。ですから集まっている人達が善意の人達でありそこに瑕疵(他者に迷惑を掛ける事)が無い限りトラブルに見舞われることは在りません。
例えば、「見るからに不味そうだった」とか、「お姉さんの格好がダサかった」とか、「坊主が青っ洟を垂らしていた」とか色々なことに気付いても、それを面と向かって言うことはしないのです。その場を去り帰路の途にある時や思い出話として私的に交わすのみなのです。だから上述の条件ではトラブルにならないのです。
また、火が起せない、水加減が解らない、食器や調味料を忘れてしまったといった時近くの人に教えて貰ったり分けて貰ったりすることがあります。でもこれは助力を求め合意が成立してからのことなのです。
公的空間を使う趣味ということではネット小説もバーベキューも全く同じだと思うのです。親切は大いに結構なのですが、相手の迷惑になっていない範囲にそれは限られることなのです。そして何が迷惑であるかを決めるのは相手(作者)なのです。請われて居なければ善意から発する親切であっても迷惑なお節介になるかも知れない。顔の見える実生活ではそのあたりの匙加減を慎重に行っているはずです。
であれば顔が見えないネット社会(小説)ともなればより慎重に振舞うべきではないでしょうか?
形態はとても似ていますが、商業的即ち公的な文章と、私的なネット小説は同じ公的空間に存在しても全く異なるモノなのであります。
作者が筆を折るような書き込みを助力として求めていることは稀でしょう。であればその行為は作者の(己が趣味を他者に侵されずに楽しむ)自由を侵害する迷惑行為なのです。「串焼き肉は羊にするべきだ」とか「豚汁に入れる芋は里芋でなければならない」とか「カレーにコンニャクを入れるのは間違っている」等とバーベキュー場で他所のグループに指図している迷惑な姿を想像してみて下さい。
確かに己が素質を研く為に命懸の荒行の場と作者が位置付けることを妨げるものでは在りません、ですが押並べてその水準を作者に要求することは無茶苦茶です。
色々な意見はあると思いますが私はこのように考えているのです。
(今回は以前投稿した「作者は神!(ファンタジーに学ぶ)」における結論「作品や活動報告、感想への回答等へアンテナを高く掲げ作者さまの嗜好に思い及ばせ、その意に副う形で感謝の表現を考えましょう」を別な形で表現したものです)
色々なご意見を感想でお寄せ下さりありがとうございます。大変参考になっております。今後ともよろしくお願いいたします。