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宰相の娘  ビルド 騎士団長の息子目線

ビルド君目線にしてみました。

負けた。

動くことすら許さない戦い方があるなんて………

宰相閣下が溺愛しているだけの世間知らずのお嬢様だと思っていた。

どう言った人間なのか?

良いも、悪いも調べ尽くしてやる。



彼女の評価は良すぎる。

庶民からは神のように扱われ、貴族からはカリスマとして崇拝されている。

そんなに出来た人間がいるものなのか?

カーディナル ブラウローズ。

そう言えば王様の弟君と薬を共同開発とかしているらしいし、彼の所にも聞きに行くか。




「貴方は、宰相閣下の娘が好きなんですか?」


案内された応接室で目の前に座る王弟様は飲んでいた紅茶を吹き出した。


「な、な、何をいっ言って……げふっ……」

「大丈夫ですか?俺はカーディナル様があまりにも評判が良いので気になりまして。」


王弟様は吹き出してしまった紅茶を片付けながら言った。


「あの人は他者の事しか考えていない人ですよ。」

「他者ですか?」

「自分の事より他者のために頑張る人。ちょっと天然だけど、素敵な人ですよ。」


王弟様は柔らかく笑った。

この人も強いと父が言っていたが本当だろうか?


「王弟様は武術の心得があるとか?」

「少しだけですよ。」

「カーディナル様もお強いのです。」


俺はつい、あの日の事を思い出してしまった。


「あの人は自分のせいで誰かが傷付くのが嫌なんですよ。自分が強ければ誰も傷つかないですむんだって前に言ってましたよ。」

「………」 


王弟様は天井を見上げると指をパチンとならした。

すると、黒ずくめの男が二人彼の後ろに現れた。


「彼らは僕につかえてくれてる諜報部員だけどね………たぶん、彼女を調べるように言ったら嫌がるよ。」

「「当たり前です。」」

「何故?」


俺か本気で聞くと諜報部員の男の一人が言った。


「姫様を調べるイコール姫様に見つからずに調査をしなければならないって事だろが!無茶言うなって主であろうと怒鳴りつけちまうぜ。」

「無茶なのか?」

「あんたが姫様の事調べてるのだって諜報部員全員って言っていいほどの奴等が知ってるぜ。姫様は自分の事をまとめた資料まで作って『私に直接聞きに来たらこれを差し上げますの。』って言ってたらしいぜ。直接姫様に聞きに行ったらどうだ?姫様のスリーサイズまで解るぞ。」


