宝石 王弟ブラウド目線
あの時何があったのかです。
俺は5年前から不治の病を患っている。
病名は恋。
最初は全く意味が解らなかったが、5年も患っていると流石に気が付くものだ。
5年前10歳だった彼女は小さな見た目とは違う大人な考えを持っている立派なレディーだった。
それがこの5年で、彼女はみちがえるほど美しく成長した。
5年前の彼女を好きになった訳だが、代わらず今の彼女が好きなのだからロリコンとは違うと思いたい。
幼女を見てもトキメいたりはしないからセーフだろう。
話は変わって、彼女とは薬学の話をおもにおこなっている。
彼女が兄と弟のためにと日夜研究している媚薬を無効果する魔石の開発は自分も微力なから手伝ってきた訳だ。
それが、今完成してしまった。
この研究が終わってしまったら彼女は俺の所に遊びに来なくなってしまうだろう。
だが早く作って彼女の兄弟にプレゼントしなければ、間に合わないかもしれない。
彼女の喜ぶ顔が見たい。
自分でもバカな考えだったと思う。
仕方なしに俺の専属の諜報部員のムジナを報告に行かせた。
暫くすると、ムジナが帰ってきて、彼女の専属の諜報部員に連絡をしたと報告があった。
それから10分ほどで息を切らせた彼女が俺の研究室に現れた。
彼女の身体能力は諜報部員はおろか暗殺部員まで舌を巻くほどらしい。
マジマジと彼女を見詰める。
本当に綺麗に成長したと思う。
真っ赤なツインテールは変わらないが、深緑の瞳は宝石のようにキラキラと輝きふっくらとした唇は色気すら感じる。
身長も160㎝ぐらいだろうか?
胸も結構な大きさだ。
彼女を見れば健全な男は振り返ってしまうだろう。
「どうかなさいましたか?」
「いえ、長く研究していたものだと考えにふけってしまいました。」
「そうですわね。」
彼女はニッコリと笑った。
可愛いな~。
どんなに心惹かれようとも彼女は俺の甥の婚約者だ。
しかも、甥は王位継承権第一位。
俺が彼女を手に入れるなど、無理な話だ。
俺は出来上がった魔石を入れている箱まで歩いていき蓋を開けた。
中には真っ赤な薔薇の形をした宝石が入っていた。
彼女の事を考え、気まぐれに足した薔薇のエキスが最後の決め手だった。
仄かな薔薇の香りがしているこの宝石が彼女の求めていた物だ。
俺はゆっくりとそれを持ち上げると振り返った。
………え?
彼女は躊躇うことなくレベル5のヤバイ媚薬を飲み干しているところだった。
飲み干した瓶が彼女の足下に転がった。
そしてふわりと彼女が崩れ落ちそうになり、俺は慌てて彼女を受け止めた。
虚ろな瞳の焦点があった瞬間………
「ブラウド…様……」
彼女が腕の中で色っぽく俺の名前を呼んだ。
衝撃が凄すぎる。
「あつ……い。」
熱か?俺は慌てて彼女の額に手をのせた。
彼女はそんな俺の手を掴むと頬擦りして呟いた。
「冷たくて………気持ち良い………もっと、触って……」
た、助けてくれ!
こんな可愛い生き物どうしたら良いんだ‼
どうにかして良いのか?
『据え膳食わぬは………』
父上が前言っていた言葉が浮かんだ。
ダメに決まってんだろ‼
腕の中の彼女は更にニコッと笑った。
可愛い!
ヤバイ‼
マジでヤバイ‼
キスぐらいしても良いだろうか?
駄目だ‼
キスだけで済む気がしない。
俺は慌てて手に握ったままだった宝石を彼女の手の中に握らせた。
暫くすると、彼女は正気に戻った。
「ごめんなさい。でも凄い効力ですわ!」
彼女は俺の腕の中から簡単に逃げ出し宝石をしげしげと見ている。
俺はそのままフラフラとイスに座ると机に突っ伏した。
その後彼女の兄が慌ててやって来た。
彼女と二人っきりじゃなくなって安心した。
彼女は嬉しそうに微笑む。
元々彼女は兄と弟のためにこの宝石を作りたかったのだから嬉しそうにしているのだろう。
だが、何故か彼女は第一号のその宝石を俺にくれると言う。
いや、今はまだ手放さないでくれ。
お願いしたら彼女はキョトンとしていた。
「何があったんですか?」
彼女の兄は俺を心配して聞いてくれたが聞かないでほしい。
「誓って、不埒なまねはしていません………ご安心を。」
それしか言えなかったのは許してほしい。
皆、ブラウド様は頑張ったよ~。