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§10 余話:現代はファンタジーが不足している

 もう随分前のことです。


 サンデープロジェクトと言う番組で林業の衰退による土石流の増加を取り上げていました。


 広葉樹の原生林を伐採し、材木として利用価値の高い針葉樹を植林する。針葉樹は手入れを欠くと枯死が増えるとのことでした。ところが輸入木材に押されて林業の採算が悪化し、植林の保全が出来なくなっているため実際に山林が荒れているのが実情とのこと。


 元々広葉樹に対して保水力の低い針葉樹の林が荒れるてしまうと更に保水力が低下し大雨による土石流が増えるのだそうです。


 それを土木工学や植物学の偉い先生が時間を掛けて説明していました。結構難しい話で、小学生では一寸無理、中学生でも厳しいかなぁ~と言うのが私の感想でした。


 その時、ふと気付いたのです。もしも、

「勝手に人間の都合で山の木々を植え替えたのだから、せめてその植え替えた木の面倒を一所懸命看ないと、放って置いたりしたら山の神さまが怒って罰を下されるよ」

と言えば如何なのだろうかと、


 きっと結構幼い子供にも伝わるのだろうと思うのです。


 これは「迷信」でしょうか?

 それとも「生活の知恵」なのでしょうか?


 工学では、シンプルイズベストと言う思想があります(私もその信者です)。

単純であればある程、一部の人しか解らないよりも、より多くの人が理解できる方が優れた手法であると言う考え方です。



 山の神さまを敬い大切にすることで山津波(土石流)を防いで(加護を)貰える。


 これは(神との表現を棚上げすれば)事実でありかつ誰にでも解り易い説明です。

もし、生活の知恵であると考える事が出来るのであれば、生半可な科学知識が山の神を否定し生活の知恵を妨げたと言うことになります。


 そして「生活の知恵」と考えるよりも山の神さまを敬いその聖域に畏怖の念を抱くことにより生活の安全(山津波からの防災)が得られるのであればそれを「神のご加護」と感謝し、愈々神さまを大切にする……、何かこの方がロマンがあるし守る上でも肩が凝らないような気がするのです。きっと不法投棄なども起こり得ないでしょうし……。



 やはり現代はファンタジーが不足していると思うのです。






 今回はもう一つ、本当に悲しい形で思い知らされたことがあります。

この様な形で取り上げるのはとても不謹慎なことなのかもしれませんがご紹介いたします。

ご存知の方も多いと思うのですが、



 平成23年3月30日 読売新聞配信 「此処より下に家建てるな…先人の石碑、集落救う」


記事は、


 岩手県宮古市姉吉地区は昭和8年の三陸大津波の後、海抜約60メートルの場所に石碑を建てた。そこには、


 「高き住居は児孫(じそん)和楽(わらく) (おも)へ惨禍の大津浪(おおつなみ)」(都都逸の定型ですね)


と刻まれていて、その訓えを守った集落では今回の大津波から全員が難を逃れる事が出来たと伝えています。


(記事全文はこちら)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110329-OYT1T00888.htm



 子孫の安寧を願い石碑を刻んだ先人、石碑の訓えを守り抜いた集落の人達、両方とも凄く格好良い(熱く感じさせるものがある)と思うのです。悲しいニュースが多い中、当時ファンタジー映画のクライマックスに出会ったかのような感動を覚えました。


 先人達はきっとこの悲惨な災害を少しでも子孫から遠ざけたい、それが生き残った者の務めであり、命を落とした仲間達への手向と考えたのだろうと思うのです。あるいは本当に鎮魂式(追悼事業)の一部であったのかも知れません(勿論本当のところは判りません。ですがそう思うと大切な人達を失った悲しみがより鮮明に思い浮かぶのです)。


 今回の大地震で、私たちは科学技術において取り返せない大失態を犯してしまいましたが、その一方で先人の伝承により命が救われた事実があります。


 そして、今を生きる私たちも石碑の先人達のように子孫の安全を守るような何かを残せたらよいのにと思うのです。そうすれば先人達が代々守り治めてきた大地を放射能で汚染してしまったと言う、この大きな罪を幾許かでも償えるのではないかとそう思うのです。


 法律とか自由とか権利とかそういう新しく出来た言葉に囚われないで、迷信だ時代錯誤だと先人の訓えを蔑ろにするよりも日常生活にもう少しファンタジーを取り入れた方が私たちは幸せに近づけるのではないかとそう思うのですが如何でしょうか?




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