諜報部員の言葉に王弟様が思いっきり紅茶のカップを落としていた。


「主も知りたいですか、姫様のスリーサイズ?」

「からかうな。」

「姫様胸デカいっすよ。」

「喋りすぎだ。」


黒ずくめの男が笑ったのが解る。


「コイツはオラッチがあとで指導しておくッス。」

「嫌だよ‼ごめんて!」

「姫様をからかいのネタにするやつは半殺しッス。二度と口に出来ないように体に教えるッス。」

「頼んだよ。」

「主!ごめんて!もう言わないからコイツ止めて!」

「主、少し主の側を離れるッス。なんかあったら呼んでくれッス。」


そう言うと黒ずくめの男の一人がもう一人の首根っこを掴むと消えた。


「あまり参考にならなかったかも知れないね。ごめんよ。」

「いえ………俺、直接聞きに行きます。」

「………それはスリーサイズが知りたいから?」

「違います‼そうじゃなくて、あの人に俺の師匠になってもらいます。」

「へ?」

「あんなに強い人間は他に知らない。ならあの人に師匠になってもらって稽古をつけてもらう。」

「………そう。嫌がられないと良いね。」

「頑張ります‼」


俺は冷めてしまった紅茶を一気に飲み干した。


ピンポンっと言う音に俺と王弟様が顔を上げるとメイドが入ってきて言った。


「カーディナル様がお越しです。」


そして、次にヒョコッと顔を出したのは彼女だった。


「あら?騎士団長の息子様?」

「あの日は無礼を働き、申し訳ありませんでした。」

「王子を守ろうと言う心のままに動かれたのだと理解しています。」


ニコッと笑った彼女は美しいと言う言葉がよく似合うと思った。


「そう言えば、私の事を調べてらっしゃるんでしたよね?私が解る範囲ですがまとめましたので、こちらをどうぞ。」


彼女が鞄から出した紙を受けとると、そこには色々とカーディナル様の個人情報が書かれていた。

そして、諜報部員が言っていた欄には『スリーサイズは秘密です。』とトップシークレットは書かれていなかった。


「………王弟様がカーディナル様のスリーサイズが知りたいらしいですよ。」

「?」


思わず意地悪をしたくなった。

明らかに慌てて首を横にふる王弟様は可愛らしかった。


「ブラウド様にでしたら別に教えても構いませんが?薬の効力を試したいとかですか?」

「人体実験をナルでしようなんて、自分は一生思いませんからね。」

「じゃあ、何故私のスリーサイズを?」

「自分はそんなこと一言も言ってませんよ‼」


彼女はしばらく黙ると思い付いたように言った。


「ブラウド様!」

「はい!」

「私、ブラウド様の大好きな紅茶のクッキーを持参しましたの。御茶にいたしましょう。」

「それは最高のお誘いですね。直ぐに準備してもらいましょう。」


ブラウド様はメイドに今あるお茶を片付けさせ、新しいお茶とクッキーを持って来させた。


「どうぞ………」

「ビルドです。」

「ビルド様、お砂糖は?」

「要りません。」


何故か彼女がお茶を淹れ始めて驚いた。

メイドがやるんじゃないのか?

淹れたての紅茶は物凄く旨かった。


「茶葉をお変えに?」

「いいえ、ナルの淹れ方が良いのです。クッキーもナルのお手製です。どうぞ。」


言った方が良いのか?

王弟様は彼女を愛称で呼んでいるのか?

モヤモヤしながらクッキーを1つつまみ、食べた。

旨い‼

今まで考えていた事が一気にぶっ飛んだ。

こんな旨いクッキー食べた事がない!


「どうでしょう?」

「………旨いです。」


彼女は嬉しそうにニコッと笑った。

ああ、皆が言っていた天使の微笑みがこれなのだろう。


「いけすかない私の評価は少しは上がりましたか?」

「………貴女が素晴らしい人だと言うことは解りましたが、王子をアホだの変態だの言うのは控えていただけないでしょうか?あの方は俺のつかえるべき主なのですから。」


彼女はニコッとまた笑った。


「そうですわね。私が王子に暴言を吐くのは傷付きたくないからなので多目に見て欲しいですが………貴方の立場もありますものね………」

「傷付きたくないから?」


王弟様は不思議そうに彼女の顔をのぞき込んだ。


「こっちの話ですわ。ブラウド様が心配する必要もありません。そんなことよりビルド様!私が王子に暴言を吐くの習慣なので止める訳にはいきませんの。王子をうっかり好きになってしまったら止めると思うので………一生来ないと思いますがそれまでは『ああ、また言ってるよ。』ぐらいにとらえていただけたら嬉しいです。それと、流石に変態はビルド様の顔を立てて止めようと思っていますので妥協していただけませんか?」

「………はい。」


俺が頷くと彼女はまた嬉しそうに笑った。


「ビルド様がお優しい方で良かった。」

「カーディナル様、自分は"様"を付けられるような身分では無いし同い年なので"様"を附けずとも宜しいと思うのですが………。」

「………じゃあ、ビルド君?」


何故だろう?

彼女はふとした瞬間可愛いと思わせる表情をする。

美人で隙が無いように見えていたのに、今やどれだけ可愛い顔が見れるか気になって仕方がない。


「それと、カーディナル様にお願いが。」

「何でしょう?私に出来ることであれば、何なりと。」

「俺に戦闘術を教えて下さい‼………俺の師匠になって下さい。」

「………嫌ですわ。」

「今、何なりと?って言いましたよね?」

「気のせいですわ‼」

「そこを何とか!」

「嫌ですわ!面倒臭いですわ!ごめんこうむりますわ!」


彼女は行儀悪く自分用に淹れた紅茶を飲み干すと言った。


「ブラウド様、急用があったのを思い出しましたので失礼いたします。」

「ああ、気を付けて。」

「では、ごきげんよう‼」


そう言うと彼女は姿を消した。

さっきの諜報部員と同じ技なのだろう。


「ブラウド様、自分はカーディナル様を追いかけなければならないので失礼いたします。」

「あ、うん。あまり迷惑をかけてはダメですよ。」

「はい!今日はありがとうございました。」


俺は王弟様に頭を下げると走ってその場をあとにした。

この日から俺と彼女のおいかけっこが始まったのだった。





カーディナルって長いね!

ナル使いやすい。


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